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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第六章 国連軍発足
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98 異世界フルコース

98 異世界フルコース




 ヌル達が客人のスプライトと

ちまきを持て成している頃、

ドワーフ国ネホンマツの

魔法具工房では職人達が頭を抱えていた。


 ヨルグとカズチョンを筆頭に、

ドワーフ国が誇る人間国宝級の職人が勢揃いで

イムの御石鉢の最終工程に取り掛かっていた。


「蟹の血液が多すぎるのでは?」

「いや、血液が少な過ぎるのでは?」

「聖火の温度では?」

「いや、焼成時間かもしれない。」


 そこへ1人の年老いた獣人が工房の扉を開く。

その姿はイムによく似た、レッサーパンダの

獣人であった。


獣人「ムラから話は聞いている。

  先祖の悲願だ。私の人生最後の仕事になる。

  必ず成功してみせる。」


「「「グアン・ダムマン殿!!!」」」


 その獣人はマーボーの竹槍や、

うまーるの人形を作った

世界最高の魔法具職人であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  ーー国連本部・食堂ーー



 客人の席には次のように書かれた

お品書きが用意されていた。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



アペリティフ タカキタ桃色濁り酒


アミューズ  龍神村生ハム


オードブル  竜宮ウニの貝焼き


スープ    人魚の海のアクアパッツァ


パン     ※肉料理と一緒に提供します。

       エルフ女王のバタール


ポワソン   水竜の蒲焼き


ソルベ    ミミックフルーツのシャーベット


ヴィアンド  ヌルの全力ハンバーグステーキ・

       シャリアピンソース 

       〜バタールを添えて〜


サラダ    ナミノエ産ヘブンズ・ペヨーテの

       サラダ仕立て マヨソース


フロマージュ フレッシュモッツァレラと

       シロイナワベリーのカプレーゼ 

       森エルフの蜜ソース


デセール   スカディのバニラあいす


カフェ・

ブティフール 頑固ドワーフ親父の

       スペシャルティコーヒー



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


 席についたスプライトと、ちまき。

 お品書きを見たスプライトが

一瞬顔をしかめる。

 ちまきは見た目が子供である。

 ヌルは

客人のグラスに食前酒を注ぐ前に確認する。


ヌル「ちまき様はお酒を嗜まれますか?」


ちまき「次に子供扱いしたら、丸焼きにするでし。」


ヌル「大変失礼いたしました。」


  (最強の魔法使いだっけ? こえー。

  目がマジだったぞ。

  見た目で判断しちゃだめだな。)


スプライト「勘弁してやれよ。

     ちまきのこと知らねえ奴からしたら、

     子供にしか見えんて。」


ちまき「巨人のオバサンにはわからんでし。

   小人の悩みは。」


 ヌルが2人のグラスに酒を注ぐ。


スプライト「オバサンはヒデーなおい!

      アッハッハッ!

      長寿の鬼人の中では、

      アタシはまだまだヤングなんだよ!


      おっ! 不思議な酒だな。

      乳製品と果汁を混ぜたような

      色をしているね。」


 スプライトは桃色濁り酒に

興味を惹かれたようだ。

 2人が飲み始める。


スプライト「これは美味い。

     これが米と水で出来ているのか。


ちまき「自然な甘みと酸味。酒とは思えないでし。」


 次に提供されたのは

龍神村の生ハムであった。

 白い皿に、薄切りにされた生ハムが

バラの花のように盛られる。

薄いピンク色が白い皿に映える。

 小さな緑の粒々、パセリのコンカッセが

美しいアクセントになっている。


スプライト「これは肉か! 生肉なのか!?

      少し塩気がキツイが、

      酒に合いそうだな。」


ちまき「食べやすくていいでしね。

   臭くないし、柔らかいでし。」


ヌル「これは熟成すればするほど、

  おいしくなります。

  これはまだ3ヶ月くらいですが、

  2年かける物なんかもございますよ。」


 次に運ばれてきたのは

竜宮ウニの貝焼きである。

 貝殻にウニを敷き詰め、

酒と魚醤を垂らして焼いた物である。


スプライト「磯の香りが強いな。

     これは魚卵なのか?」


ちまき「少し生臭いけど、おいしいでし。

   とろけるような不思議な食感でし。」


ヌル「これはウニといって、海藻を食べる

  虫のようなものです。

  養殖下で丁寧に肥育されたものです。」


 次に運ばれたきたのはスープであった。

 エビ、あさり、イカ、タコから出汁をとり、

味はシンプルに塩のみであった。

 透き通ったスープに浮く

あおさ海苔が彩りと潮の香りを加える。


ヌル「人魚国の豊かな海で獲れた幸と

  塩を使っております。」


スプライト「ほう。

     これは海を凝縮したようなスープだな。」


ちまき「地味だけど美味いでし。

   体があったかいでし。

   早く次の食べたいでし。」


ヌル「パンは肉料理と一緒に

  提供させていただきます。

  お次は魚料理でございます。」


 茶色でテカテカ光る

の魚の切り身を見た2人が驚く。

 おそるおそる口にする。


スプライト「焼いた魚がここまで柔らかいのか!

      不思議な食い物だな。」


ちまき「あまじょっぱくて美味しいでし。

   焼いた魚とは思えないほど、

   ふわふわでしね。」


ヌル「龍神村の水竜伝説と同じ種の魚の肉を

   使っております。

   タレは私の故郷の世界のタレに近い物を

   再現しました。


   こちらが、お口直しのソルベでございます。」


 真っ赤な大根おろしのような

シャーベットが提供された。


スプライト「この甘い香りは危険だな。

     脳を直接刺激しよる。

     まさに魔性のフルーツだな。

     ほのかに懐かしい味がする。

     味に何か手を加えておるな。」


ちまき「あの化け物の実が、

   こんなに美味しいでしか。

   次に見かけたら、焼かないであげるでしよ。」


ヌル「ミミックプラントの実に、

   複数の果物の果汁を加えました。


   こちらが本日のメイン

   肉料理となります。

   パンと一緒にご賞味ください。」


 大きなハンバーグに、

おろしソースがかかっている。

 添えられているのは、バゲットのようなパンだ。


スプライト「私を謀っているのか?

     私が好きなのは

     野生味溢れる肉の塊なのだが。

     それと濃厚なソースだ。」


ちまき「まずは食べてから文句いうでしよ。

   美味しそうでし。」


ヌル「誠心誠意込めて作りました。

   これが私の全力でございます。」


スプライト「ちまきの言うとおりだな。

     見た目で文句を言うのは失礼か。どれ。」


 スプライトがナイフでハンバーグを切る。

 中から大量の肉汁が流れ出す。

 驚く2人。


ヌル(これは本当に手間がかかった。

  馬肉の赤身、脂身、霜降り牛肉。

  使用する肉はすりおろしタマネギに漬け込む。

  ミルで挽いたきめ細かい赤身挽肉と、

  包丁で叩いた粗い赤身挽肉と脂身と霜降り肉。


  骨とスジ肉、テールから作ったブイヨンを

  ゼリー寄せにし、冷まして砕く。

  バターオイルとともに粗挽き肉に混ぜる。

  こねて空気抜きをしたタネに、

  きめ細かい挽肉を饅頭の皮のようにして包む。


  これの表面を焼いてから蒸し焼きにする。

  中の粗挽きタネのゼリーと脂が

  熱で肉汁となり、外側のきめ細かい皮のような

  タネが水風船のように肉汁を閉じ込める。


  これにナイフを入れれば、

  肉汁がマグマのように流れ出す 

  大噴火ハンバーグの完成だ。


  外側の部分は滑らかで舌触りが良く、

  中の粗い挽肉が歯を押し返し、

  肉を食べているという満足感も与えてくれる。


  極め付けはシャリアピンソース。

  こんな名前だけどこれは和食なんだ。

  日本生まれのステーキソースだ。

  肉を柔らかくしたタマネギをすりおろし、

  醤油、酒、酢、砂糖、

  そしてすりおろしニンニクを加えた

  和風おろしソースだ。

  

  おそらく、スプライトさんが好きなのは

  デミグラス系のソースだろう。

  たしかに濃いソースは美味い。

  しかし濃いソースは素材の味、

  肉の味をボカす。

  臭みが強い肉なら良いが、

  肉が美味いならばソースは引き立て役で良い。


  和食の良いところは素材の味を活かす。

  本当の肉好きなら、

  きっとわかってくれるハズだ。)


  「溢れ出した肉汁は、

  パンと合わせてご賞味ください。」


 肉汁を吸わせたパンを齧る2人。

 スプライトの表情が変わる。


スプライト「私の負けだ。

     先ほどの非礼を詫びよう。

     これはとても手が込んだ絶品である。

     子供の食い物と侮ってしまった。」


ちまき「このパンも凶悪でし。

   外はカリカリ、中がモチモチなバタール。

   肉汁を吸わせると、外はパリパリの皮目で

   中が肉のような味と食感になるでし。

   まるで2品目の肉料理でし。」


 人魚のシェフが涙を流して頷いている。

 次に提供されたのは

生のサボテンの皮を剥いたものであった。

 皿の端には、白いクリームが添えられている。

 ヌルの特性マヨネーズであった。


ヌル「ヘブンズ・ペヨーテのサラダ仕立て

  でございます。

  お好みでマヨネーズソースをつけて

  お召し上がりください。」


スプライト「おお! これは嬉しいな!

     このクリームを付けて食すのだな。」


ちまき「野菜は嫌いでし。

   でも仕方ないから食ってやるでし。」


 スプライトは口いっぱいにサボテンを頬張る。

 咀嚼をすると顔が恍惚の表情に変わる。

 ちまきはサボテンを一口齧った。

 強烈な苦味に顔をしかめる。


ちまき「クリームいっぱい付けないと

   食えないでし。

   てか、これ毒物の味がするでしよ!?」


スプライト「お前にはまだ早いのだ。

      オトナの味というものだ。

      要らぬならアタシがもらうぞ。」


 スプライトは

ちまきの分のサボテンをたいらげた。


ヌル(麻薬成分を含むサボテンを……。

  レタスみたいに食っちまったよ。

  ハンパねえな。)


 次に提供されたのは、

フレッシュモッツァレラとベリーの

カプレーゼ仕立てであった。

 ミントの葉が添えられ、赤白緑の

イタリア国旗の色合いに仕上げられている。

 ソースはエルフの森で作られた

メイプルシロップである。


スプライト「乳製品か。

     それと見たことのない果実だ。どれ。


     ……。甘みと酸味。

     そして異なる食感の組み合わせ。

     見事だな。」



ちまき「これはおいしいでし!

   このイチゴ、すごい甘いでしね!!

   この蜜も蜂蜜とは違う。砂糖とも違う。

   美味しいでし!」


ヌル「乳製品はチーズ。牛乳を加工したものです。

  ベリーはシロイナワ産。

  寒暖差の激しさが作り上げる

  奇跡のフルーツです。

  蜜は樹液を煮詰めたものです。」


スプライト「シロイナワ……。

     あの過酷な秘境を踏破したか。」


 次に提供されたのはアイスクリームであった。


スプライト「ソルベに続き、氷の菓子か。

     乳だけではないな。

     不思議な香りだ。

     どこか懐かしくもある。

     何が入っているのか全くわからぬ。

     うまい。」


ちまき「幸せでし。いつまでも舐めていたいのに、 

    口の中で溶けてなくなるでし。」


ヌル「牛乳、卵、砂糖。

  それに発酵したバニラビーンズという

  植物の種子と醍醐と呼ばれる

  油を加えております。

  バニリンという香りの成分は

  母乳に含まれます。

  哺乳動物の本能が好む香りです。」


  (まさかロストテクノロジーの一つに

  数えられる、【醍醐】が異世界で

  手に入るとは思わなかった。

  黒エルフが作るバターオイルのような乳製品。

  醍醐味の語源になったものだ。)


 最後に提供されたのはコーヒー。

付け合わせはナミノエで栽培された

デーツを干したものだ。


スプライト「ほう。不思議な香りのコーヒーだな。

     このドライフルーツも初めて見る。」


 ちまきはコーヒーに大量の砂糖とミルクを

投下して飲んでいる。


ちまき「たしかにいい香りでし。」


ヌル「これは探すのに苦労しました。

  頑固なドワーフの職人が

  標高の高い農園で栽培した

  最高のコーヒー豆を使用しております。」


  (コーヒーチェリーを食べる動物のUNKOから

  取り出した豆で作ったのは伏せておこう。

  ジャコウネコのUNKOから取り出した

  コーヒー豆で作る、スペシャルティコーヒーは 

  日本の喫茶店で飲むと

  1杯1万円近い高級コーヒーだ。


  高山で動物のUNKO集めをしてくれた

  フレゴリ兄弟さんには感謝しなきゃな。)


 2人の客人がコーヒーを嗜む姿を見た、

フレームアイとゴリアシが、

涙を流し

互いの肘を合わせてガッツポーズを決めている。

 過酷な任務であったことが伺える。


ヌル「以上で本日の全ての品が出揃いました。

  お気に召しましたか?」


スプライト「一つだけ確認したい。

      マハルポージャを殺した後に

      お前は何をしたい?」


  スプライトは真剣な表情だ。

  言葉には強い語気が含まれ、場は静まり返る。

  会場に集まった人々に緊張が走る。




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