97 最強の冒険者
97 最強の冒険者
動き出した竜王の化石。
砂や泥で肉付けされた、
その巨体は山のようであった。
長く伸びた首に小さい頭が9つ。
巨木のように太く、首と同じくらいの長さの尾。
まるで最大の恐竜、アルゼンチノサウルス9体を
1つにしたような姿であった。
歩き出し、その首は蛇のような動きで
ヌルたちに襲いかかる。
ヌル「意外と素早いぞ!
生物じゃなくなり、強い体になったから
動けるようになったんだろうな。
生物だった頃は、頭を支えるのが精一杯で
まともに首は動かなかったはず。」
レスベラが次々と首を切断する。
しかし首はすぐにくっつき、元通りになる。
レスベラ「マジかよ!」
うまーるが集中し、雷切に電力を注ぐ。
2振りの雷切は電極のような役割を果たし、
それぞれの剣の鋒からアーク放電を放ち
鋒同士を結ぶ。
荒れ狂う蛇のようにウネるアーク放電。
まだ慣れていないためか驚き慌てふためる、
うまーる。
上手く縄跳びができない、小学生のようだ。
うまーる「わわっ! あちっ!
危ないんだよ! これは!」
うまーるが雷切を竜の首に向けて振り回すと、
竜の首は溶断のように焼き切れた。
しかし溶断した首もすぐに復元されてしまう。
ヌル「雷切……。
雷獣クロネコが愛用した伝説の武器か。
すごい武器だな。
たしかに扱うのは難しそうだ。
しかしこれ、どうやって倒せばいいんだ!?
核を破壊すればいいんだろうけど。
山のような巨体の中の
豆粒のような核に
1点集中の攻撃を叩き込む。
無理くさいぞ。」
(巨大、重さの弱点を考えろ!
こいつには翼が無い。飛べない。
落とし穴!!
穴を掘る?
そんな時間は無いな。
最初からある穴。
そうだ。化石、石灰岩。
そして洞窟が多い。
それは雨水による、石灰岩の侵食!
サラワクチャンバーのような
まだ未発見の地下大空洞があるはずだ!!)
みんな、時間を稼いでくれ!
探したい物があるんだ!
頼む! コイツは簡単に倒せる!!
無理に攻撃しなくていい!)
クルム「わかったわよ。
そうね、ゴリラをエサにして、
食べている間にってのはどうかしら?」
レスベラ「コイツ、イケメンじゃねえからな。
パス! クルムにやるよ!」
うまーる「頑張るんだよ!!
ヌルは魔法で地中レーダーを使う。
地面からの反響を感じ取る。
しかしヒュドラの足音や地響きが邪魔をし、
作業は難航する。
ヌル「どこだ、どこにある!
あった! ここだ!
みんな! ここに誘き寄せるぞ!!」
ヌルたちに誘導されたヒュドラは、
地面の陥没とともに穴に落ちた。
ヌルは地属性の魔法を使い、
砂と泥を動かし穴を埋めた。
ヌル「定期的に監視だな。
出てきそうなら爆破かなぁ。
よし、マーボーさんたちと合流しよう。」
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ヌルたち4人は来た道を引き返すと、
マーボー、アッチ、フレームアイ、ゴリアシ
の4人が、倒した相手を捕縛していた。
マーボー「よう! 無事で良かったゼ。
すげえ音したから心配してたんだぜ。
ピュイ♪」
ヌル「いやービビりましたよ。
竜王の化石が動き出したんですよ。
動きが遅かったのが救いでしたよ。」
フレゴリ「カァーッ!
華麗に駆けつけて、
活躍したかったぜ!」
相変わらず見事なハモリである。
クルム「アレは物理脳筋には無理よ。
さっ、やること終わったし、
早く帰りましょう。」
ヌルの転移魔法で8人と、
捕虜の4人を連れ国連本部へと帰還した。
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本部に戻り、
こまちゅが調合した自白の薬を捕虜に飲ませる。
捕虜の口から発せられた事の真相は
以下のようなものであった。
竜王の化石のゴーレムは、
罠であり捨て駒であったこと。
本命は宝石の採掘であったこと。
目当ての虫が閉じ込められた宝石は
入手済みであることであった。
ヌル「しまった! 魔王軍の狙いは竜王ヒュドラの
化石じゃない、竜王の血液だ!!」
レイカ「はるか昔に死んだ竜の血を
どうやって復元すんのよ。」
ヌル「竜の血を吸った虫が閉じ込められた琥珀。
その琥珀の中の虫から
竜の血を取り出すつもりだ!」
レイカ「いろいろ考えてんのね〜。
まぁ、出てきたらみんなで
ボコッちゃえばいいよ⭐︎」
ヌル(冗談に聞こえないのがスゴイよな。
まぁ、デカいだけのやつはみんなで
囲んで火力ブッパで楽勝かもしれないな。)
「そういえば天秤の件はどうなってますか?」
レイカ「そうね。当面はソッチのほうが
重要よね〜。
ムラちんに聞いた方がいいと思うよ。
昔のオンナ?みたいだし。」
話を振られたムラは急に元気を無くす。
ヌル「ムラ王、
鍵を持つ女性とはどんなひとなんですか?」
ムラ「……。
一言で言うと、最強の冒険者だな。
宝石と美味いものが大好き。
あとは強者と戦うのも好きなようだ。」
ヌル「どういう経緯で鍵を渡すことに?」
ムラ「アレは、鍵である前に希少な宝石なのだ。
今ではもう造ることができない、
失われた古代技術で造られた
宝石ガラスなのだ。
もちろん高価な宝石に劣らない輝きを持つ。
俺は昔、その冒険者【スプライト】
を口説こうとした。
俺が伝説の宝石【カルメルタザイト】を
手に入れて贈ることができたら、1発……。
俺の女になってくれと。
スプライトは入手できなかった場合の
ペナルティを要求してきたのだ。
期待をさせておいて、
達成できなかっただけでは納得がいかないと。
俺は約束した。
一年以内に達成できなかったら、
王家の秘宝の宝石ガラスを贈ると。
そして結果は達成できずに、
宝石ガラスを贈ることとなったのだ。」
ムラはタバコの煙をくゆらせながら、
目を細め遠くを見つめる。
ヌル(なんか渋い雰囲気で語ってるけど、
ダメだなこのオッサン。)
「なるほど。
その宝石ガラスですが、
鍵として使った後はどうなるのですか?
そのまま残るのか、消費されてしまうのか。」
ムラ「消えはせんだろう。」
ヌル「であれば、借りるというていで
交渉を進めましょう。
返せという話で進めると、
より困難な請求をされるでしょう。」
ムラ「交渉の材料、アテはあるのか?」
ヌル「美味い物、ですよ。
スプライトさんの好物を教えてください。」
ムラ「肉だな。分厚いステーキと
濃厚なソースを好む。
あとはサボテンだな。苦いサボテン。
酒も好きだったと思うぞ。」
ヌル「わかりました。
今から言う物を、皆さんのチカラで
揃えていただきたい。
極上の料理でスプライトさんのご機嫌をとり、
協力してもらいましょう。
あと、気になっていたのですが、
セキュリティをチカラづくとは、
どういうことなんでしょうか?」
ムラ「天秤の守護者、巨神兵【ギーグ人形】
を破壊するということだ。
大きなゴーレムなのだと思う。
伝承によると、魔力で動く
ゴーレムというよりは、
機械仕掛けのカラクリのようだ。」
ヌル「もしかしてロストテクノロジーですか?
対処法はわかりませんか?」
ムラ「調べておく。料理の件、任せたぞ。」
ヌル「お願いします!
では、料理チームは準備を始めようか。」
ヌルの指示で皆が食材集めに奔走する。
ヌルは簡単に入手できた食材の中で
時間のかかるものから準備を始める。
人魚国のシェフ、ぽちぽちとユミィ、
ヒミカも準備を手伝う。
ヌルは仔牛の骨からの
ブイヨン作りから取り掛かった。
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ーー3日後ーー
国連本部の門を開き、やってきたのは
大柄な剣士の女と小柄な魔道士風の少女であった。
赤い髪の大柄な女性は背中に巨大な剣を背負う。
その身長は2メートルを軽く超える。
メリハリのあるボディは
鎧の上からでもわかるほどであった。
美しい鬼人族の女であった。
相棒の小人は幼さが残る、金髪の少女であった。
自身の背丈を超える長さの杖を背負っている。
魔導士としては
冒険者最強と言われる少女であった。
2人の女がムラと再会を果たす。
スプライト「ムラよ。
今頃になって、宝石ガラスが
必要になったって?
返して欲しいなら、
それ相応の対価が
用意できてるんだよな?」
カルメルタザイトでも見つかったか?」
ムラ「いや、返さなくていいんだ。
少しだけ協力してほしい。
知っておるだろう? 人類の危機を。
ドワーフ王家の宝物殿を開く鍵なのだ。
あれは。
最高の馳走を用意させた。
頼む、協力してくれ。」
スプライト「ほう。
では、その馳走とやらの
味次第で協力してやるとするか。」
ちまき、厳しく評価してやろうぜ。」
ちまき、と呼ばれた少女が興奮している。
ちまき「久しぶりのご馳走でし?
最近、そのへんの獣の臭い肉ばっかり
だったから、楽しみでし!!」
ウエイターに扮したヌルが2人を案内する。
ヌル「どうぞこちらへ。」




