24.5 魔物討伐 in 魔の森
「第十四小隊、揃ったな。」
「はい!」
「アールシュ、罠もう仕掛け終わってます。今日は引っかからないでくださいね。」
「………位置は覚えた、問題ない。
予定時間までに連絡を済ませるぞ、ヒュー。」
「えと、じゃあ大隊長から来た情報を伝えます。
俺達の担当区域は、引き続き爬虫類系の群れが多いようです。それと、他の区域から毒持ちの蜘蛛がたくさん追いやられてきているそうなので、気をつけてください。解毒薬が配られてます。以上、です。」
「うえぇ~、蜘蛛かぁ。地属性の効きが悪いんだよね。動きがキモいし。」
「一応益虫なんだぜ、アディラ。
ま、虫は大抵よく燃えるから俺の出番だな。」
「他の区域の魔導士が炎の広範囲殲滅魔法を適当に使った結果、討ち漏らしがこちらに来ているそうだ。お前の魔法も同系統だから討ち漏らしが出やすいのではないか。」
「俺は研究者なんでね、頭使って囲い込むのは得意だ。逃がしゃしねぇよ、前衛隊長殿。延焼はマークが止めてくれるだろ?」
「ああ。」
「よぅし、遠慮なくやれるぜ。」
「………グレンの装備と台詞の言い回し、完全に前衛なんだよなぁ。その剣必要か?」
「こいつぁ俺の魔術媒体だからな、役割は杖だよ。昔は魔法剣士だったっつったろ。」
「現役剣士って言われても違和感ないですよね。」
「いや、本当に無理だぞ?物理攻撃は頼むぜ前衛組。」
「任せとけ、あんたらにはいくら反省の意を示しても足りないくらいだしな。何がなんでも魔導隊は守り抜くぞ、お前ら!」
「押忍!」
「お前が仕切るなモルガン、前衛隊長は俺だ。」
「………皆、仲良くなりましたね。良いことですよね、アールシュ。」
「初日にお前があいつらをこてんぱんにしたからだが?」
「それ俺じゃな………えと、覚えてないんで。」
「………記憶障害があってその強さ、万全だったらと思うと恐ろしいな。一応聞くが、傷の具合は?」
「もう大丈夫ですってば。俺隊長ですから、自分からはあまり動かないですし。」
「ヒュー隊長に近づいた魔物は一瞬でバラバラになるけどねー。」
「バラバラにするほどは攻撃してないですよ?」
「なぁ、魔導士なのにナイフで直に斬りつけてる点はもう誰もツッコまないのか………?」
ドーン………ドーン………
「合図だ。気を引き締めろ、行くぞ。」
「はいっ!」
「十時にリザード三体!マーク!」
「わかった。ブライアン、五秒。」
「了解、はあぁっ!」
「………三、二、一、『氷矢』!」
ガガガガガッ
「撃破確認!次ッ!」
「………あの二人、よくあんなやり取りでお互いの動きわかるよね~。仲良しだなぁ。」
「アディラの姉貴~、こっちも来てますよ!援護お願いします!」
「よ~し、任せて!デックに『大地の守り』!ついでに剣も強化っと!」
「ありがとうございます!っしゃあ、俺が相手だ!」
スパンッ ドシャァ………
「………何で、両断?鱗と骨が存在意義失ってんだけど?」
「あっはは、ごめん切れ味上げすぎたぁ?」
「姉貴、マジぱねぇ………」
「ほい、完成したぞ。反動気ぃつけろ、アンドレアス。」
「伊達に普段から大盾振り回してねぇよ。この陣を相手に当てたらドカン、だろ?」
「おう、昨日の練習と同じだ。
狙うはあそこ、真ん中のあいつな。蜘蛛相手なら、火はよく効くはずだ。」
「わかった。
行くぞ………ぉぉおおおおおおっ!!」
ドッカアァァァァァン………
「よぅし!延焼も無し、大成功だ!かなり減らせただろ!」
「うはー!こりゃ爽快だな!」
「びっくりしたぁ………もはや盾としての運用じゃないですよね、あんなの爆弾ですよね。
アンドレアスさん、魔物が弱くて暇だからって何してるんですか………?」
「すっげぇ!今の超ド派手っすね、グレンさん!先輩もかっけぇっす!」
「おう………手ェ痺れてるから、討ち漏らしの処理行ってこいコーディ。」
「俺が火の魔力で囲んどいたから、進めずにその辺で立ち往生してるはずだ。頼んでいいか?」
「りょっす!行ってくるっす!」
「僕も一緒に行きます。火傷防止に………『氷の守り』」
「おー、涼しい!あざっすイアンさん!
そうだ、イアンさんが一緒に来てくれるんなら、あれやってみたいっす!いいすか?」
「そう、ですね。僕も実戦でのデータ欲しいし。手頃な魔物がいたらやりましょうか。」
「やった!先輩に負けないくらい、派手にぶちかましてやるっすよ!
その前に………セシリアさーん!アンディ先輩の手ぇ診てくださいっす!」
「わかりました、イアン君とコーディ君も、お気をつけて。」
「うっす!」
「あ、待ってくださいコーディ!」
タタタッ………
「………悪ぃなアンドレアス、一応練習通りの出力だったはずなんだが。」
「いや、俺が勢いつけすぎたんだろ。向こうもなかなかのスピードで突っ込んできたから、その勢いも加わったんじゃないか?」
「成程、あり得るな。次は魔術盾追加するか………」
「アディラほど得意ではありませんが………『大地の守り』、籠手にもかけておきますね。」
「防御魔法か、助かる。
さぁて、もういっちょやるかグレン。」
「おうよ。」
「コーディ、準備できました!」
「行くっすよ!………貫け!」
『『雷迅槍っ!』』
ビシャァァァンッ!
「何だ何だ、新しい技か?」
「イアンの雷をコーディの槍の穂先に込めて貫通力を上げて………いや、周りもまとめて感電させているな。一見しただけでは理屈までわからん。後で聞いてみるか。」
「うっひゃー!楽しいっすね、これ!」
「威力は申し分ないですね………腕に違和感とか不具合はないですか、コーディ。」
「だいじょぶっす!強いて言うなら楽しすぎてテンションがヤバいっす!ひゃっはぁー!!」
「わあああ、まだ戦闘中なんで落ち着いてくださいぃぃ………」
「………アールシュ、あれ!」
「ああ、全員一旦下がれ!リザード系の上位種だ!」
「ギシャァァァァァッ」
「おぉ………こりゃでけぇな。ヒュー隊長、どうする!?」
「この位置なら………五番の仕掛けに誘います!かかったら皆さん、作戦通りにお願いします!」
「かなり素早いぞ!ベイリー、ラッセル、マークで誘導、その他は三人の補助だ!」
「「「はいっ!」」」
「イアンとセシリアちゃんは俺の後ろな。何がきても絶対守ってやるから。」
「………初対面で守ってやる的なこと言われた時は、セシリアさん鳥肌立ててましたけどね。」
「そっ、その節は誠に申し訳ございませんでした今後あのようなことは一切致しません!」
「謝罪はもうお受けしましたので………あの、普通にお話しくださいアンドレアスさん。」
「そ、そうか。とにかく、俺からあんま離れんなよ。イアンもな。」
「はい、よろしくお願いします。
………人の性格が変わるのって一週間かからないんですね。」
「あぁ………ヒュー隊長に常識やらプライドやら全部粉微塵にされたからな。俺、もう実家に顔出す気になれねぇよ。
多分ブライアンもそうだ。何故か言葉数が前の三分の一くらいになってる。」
「隊長に一体何されたんでしょうね。気になりませんか、イアン君。」
「え、いや僕は絶対に知りたくありません………怖すぎるよ………」
ギリギリギリ………
「ギシャァァァァァァッ!!」
「固定できましたよ、マーク。氷お願いします。」
「わかった。」
パキパキッ
「ギャ………ガアァ………………」
「………完了。首元はあけてある。」
「ありがとうございます。
じゃあ後は剣でとどめお願いします。」
「ああ。………何回見てもヒュー隊長の罠すげぇよな。こんなにでかいのに、見事なまでに宙吊りだ。」
ザクッ
「よし、撃破確認。周辺の魔物も撤退したようだ。」
「………今、上位種の討伐したんだよな?何だこの安定感。もっと苦戦するもんだと思ってた。」
「ふふん、研究者もなかなかやるでしょ~。」
「むしろ問題は威力が高過ぎることだよなぁ。一般に公開するにはまだ調整が必要そうだ。」
「え、強いのって良いことじゃないすか?」
「俺がさっきアンドレアスの盾にかけた反撃魔術を例に上げると、適切に防御かけながらじゃないと使用者ごと爆散するぞ。
あの盾には別で刻まれた防御魔術があるから安全に使えるんだ。あいつにはあの衝撃を受け止め切れる力と技量もあるしな。」
「ほえー!そりゃヤバいっすね。」
「アディラの姉貴も、さっきの強化魔術ヤバかったですよね。あれも強過ぎ案件ですか。」
「ううん、あれは久しぶりの討伐で楽しくなっちゃって、調子乗って設定上げ過ぎちゃっただけ。大丈夫だった?デック。」
「怪我的な意味なら大丈夫です。
………受け止めようとした上顎が斬れて顔面に落ちてきた時は変な声出たけど。」
ドーン………ドーン………ドーン………
「あれ、太鼓の音だ。もう終わり?」
「そのようだ。少なくとも、俺達の担当区画にはもう魔物はいない。撤収するぞ。」
「では、これで解散。」
「「「お疲れ様でしたー!!」」」
「グレン、あの反撃魔法の範囲もう少し下になんねぇか?どうも体高が低い個体に当たんなくてよ。」
「あんま下まで範囲に入れると地面が吹っ飛ぶかと思って、余裕を持たせてあったんだが………も少しぎりぎりを攻めてみるか。訓練所で微調整だな。」
「俺とデックも一緒に行っていいすか?見たいっす!」
「あ、私も付き添います。怪我したら大変ですから。」
「セシリアが行くなら私も行くぅー!お菓子と飲み物持ってこうか?」
「武術大会の観戦じゃねんだぞアディラ………」
「いーじゃんいーじゃん、大勢の方が楽しいし意見も出るじゃん。ブライアンも行こうよ!」
「そっすね、俺もお邪魔します。マークさんとイアンさんもどうですか。」
「………。」
「アールシュ、どうしたんですか?」
「………今日も、俺の出番がなかった。」
「えと………また俺と手合わせでもします?」
「やる。」




