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16 もう一つの異世界

 ヒューバートside


 ふぁ………朝か。何だか、久々に良く眠れた気がするな。干し草にも慣れてきたが、こうも続くとさすがに柔らかいベッドが恋しく………む?


「柔らかい………?」


 二度寝の誘惑に抗いながら、薄く目を開ける。


 どこだ、ここは。ファウストの家でないのは確かだが。

 ほとんどが白と黒で構成されたシンプルな部屋、机の上には小さく精巧な肖像画や謎の置物、自立した黒い板のようなものは………ファウストとシキの話にあった「てれび」とかいうやつか?動く絵や遠くの景色が映ると言っていた。


 予想外の状況に対する驚きで瞬時に意識が覚醒した。周囲を見回しながら起き上がる。


 おぉ、身体が軽い。ファウストの運動神経にも驚かされたものだが、これはそれ以上だ。

 どこもかしこも無駄なく鍛え上げられて………自分の身体に戻れたら、俺も鍛えてみるとしようか。運動能力が壊滅的なのはわかっているが、俺だって男なんだ。割れた腹筋に密かな憧れはある。


 ………いかん、思考が大幅に逸れている。早く今の状況を確認せねば。


 髪は更に短くなり、昨日までより身長が伸びている気がする。右脚には固定具のようなものが。

 ふむ。これは十中八九、ユウトになっているな。脚はさっさと治しておくか、確か骨にいくつかひびが入っただけだと


 ♪~


 ブブブブブブブブ


「うおっ!?」


 何だ、何の音だ!?


 ………これか?何だこの板は。小さい「てれび」か?少しうるさいくらいの音量で不思議な音楽が流れている。さ、触っても大丈夫だろうか。


 ガチャッ


「ファウスト起きろ~、今日は終業式だぞ………目覚ましの止め方教え忘れてたか?」

「あ、兄上っ!?」

「また寝ぼけてんのか。ほら、ちゃんと目ぇ覚ませ~。

 おっと、スヌーズになったか。止めとこ。」


 いや、信じ難いほどに似てはいるが、彼が兄上でないことはわかっている。ユウト達に聞いた話の通りだ。


「あれ、姉さんじゃなくて、兄上?………ああわかった!ヒューバート、だろ?ファウストに話は聞いてるよ。

 ってことは、また入れ替わっちゃったのか。やっぱ高校は欠席にしとくかな………」


 俺はまだ「兄上」としか言っていないんだが。

 状況の把握が早いな。さすが異世界の兄上………確か、カズマ殿だったか。


 それにしても、本当に兄上の顔だ。わかってはいたが、やはり驚きは隠せない。髪や瞳の色が違っても一目でわかるものなのだな。


 ………自分達が入れ替わっていることと、異世界の同一人物の存在を知っていてもこれだ。それを知る前に兄上と対面したユウトは相当混乱しただろう。今更ながら同情する。


「取り乱して申し訳ない。お察しの通り、私はヒューバート・ウィリアムズと申します。

 あなたはカズマ殿ですね。私も、ユウト達から話は伺っております。」

「おぉ、ファウストとはまた違ったかしこまり方だな。普通に喋ってくれよ、俺は結斗の幼なじみでただの大学生、別に偉くも何ともないから。

 えーと、ヒューバート君?もファウストみたいに敬語しか喋れないってんならそれでいいけどさ。」


 カズマ殿はとてもフレンドリーな方のようだ。兄上も平民として育っていたら、こんな風になったのだろうか。


「………わかった。素だと、俺はこんな感じだ。あと、親しい者にはヒューと呼ばれているから、貴殿も良ければそうしてくれ。ユウト達にもそう呼んでもらっている。」

「そういや、ファウストもヒューって呼んでたな。オッケー、そうするよ。」


 おっけーとは?

 ………ユウトの記憶が肯定の意味だと言っているな。


「知ってるみたいだけど改めて、俺は榊原司馬。結斗にはカズ兄って呼ばれてるけど………それは結斗専用だな。普通に名前で呼んでくれ。よろしくな、ヒュー!」

「あぁ、よろしく頼む。」

「おし!まずは朝飯だ!食べながら色々説明するよ。

 あ、その前に洗面所と服か。こっちだ、ついてきてくれ。はいこれ松葉杖、一応な。使い方わかるか?」


 兄上の社交性の高さと世話の焼きたがりは魂由来なのだろうか。何というか、少し、気圧される………勢いが………





 ファウストside


「おはようございますぅ、ヒュー様!………あら、まだ起きていらっしゃらないなんて珍しいですねぇ。やっぱり昨日はお疲れだったんでしょうか。」

「………ふぇ?」

「すみません、休日なのに起こしてしまいましたね。」


 女の人の声?カナエさんはしばらくお仕事でいないはずなのに。

 あと、今日はしゅーぎょーしきでちょっとだけ学校行くからお休みじゃないです。まだ目覚まし鳴ってないと思うんですけど………


 んぅ………なんか、今日のベッドもっふもふです。柔らか過ぎて動けません。広いですし。


 あれ、この黒いの何ですか?さらさらして………あっ、これ髪です!もしかして俺、今度はヒューになってますか!?


「痛っ………!」

「えっ、どこですか!?傷が開きましたか!?」


 うぅ、びっくりして起き上がろうとしたら、全身がびきびきってなりました。

 筋肉痛みたいな痛み方ですけど、違うのも混ざってるような気がします。ちょっと服をめくって………


 わ、身体が傷だらけ。でもこれ多分、昨日今日ついた傷じゃないです。この見た目だと、かなり治ってきてはいるみたいですから………ってことはこれもしかして、ヒューが起こしたっていう爆発事故の怪我ですか!!


 あれから結構経つのにまだこんなに痛むなんて、本当にすごい大怪我だったんですね………もし最初にヒューと入れ替わったのが俺だったら、痛すぎて絶対泣いてます。ユウトは大丈夫だったんでしょうか。


「昨日はかなり激しく運動なさってましたものね。こうなると思ったから何度かお止めしましたのに………見た感じは変わりなさそうですけど、お医者様呼びましょうか?」


 え、また入院ですか。っていうかこの人誰ですか。ヒューのふりしといた方が良いですかね。


「だっ、だいじょぶ、だ。問題、ない。」


 ちょっと噛んじゃいました。


「? 扉は閉めてますし、普段通りにしていただいて大丈夫ですよぅ、ユウト様。もう少しお休みになります?」

「!」


 今ユウトって言いました!この人はユウトのこと知ってます!ユウトが信じて正体教えた人、だったらきっと、信じても大丈夫な人!


「あのっ、えと………ヒューのメイドさん、ですか?俺は、その、ヒューでもユウトでもなくて。」

「! ………でしたら、あなたはファウスト様、でしょうか?」


 う、ちょっと眉の間がぎゅってなった気がします。ヒューじゃなかったからでしょうか。


「そうです、あの、ヒューじゃなくてすみません………」

「いえいえ、ファウスト様も大変ですねぇ。

 私はヒュー様の専属メイド、ステラと申します。皆様に起こっていることは、ユウト様から伺っておりますよ。」


 その名前、聞いたことあります。ヒューが話してました。

 さっきの顔は一瞬だけで、すぐに笑って話してくれるようになりました。きっとユウトが俺のことをこの人に話しておいてくれたおかげです。


「ヒュー様とユウト様はどうなっていらっしゃるんでしょうか………」

「多分、また入れ替わっちゃったんだと思います。夢でまた会えたら聞いてきますね。」

「………夢で会えたらって文章だけだとロマンチックにも聞こえますけど、詩的表現とかじゃないんですよねぇ。」


 ろまんちっく?してき?


「お二人がご無事だと良いのですが………」

「えと、二人に会えたらすぐあなたにもお話しします。いつになるかはわかんないですけど。」

「よろしくお願いいたします。

 その代わり、ではありませんが、ファウスト様がここにいる間は私が全力でサポートいたしますので安心してくださいね!これでも私、メイドとしてはかなり優秀なんですよぅ!」


 メイドさんってあれです、身の回りのことをお手伝いしてくれる人です。ちゃんと教わったから知ってます。

 「萌え」文化の代表格ってカズマさんは言ってました。オムライスで元気になるおまじないとかしてくれるって。


「うーん、また色々とご説明しないとですねぇ。

 ………そうです、ファウスト様こちらを!ユウト様がここにいる間つけておられた日記です!万が一また突然入れ替わっちゃったらこれを見せてねっておっしゃってたので、ファウスト様のお役に立つかと思いますよ!」

「えと、にっきって何ですか?」

「あ、そこからですか。えーっと………ユウト様がヒュー様になっていた間に起きた出来事が書いてあるんです。

 他にも、ユウト様が知らなかったこの世界での常識とかもメモしてありますし、このあとヒュー様として何をしないといけないかもこれで大体はわかるようにしてくださってますよ!」

「ほんとですか!それ、すっごく助かります!わぁ、ユウトにお礼言わないと!」


 また一からこの世界のこと勉強しないといけないかと思ってました!知っておいた方がいいことはもうここに書いてあって、読めばわかるってことですよね!


「っ!!………何、ですか、このかわいらしさは………!お姿はヒュー様なのに………!」


 ?


 あ、そうでした。足をじたばたさせたら駄目なんですよね。

 でも、嬉しいと勝手に動いちゃうんです。ユウトの身体でやっちゃった時は、「せめて骨折治るまではやめろ」ってカズマさんに叱られたんでした。


「えと、ごめんなさい、じっとします。」

「ちょっと我慢し切れてないのがまたかわい………こほん。

 ユウト様はヒュー様の記憶を使って読み書きできるとおっしゃってましたが、ファウスト様も同じことができますか?」

「ユウトになってた時はできたので、多分できると思います。今も喋れてますし。

 やってみます、ちょっと、待ってください………ん、見られました!ゆっくりなら読めます!」

「では、しばらくそちらを読んでいてくださいますか?私はハロルド様を呼んで参ります!」


 パタン


「………また別の方になったなんてお伝えしたら、旦那様の胃が穴の開き過ぎで網状になってしまいますよぅ。

 旦那様の負担を減らすためにも、今のヒュー様関連はハロルド様に丸投げが一番ですね!

 あっ、ちょうど良い所に!おはようございますハロルド様ぁ~!お伝えしたいことが~!!」

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