A班 救助用機体5021 カイル隊員4-4
迷っている暇は無かった。
「すまない」
それしか言えず、俺は滝中君を連れて走った。
廊下の向かい側、化け物が死ぬ扉の…挟まれている隙間を必死で抜ける。
蜘蛛がどうのと言っている事態ではない。
扉に挟まったヤツのおかげで、休憩室に回らずにドックへ出られたが、ドックにはまだ生きたヤツらが五匹いる。
そこを何とか掻い潜り、鍵の番号のヘリに乗り込まなければならない。
鍵のヘリが無事だと良いが…。
ドック内に入り、化け物に見つからない様に物陰に隠れる。
化け物は、やはり動きが鈍い。
そんな中、一匹が動きを止めた。
パリパリと音がし始め、化け物の…顔部分に当たる場所が裂けた。
脱皮が始まったのかも知れない。
他のヤツらも同時に脱皮するのだろうか?
一匹の脱皮が始まると、そこに残りの四匹が集まり…そして、あろう事か…脱皮し始めた一匹を喰い始める。
弱肉強食…無防備な奴はそうやって喰われる運命か…。
しかし、これはチャンスだった。
敵を引き付ける役をヤツら自身がしてくれている。
しかも、数を減らしてもくれているのだ。
俺は滝中君が拾った鍵の番号を見る。
ドック内の戦闘機は番号順に止まっている訳ではないが、医療班用のは番号順に止められている。
簡単に探す事が出来るはずだ。
…思った通り容易く見つかり、ヘリの機体も無事だった。
しかし…、脱皮を始めた一匹の側で、尚且つそこには今ヤツらが集中している。
そこに突撃するのは…難しい。
否、寧ろ死を意味する。
パンッ!パンッ!
後方…医務室の方で発砲音が聞こえた。
仲間を貪り喰うヤツらにも聞こえただろうが、少し反応はあったものの、すぐに目の前の獲物を喰うに戻る。
あれよりも大きな音出ないと、興味をそそられないのだろうか。
パンッ!
また、銃声がなる。
これが鳴っている間は、アンドレアは生きている。
ずっと鳴っていて欲しい思いがした。
だが無情にも、四度目の銃声が遠くの方で聞こえた後、二度と鳴らなかった。
俺は震える手で、エリオットの鞄から音の鳴るおもちゃを取り出し、スイッチを入れた後、遠くへ投げた。
医療班用のヘリより遠い…反対側に、変な音を出しながらおもちゃは飛んで行った。
それに気付いた化け物どもが、おもちゃを追いかける。
エリオットのおもちゃを鞄に仕舞った事は、ちゃんと覚えていた。
突撃が難しいとか、自分に言い訳をしていだが…ただ、アンドレアが来るかも知れないと…待ちたかっただけだ。
「滝中君、行こう…」
物陰に隠れながら、ヘリに近付く。
おもちゃは化け物どもに追いかけられながら滑り、我々より先に滑走路から外へ飛び立って行った。
それに続き、化け物どもも外へ追いかけて行く。
「初めから…あれを外に投げていれば…」
それでも、医務室のヤツとは対峙する事にはなる。
悔いてもどうしようもない。
「カイルさん…」
隣に立つ彼を、不安にさせてはいけない。
「脱出しようか…」
壊れたヘリやストレッチャーを避けて、ヘリに向かう。所々に人間の胴体や下半身等、喰い散らかされた跡があったが、目を背けひたすら走った。
ヘリの手前に赤いストレッチャーが二つ、並んで置かれている。それの横を通り過ぎる瞬間、何かが乗っている事に気が付いた。
「あ…お兄…さん…」
ストレッチャーの上には、滝中君の兄の上半身と…
藤田の顔が残されていた。




