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 眩い光と共に、軍本部の入り口に無事到着………おっと!?


「すまん、少し、肩を貸してくれ………」

「ヒュー、やっぱり無理してたんじゃないか!気分悪いなら横に」

「いや、大丈夫、だ。とてつもなく集中力がいるから、精神と脳にくるだけで………」

「そんな大変なんだ、あれ。」

「両手で同時に左右別の文章書きながら、そこに属性の違う魔力を、部分ごとに少しずつ、かつ大量に、注ぐ、かんじ………」

「なんという無理ゲーを。お疲れ様、ゆっくり休んで。」

「………」


 寝た!?………どうしよ、これ。


「ヒューバート様っ!?どうなさいましたの!?」

「あ、なんか寝ちゃったみたいで………ってジュリアさん握力強いな!?落ち着いてください多分大丈夫です!!」


 緊張が緩んだせいか力加減がバグったジュリアさんを、侯爵様が宥めて引き剥がしてくれた。ご令嬢のあまりの勢いに恐怖を感じたのは内緒の話である。


「あなたがジュリア嬢ね。もう大丈夫よ、よく頑張ったわね。

 ヒューバートは転移の連発で疲れただけだから、睡眠取れば治るわ。」

「僕、この寝顔久々に見た気がします………」


 転移の光を見て、ローレンさんとイアンが出迎えにきてくれた。その後ろにはレイラさんもいる。ただいま帰りましたー。


「お帰りなさい、突然だったのによくやってくれたわ。本当にありがとう、お疲れ様。」

「副室長は僕が休ませてきます。ユルギスさん、ですよね。すみませんが、運ぶの手伝ってもらえませんか?」

「イアン、その子見た目より軽いから多分あなた一人で運べるわよ。私でも魔法無しで担げるもの。」

「え?………わ、ほんとだ。」


 ヒューは自分より小柄なイアンに、何故かお姫様抱っこで運ばれていった。俺が担いだ方がましだったかな、絵面的に。


 投げたり担いだりした時にわかったが、ヒューは見た目よりかなり軽い。体重は多分俺よりファウストに近いくらいだ。普段の装備だと金属のワイヤーを仕込んでいる分、ファウストの方が重いかもしれない。

 俺は見た目より重い方だから同じくらいとまでは言わないけど、ヒューはもう少し体重増やすべきだと思う。身長俺より高いんだし。


 ヒューの姿が見えなくなると、ジュリアさんが今度は腕を広げてレイラさんに駆け寄る。あ、抱きついた。

 ………さっきから基本走って移動してるんだよな、このお嬢様。元気過ぎない?


「レイラ、無事ですか!?呪具は外れたようですわね、良かったですわ!」

「ジュリアちゃん、無事で良かった!………相変わらず何言うてるかわからへんけど。

 先に来た子らは中で診察受けてるで、ジュリアちゃんも早よ診てもらい。」


 ………!?


「………あれ?うちの言葉は通じるんよな、ローレンさん。返事してもらわれへんのやけど。」

「大丈夫、通じてるわよ~。」


 レイラさん、まさかの関西弁。金髪碧眼の欧州系美少女なのに。ジュリアさんと侯爵様も固まっちゃってるよ。

 そういえば、ペンダントだと方言ってどう翻訳されてるんだろう。訛って聞こえてたりするのかな。


 あ、こっち見た。


「なあなあ、自分日本人て言うてたよな?うちは國本(くにもと)レイラ。ジュリアちゃん達のこと伝えんのに必死で、自己紹介すんのすっかり忘れとったわ。

 さっきは久々に言葉通じてほんま安心した、通訳してくれておおきにありがとうな。」

「こちらこそ、國本さんのおかげでジュリアさん達を助けられました。俺は刀伎結斗です。体調はどうですか?」

「あの気持ち悪い首輪外してもろたし、何とか………うちも敬語の方がええですか?」

「え?いや、そんなことは。じゃあ、普通に喋っていい?」

「そうして。うち外見詐欺なだけでただの高校生やし。」


 外見詐欺って自分で言うか。確かにちょっとびっくりしたけども。


「英語圏の人だと思って話しかけたから、日本語で返されて驚いたよ。」

「よう言われる~。しかも関西弁やしな、ダブルで驚きやろ。

 うちのおかん、帰化してるけどイギリス出身やねん。せやからうちも英語は一通り話せるで。産まれも育ちも日本やけどな。」


 へー、バイリンガルってやつか。


「ここの言葉はラテン語っぽいのが由来みたいでな、英語やと雰囲気でたま~に通じるんよ。人の名前とかは地球とほぼ同じやし。あとは身ぶり手振りと、ジュリアちゃんが魔法で空中に絵とか映してくれたからそれで何とかやり取りしてた。」


 ここの言葉が英語っぽいとは思ってたけど、気のせいじゃなかったんだな。言われてみれば確かに、人の名前は俺の世界でも聞いたことがあるものがほとんどだ。


 足音が聞こえて振り返ると、ローレンさんから翻訳ペンダントを受け取ったらしいジュリアさんがワクワクした様子でこちらに走り寄ってきていた。

 ………いやだから何で走るの?あなた貴族のご令嬢でしょ?しかも誘拐されてたんでしょ?何でそんなに元気なの??


「本当にこれだけでよろしいのですか?レイラ、私の言葉がわかります?」

「ふわぁ、見た目はうちやのに喋りがお上品や!うん、ちゃんとわかるで!

 ジュリアちゃん、あの後大丈夫やった?怪我とかあらへん?助け呼ぶの時間かかってごめんな。」

「私は平気ですわ。レイラの方こそ、顔色が悪いですわよ。休んでいなくては。」


 ………この二人、全然見分けつかないな。今は服装と口調で判別できるけど、服を替えて黙られたら絶対わからない。


「お嬢さん達、とりあえず医務室行ってきなさいな。侯爵も、部下の方々とこちらへ。ユウト君あなたもよ。」

「ヒューに腕は診てもらったから大丈夫」

「とは言わせないわよ、服焦げてるじゃない。ほら、さっさと行く!」


 ええー。





「体力は問題ありませんか?治癒魔法をかけますよ。」

「はい、お願いします。」

「な………トキ君、その足はどうした!?」


 同じ部屋で診察を受けていた侯爵が、驚いた表情でこちらに駆け寄ってきた。そっちの治療は終わったんですか?


「ひどい火傷じゃないか!………ジュリアや子ども達の目に入らないようにしてくれていたのだな。気遣いに感謝する。」

「あ、いえ、そういうんじゃないです。どうも俺は普通の人より痛みを感じづらいみたいで。

 なんかぴりぴりするなーとは思ってましたけど、想像よりひどかったですね。」

「その程度の感想で済む怪我ではないが………?」


 ズボンの裾をめくってみると、足首の皮膚が思ったよりただれていた。腕と同じく、ブレスの熱風で少し焼けていたらしい。

 自分のこういう火傷とか水ぶくれを見るとすぐに皮をめくりたくなっちゃうんだけど、周りの人はいまいち共感してくれないんだよな。傷に良くないのはわかってるんだけど、きれいに取れたら気持ちよくない?


 見た目は確かに痛そうだが、火傷自体は魔法ですぐに治してもらえる程度だった。ドラゴンの魔力によってついた痣は治癒魔法では消えないらしいので、自然治癒待ちだ。

 それでも出血とかはすぐに止められるんだから、便利だよなぁ治癒魔法。俺の世界でも使えたらいいのに。


 そういえば、俺は今日もヒューにこの世界の服を借りていたのだが、その服はヒューが暇潰しと研究をかねて防御魔法を施していた服だったらしい。焦げた程度で済んだのはそのおかげだそうだ。

 あれ、もしかしてそれがなかったら服燃えちゃって、全裸で帰還する羽目になってた?………考えないでおこう。結果オーライだ。


「侯爵様達は大丈夫なんですか?生き埋めがどうとか聞いたんですけど。」

「………恥ずかしながら、ジュリアが賊に仕掛けた罠にはまったのだよ。

 あそこは入り口が複数ある洞窟で、自分達以外の誰かが入ってきたら罠で足止めして、その入り口を魔法で崩して他から脱出することにしていたらしい。

 私達がジュリアに声をかける前に崩されてしまって、埋まりかけた。何とか脱出できたが。」

「うわぁ、よくご無事で………」


 侯爵様とそんな会話をしていると、先程まで俺の足を診てくれていた医務室の職員さんがこちらに戻ってきた。


「侯爵、ことの次第を確認したいそうなので、部屋を移動していただけますでしょうか。お嬢様も診察を終えてそちらにいらっしゃいます。」

「すぐに向かう。

 トキ君、この度は本当にありがとう。ウィリアムズ副室長が目を覚ましたら、改めて礼をさせてほしいと伝えてくれ。」


 ………侯爵様、ヒューを危険人物扱いしてる人だと思ってたからはじめの印象は良くなかったけど、やっぱり悪い人ではないよな。





 治療が終わって改めて案内された部屋でのんびりお茶を頂いていると、イアンがそろそろと入ってきた。


「あのぅ、ユウトさん、ちょっといいですか。」

「はい?何でしょう、イアン………さん?」


 あれ?さっきは俺のことユルギスって………


「………誰も、いないよね。すみません、さっき室長から事情を聞きました。僕のこと、前からご存知なんですよね?」

「!」


 事情っていうと、俺達が入れ替わってた事だよな。


「えーと………何をどこまで聞いてますか?」

「暴発事故の後、最初にここに来た時の副室長は魂が入れ替わったあなただったと。もう一人いるんですよね?討伐の時に隊長をしてくれた、いつも敬語の人が。」

「はい、いますね。」

「僕は一応副室長の護衛役で、室長にあなた方のフォローも頼まれました。僕はしたっぱでわりと自由に動けますから、室長と違って大抵の所について行けます。」


 ローレンさんは忙しいからな。イアンを信用して話したんだろうけど………そっか、研究室でいつも側にいてくれたのは、助手であると同時に護衛役でもあったからなのか。護衛、かぁ………


「す、すみません!嫌ですよね、ずっと護衛いるの!

 でも、あの、悪い印象を持つのは仕方ないと思うんですけど、本当に副室長を守ろうと護衛している人達もちゃんといるんですよ。残念ながら、監視のつもりでいる人の方が多いですけど………」


 イアンが慌てたようにパタパタと手を動かしながら、護衛へのフォローを入れ始める。

 そんな露骨に嫌そうな顔してたのか、俺。気を使わせてごめんなさい。


 最近ヒューにはよく思考読まれるけどそれは付き合い長くなってきたからだと思うし、ハロルドさんとかローレンさんにバレるのはもう仕方ないと思うんだよ。あの二人に隠し事とか無理。

 でも、まだそこまで親しくなれてないイアンにまで思考読まれるとなると………本格的にポーカーフェイスの練習した方が良いかな………


「僕は室長に、研究室での護衛役を頼まれてたんです。今まで副室長には隠してましたが………目を覚まされたら、ちゃんと伝えるつもりです。」


 イアンが怒られる直前の子犬のようにしゅんと項垂れているが、ヒューは別に怒ったりはしないと思う。


 俺がヒューとしてここで仕事をしていた時、助けてくれたのはイアンだった。護衛としてそばにいたんだとしても、ヒューを監視するべき危険人物として見てはいないように感じた。

 ローレンさんも信用してるわけだし、イアンなら俺も安心できる、かな。


「えーと、じゃあ………あの時みたいに喋ってもいい?暴発事故の後から、討伐隊のメンバーに初めて会った日までは俺だったんだ。中庭で前衛隊の不良を一時間くらい転がしたよね。」

「わぁ………その話し方、本当にあの時の副室長だ。」

「ヒューの味方でいてくれてありがとう。良ければヒューの友達になってあげてほしい。ほんと、悪いやつじゃないから。」

「知ってます、僕もできればもっと親しくなりたい、です。

 研究室では基本そばにいたんですけど、僕のことなんて眼中にないみたいで………」


 可哀想に。でも、研究中のヒューは意識がそちらに一極集中してしまうタイプらしいから、ここでいくら一緒にいても多分親しくはなれないよ。


「あの、もう少し、頑張ってみますね。」

「ありがとう、俺も協力するよ。

 ………そうだ、俺ヒューよりちょっと年下なんだ。多分イアンと同い年くらいだし、お互い楽に話したいんだけど。いい?」

「お互い………僕も楽にってこと、ですか?うーん………その、いいけど、変じゃない?僕、普通に喋るとテンポが遅いとか気弱そうとか、面倒くさいって言われるんだけど………」


 うーん、成程。確かに、敬語でなくなると少しおどおどして見えるかもしれない。楽に話してほしいって言ったのに、むしろ余計に緊張しているようにすら見える。こんな人、学校にも何人かいた。


「公の場とかでもない限り、必要な連絡さえちゃんとできてれば問題ないんじゃない?俺は気にならないよ。」

「ほんと?………良かった。」


 何だか一気に幼い印象になったな。今まではこう、新入生とかが頑張って大人っぽくしようとしてる感じだった。無理してたんだな。


「あの、ね、僕の他にも、討伐の魔導隊メンバーには護衛役がいたんだ。討伐隊員は皆記憶障害のこと知ってるし、改めて副室長達の本当の事情を話して、協力してもらおうかなって室長が言ってた。明日以降のどこかで顔合わせに呼ばれると思う。予定とか、大丈夫?何かあるなら、僕から室長に伝えるよ。」

「予定は、日付がまだわからないけど国王様に呼ばれることになってるくらいだよ。その時はヒューとローレンさんも呼ばれるはず。」

「こ、国王陛下に………?でも副室長と一緒の予定なら、僕にも連絡がくるね。覚えとく。」


 コンコンコン


「ユウト君私よ、ローレン。もう日が沈むんだけど、ヒューバートが起きないから馬車で送るわ。あなたも一緒に乗って行きなさい。

 怪我がひどいなら、魔法で運びましょうか?」

「大丈夫です、ありがとうございます。イアン、またね。」

「うん。怪我、お大事にね。」


 なんか、イアンからは癒しキャラの波動を感じる。お大事にって言ってもらっただけで治りそう。もう治ってるけど。


 ………今日はすごく濃い一日だったな。シキとファウストに話すの大変そうだ。

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