96 ウランゴーレム破壊作戦
96 ウランゴーレム破壊作戦
ヌル「青いマグマ。禁足地。呪い。
……まさか!
この青い光はチェレンコフ光なのか?
だとすると、コレはウラン!
しかも核分裂反応を起こしてる!!
ウランのゴーレムだと!?
歩く原子炉じゃないか!!」
ヌルは地図を用意してもらい、
そのウランゴーレムがいる地域を調べる。
ヌル(なるほど。
ここはアフリカにある【オクロの天然原子炉】
と同じような地形なのか。)
ヌルは考えた。
どうすればコレを破壊できるのかを。
1番参考になるのは女神像の前で見た、
過去の勇者の戦いであった。
ヌル(隕石で潰すか……。
恐竜絶滅の二の舞になるか!?
あのとき勇者は地面に細工したり、
防護壁を使ってたよなぁ。
やはり、皆の意見も聞いてみよう。)
ヌルは女神像の映像で見た未知の魔法具について
皆に訊ねてみた。
1つは聖杯のような物。
もう1つは天秤のような物であったこと。
ほえほえ「そういえばスカディ族の伝承に
【エリアスの聖杯】があるな。
今こそ封印から
解き放つ時かもしれないな。」
エミー「天秤はおそらく、ドワーフ族に伝わる
【ユースティティアの天秤】だろうねぇ。
ちょいと、
あのボンクラに話を聞いてくるよ。」
ヌル「待ってください!
エミーさん、すみません。
少し相談したい事があるのですが。」
ヌルはエミーを呼び止めた。
ヌルは自分とレスベラの防具、
そしてうまーるの盾を改良したい事を相談した。
ヌルは鎧を脱ぎ、鎧と盾をエミーに預けた。
エミー「わかったよ。職人に伝えとくね。
気をつけて行っておいで。
うーちゃんとベラちゃんのも任せときな。」
エミーはムラの元へと向かった。
ヌルは魔法具について改めてほえほえに問う。
ヌル「お待たせしました。
ほえほえさん、
詳しく聞かせてもらえませんか?」
ほえほえの話は以下のようなものであった。
聖杯の名はエリアスの聖杯。
スカディ族が住む氷の大陸の地下4000メートル
に地底湖【エリアスの泉】があること。
そこへ行くための扉を開く魔法は、
スカディ族の長が代々継承していること。
そして地底湖の寒さや水圧に対するスキルが
必要であることであった。
ヌル(南極にあるボストーク湖と同じものか。
氷の重さによる圧力で凝固点が下がり、
氷点下でも凍らずに水のままのため出来た湖。
ロシアの研究チームが、
調査のための小さな穴を開けるのに
23年かかったという。)
「寒さと水圧、それと呼吸もですね。
酸素ボンベが要るなぁ。
耐寒ウエットスーツに、
耐圧はどうしようか……。」
ヨーリー「ヌルちゃん。
アタシの泡魔法で
全て解決するんじゃないカナ?」
ヌル「えっ!? 可能なんですか?」
ヨーリー「たぶんネ♪ 行ってみよっか♪」
ヌル、ほえほえ、ヨーリーの3人で
エリアス湖を攻略することとなった。
残りの者は天秤探索の
情報収集にあたることとなった。
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ーー氷の大陸・スカディ国の首都ウラバンーー
ヌルたち3人は
転移魔法で氷の大陸に移動していた。
種子保存庫から歩く事30分、
スカディたちの国ウラバンに到着した。
ほえほえは2人の部下を呼びつけ、指示を出す。
その後、エリアス湖の入り口へと向かう。
女性の部下、ゼルファが小道具を用意し、
男性のヨシビトは何やら大きな水瓶を積んだ
ソリを引いている。
エリアス湖の入り口に着くと、ゼルファが
宝箱から魔法具を取り出し、ほえほえに手渡した。
ほえほえが手にした魔法具は、
ヌルには見覚えのある物だった。
それは、イムの記憶の映像に出てきた
シンドバットのメンバーのスカディ男性が
使っていた魔法具だった。
ヌルはそのことと記憶の映像の話を
ほえほえに話した。
ほえほえ「そうか。
コレはタダの鍵ではないのだな。
後で調べてみよう。」
ヌルはほえほえが持つ魔法具を鑑定してみる。
ヌル「六花万華鏡
〈クリスタルスノウ・カレイドスコープ〉
氷属性空間魔法を使用できる。
だそうです。
そういえば、過去の映像では
大きな竜の足元を
地面ごと凍らせていました。」
ほえほえ「なるほど。感謝する。
それでは行くとしようか。」
ほえほえが魔法具を覗き込み念じると
氷の地面に穴が空いた。
直径2メートルほどである。
ヨーリーが神楽笛を吹くと3人は泡に包まれた。
泡の中は暖かかった。
ヨシビトが水瓶の中の液体を
穴の中に盛大に流し込むと、
ほえほえが号令をかける。
ほえほえ「穴に飛び込め!」
3人は穴に飛び込む。
ボブスレーのように超高速で
氷の滑り台を滑走する旅が始まった。
約5分で地下4000メートルの地底湖
【アリエスの泉】に到着した。
当然光が届かない空間のため、
ヌルは光魔法で明かりを灯す。
驚くほど透明度の高い氷と水。
魚はもちろん、海藻すら無い
静かで神秘的な空間であった。
何も無い水槽の中に浮いているような、
そんな感覚であった。
ほえほえを先頭に、
ヨーリーが魔法で泡を動かし進む。
やがて、石で作られた祭壇のような物が見えた。
その祭壇には聖杯が祀られていた。
ヨーリーが魔力を操作すると聖杯が
ほえほえの泡に吸い込まれた。
ほえほえは聖杯を抱き抱える。
ヌル「お2人のお陰で、驚くほどアッサリ
入手できましたね。
俺の魔法で地上に戻りましょう。
ヨーリー様、このまますぐに
地上に戻っても大丈夫ですか?」
ヨーリー「戻って大丈夫よ。
なんでそんな心配するのかナ?」
ヌル「急激な圧の変化は、体に良く無いのです。
内臓が膨らんで死んでしまったりします。
深海魚を釣り上げると、
口から内臓出ているみたいな。
大丈夫なのですね。では帰りましょう。」
ヨーリー「内臓が……?
その話、あとでゆっくり聞かせてネ♪
3Pデート、もう終了なのネ。
まぁここ何も無いもんネ。
魔王ちゃん可愛がったら、
またみんなでどっか楽しいとこ
遊びに行きましょ♪」
ほえほえ「ヨーリー殿、感謝する。
おかげでスカディ族長の務めを
無事に果たすことができた。
約束の"あいすくりむ"は後日、
届けさせます。」
ヌル(約束……いつのまに!?
代金がアイスは安すぎる気がするけど、
この世界のアイスは至高の嗜好品だもんな。
なんであれ助かったわ。
1人じゃコレ無理くさかったもんな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー国連本部ーー
聖杯を入手した3人が帰還すると、
なにやら本部が騒がしい。
レスベラ「ヌル! たいへんだ!
ずんだが行方不明なんだ!」
クルム「あと、新たな問題が発生したわよ。
会議室に急ぎなさい。」
ヌル「なんだって!?
ずんだは、多分大丈夫。
以前も突然いなくなったけど、
ちゃんと大事な場面で助けてくれたよ。
心配いらないさ。
ちょっと行ってくる。」
首脳会議に参加するヌル。
ほえほえが聖杯を皆に披露する。
こまちゅが聖杯を手にして目を細める。
こまちゅ「なるほど。早速、皆で協力して
魔力を溜めることにしよう。
お前たちが氷の大陸に行っている間、
大きく2つの動きがあった。
悪い話と悪い話。
どちらから先に聞きたい?」
ヌル「良い話ないんすね……。
酷い方の話から聞きたいです。」
こまちゅ「指災儀が新たな災いを検知した。
場所は竜の墓場。
狙いはおそらく、
竜王ヒュドラの化石であろう。」
ヌル「まさか!キメラの素材か!!
竜王ヒュドラってヤバいんですか?」
こまちゅ「伝承によると、アマツを超える
化け物だ。
まぁ、総力を挙げれば討伐は
難しくないであろう。
早めに潰せるなら、
やるにこしたことはないであろう。」
ヌル「もう一つの話は?」
こまちゅ「はぁ……。
この者に直接訊いた方が早いであろう。
くだらな過ぎて話す気にならぬ。」
ヌル(なんで選択肢を出したんだろう。)
こまちゅが指を指した人は、
顔を腫らしたムラ王であった。
ヌル「ムラ王、説明をお願いします。」
ムラ「お、おう。
先ずな、ユースティティアの天秤
なんだがな、これはドワーフの
宝物殿にあることがわかった。
入手に必要なのは、鍵と合言葉だ。
しかし困ったことにな、
鍵と合言葉は失われてしまっておる。」
ゴギンッ!!
エミーがハンマーでムラ王のヘルメット型王冠に
強烈なツッコミを入れる。
ムラ王は悶絶している。
エミー「何が“失われた”だい!
鍵となる指輪を女に貢いだ挙句、
先代から教わった合言葉を
ド忘れしたのはドコのドイツだい!!
そういうわけでね、
鍵を持つ女は今探してる。
おそらく、すぐに連絡は取れるだろうよ。
そんなわけで、もう一つの問題を
先に片付けておくれ。
天秤と石鉢の件は進めとく。」
ヌル「ありがとうございます。
ひとつ確認したいのですが、
鍵と合言葉が無いと、
どんな不都合があるのでしょうか?」
ムラ「鍵は宝物庫に入る為に必要だ。
合言葉は、セキュリティを解くのに必要だ。
ただ、合言葉は無くとも
チカラづくでも行ける。」
ヌル「なるほど。わかりました。
では、鍵だけでもお願いします。
とにかく急いで
竜の墓場に行かないとだな。」
こまちゅ「魔力が少ない脳筋どもを
連れてゆくと良い。かまわぬな?」
こまちゅはレイカとヨーリーの方を見て尋ねる。
レイカ「あの2人ね。」
ヨーリー「ウチからは、アッちゃんかしら。」
マーボー「オレも行くぜ。
細かい準備とかは俺には向かん。
得意な人に任せた方がいいよな!
ガハハハハ!!♪」
レスベラ「そうだな!
アタシらは作戦どうこうよりも
敵を削った方がいいよな!」
マーボーとレスベラが肩を組んでいる。
気が合うようだ。
うまーる「あのね、わたしもね、体動かす
お仕事の方が好きなんだよ。」
ヌル「うまーる、雷切は使えているか?
実戦ではまだだろう?
いい機会だ。練習するといいよ。
クルム、怪我人が出るかもしれないから、
一緒に来て欲しい。
ヒュドラに関することも
色々教えて欲しい。」
クルム「仕方ないわね。
特上の肉と酒。
それと“あいすくりむ"でいいわよ。」
ヌル「よし、準備できてメンバー揃ったら
行こうか。」
エミー「待っとくれ!
はい、頼まれてた防具の改良。
超特急で仕上げたよ!
危ないとこに行くんだろ?
間に合ってよかったよ!」
ヌル「ありがとうございます!
すばらしい出来です!
うまーる、レスベラ、
白亜装備の弱点であった、
耐衝撃を強化したんだ。
装備し直していこう。」
レスベラ「まじか。エミーさんありがとう!」
エミー「女の子なんだからね。
ケガするんじゃないよ!」
セラミックのような素材でできていた白亜装備が
金属の光沢を放っている。
ヌルは【最強の素材】とも言われる
プロテウス構造に近い改造を
鎧と盾に施してもらっていた。
レスベラがエミーをハグする。
ヌルとレスベラは着替え、
竜の墓場へと向かった。
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ーーワイハアンズ岩石地帯・水晶の洞窟前ーー
ヌルの転移魔法で現れたメンバーは、
ヌル、うまーる。レスベラ、クルム、マーボー
アッチ、フレームアイ、ゴリアシの8名であった。
ヌル「クルム、ヒュドラの化石は
ドコにあるかわかる?」
クルム「地元じゃないし、行ったこともないし
知らないわよ。
たしか海の近くらしいのは
聞いたことある。」
マーボー「ガハハハハ! さすが博識だな!
その通りだ。
俺が案内するぜ! ピュイ♪」
フレームアイ「またご一緒できるとは。
この命に代えてもお守りします。」
フレームアイはレスベラの手を取り跪く。
ゴリアシ「魔王軍はもちろん、虫1匹
近づけさせません。
それとここの道はよろしくないですね。
石につまづいて転んだら大変だ。
私の手を離さないで下さい。」
ゴリアシはクルムに手を差し出す。
クルムはゴリアシの手に荷物を渡す。
クルム「ありがと。手が片方空いてるわね?
日傘もお願いするわ。」
ゴリアシは出鼻を挫かれ、
クルムの後ろを傘をさしながら、うなだれて歩く。
フレームアイは右手にレスベラ、左手に
うまーると手を繋ぎ歩く。
悪路を自分よりもスイスイ歩く
2人に、驚きを隠せないようだ。
レスベラ「地球は〜でっかい〜ゴミ箱だぁ〜♪
ずんだがいないと寂しいなぁ。」
レスベラは右手に掴んだ石ころを
全力で峡谷の底に向かい投げ込みながら歌う。
うまーる「ふんふ〜ふんふふふ〜ふんふふ〜♪
ずんちゃん元気かなぁ?」
ヌル(また意味不明な歌を……。
てか、地球って言った? 言ったよね??
高いところから石を投げるとか、
やったらダメなやつだよなぁ。
グランドキャニオンでやると
罰せられるやつ。)
しばらく歩くと、開けた場所に出た。
風から微かに潮の香りがする。
道を塞ぐように
屈強な4人の男が警備をしている。
マーボー「ずいぶん堂々と悪いことヤッてんだな。
ガハハハハ! ピュイ♪」
フレームアイとゴリアシの顔に緊張が走る。
フレゴリ「出番だな! 手早く片付けて
イイトコ見せねーとな!」
相変わらず寸分の狂いもない、
見事なハモリである。
兵「やはり嗅ぎつけてきたな。たったの8人か。
舐められたものだ。」
レスベラ「4人の方が舐めてね? 大丈夫か?」
敵兵4人が、大きなエモノを構える。
いずれも巨躯の鬼人族だ。
鬼人族は巨人族とも言われる程、
体が大きくチカラが強い。
それぞれ、大戦斧、戦鎚、大矛、
鎖鉄球を構える。
アッチ「ヌル殿、ここは我々にお任せを。
奥にはおそらく、テイム系の魔術師などが
いると思われます。お気をつけて。」
フレゴリ「かぁ〜! 見せ場なしだったか!」
同じ台詞に同じリアクション。
やはり訓練された双子芸人臭を漂わせる2人。
マーボー「俺は球のヤツと遊ぶわ。ピュイ♪」
兵「行かせるわけがないであろう。」
アッチが砂の地面に槍を突き刺す。
地面が盛り上がり、中央が割れた。
砂が敵兵を押しのけ、道ができた。
ヌル、うまーる、レスベラ、クルムの4人が
開いた道を駆け抜ける。
兵「おのれ! 行かせるか!」
隊長格らしき兵は、鎖に繋がれた鉄球を
振り回し、ハンマー投げのように
ヌルに向けて投げつける。
マーボーが伸ばした竹槍をバットのように使い、
ボールを打つように弾く。
マーボー「遊び相手は俺だ。」
大矛をヌルに向け投げようとする兵を
牽制するアッチ。
大戦斧を構える男を牽制するフレームアイ。
戦鎚の兵の前には
ゴリアシとラムが立ちはだかる。
フレゴリ「わりーけど、ギャラリーいねえからさ、
サクッと終わらせるわ。」
ヌルたちが登り坂を駆け抜ける。
駆け抜けた先は断崖、その先は海であった。
崖の前には、
まるで電柱のような岩の瓦礫が散乱する。
どうやら、その瓦礫がヒュドラの化石のようだ。
複数の魔術師風の男と、護衛の兵。
それと採掘作業担当のような兵もいる。
ヌル「武器を捨てて投降しろ! 命は保障するぞ!」
魔術師風の男が口を開く。
「守衛は何をしておるのか。まぁよい。
間近で見たかったのお。」
敵軍が転移魔法で消えた。
瓦礫の上に置かれた
水晶のような大きな石が輝き出した。
石柱のような化石が次々と起き上がり、
砂や泥を纏い、建物のように組み上げられていく。
山のように大きな胴体。
樹齢数千年の巨木のような太い脚が4本。
首の長さだけでも、ゆうに10メートルは
あろうかという長い首に小さい頭部。
驚くのはその首が9本もあり、頭部も9つある。
クルム「九頭竜川の名前の由来はコレよ。
あまりの巨体のため、歩くことができず、
触手のように発達した体毛で
周囲のあらゆる生物を
捕食していたらしいわ。
傷を与えても
高い再生能力ですぐに回復したという。
竜の王の名を冠した伝説の化け物。」
ヌル「これは……。
頭の数は再生能力か!
自然界の突然変異なら
双頭がいいとこだろ。
プラナリアは頭を割ると分裂して増える。
同じ原理か。
コレは触手が無いだけ、
まだマシなんだろうな。
魔王軍の目的は、
ヒュドラのキメラではなく、
このゴーレムの製造だったのか?
そして俺たちを誘き寄せ、始末する。
罠だったか。
しかしこれ、
歩けないなら逃げてもいいんじゃね?」
レスベラ「どう見ても生き物じゃないし、
全力でぶっ壊してもいいんだよな?」
レスベラは2本の刀を抜き構える。
うまーる「ふにゃあああ。
こんな大きい動物さんいるんだよ?」
うまーるがヒュドラを見上げて呆然とする。
本能的に危機を察し、
両手に雷切を持ち帯電を始める。
巨大な竜王ゴーレムが歩き出した。
一歩踏み出すごとに地鳴りのような音と、
地震のように揺れ動く大地。
ヌル「歩けるのかよおおおお!!!」




