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1.5 二人の出会い

「………あ。」


「む………夢で会った俺か?

 ということは、俺はまた夢を見ているのか。明晰夢にしてははっきりしすぎだが………実際に起きていることという前提で行動しておくべきだろうか。

 そういえば、今は元の姿だな。戻れた、のか?いや、まだそうとは限らんか。あの事故で無傷なはずがないしな。ではここは何だ?」


「誰、ですか。」


「あぁ、すまん、俺はヒューバート・ウィリアムズだ。そちらは?」


「え、えと、今は、ユウト、です?」


「今は? ………ではお前も、自分の身体ではなくなっていたのか?」


「あ、はい、そうです!何でわかるんですか?

 ………今、お前もって言いました?」


「あぁ、俺は先ほどまでお前の姿になっていた。

 やはり、異世界の同一人物か?実在したんだな。なぁ、もう少し近づきたいんだが」


「こ、来ないでくださっ、わあああああああっ!?」


「は!?お、おいどこへ行く!?」


「わ、え、と、止まった………?」


「………俺もとっさにそちらへ行こうとしたら身体が勝手に動いた。行きたい、と思っただけで移動してしまうのか。

 すまん、俺が急に近づこうとしたから驚いたんだな。しばらくは動かないようにしよう。それでいいか?」


「思うだけで動くって………わぁ、ほんとですね。」


「まずは………そう、だな。俺はお前に危害を加えるつもりは全くない。そこは安心してくれ。」


「………そんなの、わかんないじゃないですか。

 初めての人は言葉が通じても警戒しろって姉さんは言ってましたし………」


「む、疑り深いな。安易に信用するよりは良いが。

 ………今の状況は正直俺もよくわからないが、自我というか、魂が入れ替わっているようなものだと思う。俺はお前の姿になっていたからな。」


「あなたは、俺に………」


「このまま元に戻れれば一番いいんだが、目が覚めても………これが夢かどうかもまだわからんが………元の身体に戻れない場合、俺はまたお前の身体になる可能性が高いと思うんだ。その時にお前の魂が死んでいたら、俺がいるお前の身体に影響が出たり、最悪俺も死ぬかもしれん。だからお前を害することはない。これなら信じられるか?」


「え………えと………」


「今お前が死んだら俺もどうなるかわからんから、お前と敵対するつもりはない。わかるか?」


「あ………はい。それならいいです。」


「一体どんな環境で暮らしているんだ異世界の俺は………。

 とりあえず、もう一度お前の名前を聞いてもいいか?ユウトといったか。」


「ちが、あの、俺、名前ないです。」


「そうなのか?まぁ、異世界ならそういうこともあるのかもしれんな。わかった、ひとまずお互いしかいない今は困ることもないだろう。

 ふむ、お前は俺になった訳ではなさそうだから………少なくとも三人以上の自我が入れ替わっているのか。

 えー、普段は何と呼ばれている?正式な名がなくとも、呼び名のようなものくらいはあるのではないか?」


「呼ばれる時は『ねぇ』とか、『ちょっと』って言われるから呼び名っていうのもないです。………あ、姉さんは姉さんなので、俺は弟、ですか?」


「何故疑問形だ。あとそれは名前ではない。

 ………では、姉君がいるんだな。俺がお前の姿になっている時は、そのような人物は見かけなかったが。」


「はい、そうです。………いました。突然カゲになっちゃって、それにやられ………そうですよ、俺、やられたんです。

 でも、あなたが俺の身体で目を覚ましたってことは、死んでないんですか?必死で逃げてたんですけど、途中からあんまり覚えてなくて………」


「カゲ………あの黒い魔物のことか?胸にあった傷はあれにやられたのだろうか。

 まず、お互いの今の状況を話そう。わからないことが多すぎる。先に俺から話すから聞いてくれ。」





「………俺、その白い部屋で寝ちゃったと思うんですけど、気づいたらここにいたんです。そしたらあなたが、えと、ヒューがきて。」


「成程。俺も少しだけ身体を休めようと横になったのが最後の記憶だな。

 やはり、俺達は眠っているだけでここは夢なのか?次に目を覚ましたら元に戻っていたりしないだろうか。

 正直、まだ現状が信じられんし理解もできん。全部夢だと言われた方がまだ現実味があるくらいだ。」


「それは、俺もそう、です。姉さんがカゲになったのも夢だったらいいんですけど………。

 ………俺達、さっきからここが夢だと思って喋ってますけど、どうやったら目が覚めるんでしょうか。こんなに長くてはっきりした夢、俺は見たことないです。」


「ふむ、確かにな。

 ………さっきからイメージだけで移動できるんだ、目を覚ます所を想像すれば目覚めたりしないか?

 さすがに楽観的過ぎるか、むぅ………」


「イメージ、ですか。

 えと………元に………元に戻って………」


 すぅっ………


「っ!?おい、今度はどこに………消えた?

 まさか、本当に考えるだけで?………やるだけやってみるか。戻れ、戻れ………」





 ー???sideー


「………っ!」


「あ、おはよ結斗。身体どう?痛む?」


「えと、おはよう、ございます。カナエ、さん?」


 ………元には戻れなかったみたいですね。


「んー、疑問形。記憶はまだ戻んないかぁ。

 脳の検査では異常は見つからなかったって。ただ、思い出系の記憶だけじゃなくて常識も欠けてるっぽいから、退院はもうちょっと先になりそう。」


「じょうしき?」


「道で信号赤だったらどうするか、とか?」


「しんごうって何ですか?」


「わー、想像以上に重症。

 あのね、そういうのがわからないと、また車に轢かれちゃうでしょ。その辺りの記憶が戻るか、改めて覚えるまでは危ないからここから出られません。わかった?」


「………わかりました。どうせ痛くて歩けないですし。」


「微妙に話通じてない気がするなぁ。」





 ーヒューバートsideー


 ………ぐ、口の中がじゃりじゃりする。


 朝になっているな。少しどころか、一晩しっかり眠っていたようだ。板の上で寝たからか、少し動いただけでも身体がバキバキと音を立てる。


「んんー………っ、いたたたた………」


 少し身体をほぐしたかったが、胸の傷が痛すぎて満足に伸びもできなかった。これ以上やったら多分傷が開く。もう少し治癒魔法をかけておくとしよう。


 元の身体には戻れなかったか。昨日まではまだ夢じゃないかと心のどこかで考えていたが、一度眠ってから目が覚めてもこれだとさすがに受け入れるしかなさそうだ。傷の痛みも現実としか思えんしな。


 そうだ、カゲとやらに張った結界はどうなって………機能しているな。あのカゲと周囲の魔力を吸収して自動修復するタイプにしておいて良かった。しばらくは問題なさそうだ。


 あの夢、いまだにはっきりと思い出せる。

 彼の話が真実なら、あれは彼の姉君ということか。昨日思いっ切り攻撃してしまったが………平気そうだな。

 知らずに倒してしまうよりは良かったのかもしれないが、あれほど平然とされると最強魔導士としてのプライドには少し傷がついたぞ。


 ふむ………これから俺は、何をすればいいだろうか。こんな所ではろくに調べ物もできん。自分と姉以外の人は基本的に敵だとも言っていたから、聞き込みも困難だろう。


 そうだ、食料。まずは食料を探そう。あと、この家は彼のものらしいから、使わせてもらう代わりにきちんと管理をしなくてはなるまいな。水は飲む分くらいなら魔法で出せるだろうし、いやその前に魔法の検証を………あれと………これも………………

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