80 恐怖を穿つ勇気
80 恐怖を穿つ勇気
壺や樽から飛び出したナトリウムは
地面や草木の水と反応し、
高熱と水素ガスを放出して
激しく爆発炎上する!!
魔王軍を囲むように円形の炎が展開された。
魔王軍はパニックになり、最前線は来た道を
戻るように逃げようとする。
しかし、後ろからも続々と進軍してくるため、
将棋倒しになり、パニックは加速する。
ムラ「魔王軍兵は3万。対してウチは三千か。
イヤになるぜ。
だけど、俺たちには兵器がある。
助っ人の知恵もある!
さぁ、世界の行く末を占う
戦いの始まりだぜ。
勝利の女神様ってのがいるのなら、
俺に微笑んでくれると嬉しいねぇ。
ワッハハハハハハハ!
しかし、効果絶大だなオイ!
どんどん行くぞ! 追い討ちをかけろ!」
ドワーフ軍は追い討ちをかけるように、
油の入ったタルを投石機と大砲を使い投げ込む。
退路は残しつつ、
そして破砕槌と投石機には重点的に浴びせる。
魔王軍は火計対策で水を持参していた。
指揮官が叫ぶ。
「水を持て! 急ぎ消火せよ!」
魔王軍の兵たちは、
次々とタルの水を火に注いだ。
しかし、水が注がれた炎はさらに爆発し、
勢いを増す。
また、高温になった油も
水により拡散し燃え広がる。
進軍隊長である、ヘラジカの獣人『エルク』は
兵の報告により苛立っていた。
エルク「魔法部隊を上げろ!
氷の魔法で消火させろ!」
エルクの命令で魔法部隊が
火計と将棋倒しにより築かれた
屍の山を踏み越え、前線に現れた。
魔法兵たちが氷の魔法で消火活動にとりかかる。
ムラ「今だ! 撃てええええええ!」
バリスタによる矢の一斉掃射により、
魔法兵達は次々と倒れた。
ドワーフ兵が高々と叫ぶ。
「魔王軍魔法兵、壊滅しました!」
ドワーフ軍から歓声が上がる。
ムラ「よし! あとはこの炎が続く限り大丈夫だ!
火が消える前に、
燃える物はドンドン投げ込め!
なくなったらパンツも脱いで
投げ込めよ!」
すぐさま魔王軍の兵士により、
エルクへ戦況が伝えられる。
「エルク様!魔法兵の部隊が壊滅しました!」
エルクは激昂し、机を叩き割る。
エルク「おのれ! 炎が弱まり次第、
精鋭部隊で特攻をかけるぞ!
それと、カイセイ城の
ヒポスドール様に応援を要請しろ!」
早馬に乗った魔王軍兵が、
カイセイ城に向けて走る。
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ーーカイセイ城サイドーー
23時頃。
ヌル達は城の近くの茂みで息を潜め、
チャンスを伺っていた。
耳が良い、うまーるとクルムが
近づいてくる馬の音に気付く。
ヌル「援軍の要請か。
カスミガ砦の攻防は優勢なようだ。
伝令兵を無音で素早く、片付けるぞ。」
クルムは馬に麻痺の風を吸わせ、
うまーるは一瞬で伝令兵をスタンさせた。
兵に猿ぐつわをし、木に縛り付ける。
カイセイ城の中の様子をエコーロケーションで
探るヌル。
ヌル「しかし、なかなか離れないな。
まさか、3人一緒に寝るのか?」
その頃、カイセイ城最上階では魔王軍
〈武の四天王〉の3人が
酒を呑みながら話し合っていた。
キリンの獣人、オシコーン。
象の獣人、ネイシア。
カバの獣人、ヒポスドールである。
キリン「しかし、逃げた勇者は来ないのかね。
人質を見捨てるのか?」
ゾウ「もしかしたらよぉ、
死んだんじゃねえのかぁ?
ボコボコにしちまったからなぁ。」
カバ「カッバババババ!
それならそれで、いいじゃねえか。
酒呑んでられるからよ。
あとは、ドワーフをどれだけ
生きたまま捕らえられるかだな。」
キリン「エルクの持つエギルの兜があれば、
楽勝だろうね。」
ゾウ「だなぁ。ドワーフ国に
アイツとまともにやり合えるの
何人いるだろうなぁ。」
カバ「カッバババババ!
世界統一まで、あと一歩だな。
あとはエルフと人魚をぶっ殺して仕舞いだ。
しかし、リヴァイアサンの奴は
仕事しねーな?」
キリン「プライドが高いからね。
角が折れたままじゃ
外に出たくないんだろう。」
ゾウ「お前らよぉ。
最近発見されたセイレーンの郷のこと
忘れてるだろぉ?」
カバ「カッバババババ!
絶滅寸前らしいじゃねえかよ。
クマーのアホでも楽勝だろ。
カッバババババ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーカスミガ砦サイドーー
午前4時頃。
炎は6時間以上燃え続けた。
木材や衣類など、あらゆる燃えるものを投下し、
抗ったドワーフ軍だが、
ついに燃料が尽きかけてしまう。
魔王軍侵攻隊は、当初3万ほどいた兵が
3割ほど戦死、残りの一般兵のほとんども、
戦意を失くしていた。
エルク率いる、精鋭部隊が前に出る。
エルク「攻城塔が残っている!
全軍突撃だ! 恐れるな!
駆け上がれ!!」
「「「ウオオオオオオオ!!」」」
地鳴りのような足音と怒号と共に、
魔王軍精鋭部隊が攻城塔を駆け上がる。
カスミガ砦上層に魔王軍兵が雪崩れ込む。
ムラ「あのトナカイ野郎のあたりに
投石機でありったけの岩を撃ち込め!」
エルクとその周辺に向け
巨大な岩が複数放たれる。
エルク周辺の精鋭兵に向け、矢も放たれた。
エルクはコレを難なく躱す。
エルク「狙いは俺か。
しかしなぜ、攻城塔を無視して俺を狙う?
……まさか、攻城塔を残したのは!」
魔王軍精鋭兵が攻城塔を駆け上がり、
最前線が砦上層に到達したのを見ていた
ドワーフ兵が大声で号令をかけ、
銅鑼を打ち鳴らした。
ドワーフ兵「今だ!」
砦の岸壁には複数の鎖がぶらさがっていた。
その先には錨のような物がついている。
その錨の固定具を外すと、
魔王軍の攻城塔下部に錨が向かい、引っかかった。
砦内部では、たくさんのドワーフ達が
兵の号令で鎖を引いた。
鎖を引くと、鎖は繋がる滑車の力で
錨がついた鎖を引き上げ、
錨は攻城塔を持ち上げ、傾けた。
攻城塔が大きな音をたてて倒れ、
多くの魔王軍兵は倒壊に巻き込まれ、
また下敷きになった。
エル「すごいや!コレがヌルが言ってた、
《アルキメデスの鉤爪》なんだね!
あんな大きいのがひっくり返ったよ!」
ムラ「いい眺めだなオイ!
オネーチャンの足首掴んで、
V字ま●●り返しするくらい、爽快だぜ!」
エミーはムラをフライパンで殴りつける。
ムラは悶絶している。
エミー「子供の前でバカ言ってんじゃ無いよ!!」
砦上層に侵入していた魔王軍兵は
ドワーフ精鋭部隊により迅速に処理された。
瓦礫と化した攻城塔に向けて、
残り少ない火薬や油が投下され、
火矢が打ち込まれた。
辺りは再び爆発炎上し、
魔王軍の精鋭部隊は大きく数を減らした。
1時間程して、
火の勢いが弱まった様子を確認したエルク。
エルクは激昂し、自ら先頭に出て
突撃の合図をしようとしたそのとき、
砦の門が開いた。
砦の中からドワーフ軍とマーボーの配下である
ケンチョー騎士団が飛び出し、
魔王軍に突撃を仕掛けた。
エルクは好機とばかりに、前に出て
兜に魔力を込めた。
勢いよく飛び出したドワーフ連合軍は、
エルクの兜から発せられる不気味な威圧感により、
膝が折れ身動きができなくなった。
高笑いをするエルク。
エルク「バッハハハハハハハ!
数で優勢になれば何とかなると思ったか?
大人しく捕まれば生かしてやる。
魔王様はドワーフを必要としている。
ありがたく思うんだな。」
その様子を砦の最上階からルーローが見ていた。
ルーローは漆黒の布を体に巻きつけ、
ムラから借りた戦鎚を握りしめ、
約70メートルの高さの砦のてっぺんから
飛び降りた。
ルーロー(恐れるな! 目を見開け!
敵から目を逸らすな!
この1撃に、
この戦の勝敗が懸かってるんだ!)
ジンジンと疼く背中の手形が、
ルーローを後押しする。
ルーローはエルクの頭、
兜を目がけ全力で戦鎚を振り下ろした。
ムラ王の武器、銃戦鎚〈ガン・ウォーハンマー〉
には平の部分に4つの穴が空いていた。
槌の部分は銃身でもあり、
槌の柄には引き金が付いており、
銃としても使用可能な武器であった。
ルーローは槌を振り下ろし、
インパクトの瞬間に引き金を引き、
4発の弾丸を発射した。
ドドドドン!!
高所からの重力加速度×超重量の武器×
ルーローの腕力×遠心力。
衝撃に加えて、
至近距離からの銃撃により、
エルクの兜は砕け散った。
またエルクは頭から血を噴き出し倒れた。
その様子を見ていた
ドワーフ兵は喜びを爆発させた。
ドワーフ兵「報告! ルーロー殿が
敵将を討ち取りました!!」
「「「ワアアアアアアアアアアア」」」
ドワーフ軍から歓声が上がる。
そのときルーローは、
足首に付けたゴムの縄により
空中をビヨンビヨン漂っていた。
逆さまの状態でガッツポーズを決める。
ルーロー「予行演習で跳んでいるとはいえ、
やっぱりチビるぜ。
バンジージャンプと言ったか。
こんなのがアトラクションとはなぁ。
地球っていう異世界は
恐ろしいところだな。」




