A班 救助用機体5021 カイル隊員4-5
彼は取り乱す事なく、藤田と自身の異母兄弟の、開いたままになっている目を閉じさせた。
俺はあまりのショックで、言葉も涙も何一つ出ない。動く事も出来なかった。
こんな…頭だけになってしまった…。
…弟の純の元へ、藤田は逝けるのだろうか…。
突っ立っている俺の袖を、くんっと何かが引っ張る。
小さな…可愛らしい男の子。
藤田の…否、この子は純ではない。
滝中君だ。
「行きましょう」
「あ…あぁ…」
ヘリに向かう彼を後ろから追いかける。
この子はこんなに冷静に…。
橘君が亡くなった時に見た彼は…取り乱していたはずなのに、どうして…関係が希薄な上、異母兄弟だから…なのか?
それにしても人死にに対して、動揺していない様に見える。
足元の赤い水溜りで、歩く度に靴に跳ねては落ちていく。
これに2人の血も、混じっているのだろうか…?
近くに落ちている靴は、どっちの物だろう…。
あのぶら下がっている手は、誰の手なのか。
銀色に光る小さなプレートを拾う、誰かのドッグタグだ。
エリオットのは、鞄の中に仕舞ってある。
これは誰の物だろう。
チェーンは血みどろだ。
酷い寝不足の時の様に…半ば意識が飛ぶ様に、身体が…足が地面の感触すら感じない。
目だけが何かを探している。
彼の兄の下半身か、藤田の身体か?
何かを。
ヘリの脇に小さな手帳が落ちている。
それを拾い上げ、開くと…純と藤田の母親の写真が挟まっている。
藤田の手帳だ。
右手で握りしめ、上着の内胸ポケットへ大切に入れる。
このまま、感傷に浸ってはいけないと自分を戒め、正気に戻る為頬を叩く。
前を向くと滝中君がヘリの横で待っていた。
ドアを開け、後部座席に滝中を乗せてシートベルトを着ける様に指示する。
彼が斜め下を向いた際、首筋に珍しい並びのほくろがある事に気付いた。
珍しいなと思いながら、どこかで見た気がしなくも無い。滝中君と行動していたからどこかで見たのだろうと、考えを差し置く。
そして彼の安全を確認した後に、自分は操縦席に座る。
エンジンをかけると無線から機械的な女性の声が流れて来た。
『第二基地対象者、無事保護されました。ミッションクリアです。速やかに帰還してください。お疲れ様でした。』
いつも出撃した時に聞く、機械的な女性の声。
戦闘機では無い、ただの医療班用のヘリが自動運転に切り替わる。本来そんな機能は無いはずだ。
しかも、どこへ帰還せよと言うのか。
俺が戻る第二基地から今、脱出したと言うのに…。
設置された機械にマップを立ち上げようとするが、立ち上がらない。
代わりに「この操作は出来ません」とメッセージがでる。
自動操縦に切り変わったとしても、手動に切り替えられるはずだと運転変更の操作するが…手動には切り替えられない。
自動操縦のまま…。
俺が知らない、目的地を目指して、ヘリは飛び続けた。




