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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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106/200

A班 救助用機体5021 カイル隊員4-5

彼は取り乱す事なく、藤田と自身の異母兄弟の、開いたままになっている目を閉じさせた。


俺はあまりのショックで、言葉も涙も何一つ出ない。動く事も出来なかった。


こんな…頭だけになってしまった…。

…弟の純の元へ、藤田は逝けるのだろうか…。


突っ立っている俺の袖を、くんっと何かが引っ張る。

小さな…可愛らしい男の子。

藤田の…否、この子は純ではない。

滝中君だ。


「行きましょう」

「あ…あぁ…」


ヘリに向かう彼を後ろから追いかける。

この子はこんなに冷静に…。

橘君が亡くなった時に見た彼は…取り乱していたはずなのに、どうして…関係が希薄な上、異母兄弟だから…なのか?

それにしても人死にに対して、動揺していない様に見える。


足元の赤い水溜りで、歩く度に靴に跳ねては落ちていく。

これに2人の血も、混じっているのだろうか…?

近くに落ちている靴は、どっちの物だろう…。

あのぶら下がっている手は、誰の手なのか。

銀色に光る小さなプレートを拾う、誰かのドッグタグだ。

エリオットのは、鞄の中に仕舞ってある。

これは誰の物だろう。

チェーンは血みどろだ。


酷い寝不足の時の様に…半ば意識が飛ぶ様に、身体が…足が地面の感触すら感じない。

目だけが何かを探している。

彼の兄の下半身か、藤田の身体か?

何かを。


ヘリの脇に小さな手帳が落ちている。

それを拾い上げ、開くと…純と藤田の母親の写真が挟まっている。

藤田の手帳だ。


右手で握りしめ、上着の内胸ポケットへ大切に入れる。

このまま、感傷に浸ってはいけないと自分を戒め、正気に戻る為頬を叩く。


前を向くと滝中君がヘリの横で待っていた。

ドアを開け、後部座席に滝中を乗せてシートベルトを着ける様に指示する。

彼が斜め下を向いた際、首筋に珍しい並びのほくろがある事に気付いた。

珍しいなと思いながら、どこかで見た気がしなくも無い。滝中君と行動していたからどこかで見たのだろうと、考えを差し置く。


そして彼の安全を確認した後に、自分は操縦席に座る。

エンジンをかけると無線から機械的な女性の声が流れて来た。


『第二基地対象者、無事保護されました。ミッションクリアです。速やかに帰還してください。お疲れ様でした。』


いつも出撃した時に聞く、機械的な女性の声。

戦闘機では無い、ただの医療班用のヘリが自動運転に切り替わる。本来そんな機能は無いはずだ。

しかも、どこへ帰還せよと言うのか。

俺が戻る第二基地から今、脱出したと言うのに…。


設置された機械にマップを立ち上げようとするが、立ち上がらない。

代わりに「この操作は出来ません」とメッセージがでる。

自動操縦に切り変わったとしても、手動に切り替えられるはずだと運転変更の操作するが…手動には切り替えられない。


自動操縦のまま…。

俺が知らない、目的地を目指して、ヘリは飛び続けた。

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