本庄 凛(ほんじょう りん)6-3
父も同類だと…冷徹な決定に一枚噛んでいるのだと突き付けられ、黙り込む私に鼻を鳴らし、隊長は歩き始める。
私が反応しなくなった後も、ずっと話す彼を見て少しずつ…私に対する「敵意」に気付き始めた。
ただ、気に食わないだけかと思ったが…明らかに「敵意」だった。
最初に有ったにこやかな笑顔は消え、いやに丁寧だった言葉遣いも今はそれも崩している。
周りを隊員に囲まれた私は、反抗的な言動を取る事が身の危険を招くと思い、ただ言われるがまま一緒に歩いた。
「あぁ…ここは検査室がある一角で…そうだ…君に見せたいものがある」
透明なガラスの扉の前で、隊長が立ち止まり私を見る。
「知り合いだと思うのだが…」
馬鹿にした様な目つきで見下ろしながら、唇に薄ら笑いを浮かべた。
「知り合い…ですか…?」
もしかしたら怜か誠也かも知れないと、隊長に視線を合わせる。
彼の薄ら笑いが、悪い予感を思わせるが…「知り合い」かも知れないらしいので、2人じゃなかったとしても同じ学校の子かも知れない。
検査室が並ぶ中、突き当りの部屋の前まで行く。
他の検査室とは明らかに違う…。
頑丈そうなドアに、金属製の大きな鍵が三か所にガッチリと掛けられている。
柳隊長がドアの前に立つと、2人の隊員が鍵を外していく。
ドアが開かれ、中に入ると機械が並ぶ真ん中に透明な筒状のガラスの部屋が有った。
内側に白いカーテンが引かれているので、中は見えない。
白い筒状の物がドンっと、置かれている様な見た目だった。
カーテン越しに見える陰で、人が何人か動いてる事、大きな何かが置かれている事が分かる。
機械を操作している人達は一様に白衣を着た格好で、隊員とは違う空気を纏っている。
その人達が隊長を先頭に、隊員たちに囲まれた私をチラチラと見る。
隊長の様な…嫌な感じはしない。その代わりに好意も感じ取れない。
…前の祥子さんではなく、今の祥子さんを彷彿とさせる雰囲気。
ここに知り合いが本当に居るのだろうか?と、不安に駆られ足は動かなかった。
異様な様子に臆する私を置いて、柳隊長はスタスタと進んでいく。
「来たまえ…」
ガラスの部屋の前で柳隊長が…その場に突っ立ったままの私に声をかける。
躊躇していると柳隊長に腕を摑まれ、引っ張られる…。
握られた腕が痛い。
「離してください」
力に抗えず、ガラスの部屋の前まで連れていかれた。
「離してっ…」
振り解こうとするが、やはり男の人には勝てない。
「あぁ、失礼」
離され、腕を摩る。
すると横から白衣を着た…研究員ぽい人がガラスの部屋のドアを開けた。
「どうぞ」そう言いながら隊長と私を先に促す。
隊長の横で、カーテンを開けられながら入ると、真っ白な中機械が壁に並んでおり、その真ん中に白いベッドが置かれていた。
ベッドには人が寝ているみたいだけれど、機械と繋がれた線や何やらで「誰」とは分からない。
腹部辺りはガラスなのか透明なモノで覆われている。
「あら…どうしてここへ?」
ベッドの横に居た白衣の女の人が振り向く。
祥子さんだ。
「祥子さん…!」
小走りで彼女の元へ行く。
雰囲気が前とは少し違っても、見知った顔が居る事が安心だった。
この知らない…敵意を持った柳隊長と、その部下の隊員の人達に囲まれている今は特に。
彼女の袖を掴み、顔を見る。
「祥子さん…」
彼女の目が冷たく感じ、手を放し目を伏せる。
…と、ベッドの上にあるものが見えた。
色々な線で繋がれた人。
よく見た顔の同級生。
…岡君だった。




