24.5 雑談集 in 世界の狭間
「………んんんんっ」
「こらユウト、力むんじゃない。もっと身体全体を柔らかくするようなイメージをするんだ。
まずは力を抜いて、今回は前にシキがやったのと同じ木の枝をできるだけ具体的に想像してだな………」
「そんなこと言ったってなぁ………」
「ヒュー、ユウトは大抵のことは筋力でごり押すゴリラ戦法で何とかなるから、慣れてないことで力を抜けって言われると逆に強ばって上手く抜けないってカズマさんが言ってましたよ。
そういえば、ゴリラって何なんですか?」
「カズ兄………否定はできないけど、戻ったら一発殴る………」
「そういうことを言うからゴリラだとか言われるんじゃないのか?
………そうだな、俺達がやろうとしているのは魂の筋トレではなくストレッチだ。運動好きのお前にはそう言った方がイメージしやすいか?」
「ストレッチ………あ、こうか?」
「わ、指先の形変わってます!できてますよユウト!」
「やった!ありがとうヒュー!よし、あとはどうなるかを具体的に想像するとか何とか………」
「………自分で言っておいて何だが、何故今の助言でできるようになったんだ………?」
「ふふ………ほんと見てて飽きないなぁ、この子達………」
「おいシキ、教師役はお前だろう。面白がってないでこっちに来い。俺は本来指導を受ける側だぞ。」
「はいは~い、じゃあ次のステップいってみよ~。」
「柄頭はおへその少し下、剣先は相手の喉元に合わせるイメージ。特定の相手がいない時は、自分の視点を伸ばした先かその少し下に剣先がくるように構えてみて。真っ直ぐ構えて堂々としてれば、それだけで相手に圧力をかけられるよ。」
「こう、ですか。長い剣って使いにくいですね。」
「ナイフの方が慣れてるなら、ファウストは無理に長剣使わなくてもいいんじゃないかな。
ヒューもナイフにしとく?剣よりは軽いよ。」
「いや………俺が剣を構える時というのはおそらく、領軍の兵士達を鼓舞する時くらいだからな。長剣の方がいい。」
「こぶって何ですか?」
「共に戦ってくれる者達の士気を上げることだ。まぁ、端的に言えばやる気を出させることだな。」
「剣で、ですか。」
「あぁ、ついてきてくれる兵達に『自分達のリーダーは頼りになる』『この人についていけば勝てる』と思ってもらえれば、彼らはより勇敢になり、団結も強まるというものだ。こちらの指示も通りやすくなる。それ以外にも色々と利点はあるぞ、詳しくは知らんが。」
「ヒューバート君だめだよ~、そこは『知らんけど』って言わないと」
「はいはいシキは黙ってて。」
「うーん………よくわかんないです。
討伐隊の前衛の人達が俺の言うことをすごくよく聞くのがユウトのおかげってことですかね?」
「………ユウト、お前俺の身体で何をした?」
「弱くはないって所を見せただけだよ。
話を戻すけど、鼓舞って杖じゃ駄目なの?」
「む、そうだな。戦いを象徴する剣を掲げるのが様式美というやつなんだ。剣の方が、視覚的にも皆の士気をより上げられる。
それに余程派手なスタッフやロッドならともかく、俺の杖は特に装飾のないワンドだからな。遠くからでは見えん。」
「なるほど~、ちゃんと理由があるんだねぇ~。ヒューバート君がお貴族様ってこと、ようやく実感してきたよ~。
人々を導いて守る、うんうん、立派だね。」
「まぁ、俺なんて貴族の端くれもいい所だがな。」
「………ヒュー、シキ、話すのはいいけど腰引けてるよ。それじゃ相手になめられるし鼓舞にもならない。もっと胸を張って、背筋伸ばして。
あ、でも力は入れ過ぎちゃ駄目。肩と肘と手がこういう、五角形になるようにするんだよ。」
「むぅ………」
「ユウト先生、なかなか厳しいなぁ………あれ?今更だけど、何で私まで剣構えてるんだろう?魔力制御訓練の息抜きのつもりだったのに。」
「俺は、シキがどこからこんなに剣持ってきたかの方が疑問なんですけど………」
「それは企業秘密~。」
「はい、これで引き解け結びは完成です。俺の体重くらいなら軽く支えられますし、ここを強く引っ張れば解けます。色々と便利ですよ。」
「む、これでは少し緩いか?」
「ヒュー、こっち引っ張れば締まるよ。あと、持ち方を変えた方が力入れやすいかも。」
「おお………できた!
ユウトは何でもすぐにできるな。苦手とすることはないのか?」
「文系科目は苦手だし、魔法もいまいちかな。面白いけど。」
「習い始めて一ヶ月経ってないにしては、上手過ぎるくらいだと思うよぉ?先生が私っていうのが良いのかもだけど~」
「いや、俺の魔法の先生はローレンさんだから。」
「室長なら間違いなく良き師になってくれているだろうな。
それに、ユウトは仮にも異世界の俺なんだ。下手なわけがない。」
「何その変な自信。
そういえばファウストの苦手なものも想像つかないんだけど、何かある?」
「俺ですか?えと、道歩くのちょっと苦手です。人多いですし、車とか、信号もありますし。俺の世界、道って無かったので。」
「それはユウト君の魔法と同じで、慣れてないだけだと思うなぁ。」
「じゃあ………わかんないです。エレベーターとか、ドライヤーとか?」
「そうなの?でも、それも多分慣れの問題だよ。」
「経験が少ないと、自分がそれを苦手かどうかもわからんからな。ファウストは苦手も得意もこれから見つけていけばいいさ。」
「じゃあファウスト君の弱点はまた今度として………ねーねーユウト君、もっとヒューバート君の運動音痴みたいな、思いっ切りポンコツな所ないの?ヒューバート君だけ露骨に弱点知られてるの、可哀想じゃない?」
「………目の前で思いっ切りポンコツ呼ばわりされることは可哀想だと思わないのか?」
「うーん、弱点………脳筋とか、虫苦手とか、工事現場の音が嫌いとか、乗り物にすぐ酔うとか、泳げないとか?いっぱいあるよ。」
「ユウト泳げないんですか!?」
「意外過ぎる………ポンコツの俺でも少しは泳げるというのに………」
「ヒューバート君、ポンコツ自称しちゃっていいの?」
「どうしても沈んじゃうんだよね。25m泳ぐ前に身体が底に着く。中学では嫌過ぎてサボってたせいもあるけど、それでも体育の成績で俺が1を取るとはって驚かれたよ………」
「一番って良いことですよね?」
「この場合の1は5段階評価の最低ですが何か?」
「………まぁ、人には向き不向きがあるから。ね?」
「シキがまともに慰めてくるとか………」
「何で落ち込むのさ!?」




