A班 救助用機体5021 カイル隊員4-3
「どう言う事だ!!」
俺はまたジャンの胸倉を掴もうとした。
が、今回はひらっと手を躱される…先程とは身のこなしが違う。
「いや、言ったら柳隊長に怒られる…だって、お前らは本庄の部下だろ?」
一介の…末端であるはずの隊員が、他の隊とはいえ、隊長を呼び捨てにするなんて事はあり得なかった。
「いやー、でも良かったわー。取り残されてどうしようかと思ってたんだわ。しかも道も塞がるしドックにもあいつら出ちゃってさ」
コイツは…何を言い出した?
「鍵探したいけど、1人じゃ無理だし、誰か来てくれないかなーって。お前らが来てくれて本当、良かったわ」
そう言いつつ、近くに転がる白衣の男の死体に近寄り、胸辺りを弄る。
「鍵も見つかったし…俺は逃げるわ」
手に鍵束を持って、見せびらかす様に振る。
ジャンが弄っていた死体は…医療班班長の遺体だった。
…ヘリの鍵束だ。
「お前らはそいつの相手をするんだな」
真顔になり指差す、が…指差す先には何も居ない。
俺達の視線を奪ったその一瞬で、ジャンは踵を返し走った。
ドックに繋がる出入り口、扉に挟まった化け物の脇の隙間をすり抜け…ドックの中に消えた。
「ちっくしょう!やられた!」
唖然とする俺達3人を残し、全てのヘリの鍵を…持ち去って行った。
「どうする、アンドレア…」
「…本館に行く…か?」
アンドレアも唖然とし、驚きを隠せて居ない。
「本館に機体が…残っている可能性は…」
そこまで言って止まる。
可能性が低い事は分かり切っていたからだ。
しかし…このままだと…逃げられず最後は…。
また、終わるのか?
今度は…今度もやり直しが出来るとは…限らないのに…。
俺は滝中君を見る。
…彼だけでも連れて逃げてくれれば…。
怒りが湧いて来る。憎しみが…。
せめて、彼だけでも…。
ふと、滝中君がしゃがみ班長の死体の手から何かを拾う。
「これ、ヘリの鍵じゃないですか?」
一つの鍵だった。
その鍵を手渡される…。
正真正銘ヘリの鍵だった。
「アンドレア!滝中君が鍵を…見つ…け…」
奥に居るアンドレアに声を掛ける。
…何かを見つけたのか、更に奥の…カーテンの向こうを注意深く見ながら、左手で俺達を静止させ、右手で銃を抜いた。
何も居ないと思っていた先の…カーテンに映る影が見えた。
廊下に居たヤツより少し小ぶりの…キッチンにいた化け物より大きな…サイズ。
「カイル…彼を連れて逃げろ」
カーテンが揺らめいた。
ベッドの上は血が広がっているのが分かる。
それくらい赤くハッキリと染まっていた。
その上には…白くなった何かとそれを纏う化け物。
「脱皮…か…」
ゆっくりと少しずつ、古くなった殻から脚を抜いて、胴体は艶やかな黒を纏う。
アンドレアも俺も滝中君も…、動く事なく静まり返った部屋で、キキキキと何か擦れる音が微かに聞こえた。
ぎっぎっ
ベッドが軋む。
白い殻の上に、出てきた本体。
その姿はさながら、2匹の黒と白の蜘蛛が戯れている様にも見える。
「カイル…逃げてくれ」
アンドレアの声がする。
「俺が足止めしている間に」




