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この話のタイトルは君がつけろ  作者: 樋口 涼


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105/200

A班 救助用機体5021 カイル隊員4-4

迷っている暇は無かった。


「すまない」


それしか言えず、俺は滝中君を連れて走った。

廊下の向かい側、化け物が死ぬ扉の…挟まれている隙間を必死で抜ける。

蜘蛛がどうのと言っている事態ではない。


扉に挟まったヤツのおかげで、休憩室に回らずにドックへ出られたが、ドックにはまだ生きたヤツらが五匹いる。

そこを何とか掻い潜り、鍵の番号のヘリに乗り込まなければならない。

鍵のヘリが無事だと良いが…。


ドック内に入り、化け物に見つからない様に物陰に隠れる。

化け物は、やはり動きが鈍い。

そんな中、一匹が動きを止めた。

パリパリと音がし始め、化け物の…顔部分に当たる場所が裂けた。

脱皮が始まったのかも知れない。

他のヤツらも同時に脱皮するのだろうか?


一匹の脱皮が始まると、そこに残りの四匹が集まり…そして、あろう事か…脱皮し始めた一匹を喰い始める。

弱肉強食…無防備な奴はそうやって喰われる運命か…。


しかし、これはチャンスだった。

敵を引き付ける役をヤツら自身がしてくれている。

しかも、数を減らしてもくれているのだ。


俺は滝中君が拾った鍵の番号を見る。

ドック内の戦闘機は番号順に止まっている訳ではないが、医療班用のは番号順に止められている。

簡単に探す事が出来るはずだ。

…思った通り容易く見つかり、ヘリの機体も無事だった。

しかし…、脱皮を始めた一匹の側で、尚且つそこには今ヤツらが集中している。

そこに突撃するのは…難しい。

否、寧ろ死を意味する。


パンッ!パンッ!


後方…医務室の方で発砲音が聞こえた。

仲間を貪り喰うヤツらにも聞こえただろうが、少し反応はあったものの、すぐに目の前の獲物を喰うに戻る。

あれよりも大きな音出ないと、興味をそそられないのだろうか。


パンッ!


また、銃声がなる。

これが鳴っている間は、アンドレアは生きている。

ずっと鳴っていて欲しい思いがした。

だが無情にも、四度目の銃声が遠くの方で聞こえた後、二度と鳴らなかった。


俺は震える手で、エリオットの鞄から音の鳴るおもちゃを取り出し、スイッチを入れた後、遠くへ投げた。

医療班用のヘリより遠い…反対側に、変な音を出しながらおもちゃは飛んで行った。

それに気付いた化け物どもが、おもちゃを追いかける。

エリオットのおもちゃを鞄に仕舞った事は、ちゃんと覚えていた。

突撃が難しいとか、自分に言い訳をしていだが…ただ、アンドレアが来るかも知れないと…待ちたかっただけだ。


「滝中君、行こう…」


物陰に隠れながら、ヘリに近付く。

おもちゃは化け物どもに追いかけられながら滑り、我々より先に滑走路から外へ飛び立って行った。

それに続き、化け物どもも外へ追いかけて行く。


「初めから…あれを外に投げていれば…」


それでも、医務室のヤツとは対峙する事にはなる。

悔いてもどうしようもない。


「カイルさん…」


隣に立つ彼を、不安にさせてはいけない。


「脱出しようか…」


壊れたヘリやストレッチャーを避けて、ヘリに向かう。所々に人間の胴体や下半身等、喰い散らかされた跡があったが、目を背けひたすら走った。


ヘリの手前に赤いストレッチャーが二つ、並んで置かれている。それの横を通り過ぎる瞬間、何かが乗っている事に気が付いた。


「あ…お兄…さん…」


ストレッチャーの上には、滝中君の兄の上半身と…

藤田の顔が残されていた。

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