アンドレア・エルフローレン4-10
喚く隊員に近寄る。
ビクッとなる隊員にDVDを差し出す。
「これを本庄隊長に」
この隊員は第二の所属だ。
元凶かも知れない柳隊長の部下。
コイツを殺して、自分で届ける方が確実だろう。
だが…。
『04:13』
ここで、もう降りたい。
俺の人生を…終わらせたい。
「俺が爆破ボタンを押す。その代わりお前が俺の代わりにこれを届けてほしい」
「僕は戻っても…」
「柳隊長の前に本庄隊長に会うんだ。何としてでも」
隊員の手にDVDを押し付ける。
「しかし…」
「この銃にはもう一発弾が残っている…お前も食らいたいか?」
俺は隊員の頭に銃口を向けた。
顔が目に見えるように青ざめる。
「お前を殺して、俺だけ生き延びる事も出来るが、その場合ここの爆破は無理だろう?だから、お前の代わりに爆破してやるから、お前は俺の代わりをしろ」
我ながら無茶苦茶な事を言っていると、自覚はある。
「ヘリの鍵はここにあるだろ」
「え…えぇ…」
『03:37』
「早くしろ。時間がない」
「時間?」
「さっき化け物共が本館に這い上がっていた」
現状を告げると隊員はDVDを鞄に入れ、鍵を持った。
2人でヘリポートへ走り出る。
『02:50』
「頼んだぞ」
「はい…あ、あなたの名前は…」
「アンドレア・エルフローレン」
「僕は…」
「お前の名はいい。俺は死んだと伝えてくれ」
隊員がヘリに乗り込むのを見送る。
敬礼をした奴が、空へ上がっていく…。
その下に黒い棒が数本見え始めた。
ヤツらの脚だ。
『01:20』
わらわらと本数が増え始め、胴体が見えた。
俺は管制室に戻り、ボタンのカバーを開ける。
ヘリポートにヤツらが歩き始め、管制室の窓に腹が見える。
『00:50』
カウントが1分を切った。
思い切り、赤いボタンを殴ろうと腕を振り上げる。
…。
終わりだな。
…。
終われるんだな。
目をつぶる。
あぁ…なんて…清々しい気分なんだ…。
カイルと滝中君は…生きてここを出られただろうか。
…あぁ、他の子供達も…どうなったか分からないが…。
もう俺には…関係ない。
壁に積まれた死体の上に…最後に投げられた片腕の死体…。
見慣れたアイツの顔を最期に思い出す。
あぁ、結局は…俺の人生はなんだったんだろう…。
辛かった記憶も痛さも、希薄に感じる。
でも…これで。
…。
……。
………。
…………………爆発音がしない。
カウントも…ない。
どういう…事だ?
恐る恐る目を開ける。
世界は真っ暗だった。
何も触れない。
自分の手や足さえも見えない。
「 」
声を出そうとしても、何も聞こえない。
息を…吸っても止めても吐いても…。
肺が膨らむ感触や苦しさもない。
「 !!」
叫んだ。
声の限りに…しかし自分の耳にはおろか、体に…喉に響きさえも感じない。
「 !!!!」
涙が…出ない。
何も…自分の意識だけが…ここに存在している。
爆発で視覚や聴覚を失ったのか?
俺は生きてしまったのか…?
誰か何か言ってくれ。
誰か俺に触ってくれ。
誰か…あの俺を攻める声でもいいから…。
「第二基地対象者、無事保護されました。ミッションクリアです。速やかに帰還してください。お疲れ様でした。」
戦闘機の…あの機械的な女性の声が遠くに聞こえた。
良かった。しかし…俺は生きてしまったのか。
では、ここはどこかの病院のベッドの上か。
そう、考え五感を張り巡らせる。
「it‘s not over」
「it‘s not over」
「but …」
「don‘t need…you」
どういう…事だ…。
「There is no future」
待ってくれ!
「no future…no future…」
「no future…no future…」
何なんだ!!
『お前は選ばれていなかったって事さ』




