76 真の強さは世代を超えて
76 真の強さは世代を超えて
レスベラが意気揚々とミイラに斬りかかる。
レスベラが握るミヅハノメが、
突然レスベラの手から消えた。
「コレハイイケンダナ。
コレカラハワレガツカッテヤロウ。」
レスベラは
ミイラが握るミヅハノメに喉元を刺されていた。
ヌル「レスベラ!!
うまーる!
レイカ様からもらった秘薬を
レスベラに使うんだ!!」
ヌルは剣を抜き、ミイラに斬りかかる。
「コレカ。ソンナニイイモノナノカ。」
ミイラは、うまーるがポーチから取り出した
竜舌花の蜜の瓶を手に取り眺める。
うまーるは握っていた秘薬が消え、
パニックになる。
うまーる「あれ? あれ? え?
どうしよう! どうしよう!!」
ヌル「しまった! ナーガと同系統の能力者か!」
ヌルはミイラに向けて剣を振り下ろす。
しかし、ヌルの拳は空を切る。
ヌルの剣も奪われ、消えた。
ミイラはミヅハノメでヌルに斬りかかる。
ヌルは剣を奪われる事を想定していた。
白亜の盾でミヅハノメの斬撃を受け止め、
そのままシールドバッシュで
ミイラを突き飛ばした。
ミイラは予想外の反撃に態勢を崩した。
ヌルは振り下ろした拳を、全身のバネを使い
起き上がるようにし、ミイラの顎を下から撃ち抜く
アッパーストレートを放つ。
顎を殴られたミイラは、衝撃により後退する。
クルムはレスベラを抱き抱え、
懸命に治癒の魔法を施した。
クルム「このバカ!!
なんでアッサリ負けてんのよ!!」
首から大量の血を流すレスベラは
意識が無いようだ。
ミイラを殴打したものの、
ミイラには打撃のダメージが無かった。
そもそも脳が無いと考えられる。
顎に衝撃を与えても意味が無かった。
ミイラの猛攻を白亜の盾で受けるヌル。
ミイラの剣術は、かなりのものだった。
盗賊としての腕はもちろんのこと、
生前の武力も相当なモノだったのが見て取れた。
ヌル「くそっ! くそっ!! 時間が無い!
早く秘薬を取り返さないと!!」
ヌルは焦り、フライパンで殴りかかるが、
フライパンはミヅハノメで受け止められ、
あっさりと切断されてしまう。
「カカカカカ! スバラシイキレアジダナ!
テツヲアッサリキリオッタワ!」
ヌルは包丁で斬りかかるも、
包丁も容易く破壊されてしまう。
そして、包丁と共に右腕も切断されてしまう。
うまーるがミイラに飛びかかる。
ミラージュピニーの効果で、
うまーるは多数の分身を作り出す。
しかしミイラは意に介さない。
うまーるの突き、蹴り、電撃は
ミイラには効かなかった。
わずかに乾いた皮膚を焦がすくらいであった。
うまーるは涙を流し、自分を責めた。
そして、果敢にミイラを攻め立てる。
ヌルは切断された傷口を魔法で凍らせ止血した。
ヌル「うまーる下がるんだ!
俺が魔法で攻撃する!」
ヌルは落ちている石を、魔法で飛ばし攻撃した。
散弾のように石を浴びせるも、
さほど効果がない。
火の玉の魔法を浴びせようとしたが、
プラズマ系属性単体魔法は
ミヅハノメに斬られ消滅してしまう。
ヌル「敵に回すと、なんて厄介な剣なんだ!!
くそ! くそ! 早くしないと!!」
いつのまにか、
ミイラは左手にクルムの扇を持っていた。
ミイラが振るう扇の風が、動き回る
うまーるに当たった。
うまーるは動かなくなった。
「カカカカカ! コレモオモシロイノウ!
カカカカカ!!」
ミイラは激しくヌルを斬りつける。
斬撃耐性が高い白亜の盾であったが、
次第に欠けはじめ、ボロボロになっていく。
クルムは必死にレスベラに呼びかける。
そして、目覚めないレスベラの頬を叩き続ける。
クルム「なに呑気に寝てるのよ!!
もう血も止まったし、傷も塞がった。
早く起きなさいよ!!
アンタが刀を奪われたせいで、
ヌルが、うまーるが
殺されるのよ!! このバカ!!」
レスベラは目覚めない。
レスベラは不思議な夢を見ていた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
白い霧に包まれた懐かしい風景。
故郷である、タカキタ村に立っていたレスベラ。
目の前には見知らぬ青年が立っている。
レスベラと同じ金色の髪、銀製の鎧を見に纏い
腰には刀が差してある。
初めて会う男だが、何故か他人とは思えない
ような、既視感がある。
男はレスベラに話しかける。
男「そうか。キミの名はレスベラというんだね。
キミに一つ問いたいんだ。」
レスベラは名乗っていない。
その事を不審に思ったレスベラは口を開く。
レスベラ「なんでアタシの名前知ってんの?
それに、ウチの村に
アンちゃんみたいな人
おらんかったと思うんだけど。
アレか? 新しい婚約者かい?」
男はレスベラの問いを無視して話を進める。
男「キミに問いたい。
キミにとって、強さとは何だい?」
レスベラは、男の表情が柔軟ながらも、
真剣に問う様子を察し、問いに答える。
レスベラ「仕方ねえな。
強さ?
強さってのはな、優しさなんだゾ。
弱い子を守るのが強さなんだ。
アタシの妹は貧弱だからな。
アタシは強いお姉ちゃんに
ならないといけないんだゾ。
ヒロミチおじさんから聞いたんだけど、
これはアタシのお父さんとか、
ご先祖様がずっと受け継いできた
教えなんだゾ。」
男はレスベラの言葉を聞いて、
安堵したような表情を浮かべる。
男「よかった。俺の想いは後世に
ちゃんと伝わっていたんだね。
レスベラ、キミになら安心して託せる。
コレを、キミが正しいと思う事に
使って欲しいんだ。」
男は、刀を鞘から抜いた。
七色に輝く美しい刀身の刀だ。
男は刀を鞘に戻し、
レスベラに手渡すと笑顔になり、消えた。
辺りの霧が晴れていくと共に、
レスベラの視界が暗くなっていった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
クルムが叫びながらレスベラの頬を叩いていた。
クルム「何やってんのよ!
アンタお姉ちゃんなんでしょ!!
弟や妹が死にそうな目に遭ってんのに!!
いつまで寝てんのよ!!」
クルムの頬には涙が伝う。
フラフラで意識朦朧の、うまーるが
秘薬を取り返すべく、力を振り絞り走っていた。
ヌルは、大声で叫んだ。
ヌル「うまーる!
魔法で攻撃するから離れろ! 少し安め!!
風属性魔法
『スーパーローテーション』!!」
ヌルは風速100mを超える風を作り出し、
ミイラ吹き飛ばし床や壁、天井に叩きつけた。
態勢を整えたミイラはミヅハノメで
難なく風を切り裂いた。
ヌル「中途半端な物理攻撃は効果が無い!
魔法も斬られてしまう!
早く、早く取り返さなきゃいけないのに!!
俺のせいで、
また大切な人が殺されてしまう!」
うまーる「私のせいなんだよ!!
私がお薬取られちゃったから!
レスベラお姉ちゃん、
ごめんなさいなんだよ!!」
うまーるは涙を流し、自分を責める。
そのとき、レスベラが目を覚ました。
レスベラは立ち上がり、
何かに操られるように歩き出す。
クルム「アンタ……。意識はあるの?」
レスベラはクルムの問いに答えない。
レスベラにだけ、不思議な声が聴こえていた。
「こっちだよ。そう、こっち。ここだよ。」
レスベラは瓦礫に手を突っ込み、
一振りの刀を掴み、取り出した。
その様子を見たミイラが笑う。
「カカカカカ!
サヤカラヌケナイガラクタデハナイカ。
イマサラナンノツモリダ?」
レスベラが手に力を込めると、
眩い光が発せられ、鞘から刀身が抜かれる。
虹色の刀身には7つの魔石が埋め込まれている。
長さは約70cm。
レスベラは両手で刀を握り、
鋒をミイラに向ける。
謎の声がレスベラを誘導する。
「今のキミになら使えるよ。俺の最強の魔法剣だ。
守りたい大事なヒトの事を想うんだ。
さあ、一緒に。」
夢で遭った男が、半透明な状態で
レスベラに重なり、共に刀を握る。
レスベラ「七属性魔法剣[其龍・架空如虹]
〈ソノリュウ・
ソラニカカルニジノゴトシ〉」
ミイラ「ウツクシイ……。
ヤハリ、オタカラダッタノカ。
ソレヲヨコセ! ヨコセエエエエエ!!」
レスベラが握る刀から、眩い光がほとばしる。
その光は七色の龍となり、
ミイラの体を通り抜ける。
龍が通り抜けた後の
ミイラの体は消滅していた。
ミヅハノメ、蓬莱扇、小瓶、
そしてミイラの腰に差してあった剣が落ちていた。
レスベラは涙を流しながら、
右腕を失いボロボロのヌルと、
傷だらけで毒を受けた、うまーるを抱きしめる。
レスベラ「アタシのせいで、
こんなに痛い思いさせちまって、
ゴメンな!!
アタシもう負けないから!!
誰にも負けないから!!」
ヌルは泣きながら喜んだ。
ヌル「よかった! よかったああああああああ!
負けてもいいよ!! 負けてもいいから!!
死なないでくれよ!!
命を大切にしてくれよオオオオオオオ!」
うまーる「うわああああああああん!!
ごめんね、ごめんねなんだよ!!」
抱き合い、泣きじゃくる3人を遠目に
見ているクルムの目にも、
うっすら光るモノがあった。




