78 再会
78 再会
エルの家で一晩を過ごし、朝を迎えた。
ミヤモトの住人の大半は、
戦火を恐れてドワーフ国に避難しているようだ。
エルとヒミカも今朝旅立つということで、
ドワーフ国を目指すヌル達も同行することにした。
しばらく歩くと、うまーるが立ち止まった。
何かの気配を察知したようだ。
うまーる「囲まれた、というか、挟まれたんだよ。
前と後ろに複数の人がいる。
どっちも近付いてくるんだよ!
どっちも10人くらい。
おそらく、金属の武装をしてるんだよ。
ヌル「くそっ! まじか。
行くなら前しかないな。
3人は先頭に立って、
敵を即座に壊滅させてほしい。
そして、とにかく前に進むんだ。
後ろの敵は俺がなんとかする。」
レスベラ「わかった。任せな!」
クルム「カッコイイこと言っちゃって。
死亡フラグじゃないの? それ。
気をつけなさいよね。
アンタは近いうちに死ぬのよ。」
うまーる「ヌルお兄ちゃん。負けないでね……。」
3人は前に走り出した。
荷物袋をガサゴソしているエルに、
ヌルが話しかける。
ヌル「エル。心配は要らない。
俺の仲間は強い。
キミはお母さんから離れないでくれ。
俺は、なるべく時間をかけて
敵を足止めしてから行くよ。
ドワーフ国で会おう。」
エル「わかった。あとでね!」
ヌル(聞き分けがいい。本当に賢い子だな。
さて、俺は俺の仕事をするか。)
ヌルはミヤモト村がある方向に走り出した。
ヌルがしばらく走ると、
10数名の兵士の姿が見えた。
いずれも、竜人族と鬼人族だ。
ヌル「しめた! 少人数の部隊か。
無音で瞬時に倒せば、カタがつくな。
いやまてよ。
数人残して、
操作して嘘の情報を拡散するか。」
ヌルは自身に隠蔽魔法をかけ、
また挑発魔法を解除した。
次に敵軍の周りに水の魔法を使い、霧で覆った。
地面に魔力を流し込み、
地属性魔法【縮地】を使い、
敵の重心を不安定にし、自分に引き寄せる。
そして、自分の足元を敵軍に向かい動かし、
さらに踏み込み加速する。
ヌル(地属性魔法『縮地』+居合道
『五方斬・ごほうざん』からの
『惣捲・そうまくり』)
ヌルは相対速度に加え、加速しながら
一気に10名を流れるように斬り伏せた。
宝剣【ウルフバート】は伝説通り、
敵が身につけた鉄の防具を切り裂いた。
ヌル(ウルフバート、伝説通り、
とんでもない剣だな!)
突然、足元が地震のように揺れ、
仲間が次々と倒れた光景を目にした、
残りの2名の兵士。
敵兵が状況を把握する前に
ヌルは以前、敵から獲得した
スキルの『操作術』を使い、命令をする。
"逃げた村人たちが、ドワーフ国とは
逆の方角に向かっている"
と仲間に連絡するように。
操作された2名の兵士は、
来た道を戻るように歩いていった。
ヌルは土の魔法を使い、
倒した兵士たちを隠した。
その後すぐに、仲間とエル達を追う。
ヌルはミヤモト村の人達を見つけた。
立ち止まり、困惑している村人たち。
ヌルはすぐさま、異変に気付く。
ヌル(おかしい。すぐに追いついた。
さっきの場所から、たいして進んでない。
これは……。
レスベラたちが苦戦しているのか!
精鋭部隊を大回りさせて、背後に回した?
俺の考えが読まれたのか!?)
ヌルは走り、先頭の村人を追い抜いた所で、
その光景に驚愕した。
複数の倒れたドワーフ兵。
倒れたドワーフ兵を介抱するクルムと、
うまーる。
両手に2本の片手剣を持った巨躯のパンダ。
右手にミヅハノメ、左手に七星流転を持った
レスベラが互角の戦いを演じている。
ヌルはクルムに駆け寄り状況の説明を求めた。
ヌル「何があったんだ?」
クルム「ミヤモトを助けにきたドワーフ軍と
行き違いがあって戦闘になったのよ。
お互い、敵じゃないって
理解できたんだけど、
バカ2人がムキになって
やりあってんのよ。」
ヌルは戦う2人の間に土の壁を作り、
割って入った。
ヌル「何やってるんだよ!!
追手が迫ってるんだぞ!!」
ようやく2人は戦いを止めた。
パンダ「やるなぁ。ネェちゃん。
ついムキになっちまったぜ。
ガハハハハ!」
レスベラ「こっちこそ。生まれて初めてだぜ。
両手に真剣持って
遠慮なく本気で斬りあえたのは。」
ヌルはパンダの戦士を見て
思い出したことがあった。
蓬莱村で聞いた話だ。
2人の英雄、マーボーとルーローの話だ。
ヌル「あなたはもしや、ルーローさんでは?」
パンダ「ん? 俺を知っているのか?」
ヌルたちは歩きながら、
ルーローにこれまでの経緯を説明した。
先頭にドワーフ兵。
ヌル達とルーローは追手を警戒し最後尾を歩く。
ルーロー「そうか。お前が……。
マーボーの兄貴から話は聞いてるぜ。」
ヌル「話を聞いた!?
マーボーさんはやはり、
ココにいるんですか!?」
ルーロー「ああ、いるぜ。
昨日着いたばかりだがな。
3年間、迷いながら航海したらしいぜ。
ガハハハ!」
ヌル(よかった!マーボーさんが生きていた。
そして、会えるんだ。
また一緒に戦えるんだ!)
ヌルは感極まって泣き出した。
溢れる涙が止まらない。
ヌルの右側を歩いていたレスベラが
左手でヌルの左肩を掴み、抱き寄せる。
レスベラ「よかったな!
ここまで頑張った甲斐があったな!」
しばらく歩くと、
ドワーフ国の国境に作られた砦が見えてきた。
魔王軍侵攻に備え、王や軍はここに駐留
しているようだ。
砦は断崖絶壁の岩肌に造られ、
峡谷を塞ぐように堅固な鉄製の門が作られていた。
まるで古代中国、
秦の国門【函谷関】のようである。
門の脇にある岩壁には
女性の顔のような彫刻があり、また色塗りがされてあった。
女神の顔だろうか。
門の前にいた衛兵は敬礼をし
一行を通してくれた。
最上階にある王の元へと案内された
ヌルたち4人とルーロー。
立派な髭をたくわえたドワーフの王の隣には
威風堂々とした騎士達が並ぶ。
その中に懐かしい顔があった。
ヌルの故郷の大陸の王都ケンチョー。
騎士団長を努めていたパンダの獣人、
"マーボー”であった。
ヌルは王の御前ということも忘れ、
叫びながら駆け出した。
ヌル「マーボーさん!!
マーボーさああああん!!
うわあああ! うわあああああああん!!」
マーボー「うお!? なんだ!? お前誰だ?
って、この声、ヌルか? ヌルなのか?
そうなんだな?
3年間も、どこで何してたんだよ!
しかし、ずいぶん老けたなぁ。
いや、大人になったのか。
子供みたいな顔してたのによう。
ピュイ♪」
マーボーが驚くのも無理はなかった。
最後にマーボーとヌルが会ったとき、
ヌルの肉体は15歳だった。
今では26歳相当の肉体になっていたからだ。
また、これまでの命懸けの冒険で
顔つきもだいぶ変わっていた。
マーボーは口に咥えた謎の竹笛も健在で、
3年前と全く変わらない姿であった。
マーボーの胸で泣きじゃくるヌル。
マーボー「少しずつでいいから、落ち着いて話せ。
今までのことを。
ムラさん、すまねぇ。
少し時間をくれ。」
ドワーフの王、ムラは空気を察してくれた。
ムラ「いいってことよ。積もる話があるんだろ?
会議室を使いな。
おう! この旅人さんたちに
茶でも出してやりな!
可愛い嬢ちゃんもいるから、菓子もな!」
クルムは王に敬意を表した。
その様子を見たレスベラと
うまーるも王に敬意を表する。
ヌルたち4人と2人のパンダは
会議室へと移動した。




