75 至宝 品々物之比礼〈くさぐさのもののひれ〉+鳴鳥の子守貝〈なぎどりのこもりがい〉
75 至宝 品々物之比礼〈くさぐさのもののひれ〉+鳴鳥の子守貝〈なぎどりのこもりがい〉
ソナの新たな予知の話を聞いたあと、
ヌルが応援要請した客人たちが訪ねてきた。
ヨーリーは、ソナ達の身を案じ
ナミノエと人魚国の同盟を提案する。
今後、ソナが魔王軍に狙われる事、
ソナ自身とソナの警護をする者には
武力が必要な事。
ソナ、ゆい、ぱとか他数名の衛兵が
人魚国で訓練を受けることになった。
ナミノエの農業が最近、不作続きである原因を
調査していた
こまちゅとレイカから報告があった。
2人の話によると原因は乾燥だけにあらず、
塩害によるものでもあるという事だった。
昔、海の底だった土地に
川から水を引いた事により、
地中深くにあった塩が溶け出したという話だ。
乾燥と塩害に強い作物をエルフ国から提供し、
また育成の補助をすることとなった。
見返りは、乾燥地域ならではの
特産品の交易らしい。
バオバブ、ソルガム、ゴムの木、ナツメヤシ
などの作物の流通である。
こまちゅが溜め息混じりに、ヌルに話しかける。
こまちゅ「はぁ。お前達、まさかとは思うが……。
忘れたのか?」
ヌル(な、なんだろう。この威圧感は……?
挨拶を忘れてたのか?
それとも、助けてもらった御礼か?)
「こまちゅ様。
本日も、大変麗しゅうございます。」
こまちゅは、ヌルの顔を3秒ほど見つめた後、
荊のツタでヌルのケツを鞭打つ。
ほどよい痛みに悶絶し、身悶えるヌル。
こまちゅは、アローヒが抱える荷物を掴み
投げつけようとするが、アローヒとゼットが
慌てて制止する。
アローヒが、クルムに包みを渡す。
アローヒ「こまちゅね、あれから寝る時間も
惜しんでコレ作ってたんだよ。
完成してからはね、
みんなが喜んで受け取りに
来るんじゃないかって
楽しみにしてたんだ。ごめんね!
こまちゅは怒り、
無言になりヌルたちに背を向ける。
ヌル「アラクネ比礼、もう出来ていたのですね!
ありがとうございます!!」
(やべえ。完全に忘れてたわ。)
こまちゅ「うまーるといったか。
そこの小さな、おなご。
其方から死相が見える。
この比礼は
其方を災いから守るであろう。」
アローヒ「これね、ただのアラクネ比礼
じゃないんだよ!
アラクネ絹に火鼠の皮革を
織り込んだ特注品。
こまちゅ、コレなんだっけ?」
こまちゅ「エルフの伝承にのみ存在する至宝。
【品々物之比礼】である。
空を掴み、様々な災いから身を守る、
神話の至宝だ。
ふんっ。」
言い終わるとすぐに、
こまちゅは部屋を出て行った。
ゼットも後ろを付いていく。
アローヒ「すごく頑張って作ってくれたんだよ!
大事にしてね! じゃあね!」
アローヒはこまちゅとゼットを追うように
出ていった。
ソナがヌルたちに話しかける。
ソナ「ヌル様、この度は本当に
ありがとうございました。
私たちはこれから、ヨーリー様の元で
色々と学ぶことにしました。
また是非、お会いしましょう。
ヌル様、
コレを旅のお役に立ててください。」
ソナは、鳴鳥の子守貝を差し出した。
ヌル「秘宝……。
あの予言ですね。クルムが使うという。」
ソナ「はい。皆さま、どうかご無事で。
また一緒に、お祭りしましょうね!!」
ソナは泣きながらヌルの懐に飛び込んだ。
ヌル(ああ。そっか。俺、死ぬんだっけ。)
「もちろんですよ!
全てが終わったら、また
皆んなで美味しいもの食べて、呑んで。
歌って踊りましょう!」
レスベラ「サクッと終わらせねえとな。
そっちも頑張れよ!」
ヌル「ゲホッ! ゲッホゲッホ!」
レスベラがヌルの背中を叩き
ソナの肩を掴み、激励した。
ソナ「はい!」
ぱとか「遅くなりました。
今回の報酬でございます。
お納めください。
本当にありがとうございました。」
ぱとかは深々と頭を下げ、
たくさんの金貨が入った袋を差し出した。
それは、クエストの報酬として、
亡き先代のナミノエ領主が遺したものであった。
それぞれ話がまとまり、
応援の者達は転移魔法陣から帰国していった。
ソナたちも人魚国へ向け旅立って行った。
ヌルは手に入れた2つの秘宝を
それぞれクルムと、うまーるに渡した。
クルムは子守貝を手に取るも、
ソナに起きたような変化は見られなかった。
ソナの解呪条件が、
貝に触れるという設定だったというだけで、
貝自体に呪いを祓うチカラは無いようだ。
クルムは
首飾りに加工された貝を首から下げた。
うまーるは、包みを開けて比礼を取り出した。
その品々物之比礼は、
薄い桜色をした光沢ある絹織物であった。
うまーるは、早速比礼を首に巻いた。
レスベラ「いーなー。
アタシも何か欲しかったゾ。」
クルム「アンタは人魚から靴をもらったでしょ!
しかも、これからアンタの2本目の刀を
探しに行くんじゃない!
贅沢言うな!」
レスベラ「そーだナ。見つかるとイイナ♪」
ヌル「よし。俺たちも行こうか。」
(よし、十至珍宝収集も順調だ。これで四つか。
予言の内容を精査すると、
レスベラとクルムの解呪。
これは、おそらくイムの身石鉢か?
そしてナナの復活。
これは難しいだろうな。
考えられるのは
道返玉、死返玉、生玉、竜首宝珠あたりの
複合効果か。
世界を隈なく周るしかないな。)
ヌルたちはダンジョン攻略を目指し、
ナミノエを出発した。
目指すのは裏口である。
ぱとかの話だと、ゆいが捕らえられていた
バオバブの木に井戸のような穴が掘られており、
そこが裏口だという。
盗賊王には当時、多額の懸賞金が
懸けられており、その命を狙う冒険者たちが
迷宮に押し寄せたようだ。
脱出口を設けたものの、誰も正面から
攻略できなかった上に、呪いや災いが凄まじく、
人が近寄らなくなったらしい。
七星流転盗難事件の後、ほどなくして盗賊団は
なりを潜め、
活動している様子はなくなったという。
100年以上前の話らしい。
盗賊団はもう存在しなく、迷宮は廃墟らしい。
ヌルたちはバオバブの木に着いた。
登り、辺りを見ると井戸のようなモノがある。
穴はレンガのような石で
周りが補強加工されていた。
ロープを太い枝に縛り付け、ゆっくりと降りる。
光の魔法で辺りを照らす。
穴は樹の下、地下にまで続いていた。
レンガ造りの部屋の隅に、
椅子がポツンと置いてあった。
埃が積もった床に、真新しい複数の足跡がある。
最近、何者かが訪れた形跡であった。
レスベラ「あの椅子怪しいよな?
アレが仕掛けで、先に進めるのか?」
ヌル「待つんだ!
絶対に罠だと思う。
鑑定する。待って。」
ヌルは椅子を鑑定した。
結果、バズビーズチェアという名の
呪いの椅子であった。
座った者は近い将来、事故で命を落とす。
というものであった。
ヌル(イギリスにある伝説の呪いの椅子、
バズビーズチェアと同じものか!?
何故、異世界に同じ物が!?)
「座ったら死ぬ椅子だってさ。」
レスベラ「まじかよ!? そんなもんあるのかよ!
あぶねえな!
こんなとこに放置すんなよナ!」
クルム「アンタみたいなアホを
殺すために置いたんでしょ。」
ヌル「他に抜け道があるはずだ。探すよ。」
ヌルは地中レーダー魔法を使い、辺りを探る。
比較的近くに大きな地下空洞を見つけたが、
そこに繋がる道が、
今ある場所とは繋がっていない。
どうやら、
バオバブの樹の根元に真の入り口があるようだ。
ヌル達は外に出て、バオバブの樹の根元の砂を
払うと、フタを発見した。
フタを開けると、それは井戸のような形状で
地下へと続く穴があった。
4人はロープを使い穴を降りた。
降りた先には、地下に広い空間があった。
物や瓦礫が散乱しており、荒れ果てていた。
探索を始めると、
この世のものとは思えない恐ろしい声が響いた。
「カカカカカ。ワレノザイホウヲネラウモノ。
アノヨデコウカイスルガヨイ」
腰に剣をさしたミイラが立っていた。
皮膚と思われる部分には、
無数のアザのような痕がある。
クルム「竜皮病……! 死の病。
盗賊団を壊滅させたのは、
死の病だったのね。
勇者ザトマルの死因も、その病。
災厄の魔王の呪いなのよ。
おそらく、
ザトマルの墓を盗掘して感染したのね。」
ヌル「竜皮病……。
アレは、写真で見たことがある。
天然痘の痕だ!
地球の人類も1000年以上苦しめられ、
また億単位のヒトを殺した
最悪レベルの感染症……!
外に持ち出したら大変な事になる!」
ヌルは魔法で皆の免疫を強化する。
レスベラが意気揚々とミイラに斬りかかる。
レスベラが握るミヅハノメが、
突然レスベラの手から消えた。
「コレハイイケンダナ。
コレカラハワレガツカッテヤロウ」
レスベラは
ミイラが握るミヅハノメに喉元を刺されていた。
頸動脈から血を噴き出したレスベラが倒れた。




