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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第五章 ドワーフ国編
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84 伝播する勇気

84 伝播する勇気



ーーカスミガ砦サイドーー


 ルーローは度重なるエルクの槍投げを

剣で捌き続けていた。

 エルクの槍の必中の効果は

ルーローの装備も含まれていた。

 互角の攻防ではあるが、脇腹に重傷を負っていた

ルーローにとっては、

時間経過と共に分がが悪くなっていく。

 ルーローの選択肢は一つしかなかった。

 接近戦である。

 ルーローは低い姿勢で踏み込み、

剣で斬りかかる。

 エルクは長く強固な角を使い迎撃する。


 ルーローの剣の間合いは約150cm。

 対するエルクの間合いは

角による攻撃が約200cm。

 槍による近接攻撃が約300cmであった。

 近接攻撃でも不利なルーローであったが、

ルーローには考えがあった。


 ルーローが持つ二振りの剣【干将】と【莫耶】は

次のような術式が組み込まれた魔法具であった。

 干将は斬りつけた敵を弱体化させ、

 莫耶は敵を斬ると敵の魔力を吸い上げ、

自身を強化するというものであった。


エルク「そんなチャチな剣では

    俺の角は斬れぬぞ。」


ルーロー「いいんだよ。

     切れるまで叩くからな。

     ガハハハハ! ゲフッ。」


 ルーローの脇腹からは血が流れ続ける。


 エルはその様子を見て確信する。

 今のままでは

ルーローが殺されてしまうということを。

 エルは考えた。自分に出来ることはないかと。

 一つだけ思いつく。

 それは、エッジに助けを求める

というものであった。


 エルは砦の屋上に向けて走り出した。

 途中、見かけた槍と布を見てエルは思いついた。

 縄も一緒に持ち出し、砦を駆け上がるエル。

 屋上に出たエルは工作を始めた。

 先ずは、ハングライダーによく似たモノを

作り上げる。

 次に、自分の服に布を縫い付けた。


 砦から少し離れた場所に、

小さな見張塔があった。

 エルは紙飛行機を投げた。

 紙飛行機の動きを観察し、計算をする。

 エルはルーローが決死のジャンプを決めた光景を

思い出す。

 大事なことは、自分に打ち勝つ勇気だと。

 恐怖は敵のことじゃない。

 戦う相手は自分の恐怖心であると。

 エルは助走をつけ、ハングライダーを使い

砦の屋上から飛び立った。


 急拵えとはいえ、なかなかの性能であった。

見張り塔には届きそうにないが、

かなり近くまで行けそうだった。

 エルはハングライダーから離れ、

自分の服に縫い付けた布を拡げ、滑空状態に入る。

 以前、森で見かけたモモンガの飛び方が

ヒントであった。

 その姿は、まんま世界一危険なスポーツ

【ウイングスーツ・ベースジャンプ】であった。


 エルが体を捻ると、

エルの進行方向は見張り塔に向かった。

 見張り塔の頂上に立つ大きな旗は風を受け、

はためいていた。

 エルの体は、まるでゴルフのフラッグショット

のように旗にくるまれ、

ストンと旗の真下に落ちた。


 見張り塔は逃げ場が無いため、

ドワーフ軍は放棄していた。

 そのため塔には2名の魔王軍が駐留し、

2階から戦況を見ていた。


 塔の構造上、その2名に見つからずに

塔から脱出するのは難しい、とエルは考えた。

 そして見つかり追いかけられる事も想定した。

 エッジが隠れている洞窟を発見されるわけには

いかないと。

 エルは覚悟を決める。

 この2人の兵士は

自分が戦って勝たねばならない、と。


 エルは走り出した。

わざと足音を立てて、螺旋階段から顔を出し、

兵士と目を合わせる。

 兵士はエルに気付く。


「ガキが、なんでこんなところに!?

 砦から逃げてきたか?

 それとも砦に避難しにきたのか?

 まぁいい、捕まえて奴隷だ!」


エル「うわああああ! こないでぇ。」


 エルは情けない声を出し、

足音を立てて3階に戻り、息を潜める。


 兵士2名はエルが一階に向かったと思い込み、

塔の外に出て、辺りを見渡す。


「くそっ!逃げ足の早いガキだな!どっちだ!」


 足音を消し、塔の外に出るエル。

 キョロキョロしている兵士に聞こえるよう、

木の枝を音を立てて折る。


エル「あ、ああああ。


「いたぞ!捕まえろ!」


 エルは走る。

 追いかける2名の兵士。

 エルは転んでしまう。


エル「うわああああ! やめて!

   こないでぇ!」


「手間取らせやがって!」


 兵士の一名が、昼間にエルが仕掛けた

 獣用の罠にかかり転んだ。


 転ばなかった方の兵士は、

思わず転んだ方の兵士を見る。


 エルが放った吹き矢が、

転ばなかった兵士の首筋に刺さった。


「がっ!痛っ!イタタタた!」


 エルは転んだ兵士の首にも矢を放つ。


「ぐあっ!ぐあああああああ!」


 悶絶する2名の兵士、少しして動かなくなった。


エル「虹色カエルの毒だ。痛いだろ。

   相手が子供だからって油断したな?

   子供だって、戦えるんだからな!」


 エルは走り出した。

 エルはオーリヤマの隠れ家に着くと、

見張りの兵士に事情を説明した。

 見張りの兵士はエルの姿を見て驚く。

 オーリヤマの兵士は

砦が陥落したものと思っていたらしい。

 夜なのに炎上し、明るくなっていた砦方面の空。

 激しい戦闘の音や怒号など。


 エルは眠るエッジに掴みかかり、

必死に叫び語りかける。


エル「エッジ様!みんなを助けて!

   ルーローさんが殺されちゃう!

   フロさんを助けに、

   ヌル兄ちゃん達も命を懸けてる!

   起きて! 目を覚まして! お願いだよ!

   エッジ様! 勇者エッジ様!!」


 エルは狙ってソレをやった訳では無かった。

 相手の名前を呼ぶということには

大きな効果があった。

 脳が大きなダメージを受けて

意識障害が起きていても、脳は音に反応する。

 意識の無い人間に、その人が好きな音楽を

聴かせると脳波に影響が出るのである。


 エルの呼びかけでエッジは目覚めた。


エッジ「行かなければ。皆、準備をしてくれ。」


「「「エッジ様! エッジ様あああ!!」」」


エル「やった! エッジ様が起きた!

   じゃあ僕、戻るね!

   ルーローさんが心配だ!」


 エルは走り出した。


エッジ「待つんだ少年! 1人は危険だ!」


 走り去るエル。

 エッジは焦る。


エッジ「準備を急げ!!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーカイセイ城サイドーー


 ヒポスドールがいると思われる

部屋の前に集結した5人。

 ヌルは、うまーる、レスベラ、クルムの3人の

顔を見て、無傷であることに安堵した。


クルム「真正面から突撃したアホゴリラは、

    やられそうになってたけどね。」


 安堵したヌルの顔を見て、

楽勝ではなかったと釘を刺すクルム。


レスベラ「ちゃんと防いで刺されなかっただろ?」


 普通のボリュームの声で会話する2人。

 もう敵には襲撃がバレていて

奇襲は不可能であることを覚悟しているようだ。


 ヌルはエコーロケーションで敵の位置を探る。

 ヌルは扉の中央を指差す。

 それは敵が部屋の中央、

玉座に鎮座していることを意味していた。


 マーボーは頷くと槍を構え、

槍にチカラを込めた。

 マーボーの伸びる槍が扉を突き破り、

敵将に向かっていく。

 マーボーが扉に体当たりをしながら

扉を吹き飛ばし突入する。


 ヌルとレスベラがマーボーに続いて突入する。


 マーボー、ヌル、レスベラは

下を向き目を閉じる。

 うまーる、クルムは後ろを向き目を閉じた。

 ヌルは魔力の玉を解き放つ。


ヌル「光風複合魔法【スタン・グレネード】」


 ヌルが放った魔力の玉が炸裂し、

眩い閃光と耳をつんざく轟音が鳴り響く。


 クルムは毒の風の斬撃を放つ。

 ヌルは左から踏み込み、

剣を鞘から抜くと共に

ヒポスドールの首の右側に斬りかかる。

 レスベラは右から、円盤投げのステップのように

反時計回りに1回転し、

ヒポスドールの左側の首に斬りかかる。

 2人の斬撃が、

鋏のようにヒポスドールに襲いかかる。


ヌル「居合道【順刀〈介錯〉】」


レスベラ「酒乱一刀流【絡裂〈からみざけ〉】」


 視界が晴れた5人の目に映ったのは

衝撃の映像であった。


 ヌルのウルフバートと、

レスベラのミヅハノメは、

ヒポスドールの首に直撃したものの

皮1枚切れずに止まっていた。

 クルムの風も全く効いていない。

 また、ヒポスドールは

マーボーの槍を左手で掴んで止めていた。


 ヒポスドールは片手で槍を持ち上げ、

マーボーを壁に叩きつける。

 そして右手に持つ巨大な戦鎚を持ち上げ

チカラを込めた。

 戦鎚が眩く輝き出す。

 危険を察知したヌルとレスベラは

後ろに跳び退き、防御の姿勢をとる。


ヒポス「カッババババ!

    奇襲か。驚いたぜ。

    ネイとオシコはアレを飲む間もなく

    ヤラレたのか。

    もしくは油断したか?

    お前ら弱そうだもんなぁ。

    カッバババババ!」


 ヒポスドールが持つ戦鎚は輝きを増し、

バチバチと音を立て始める。


ヌル「爆発が来る!

   いや、あの音、爆発じゃない!?

   まさか!


   ……みんなっ!」


 ヒポスドールが戦鎚を振り下ろす。

 閃光、轟音と共に大電流が5人を襲う。

 3階の床は崩落し、全員が2階へと落ちた。


 立ち上がったのはヒポスドールのみ。

 ヒポスドールは高笑いし、勝鬨をあげる。


ヒポス「カッバババババ!

    もうちっと遊んでもよかったなぁ。

    カッババババ!」


 散乱する瓦礫の中に体の半分が埋もれたヌル、

マーボー、レスベラ、クルムは動かない。


「はぁっ、はぁっ、はぁ。」


 深呼吸をし、胸に手を充てる。

 呼吸と心拍を落ち着かせ、

状況を把握するのが精一杯だった。


 品々物之比礼の能力で空中に留まった、

うまーるは悟った。


 私は、きっとここで死ぬのだと。

 皆が目覚めるまで、命を賭して時間を稼ぐ。

 それが、自分の使命なのであると。


 空中に留まった、

うまーるの存在に気付いたヒポスドール。


ヒポス「俺の雷を躱した?

    いや、耐えたのか。

    あの黒い体毛に、種族。

    ……そうか、ライガ殿の血縁か。」


 ゆっくりと床に降り立つ、うまーる。

 命を賭した、うまーるの戦いが始まる。


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