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動物の死の描写と残酷な描写があります。
苦手な方はご注意ください。
俺は気が立っていた。
長い長い戦争の、戦いの繰り返しで嫌気がさしていた。
昨日も一昨日もそのまた前も、俺は戦闘機に乗る。
乗ったら街を破壊し、「アレ」を撃ち殺し、人々を巻き添えに成果を上げる。
何度も何度もだ。
帰ってドックへ行けばまた新しい武器が追加され、より正確でより強力な武器が装備される。
俺に休みはなかった。
今日も3度目の出撃で、辟易しながら操縦席に座る。
「出撃の準備をしてください。」
「出撃準備完了。」
機械的な女の音声が流れ、機体は発射された。
「11エリア、殲滅まで後16体…残り15分。」
女の音声が流れ、ガッガッと電波が悪い事を知らせつつ無線の音が入った。
「…アン…ド…。聞こえるか?…ア…。」
「やぁ、シム。聞こえてるさ。気分はどうだ何て分かり切った事は聞くなよ?」
俺は少し陽気に聞こえるように声を出した。虚勢だ。
「あと…15分ら…しい…行け…うか?…。」
「そうだな、周辺には家しか見えないが…、中に隠れているかもな」
「…ガッガ…。」
「シム?」
「…電波が…悪い…な…ガッガガ…OK…そっちは…任せ…た。」
「了解」
「…無線…通じ無…かも…し…し…。また…ドックで…会おう。」
ブツッと音をてて無線は切れた。
「あいつめ。フラグ立てて無いだろうな…」
俺は旋回しそこそこに家が密集しているポイントへ来た。
装備された爆弾を落とす。
ど派手な音と爆炎、そして風圧がきた。
機体は何の影響もなく飛び、大きく旋回する。
仕留めそこなった奴を機関銃で打つ為、指示を変える。
もう一度爆撃した場所へ戻り、高度を下げた。
犬がヒョコヒョコと歩いていた。
「犬…?」
爆撃に巻き込んでしまったのかもしれない。横腹から赤い糸の様な物が出ていた。
「俺が…悪いんじゃない」
俺は動物が好きだった。特に犬が。
なのに、巻き込んでしまった。
「俺は…悪くないんだ」
そう呟きながら、俺は銃口を犬の向こう側に向けた。
「俺は…悪くない」
犬の先に子供がいた。
犬はもう助からない気がする。ならば、一緒に楽にしてやった方がいいのではないか。そんな独りよがりの考えが頭の中に浮かんだ。
子供の元へ犬が辿り着いた時、俺は引き金を引いた。
「俺は良い事をするんだ。寂しく無いように二人で…逝け」
トタタタタタタッン!!!
機関銃の振動と射撃の音、そして着弾の音にかき消されながらも、小さく犬の鳴き声が聞こえた気がした。
射撃するほんの3秒前、抱っこを嫌がる様に暴れ、犬と子供が離れた。俺にはそれがまるで、犬が子供を身を挺してかばったかの様に見えた。
子供が犬に再度近付いた時、引き金に力を込めた。
「任務完了です。速やかに帰還してください。」
女の声がした。
「お疲れさまでした。」
戦闘機は自動帰還モードへ入り、旋回を始める。
操縦桿から手を離した俺は、破壊された街並みを見下ろしながらさっきの場所を探した。
「俺は悪くない」




