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 シキの説明が無駄に長かったので要約する。


 俺達三人の魂は、それぞれの事故で身体から離れて入れ替わっており、魂単体になりやすい状態である。なので、寝ている間によく魂が身体を離れてここに来ている。そのタイミングで自然に元に戻ってくれるとありがたいのだが、そう上手くはいかないようだ。

 魂は生き物の魔力の源であり、魔力感知を極めれば魂そのものを知覚できるようになる。そこから更に魔力操作の要領で自分の魂をある程度操作できれば、世界の狭間に自分の意思で来たり、任意の身体に入れ替わったりできるかもしれない。

 逆に、知覚や操作が下手だったり、魂そのものが弱いとここで魂が霧散して、消える可能性もある。


 ざっくり言えばそんな感じらしい。すぐ話逸れるから軌道修正が大変だったよ、結構重要な内容なのに。シキ、あんた俺達より年上じゃないのか。何で俺達に怒られてんだ。


「はぁ~、お喋りってやっぱり楽しいなぁ~!」

「楽しんでるのはあんただけだけどな。」

「うーん、ユウト君の口がどんどん悪くなっていく。」

「あんたのせいでストレス係数上がってんだよ。あんた相手ならこれで十分だろ。」

「………ねぇ、せめてシキって呼んで?一番平和そうな国出身の君にあんた呼ばわりされるの、地味に精神的ダメージ。」

「あんた、精神にダメージなんか受けんのか?ってかそもそもまともな精神あんの?」

「ひどい」


 えーん、とわざとらしい泣き声が聞こえるが、確認するまでもなく嘘泣きである。絶対超合金メンタルだろあんた。


 ………まぁ、今の所悪い人ではなさそうなんだけど、なんかこう、とにかく鬱陶しいんだよな。喋ると疲れる。

 このままシキと話し続けると、本格的に昔の俺に戻っちゃいそうだ。一旦離れよう。


「えっと、俺達三人の中で一番魔力感知と操作に慣れてるのは………」

「はいはーい!私はプロ級だよー?有名企業がスポンサーに付くくらいの!」


 俺達三人の中でっつっただろ、あんたは勘定外だよシキ。


「ヒューですよね。でも、ヒューも魂の知覚までは………。」

「やったことがないから何とも言えんな。だが、魔力操作の訓練ならファウストの世界でもできる。練習あるのみだ。俺が出来るようになれば、二人にも教えられるだろう。」

「ねぇ聞いてよー、構ってよー!」

「俺も魔法の練習時間もっと取った方がいいかな………魔物討伐も近いんだよね。魔導隊の隊長になっちゃってさ。」

「む、討伐か。俺も軍では経験がないな。研究員まで駆り出されるとは、状況はかなり逼迫しているのか………」

「ひっぱくって何ですか?」


 ファウストとヒューにまで存在ごとスルーされたシキが膝を抱えてうじうじし始めたが、誰も気に留めていないようだ。面倒くさいからな。


「そうだ、ヒュー。今いる世界ってどんな所?ステラとハロルドさんにヒューの様子聞かれた時に答えてあげたいんだよね。」

「あぁ、前回は話す前にユウトが帰ってしまったんだったな。ファウスト、お前にも話しておきたいことがあるんだ。」

「………姉さんに、何かありましたか。」


 ファウスト、お姉さんいるの?初耳だ。一人っ子は俺だけ?


「姉君が気になるのは当然だが、まずはユウトへの説明からさせてくれ。

 ファウストの世界は、見渡す限りの荒野だ。人の姿もあまり無く、廃屋や不可思議な塊が転がっているだけだな。異世界からよく物や道具が落ちてくるから、それを上手く使って暮らしているらしい。

 魔法は使えるが大規模なものはあまり使えず、普段は火種に少し使うくらいだ。俺は魔力量があるから頑張れば強い魔法も撃てるが、そこまでする理由はないな。」


 予想はしていたが、かなり厳しい世界のようだ。ファウストはずっとサバイバル生活みたいな感じだったのか。ヒューは大丈夫なんだろうか。


「使う言語が違う者達が入り交じった場所のようで、言語が同じ者達で集まったグループが存在する。グループ間で食べ物や安全な寝床の奪い合いもある、争いの絶えない場所だ。

 ファウストはどのグループにも入っておらず、姉君と二人で暮らしていた。」


 なんかファウストの世界だけハード過ぎない?

 殺伐とした所なんだな。話が出来れば協力出来るかもしれないが、言葉も通じないのか。お互いに命がかかってるから、話し合いよりまず強奪、って感じになるのも無理はないのかもしれない。


「更に、荒野には黒い謎の生き物が徘徊していて、ファウストはそれをカゲと呼んでいた。近づくと襲ってきたり、近づいた者をカゲに変えてしまったりする。一度カゲになってしまった生き物を元に戻す方法はないようだ。俺が魔法を十全に使えても、おそらくは戻せない。倒すのがせめてもの情けだろう。」


 うわぁ………ゾンビ映画みたいで嫌だな、それ………


 ヒューの話はまだ続く。これ以上に大変なことがまだあるのかな、聞くのが怖い。


「ファウストの姉君は、先日カゲになってしまってな。姉君だったカゲに襲われた時の怪我で、ファウストは俺達と入れ替わったんだ。

 入れ替わった俺が治癒魔法をかけて何とか止血はしたが、なかなかの重傷だった。まだ完全には治せていなくて、胸に大きく傷痕が残っている。」


 ………そんな事があったのか。


 大切な人が人ではない何かに変わって襲ってくる、という悲しみやつらさは、俺には想像することもできない。そばに居たくても、カゲになったお姉さんのそばに居れば襲われるし、自分もカゲになるかもしれないのか。

 そこで更に俺達との入れ替わりなんて起こったんだから、ファウストはさぞ混乱したことだろう。


「ファウスト」

「慰めだったらいらないですよ。俺の世界じゃよくあることだし、姉さんはもう死んだんです。姉さんは俺を育てて、生きる方法や言葉を教えてくれた人ですけど、それだけです。

 ………ただ、せめて俺の手で空へ送りたいとは思っているので、ヒューには倒さないように頼んでいます。」


 何の感情も感じさせない声で、ファウストは淀みなくそう言った。

 その代わりに、上着の裾を握りしめている手がファウストの思いを物語っている。唯一の家族をなくして、つらくないわけがない。


「つらさは本人にしかわからないし、今の話聞いた上での慰めなんて思いつかないけど………

 ファウストがお姉さんの事を覚えて生きている限り、ファウストの中でお姉さんの心は生きてるからね。」


 月並み過ぎるかな。でも、お姉さんがファウストに教えた事や伝えた事、二人で過ごした日々、全部ファウストの中に残ってるはずだ。

 俺だって、両親との大切な思い出を忘れることは絶対にないから。


「ファウストが元気に生きて、時々お姉さんとの事を思い出した時に楽しかったなって笑えたらそれでいいんじゃないかな。そこまで割りきるのには時間かかるけどさ。」

「………………」


 ファウストはこちらを見てきょとんとしている。

 家族亡くしてから一ヵ月くらいしか経ってないのに、こんな事言わない方が良かったか?


「………えっと、俺の国だとよくそういう言い方するんだよ、俺も両親が死んだ時に似たようなこと言われたんだ。

 その、なんか変な事言ってごめん。やっぱ忘れて。」

「いえ、ありがとう、ございます。

 カゲになったら、死んだら消えて終わりって思ってましたけど………俺が覚えてる思い出が、俺自身が、姉さんの居た証拠ですよね。」


 ファウストは自分の身体をぎゅっと抱いて、ありがとうございます、と小さく呟いた。

 ………ちょっとは気持ちの整理がついただろうか。


 黙っていたヒューが、横に来て俺に耳打ちをしてきた。


「ユウト、俺からも礼を言う。俺は、この件ではあまりファウストに寄り添ってやれなかったからな。俺は家族や身近な人物を亡くしたことがないからかもしれない。」

「そう、なのかな。

 でもヒューと喋ってる時は楽しそうだし、ヒューの明るさも少なからず支えになってたと思うよ?」


 ヒューが度々見せる少し強引なくらいの行動力と明るさは、気持ちが沈んで動けなくなった時には心強い助けになるってステラも言ってたよ。癪だから本人には絶対言わないとも言ってたけど。


「そうか?だといいんだが。

 ………ファウスト、さっき言った、お前に話しておきたい事をそろそろ話してもいいか?」

「はい、お願いします。何かあったんですか?」

「俺は魔力感知を応用して、周囲の魔力を目で視ることが出来る。あの世界で視るのは少しコツがいったんだが、最近安定して視られるようになったんだ。それでわかった事を話しておきたくてな。

 あの世界は、そこにいるだけで魔力が上方向に吸いとられてしまうようだ、というのが一つ目だ。だから魔法が使いづらい。」


 ヒューはローレンさんみたいにモノクルをしなくても、自力で魔力が視られるのか。俺も練習すればできるかな。


 魔法を発動するために注いだ魔力が持っていかれるだけだから、多めに注げば発動自体はするらしい。発動してからも奪われるので、威力は低いそうだが。


「二つ目はカゲについてだ………安心しろ、ファウスト。姉君に何か起きたわけではない。誰かに倒されてもいないぞ。

 この間、動物がカゲになる瞬間を視る機会があってな。俺が視た限りあれは恐らく、身体が耐えられない異質な魔力を取り込み過ぎると起こる現象だ。」


 自身の魔力と性質が大きく異なる魔力が大量に身体に入ると、身体がそれに耐えられずカゲになってしまう、とのこと。一度そうなると自我や理性も壊れてしまうそうだ。


「様々な色の魔力が集まり、混ざり、暴発することで真っ黒な影に見える、と言えば想像しやすいか?ほとんどが魔力の塊だから、魔法での攻撃はあまり意味がないだろうな。俺では拘束はできても倒せそうにない。

 俺の世界にも、空腹のあまり魔物の肉を食べ過ぎてしまい、黒い化け物になった男の話がある。魔物の肉を食する時は必ず魔力抜きするように、という教訓のおとぎ話だと思っていたが、実話なのかもしれんな。」


 魔物の肉は滋養があるからって何回か出されたけど、あれは魔力を抜いてから調理してたのか。今度料理長さんに話聞いてみよう。


「あの世界では皆、魔力を吸い取られ続けていると言っただろう?吸われている分、魔力の回復も遅い。イメージとしては、魔力を溜める容器にほとんど常に余分な空間が存在するようなものだ。

 ………ユウト、今の説明でわかるか?魔力の感覚に慣れていない者にはどう言えば上手く伝わるだろうか。」


 うーん………常に魔力減少のデバフがかかってるフィールドだから、時間経過で自然回復するMPがなかなか100%にはならないって感じ?


 多分大丈夫だよ、続けて続けて。


「その余白に異質な魔力が入り込み、体内に留まりやすいようだ。だから、異質な魔力の塊であるカゲのそばにいるだけで、自分もカゲになってしまうことがあるのだと考えている。まだ推測に過ぎんがな。

 俺の世界では魔力を使ってもすぐに回復が始まるから、異質な魔力は自分の魔力に追いやられ、身体にはあまり留まらない。余程の量でなければ少し体調を崩す程度だ。」


 あまりファウストの世界で魔法は使わない方がいいって事だな。魔法を使う程、カゲになるリスクも上がるんだ。


「俺達は魔力が常人より多いし回復も速いから、大魔法を連発でもしなければカゲにはならないと思うぞ。

 そして三つ目だ。ファウストがいる世界、というかあの場所についてだが。恐らく、一部の空間が歪んでいるか、認識阻害をかけられている。どれだけ歩いても前に進まない地点を見つけた。」


 ? それどういう事?


「今わかっているのはそれだけだ。どういう事なのかまではわからん。もう少し調べて、何かわかったら」

「それについては私がちょびっとだけわかるよぉ~?」


 うおぅ、シキ。存在忘れてた。

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