A班 救助用機体5021 カイル隊員4-2
挟まった化け物の…脇を通る時は、死んでいるとはいえ、鼓動が速くなり、気を失いそうになった。
馬鹿でかい…蜘蛛。
そうしか見えないのだから。
いつ、動くか。
本当は死んで居ないんじゃないかと、不安に思う俺に代わって、察したアンドレアが先に確かめてくれる。
器用に化け物の体液を避けながら、近付き動くかどうか…生死を確認し、大丈夫だと合図を送ってくる。
「よし、行こう」
足を止めていた俺達は、アンドレアからの合図で医務室の前まで進む。
折れ曲がった黒い脚の感じが…それが胴体から生えて居るのが…気持ち悪い。
出来れば…触れたくない。
伸び切った脚にも、触れない様に壁伝いに歩く。
ひょいっと化け物の脚を跨ぐ滝中君を見て、結構肝の据わった子だと感心した。
ヤツの下には人間が何人か押しつぶされて、血が流れて居ると言うのに、それにも物怖じしない。
医務室の前に着くと、扉は破壊され廊下と部屋の内側に飛んでいた。
医務室を入って直ぐに、診察や手当をする場所がある。
いつもなら清潔感と整頓された空間だが、医師用の机や椅子がひっくり返っていた。
その奥にカーテンが見え、開けると入院者達が眠るベッドだ。
床には…道具が踏まれて折れたり、ガラスが散らばっていた。
そして、医師と思わしき白衣を来た人間と、患者である隊員がそこかしこに倒れていた。
全て、死んでいる。
これをあの化け物は拾い上げ、遺体の一部だけを喰い捨てていたのだ。
その行動に意味があるのかは分からないが、酷く人間を侮辱していると思う。
「これを、齧って投げてたのか…」
後ろから呑気な声がする。
俺は思わず睨みつけた。
「睨むなよ…ちょっと毒味みたいだと思っ…」
「口を慎め」
ジャンの胸倉を掴む。
「わかったよ…」
ジャンが怯むのを見て、離そうとした拍子に前のアンドレアが立ち止まる。
「そうか…毒味…」
アンドレアの言葉に訝しげな顔を向ける。
「カイル…あれは毒味かも知れない。子供の為の…いや、孫の為…かも」
「…キッチンで見たのは幼体でなく、成体だと?」
「あぁ…、食堂のドアに居た無数の…親指サイズのヤツらが幼体で、あれを産んだ…あいつらがもう成体なんだ…」
手の力が抜け、ジャンの胸倉から手を離した。
首が締まって居たのか、ジャンが軽く咳をしている。
「ゲホッ…あー、しんどかった。首が締まっただろうが。ま、…何だ、2人ともあれを見たのか」
首あたりを摩りながらジャンが言う。
「エグかっただろ?あいつら…人の中で交尾して産むんだよな…卵」
「お前も見たのか?」
「見たって言うか…」
次の瞬間、薄ら笑いを浮かべながら軽い口調で…。
「俺らがそう教えたって言うか…な」
と言い捨てた。




