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15

 三人で話していた所に、シキが突然にょきっと割って入ってきた。何だその動き、ふざけてんのか?


「待ってユウト君、拳を構えないで!これは真面目に喋るから!」


 ちっ。


「何今の舌打ち!?………こほん、えっとねぇ、私は普段この辺をふよふよしてるんだよ。」


 ………うん、揺蕩う旅人とか言ってたね。


「で、ここは世界の狭間だから、魔力感知の応用で世界の輪郭を知覚出来れば、各世界の様子を覗き見出来るのね。音声は聞こえないけど、新聞とかテレビで何が起きてるかもぼんやりわかる。最近はユウト君の世界のアニメもよく見てるよ~。」


 世界の狭間で魔力感知使って見るものがアニメなの?面白いけど。

 俺達も輪郭とやらの感知を練習すれば、ここから元の世界の様子を見られるかもしれないのか。後でやり方聞こう。


「あにめとは何だ?」

「えと………なんか、絵が動くんです。」

「ヒューバート君の世界の人達は信じられないだろうなってくらい、色鮮やかで滑らかなんだよ~。アクションも勿論すごい迫力だけど、振り返った女の子のポニーテールが風に揺れる所なんかもほんと秀逸で」


 ………この流れ、また話が逸れるんじゃないか?


「わああごめんなさい殴らないで!っていうか今のは話逸らしたの私じゃなくない!?ヒューバート君じゃない!?

 んんっ。とにかく、私はファウスト君の世界を覗いたことも当然ある訳だけど、荒野はともかくカゲってやつを見たことないんだよ。

 それに、ユウト君とヒューバート君の身体はここからでも見つけられたけど、ファウスト君はどれだけ探しても見つからない。」


 ………?


「二人の話聞いてから、改めて見て回ってたんだけど。多分、ファウスト君が住んでるのは壁と魔術でドーム状に隔離されてる地域だよ。その周りを囲むようにビルがたくさん建ってて、夜になると人がわらわら出てくるの。ドームの中とか屋内はここからだと見えないんだよねぇ。」

「ビル?」

「上にすごく高い建物………ですかね。ユウトの世界にもあります。」


 ビル建ってんの?魔法があって化け物がいて荒野があってビルもあるってどういう世界観?特撮映画みたいな??


「俺、そんな壁なんて見たことないですよ?」

「ファウスト君が住んでるのが真ん中の方とか、壁そのものが魔術で隠されてるとかじゃないかなぁ。かなり大きいんだよねぇ、あのドーム。」

「むぅ………俺が見つけた、前に進めない場所が関係しているかもしれんな。」

「うん、そーかも。

 世界って魔力の壁みたいなので覆われてるんだけどさ、私はその外側からそれを通して向こうを見てるから、内側で魔力がどんな動きしてるかまではあんまりわかんないんだ~。だから、どういう魔術で何のために隔離してんのかまではわかんない。」


 ………俺はあなたが何言ってるかわかりません。


「ドーム外の人達は中について何も知らなさそう、もしくは興味なさそう。話題にもならないって感じだよ。

 私がここから見てわかったのはこのくらいかなぁ~。後はヒューバート君が頑張って内側から調べるしかないね~。」

「難しいが………俺は今わりと暇だからな。やるだけやってみよう。壁の外が安全なら、そちらに拠点を作ることも考えられる。」

「それじゃ、私は準備したい物ができたから。あとは君達で頑張ってねぇ~」


 気の抜けるような声と共に、シキはふよふよと彼方へ去って行った。また放浪しに行くらしい。


 あ、世界の輪郭の見方聞くの忘れた。また来るかな。


「また謎だけ増やして去って行きましたね、あの人。………おじさんが言ってた外って、壁の外の事だったんでしょうか。」

「今は謎ばかりだが、これが後に何かの手がかりになるかもしれん。今の俺達では得られない情報も多いんだ、覚えておいて無駄はあっても損はしないだろう。」

「無駄は損じゃないんですか?」

「ヒューってほんとポジティブだよなぁ。」


 俺も別にネガティブな方ではないけど、ヒュー程ポジティブにはなれないと思うよ。


「それに、少なくとも彼は一度も嘘をついていないぞ。隠し事くらいはあるだろうが。」

「どうしてわかるんですか?」

「自分の意志に反する発言をしたり、意図的に嘘をついたりすると、魔力に独特の揺らぎが見られるんだ。激しい感情でも魔力は乱れるが、それとはまた別で………説明しづらいが、俺には嘘が大体わかると思えばいい。

 あぁ、勿論完全ではないし、意識して見ようとしないとわからないから、俺だけを根拠に信じてはいけないぞ。」


 そっか、ローレンさんがモノクルでやってることをヒューは自力でできるんだった。もうちょっと魔法上手くなったら、俺も教えてもらおうかな。


「もう既に新情報で頭いっぱいだけど………シキからもらった情報でまだ俺が知らないのってある?」

「そうですね………俺達が魂だけでここに来てるのはもう聞いてますよね?」

「うん。」

「魂単体で世界の壁を越えられるのは魂が強い人間、つまり魔力が強い人間だけだそうです。身体ごと異世界に迷い込む人も、大抵魔力が強い人間です。

 魔力の少ない人がここに来るとすぐに死ぬと聞きました。俺の世界に時々死体が落ちてくるのはそれらしいです。」


 死体落ちてくるって何だよ、怖!

 え、じゃあ俺達もあんまりここに長居したら死ぬ?


「俺達は魔力が尋常じゃなく多いらしくて、すぐ死んだりする心配はいらないって言ってたので、いつもくらいなら喋ってても大丈夫ですよ。」

「俺達はユウトに会う前に丸一日ここにいたことがあるが、それでもしっかり生きているだろう?………あの時は少し危なかったが。」


 そんな話聞いたな、そういえば。

 まぁ、滞在はほどほどにしておこうってことだね。


「それと、俺達のように魂が同じでなければ中身が入れ替わったりはしないそうだ。

 だからここから帰る時も、魂がうっかり知らない人物の身体に入ってしまうようなことはないと聞いた。その点は安心だな。ああ、一つの身体に魂が二つ入ることも滅多にないそうだぞ。」


 その発想はなかった。確かに、せめてヒューの身体に帰れないと困る。自分の身体に帰れるのが一番だけど。


「無理矢理別の魂入れると基本的には狂ってしまい、更に魔力相性が悪ければカゲになると思うってシキが言ってました。」

「俺達は同じ魂なんだ、その心配はあるまい!」


 結構恐ろしい話をしてるはずなのに何だその笑顔。さすがヒュー、ポジティブ担当。

 ファウストは笑顔ではないけど、世間話のトーンで怖いことをさらっと言うのやめてほしい。


「あと、ここで俺達が混ざりそうになった話は前にしただろう?あれは、魂だけで長くいたせいで二人とも魂が拡散し始めていたからだろうとのことだ。魔力制御である程度抵抗できるらしい。

 完全に霧散するとその魂は死を迎え、世界ごとにある「魂の源」のような所に吸収されて、時を経て新しい魂として生まれると言っていた。確認のしようはないがな。

 近い世界だと同じ魂がいるんだよぉ~、魂の源同士も共鳴とかしてるのかなぁ、不思議だよねぇ~。とシキは言っていたぞ。」


 話の内容はよくわからないが、シキの真似が地味に上手い。物真似なんてするタイプだったのか。ちょっと意外だ。

 とりあえず魔力制御が上手くなれば、俺ももっとここにいて話が出来るということらしい。練習、頑張ろう。もし今ここで俺が霧散したらヒューの身体が死んじゃうかもしれないし。


 あ、指の感覚が薄くなってきた。………そろそろか。

 前回よりは保ったよな。自分の魔力に集中して、と。これであと少しは大丈夫なはずだ。


「ごめん、俺今日ここまでだ。」

「そうか。前回よりはかなり長く保ったんじゃないか?折角俺の世界にいるんだ、魔力の扱いを兄上に教わるといい。」

「最近はローレンさんに見てもらってる。ヒューじゃないのもモノクルでバレたんだ。あれ、ヒューが作ったんだろ?」

「あぁ成程、効果を知らなければ隠し事はできんだろうな。

 ………ユウト、室長の前で気を抜いていると気紛れで魔力弾を飛ばしてくるから気をつけろ。かなり痛いぞ。

 気に入った相手には意地悪をしたくなるらしい。ユウトはおそらく気に入られるタイプだ。」


 うん、Sなのはもう知ってる。魔力弾も既に何回かくらった。

 怪我人用の優しい魔力弾にしてあるらしいから、ぞわっとするだけで痛くはないよ。そもそも怪我人に撃つなって話だけど。


「それと、近々魔物の討伐があるんだったか。俺には軍での討伐経験がないから下手な助言はしないでおくが、あまり無茶はするなよ。」

「わかってるよ、ヒューの身体なんだから。」

「シキがあんなに無駄話しなければもっと話せたはずなのに、あの人長々と喋るから………むぅ………」

「魔力操作頑張って練習して、長くいられるように頑張るからさ。今度はもっとゆっくり話そう?ファウスト。

 じゃあ二人共、また近いうちに会おうな。」





 朝の光を瞼の向こう側に感じる。

 今日はお休みだから、ちょっとゆっくりしてもいいかな。いつも通り体操して、そうだ、ハロルドさんがまた討伐指揮の基礎教えてくれるって言ってた。


 普段より少しゆったりした、平和な朝………何か違和感があるな。あぁ、いつも聞こえる小鳥の鳴き声がしないんだ。ベッドも固い気がする、何でだろう。


 ぱちり。


「知らない天井だ。」


 ………ええええ知らない天井なんだけど!?なんで!?


 ここどこだ?見た所、廃墟の一室って感じだ。今寝ていた干し草を敷いたベッドと、擦りきれた本でいっぱいの本棚、部屋の隅にあるリュックのような鞄以外何も無い。


 そして、最近ようやく慣れてきたヒューの長髪が視界に入らない。これはあれだ、鏡を見るべき案件だ。


 部屋には鏡がなかったので、部屋の隅に落ちていたガラスの欠片を黒っぽい台の上に置いて鏡代わりにする。


「次はファウストか………」


 そこに映っていたのは、ぼさっとした髪に少し幼い顔をした俺だった。大変そうな世界に来ちゃったな………

 でもファウストが生きてきた世界だし、ヒューも一ヵ月くらいここにいた訳だし、夢である程度話も聞けた。きっと何とかなる、いや、何とかするんだ!


 魂がまた入れ替わったなら、今ヒューの身体にいるのはどっちだろう。上手くヒューが元に戻れてるといいな。

 討伐に行く事になるだろうから心配ではあるが、残念ながら今の俺に出来ることはない。日記風メモを読んで頑張ってくれ。


 よし、頭を切り替えてまずはファウストの記憶確認だ。

 俺はファウストに「見るのは最近の記憶だけにしてね」って頼んだんだから、俺もプライバシーには気をつけないと。どれどれ。


 ふむふむ………サバイバル術に関しての知識量がすごいな。この知識と、水場と、家の中で作っているらしい食べられる植物があればとりあえず飢え死にはしなくて済みそうだ。


 そしてヒューに聞いたとおり、お姉さん以外の人とは全く言葉が通じなかったようだ。そのお姉さんは脚が悪く、家の近くを歩くことしかできなかったらしい。

 ………今はここに一人きり、か。


 言葉の通じないグループがいるのは、ここから見て………あっちが北だから………こっちだな。

 ほとんどのグループは今いるファウストの拠点より南側にいるようだ。南の方が住みやすかったりするんだろうか。とりあえずあちらに近づくのは避けよう。


 あと、ヒューがファウストの身体にいた時の記憶も見る事ができた。ファウスト本人の記憶よりは薄いが、前に進めないという地点の記憶もあるので調査は引き継げそうだ。


 ちなみに記憶は魂と身体それぞれで行われていて、入れ替わった時に見られるのは身体に残った記憶らしい。と、シキがぽろっと口にしていた。


 窓から外を見ると、遠くで獣のように四足で佇む何かが見える。純粋な黒ではない、色々な絵の具を混ぜて作ったような黒が生き物の形になった、という感じだ。

 あれがカゲ、そしてファウストのお姉さんなんだな。


 とりあえず、手を合わせておく。

 異世界の俺を育ててくれてありがとうございます。おかげで俺とヒューはファウストに出会えました。ファウストが死なないように俺も頑張るんで、見守っててください。


 ………さてと、それじゃ行きますか。


 新しい世界、探索開始!!

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