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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第六章 国連軍発足
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92 聖女の歌【雪融け】

92 聖女の歌【雪融け】




 勇者は聖杯を取り出し、

中の液体を飲み干した。

 勇者の体から凄まじい量の魔力が溢れ出す。


 魔王ラギは魔力を全開にし、

全身から粉を噴き出した。


ラギ「大気を呪いで満たしてやる。

   その無茶苦茶な魔力消費が

   いつまで続くかな?

   魔力が切れた時がお前の最期だ。

   最強クラスの呪いを味わえ。」


勇者「もう終わりにしよう。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 場面が切り替わる。

 飛ばされた場所はシロイナワ高地であった。

女神像の前に、勇者を除くシンドバットの

メンバーが立ち尽くす。


クロネコ「くそっ! くそっ! 

     今から走ったら

     どれくらいかかるんだ!?」


エルフ「7日はかかるわね。」


聖女「みんな、お願いがあるの。

   私の歌の魔法をザトマルに届けたい。

   みんな、力を貸して。」


人魚「それしかないわね。」


 他の者たちは手を繋ぎ、

女神像に魔力を捧げ祈る。


 ジャスミンは歌い始める。

 胸元の子守貝が眩い輝きを放つ。

 ジャスミンの歌が響き渡る。


「♪春風のような あなたの温もり

 ♪私の心を 静かに解かしてゆく


 ♪あなたはいつも ひとりで背負う

 ♪私をおいて ひとり旅立つ


 ♪眠れぬ夜は 空を見上げて

 ♪星を結んで あなたを重ねる


 ♪おいて 行かないで

 ♪行かないで 行かないで


 ♪あなたの 無事を願う

 ♪これからも 伴に居たいから


 女神像がヌルたちに話しかける。


「遠く離れた場所で行われている、

勇者と魔王の戦いの様子をお見せしましょう。」


 女神像らしき声がヌルたちに語りかけると、

何もない空に

魔王と勇者の戦いの映像が映し出された。

 その映像はヌルたち4人にしか

見えていないようだ。



 勇者は剣を空に向けて魔法を使う

  「天属性魔法【流星群】」


 ベイパーコーンを纏った複数の火の玉が

空を割る爆発音と共に魔王の城に降り注いだ。


 勇者は剣を地に突き刺し、魔力を注ぐ。

 土が空気を含み、クッションのようになる。

 それが隕石の衝撃を最小限に抑える。

 大きな結界の中は

舞い上がる粉塵で真っ黒になる。


 あまりの衝撃に、

堅牢な結界も耐えられず霧散した。


 やがて爆心地から複数の火炎旋風が吹き荒れた。

 流星の爆撃を免れた者達が

一瞬で炭化するほどの熱が放出されている。


 火鼠が走り、海に飛び込んでいる。


勇者「不思議だ。

  激しい爆発音に、舞い上がる粉塵。

  もう何も聴こえないし見えないハズなのに、

  ジャスミンの歌い声が聴こえる。

  歌っている姿が視える。

  そして、不思議なチカラが湧いてくる。」


 聖女の歌には、仲間たちの祈りと魔力が

乗せられていた。

 不思議なチカラによって勇者は強化されていた。


 勇者は回復と防御の魔法を強化しつつ、

次の攻撃を放つ。

 勇者は剣を地に突き刺し魔力を込める


勇者「地・炎属性複合魔法【ホノカグツチ】」


 大きな地震の後に地面が割れ、

マグマが噴き出した。


 勇者はさらに、

地に突き刺した剣に魔力を込める。

 ラギ大陸周辺の海底火山が

一斉に爆発的な噴火をする。


勇者「地・海属性複合魔法・

   八方タイダルウェイブ」


 ラギ大陸を囲むように

八方向から巨大津波が押し寄せる。

 その高さは100メートル級の高さに及んだ。


 海水がマグマに当たり

激しく水蒸気爆発を起こす。


 8の津波が大陸の中央でぶつかり合い、

大きな水柱となった。

 戻る波が全てを飲み込み、

海へと引き摺り込んだ。


 魔王ラギは魔力の防御壁を

全力で展開し耐えていた。

 しかし、あまりに凄まじい勇者の攻撃が続き、

魔力の限界を迎えていた。


ラギ「なんなんだこの化け物は!!!

   これが本当に人間なのか

   俺のチカラが! 兵が! 城が! 領地が!


   しかし、世界中に拡散した呪いは

   俺を殺したとて消えはせん!

   永遠に苦しみ続けろ人間共!」



勇者「今すぐは無理でも、人類の叡智は

   必ず呪いを克服する。

   いつか必ず現れるさ。」


  『ーー頼んだぞーー』


 同じ空間にいない2人の、

勇者とヌルの視線が合った。

 

 最後の、『頼んだぞ』という言葉が、

ヌルはまるで自分に向けられたような、

そんな錯覚を覚えていた。


 勇者が空に大きな魔法陣を描いた。

 魔法陣から放たれた光がラギを焼き尽くし、

消滅させた。


勇者「光属性極大魔法・天照(あまてらす)


 勇者の頭の中にこだまする。

 聖女の歌声が。


「♪陽だまりのような あなたの微笑み

 ♪雪は春雨に 芽吹き花が咲く

 ♪あなたは 今も ひとり戦う

 ♪わたしは 歌に 祷りを込める

 ♪篠突く雨に 打ちひしがれて

 ♪冴ゆる月夜に 震えて眠る

 ♪凍えて しまうよ

 ♪触れて 触れて 触れて


 ♪涙はやがて雪へと変わる

 ♪幸せな現在を 思い出にしないで


 ♪神様 お願い 

 ♪彼を連れて 行かないで」


 絶対に聞こえない状況で起きた奇跡。

 鳴鳥の子守貝と竜首宝珠、

そして女神像が起こした奇跡であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー10日後ーー


 1隻の船がラギ大陸があった場所を

航行している。

 乗っていたのは

シンドバットのメンバーであった。

 緑色の小さな鳥が飛び上がり、

けたたましく鳴いた。


ヨモギ「ポンゲエエエエエ」


 その場所は海に囲まれ、

海から突き出した岩でできた柱が立っていた。

 勇気の柱である。


 その頂には剣を地面に突き刺し、

剣にもたれかかるようにして

絶命していた勇者の亡骸があった。

 その皮膚には、

竜の鱗のような瘡蓋(かさぶた)があった。


 泣き崩れる聖女。

ヨモギの悲しそうな鳴き声が

静かな海に響いていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 さらに場面は変わり、

そこはドワーフ国の工房であった。

 シンドバットのメンバー、ドワーフのズークが

天秤のような魔法具の前で真剣な顔をしている。

 通常の天秤の皿にあたるものが、

この天秤は壺のようになっていた。

 ズークが左の壺に宝石のような物を

次々と投入していく。

 天秤の均衡がとれたとき、ズークは右の壺から

宝玉のような丸い物を取り出し掲げ、

ガッツポーズしている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 さらに場面は変わり、再びシロイナワ高地。

 女神像の近く、岩の居住区出入り口の近くに

鉄柱が建造されていた。

 セイレーンの聖女が空を飛び、

鉄柱の上の受け皿に宝玉を置いた。

 置かれた宝玉が淡い光を放った。


 女神像の解説が流れ始める。


「勇者は自分の命と引き換えに、

魔王ラギを討ち滅ぼしました。

全てを焼き尽くし、

大陸ごと海に沈めるほどの攻撃でした。


それは仲間を巻き込んでしまう。

そう考えた彼は1人で戦いに臨みました。

残した仲間に世界の再建を託して。


世界は平和を取り戻しました。

ラギの死後、海底に沈んだ邪神の指輪は、

再びチカラを蓄えはじめました。

チカラを再び充填した邪神の指輪は、

大きな絶望の感情を察知し、

新たな主人の下へと転移しました。

そして新たな魔王が誕生してしまいました。


女神は生きています。

はるか昔、邪神を封印した女神は

チカラを使い果たし、消えかかってしまいました。

しかし、共に戦った人間達のスキルにより

女神の魂は……。


もう時間が無いようです。

もっとたくさん伝えたいことがあったのですが。


シロイナワが襲撃されています。

皆様、どうか女神像と

セイレーンの里を守ってください。

像の台座には、製作途中の

イムの御石鉢が格納されています。

石鉢はあなた方に託します。

どうか、僕たちの悲願を……。」


女神像の声が聴こえなくなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヌル達4人は、映像の世界から帰還した。


 空を埋め尽くす鳥人間のような翼竜キメラ。

 大きな翼竜に乗った竜人族の戦士

 その両脇には、

羽ばたく大きな蠅のような異形のキメラ。

 大きな翼竜に跨がる、

魔道士風の竜人族が控える。


 臨戦体制のセイレーンの戦士達。

 敵の勢力は数百。

 対してセイレーンの戦士は十数名。

 圧倒的に不利な形勢であった。


キムスケ「戻ったか。

     どうやら、

     女神像の記憶が見えたようだな。」


ヌル「同志であると認めてもらえますね。

   共に戦いましょう。

   とりあえず目の前の敵ですね。」


キムスケ「逃げても構わないのだぞ。

     見ての通り絶望的な状況だ。」


ヌル「盟友を見殺しにできませんよ。

   援軍を呼んできます。

   クルム、レスベラ、うまーる。

   俺はカスミガから援軍を連れてくる!

   なんとか耐えてくれ!」


レスベラ「任せな。」

クルム「援軍来たら楽勝じゃないの。」

うまーる「誰も死なせないんだよ!」


 敵将が大きな声で警告をする。


敵将「我はマハルポージャ様配下、

   空の四天王ノドン。

   セイレーン共よ。最後通告だ。


   服従か滅亡、好きな方を選べ。」


キムスケ「滅亡を望む。


     貴様らのな。

     皆のもの! 戦え!!

     迎え撃つぞ!!」


「「「ウオオオオオオ」」」


ノドン「ダビス! 例のキメラを!

    ベルゼ! 皆殺しで行くぞ!」


 魔道士風竜人族・ダビスの合図で

 魔法陣から巨大な生物が4体放たれた。

 その外見は、これまでヌル達が戦ってきた

竜種の特徴を有した人型の生物であった。

 銀色に輝く羽毛に、ハヤブサのような頭。

 金色に輝く羽毛に、フクロウのような頭。

 大きなウナギのような長い首と

ヒッポキャンパスのような体と脚を持つ者。

 異様に大きな頭部を持つ、

ティラノサウルスのような者。

 いずれも体高は5メートル前後である。


 続けてダビスは

ランプのような魔法具を取り出し、魔力を込める。

 魔法具から煙が噴き出す。


 巨大な蠅のような昆虫型キメラは、

その手にタクトのような棒を持つ。

 そのキメラの指揮で、その身に纏っていた

無数の羽虫が解き放たれた。


ヌル「あの大型のキメラは!?

   俺たちが戦った

   竜の血液や体の一部を回収し、

   それを、利用した合成生物か!


   それに危険な衛生害虫の大群!

   みんな! 気をつけろ!

   虫から受ける傷も致命傷になるぞ!!」


 ノドンは大きな角笛を取り出し、吹いた。


ノドン「ギャラルホルンの威力を

    目に焼き付けて死ね」


ーーボェェエエエエエエエエーー


 角笛の音色に合わせ、

たくさんの岩が宙に浮いた。

 笛の音が止まると同時に岩が降り注ぐ。


ヌル「超音波による反重力装置か!」


 カッパドキアのような岩の住居が

一部破壊され崩落する。


キムスケ「くっ!

     あそこには病人が多数いるが……。


     敵の殲滅が先だ!!」


ヌル「援軍を連れてすぐに戻ります!」


 ヌルは転移魔法を使い

カスミガ砦の会議室へと飛んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー国連本部(仮)・カスミガ砦ーー


 ヌルが転移すると、

その会議室にはフロが1人、掃除をしていた。


挿絵(By みてみん)


ヌル「フロさん! みんなは!?

   セイレーンの里が今大変なんです!」


フロ「ほにょ?

   みんなは今、お引っ越しだにょ。」


ヌル(なんだって! 追いかけるか?

   いや、あまり時間はかけられない!

   そうだ、フロさんだって十騎聖の1人だ。

   きっと強いハズ。)


  「フロさん、一緒にきてください!

   手を貸してください!」


フロ「いいにょ。お昼食べてからでもいい〜?」


ヌル「今すぐでおねがいします……。」

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