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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第五章 ドワーフ国編
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86 約束

86 約束



ーーカスミガ砦サイドーー


 ルーローは自分の間合いで勝負すべく、

接近戦に持ち込もうと

踏み込みエルクに斬りかかる。

 エルクは懐に入れるまいと角で牽制し、

槍による刺突で応戦する。

 ルーローは何度もエルクの角を斬りつけていた。

 ルーローの執念と2振りの剣の能力が結実し、

ついにエルクの片方の角が折れ、地に落ちた。


 エルクは驚愕する。


エルク「そんなバカな。薬で強化された俺の角が。

    その剣の能力か……。」


ルーロー「ようやくだぜ。次は首を斬る。」


 強がるルーローであったが、

出血の影響は深刻であった。


 そのとき、オーリヤマの隠れ家から走ってきた

エルが戦場に戻ってきた。

 瓦礫や折り重なった死体に身を隠し、

エルは様子を伺う。


 エルから見た、

ルーローとエルクは疲弊していた。

 腹から血を流すルーローが深手を

負っているであろうことは一目瞭然であった。


 エルは命を懸けて

ルーローを援護する覚悟を決める。


 エルは自作のアトラトル(投槍器)を取り出し、

毒矢をセットした。

 助走し、エルク目がけて振りかぶる。

 毒矢は脅威的な速度でエルクに迫る。

 しかし毒矢はエルクに刺さる事なく、

跳ね返され地に落ちた。


 エルクは振り向き、矢が飛んできた方向を見た。

 また、ルーローもそれを見ていた。


 エルは焦っていた。

 非力な自分でも、大型の獲物を仕留められるよう

に開発した、アトラトルと毒矢。

 少しでも傷さえ付けられれば

必勝の戦法であった。

 しかし、エルクに対しては

傷すら付ける事ができなかった。

 古代人がマンモスの屈強な体を貫くのに使った

といわれる、

アトラトルでさえ傷すら付けられない。

 信じられない現実にエルは

隠れる事を忘れ、呆然と立ち尽くす。 

 エルはエルクに見つかり、補足されてしまう。


 エルクはエルに向かって

槍を投げつけようとタメ始める。


 ルーローはエルのピンチに、

傷や出血によるダメージを忘れ、

エルクに斬りかかる。

 エルクはルーローの殺気に気付き、

再びルーローと斬り結ぶ。


エルク「そのガキを捕らえろ!絶対に逃すな!」


 エルは、魔王軍兵によって捕縛されてしまう。


エルク「抵抗をやめろ。あのガキを殺すぞ。」


ルーロー「わかった。」


 ルーローは考えた。

 砦の中にいたはずのエルが、何故か外にいる。

 現れたのは魔王軍の後方、

オーリヤマの避難キャンプの方向だ。

 どうやって戦線を掻い潜ったとかは

おいておいて、

何のためにそんな危険な事をしたのか。

 それは、援軍の要請だろうということ。

 そしてエルがここに戻ってきたのは、

交渉に成功したということ。

 ならば自分がやるべき事は、時間を稼ぐ事。

 命を賭して、エルを救う事であるということ。


ルーロー「俺の事は、ちょっと刺しても

     いいからよ。

     あのガキは見逃してくれよ。

     あとさ、俺、これからお前の下で

     働くよ。

     魔王軍の兵士やるからよ。

     俺のこと、殺さないでくれねえか?」


 エルクはルーローの言葉に耳を傾けず、

ルーローの脚を槍で突く。


 槍を抜くと、ルーローの脚から血が流れた。

 出血に勢いが無い。

 血を流しすぎ、血圧が低くなっていた。


ルーロー「ぐっ!!」


エルク「お前は良い戦力になりそうだが、

    お前の役目は見せしめだ。

    ドワーフ共に、我らに歯向かうと

    どうなるかという教材になってもらう。」


 エルクはルーローの右肩を槍で突く。



 そのころ、カスミガ砦の門の内側では、

兵とムラ王が揉み合っていた。


 王を前線に出したく無い兵と、

前線で戦わせろというムラ王が衝突していた。


 ムラは兵を殴り飛ばし、門の外に出て行った。

 外に出たムラは叫んだ。


ムラ「ドワーフへの見せしめならば、

   俺が適任だろう? 

   鹿野郎! 俺を殺せ! 

   そんなパンダ野郎に価値はねえよ!」


エルク「心配するな。

    王は要らんから、どのみち殺す予定だ。

    パンダの次にやってやる。

    逃げるなよ。逃げたらあのガキを殺す。」


ムラ「へっ。そういう事か。

  俺には99人の嫁と141人の子供がいる。

  わかるか?

  俺の代わりなんてそんくらいいるのよ。

  お前バカそうだけどよ、

  俺の子供全員やれんのか?」


 エルクはブチギレ、

ムラに槍を向けてタメ始めた。


 ルーローは、その隙を見逃さなかった。

 ルーローは左手に握った剣を

エルクの脚に突き立てる。


 苦痛に顔を歪めるエルク。

 エルクはルーローを嬲り殺しにするために

生かしておいたが、トドメを刺すことを決め

ルーローの心臓を目がけて槍を突く。


 ルーローは咄嗟に体を捻り、即死を免れる。

しかしルーローは胸を貫かれ、

串刺しになってしまう。

 ルーローは最期のチカラを振り絞り、

剣を投げ捨てエルクの槍を掴む。


エルク「この死に損ない野郎! 離せ! 

    すぐラクにしてやるからよ!」


 エルクは、ルーローに蹴りを浴びせる。

 ルーローの口から血が流れる。


ルーロー「待ちくたびれたぜ。後は頼む」


 ルーローが槍を掴む手からチカラが抜け、

前のめりに倒れる。


エルク「はぁっ。はぁっ。何を言って?」


エル「ルーローさああああああん!!」


 エルを捕縛していた兵が、

同じ魔王軍の兵に斬られ倒れる。


「このガキ、静かにしろっ! ぐふっ!?」


 魔王軍兵を斬った魔王軍兵は叫ぶ。


「少年の身柄を確保しました!」


 エルを救った魔王軍兵の周りに

魔王軍兵が集まり、エルを中心に円形の陣を組む。


エルク「伏兵か!」


 エルクに向かい走り出す魔王軍兵が、

兜を投げ捨て、顔を露わにする。

 それはオーリヤマの騎士団長、エッジであった。


 エッジは刃が無い柄だけの剣を握りしめ、

上段の構えをとる。


エッジ「ドワーフの民よ! オーリヤマの民よ!

    この者に裁きを下す!

    断罪の剣に祈りを捧げよ!」


 エッジが持つ、柄だけの剣から光の刃が現れる。

 それは長さ10メートルほどの巨大な剣となった。


エルク「なんだこの剣は!?

    こいつのはショボい魔法剣

    じゃなかったか!?」


 エッジはエルクに向けて剣を振り下ろす。


エッジ「ジャッジメント【ギルティ】」


挿絵(By みてみん)


 エルクが防御に使った槍は切断され、

斬られたエルクは倒れた。


 魔王軍兵に動揺が走る。

 しかし、魔王軍兵はヒポスドールが

援軍を率いてやってくると信じている。

 引く様子は無い。


魔王軍兵「エルク様が討たれたが、

     まだ数ではこちらが有利だ!

     畳み掛けろ!」


ムラ「もう化け物はいねえ! 前線を上げろ!

   残りカスの雑魚共を蹴散らせ!」


 魔王軍とドワーフの連合軍は激しく衝突する。


 エッジはルーローを抱き起こす。

 ムラとエルもルーローの元に駆け寄る。


エッジ「すまない、ルーロー殿。

    俺は寝坊してしまったようだ。」


ルーロー「ヒーローは遅れて来るんだったか?

     死ぬかと思ったぜ。

     まぁ死ぬんだけどな。ガハハハハ!

     ゲフッ!」


ムラ「手当を急げ!」


 ムラは衛生兵を恫喝するも、

衛生兵の顔色は優れない。

 衛生兵は小声で話す。


「血を流し過ぎています。血圧も……。」


 エルは泣きながらルーローに詫びる。


エル「ルーローさん!

   ごめん! 僕が捕まったから!

   ああああああああああ!」


ルーロー「いや、捕まらなくても

     シンドかったんだ。気にするな。

     奴の槍で脇腹やられたのは、

     俺の油断だからなぁ。


     むしろ助かったぜ。

     あの鹿野郎にやられて死んだりしたら、

     兄貴に怒られちまう。

     お前がエッジを連れてきてくれて、

     俺もドワーフも助かったんだ。


     しかし、お前の顔見た時は驚いたぜ。

     どうやって抜け出したんだよ。

     ガハハハハ!


     エル。俺は死ぬけどな、

     それで終わりじゃねえんだ。

     命は繋がるんだよ。

     俺はまた、形を変えて生まれてくる。

     なんも悲しむ必要はねえんだ。」


エル「嫌だよ! シッカリしてよ!

   まだ大丈夫だよ! 助かるから!!」


ルーロー「約束してくれ。

     俺が次に生まれてくる時はよ、

     お前が作った、たくさんの面白えモン

     見せてくれよ。

     あとは、子供が子供らしく生きられる、

     平和な世界もな。約束だぞ。


     じゃあ、俺は先に行って待ってるわ。

     またな……。」


 ルーローは静かに息を引き取った。

 その顔は、何かをやり遂げた、

そんな達成感で満ち溢れたように

穏やかな笑顔であった。





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