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 今日も今日とて世界の狭間にやってきたが、なんだか人数が多い。シキとファウストの他に、男性と女性が一人ずつ。


「ヒュー!ユウト!もうそんな時間なんですか?」

「そんな時間って何。その人達は?」

「えと、世界が衝突して消えそう、なんて口で言っても信じてもらえそうになかったので、直接見てもらうために連れてきました。カルノスさんの部下の人と、大臣って人から命令受けた調査の人?です。」


 じゃあ、ファウスト達は身体ごと来てるんだな。

 ファウストはともかく、あとの二人はここに留まっていて大丈夫なのだろうか。


「本当に、同じ顔立ちの方が………しかもお二人………。」

「お、君達おっさんのこと覚えてる?ちょびっとだけ会ってるんだけど。喋ってないし一瞬だったし、さすがに覚えてないかねぇ。」


 え、会ったっけ?俺はカルノスさんとメランさんとダミアさんしか覚えてないよ。


「二人が来たってことは、そっちはもう夜中ってことですよね。」

「うん………悪いけど、そろそろ帰ってくれないかなぁ。この魔導具を他人に、しかも複数人に発動させ続けるなんてかなり神経使うんだからねぇ?」


 シキが珍しく疲れた声をしている。

 よく見ると、証人(仮)の二人の周りにうっすら膜のようなものが見える。どうやらあの膜はシキが作り出しているものらしい。


「ファウスト君、仮面の兄ちゃんもこう言ってるし、十分話は聞かせてもらったからもう帰るわ。おっさん高いトコ苦手だから、早く地面に足つけたいのよね。」


 男性の方は、見た目だけならその辺にいるおじさんって感じの人だ。中途半端にぼさっと伸びた黒髪や作業着のような服装は少しだらしなく、話し方もゆるっとしている。

 確かに足はつかないが、ここに高いとか低いという概念はあるのだろうか。


「説明はしていただきましたし、ここの映像や音声も記録したので、情報も証拠も十分でしょう。シキ様、ご協力に感謝申し上げます。」


 こちらはキリッとした、眼鏡が良く似合う赤毛の女性だ。生真面目なキャリアウーマンというような感じで、かっちりとしたスーツっぽい服を着ている。

 ………女性のああいうピシッとしたお団子みたいな髪型、どうやってまとめてあるのかずっと謎なんだよなぁ。


 ものすごく対照的というか、共通点を上げろと言われても何一つ思いつかない二人だ。まさに正反対って感じ。


「俺も一旦帰りますね、この結晶を言ってた所においてきます。ちょっとここで時間潰しててもらえますか?ズレちゃってると思うので。

 シキ、俺達どれくらいここにいました?」

「ちょっと待ってねぇ………うん、大体六時間になるかなぁ。」


 六時間!?


「全然ちょっとじゃないじゃん!!」

「前に俺をシキと二人きりでおいてったじゃないですか、その仕返しだとでも思ってください。

 俺はもっとずっと長かったですしシキと二人きりだったんですよ、六時間くらい大したことないです。ね?」


 ファウストはいたずらっぽく笑って、二人を連れて自分の世界に消えて行った。

 出会った頃よりだいぶ表情が豊かになったよな。あんな顔初めて見たよ。


「私と二人きりってそんなに嫌なことなの………?別にいいけど。いいけど!!」


 どうどう。もうシキのテンションにも慣れてきたから、俺は二人きりでも大丈夫だよ。多分ね。


「はぁ………んじゃ、どうしよっか。話はファウスト君が戻ってからにする?ユウト君は世界の観測でも練習してれば、時間潰せるんじゃない?」

「そうしようかな。あ、このままだと日本の時間だけ更に六時間進んじゃう?三十分くらいならずれても勝手にすぐ揃うって言ってたけど、十二時間ずれたらさすがに戻るの時間かかるよね。」

「俺が日本に一度行って、またすぐ戻ってきたらいいんじゃないか?そうすれば日本の時間も止まるだろう。」


 ………頭こんがらがってきた。任せていい?





「お待たせしましたー。音声は予備も含めて全部記録できてなかったらしくて、テミスさんが文書にまとめることになったそうです。シキに伝えといてって言われました。」

「ほぇ?………あぁそっか、ここでは声で話してるわけじゃないもんねぇ。録音は無理なのかぁ、初めて知った。

 待ってる間にユウト君も無事世界の覗き見出来るようになったよぉ、おめでとー!」


 覗き見って言うな。犯罪臭増すだろ。

 でもこれでやっと、俺も一人で世界を行き来できる。今までは誰かの介助が必要だった。


「やれることはやったので、あとはテメノスの中に住んでる人達の説得ですね。そっちはメランさん達と日本村の人達が頑張ってます。

 ユウトがヒューの世界に行ったって聞いたんですけど、何かあったんですか?俺も手伝いましょうか。」

「何かっていうか、暇だからついて行っただけというか………」

「説明を手伝うという名目で、俺に付き添ってくれているんだ。俺にいつも護衛がついていることはファウストも知っているな。」

「はい、それがどうかしました?」


 ヒューがファウストへ経緯を説明し始めた。暇だからついて行ったのもほんとなのに。


「ユウト君、今ちょっといーい?」


 シキ?あ、そうだシキに聞きたいことがあったんだ。


「俺も聞きたいことあるんだけど。」

「ヒューバート君の世界がちょっと危ないかもってことについて聞きたいなら、私が話したいのもそのこと~。」


 そう、それ聞きたかった。何がどう危ないの?


「正確には主にヒューバート君の国が危ないかもだね。あの辺りは元々他より魔法を使う生物多いんだけど、今まで魔力の影響受けてなかった生き物も徐々におかしくなってるみたいなんだよぅ。詳しいことはここからじゃわからないけど。

 君達が魔結晶おいてくれた所の西に山岳地帯があるんだけどさ、そこをここから見てみて。さぁ、特訓の成果を見せてもらおうか!」


 何だ、その謎テンション。また何かアニメ見てたのかな。


 えーっと、空間の穴があそこだから、その西にある山岳地帯っていうとこの辺か?


「影しか見えないけど、なんかでかいのがいる………シキ、あれのこと?」

「そう、あれはドラゴンだよ。前までは大人しかったし、あんなに堂々と姿見せなかったんだ。けど、最近頭振ったり謎の足踏みしたり何もいない空にブレス撃ったり、とにかく挙動不審なんだよねぇ。他にも結構そういうのいるから、それが危ないかもって言ったの。君達がいる街に一番近くて脅威になりそうなのがあの子。」

「………俺達がいる街って王都なんだけど。」


 何でよりによって国の中枢近くに。


「あらま………まぁでも、一番近いってだけで距離はそこそこあるから、だいじょーぶ!」

「本当に?適当言ってない?」

「もうちょっと信用してくれてもよくない?おふざけは確かに大好きだけど、シキさん最近はわりと真面目に頑張ってるよ?

 とにかく、他の危なそうなのも一通り教えとくから、警戒しといてほしいの。魔結晶がちゃんと働けば、しばらくしたら世界全体の魔力は少し落ち着くはず。でもすぐに効果出るわけじゃないから、それまでは耐えてもらうしかないんだよねぇ。」


 そう言って、シキはいくつかの地点とそこの頂点にいる生物を指し示しながら教えてくれた。

 テルミニシア、というかヒューの世界には各地を統べるボス的な魔物がいて、基本的に彼らは知能が高くそこそこ温厚らしい。それが最近は妙に苛立って見える。魔力異常の影響だろうから気をつけてほしい、とのこと。


 それと、今の話を聞くに結晶の効果は一応世界全体に及ぶみたいだ。気軽にぽんと渡されたけど、結構すごい物だったんだな。シキはそんなのを三つも何処から持ってきたんだろう。


「シキ、あともう一つ質問。あの結晶の周りは魔力集まって乱れるんだよね?それ、どれくらいの範囲かわかる?」

「んー、それは世界によるから、はっきりはわかんない。魔力とか魔法の伝導率は世界によって違うんだよぉ。」


 成程、俺の世界では魔法使いづらい的なあれか。


「ヒューバート君のトコは私の世界に近いみたいだから………そうだなぁ、今君達がいる王都くらいの範囲かな。」

「結構広いね。日本なら?」

「んん、ユウト君の家三つ分くらいじゃない?多分だけど。」


 へー、世界によってそんなに差があるんだ。





「何で教えてくれなかったんですかぁ、俺の世界に逃げてても良かったのに。なんなら俺が護衛なんか倒してやりますよ………。」


 話を一通り聞いたらしいファウストが、ヒューに抱きついてその肩にぐりぐりと顔を埋めている。ファウスト、護衛って言葉の意味わかってるか?危険から守ってくれる人なんだよ、一応。


 あと、ヒューの中ではもう「俺はヒューを気遣ってついてきただけ」ということで確定したらしい。ステラとかローレンさんに会いたかったっていうのも本当なんだってば。


「いや、倒したら駄目だぞ。

 ………お前達に言っても仕方ないし、同じ魔力量の人間がその魔力量のせいで腫れ物扱いだと聞いたら気分を害するかと思ったんだが。」

「そんなことより相談してくれない方が嫌です。」


 俺は、ヒューの言い分わかるけどね。どうにもならないことを相談しても相手を複雑な気分にさせるだけ、だったら言わなくていいかなって思ったりする。ヒューもそういう気の使い方をするタイプだと思ったから、俺は魔力量と関係ない方の理由を言ってついてきたんだ。


 とはいえ、相談してほしいというファウストの気持ちもわかる。話すだけでも心は楽になるってよく言うし、もしヒューに相談相手として選んでもらえたのなら俺は嬉しい。


 信用とか気遣いとか、バランス難しいよね。


「俺もそっちに行きたいです………」

「ファウスト君には、テメノスが出力上げないって確認できるまではそこにいて欲しいんだけど………」

「わかってますよ、世界が消えちゃったら大変ですから。でも確認できたらすぐ行きますからね!二人だけ一緒でずるいです!俺だってもっと二人と一緒にいたいのに!!」


 ファウストは何度か地団駄を踏むような動きをして………すぐに止まった。そうだね、エア地団駄になっちゃうからね、ここだと。


 なんとなくだけど、少し前からファウストの精神年齢ちょっと下がってきてない?前なら絶対そんなこと言いそうになかったのに。


「………話を聞く限り、ファウスト君って今まで生きるだけでも大変で、唯一の家族だったお姉さんにもあんまり甘えられなかったみたいだからねぇ。

 当面の衣食住はあそこの政府が保証するって聞いたし、ユウト君とヒューバート君はお兄ちゃんみたいなものだから、気が抜けてこんな感じになっちゃうんでしょ。いいじゃない、かわいくて。」


 ファウストの髪をもふもふと撫でながらシキが俺に向かってそう言う。また思考が漏れていたらしい。

 そういえば、お姉さんは足が悪かったとか言ってたしな。頼れないことも多かったのかも。


「あ………えと、こんなんじゃ、駄目、ですよね………しっかりしないと………」


 あぁ、なんかしょんぼりしちゃった。


「いいよ、そのままで!大事に思ってる相手に甘えてもらえるのは嬉しいことだから!!」

「兄上とカズマが、弟とか弟分というだけでかわいいと言っていた意味がわかってしまった気がする………」

「弟、ですか………ヒューお兄ちゃんって呼びます?」

「くぅ………それはやめてくれ、寿命が縮む。」

「カリンさんの真似してみただけなんですけど。」


 俺の隣ではシキがお兄ちゃん呼びの流れ弾をくらって悶えている。わかるよ、俺もかわいいと思っちゃったもん。自分と同じ顔なのに。


「………さてと、今日は皆かなり長くここにいたよね。そろそろ帰って休んで。あ、ヒューバート君にも話しておこうかな。」

「ん?何をだ?」

「とりあえず、はいこれ。前にも使ったよね?」

「いや、初めて見るが。」


 パッと見は30㎝くらいの魔法の杖だ。俺も見たことない。


「前に使ったのは俺ですよ。シキと二人で訓練してた時に貸してくれたやつですよね?」

「あぁ、そうだったっけ。これ持ってれば、魔力を消費する代わりに魂が拡散するのを防いで、魂へのダメージも減らせるんだよぅ。はい、ぽちっとな。ちょっと魔力流して~?」

「む、こうか?」


 杖を手にしたヒューを、うっすらとした膜が覆う。

 さっきファウストが連れて来ていた二人は、シキがこの道具を使って守っていたようだ。


「じゃあ、二人はまた明日ねぇ。ヒューバート君、ちょっと見てほしいのがあってさ。」

「何だ?あの計測装置になら、先程からかなり興味をそそられているんだが。」

「あ、見たい?いいよ、こっちおいで。」


 最近、シキとヒューも結構仲良いんだよな。魔力に関する専門的な話で盛り上がっているのをよく見る。


 さてと、起きたらハロルドさん達にまた話をしないと。俺にちゃんと説明出来るかなぁ。

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