アンドレア・エルフローレン4-6
拾ったIDを携えて、俺は研究室を出る。
機械から散っていた火花の音と、パソコンの低い軌道音、それくらいしか残らない部屋をもう一度振り返り見回した後、エレベーター前まで走った。
『14:20』
もう時間があまりない。
屋上に行くのか、本館へ行くのか。
どちらかに決めなければ。
片方に行って駄目だったら戻ってくる、そうする時間の余裕はない。
どちらか…俺は五階に向かう事に決めた。
エレベーターに乗り、五階を押す…目の前が真っ暗になる。
『14:34』
気が付くと三階の乗っていたはずのエレベーターの前に居た。
乗り込んで五階を押したはずだ。
夢でも見ていたんだろうか。
もう一度、乗り込む。
五階のボタンを押す…目の前が…暗くなった。
『14:23』
また、三階のエレベーターの前に戻っている。
この感覚…、あの時と一緒だ。
カイル達と合流する前の…襲撃前に戻った時と同じ。
という事は、屋上へ行くと…俺は死ぬのか?
何が起こったのか、思い出そうとする…。
屋上、その前の部屋…。
五階…いや、本館へ行くしかない…いや、もう一度…五階へ…。
エレベーターの五階のボタンを押す。
上へ移動していく感覚が、ある。
チンッ
無事、五階へ着いた。
フロア案内を見る。やはり五階は半分が部屋で、半分が屋上…ヘリポートの様だ。
そこで、違和感に気付いた。
俺は何故、ヘリポートだと知っていた?
ここに来る前に…このフロアの作りを知らないはずなのに知っていた。
研究室でも「五階は半分が部屋で、半分がヘリポート」だと考えた。
「もしかして…俺が認識していない死が、俺に起こっているのか?」
そうなると、自分の記憶が…自分自身が信じられなくなってくる。
いや、しかし、やり直したなら…あの自動で流れる言葉や感覚があるはずだ。
医務室前でカイルと会った時の様に。
何が何だか分からなくなる。
IDで部屋の鍵を開ける。
中には誰もいない。
『12:53』
机の中や棚を調べるが何もない。
ヘリポートを見ると一機だけヘリが残っている。
目の前のヘリに乗れば、俺は脱出できるというのに。
『11:41』
やはり、ない。
目の前の壁を叩く。窓を割った所で鍵が無ければ意味がない。
カウントの…残りは後11分程。
降りるのに1、2分程かかる。
10分弱で本館に行き…ヘリを探すのか?
無理だろ、どう考えても。
『詰みだな』
嫌だ…。
『詰みだよ』
そんな…。
『悪あがきするな』
嫌だ…。
俺は側にあった椅子を持ち上げ、窓を割る。
そして、窓に足をかけ外へ出ようとした。
が…出られなかった。
暗い中にハマった。
動けない。
なんなんだこれは…。
周りが真っ暗だった。
もがいても…もがいても抜け出せない。
『03:10』
後…3分…あ…
ブツッ…。




