74 新たな予知
74 新たな予知
砂漠の激闘が終息し、ヌルたち4人は
盟友たちによる懸命な救助活動により、
ことなきを得た。
この戦いで、ヌルはスキル【擬死】などを
手に入れていた。
攫われたナミノエの現領主"ゆい"は、
ギリーが立っていたバオバブの木の上に
捕らえられていた。
"ゆい"が救助され、木から降ろされた。
ソナ「ゆいちゃん!!よかった!」
ソナは涙を流し、ゆいに抱きつこうとする。
ゆいは驚き、ソナを拒否するように制止する。
ゆい「ソナ!? なんでアンタが話せるのよ!」
ぱとかが割って入り、簡潔に事情を説明した。
ソナは先代の領主の娘であり、
正当な領主の血筋であること。
ソナが悪者に狙われる危険を回避するため、
声と能力を封じられ、
ゆいが身代わりになったこと。
ゆいが、自分の娘であることなどであった。
ゆい「最低!
アンタみたいなのが親とか、
知りたくなかったわ!」
真実を知った"ゆい"は、ぱとかを罵倒する。
ソナが涙を流し、ゆいに謝罪する。
ソナ「ゆいちゃん、ごめんね。私のせいで。
私のせいで、たくさんの人の人生が
狂ってしまったのね。」
ぱとか「ソナ様、そんな風におっしゃらない
でください。
私と"ゆい"が生きてこられたのは、
ソナ様と、先代領主ひす様のおかげです。
領主様のおかげで、
私は犯罪者にならずに済みました。
また、ゆいも健やかな生活を
送ることができました。
今後も、この恩に報いるため
ゆい共々ソナ様にお仕えします。」
ゆいは激昂し、ぱとかを罵倒する。
ゆい「今さら、ソナに仕えられるワケないでしょ!
私が今まで、ソナに対して
どれだけ酷い仕打ちを
してきたと思っているのよ!
私はこのナミノエを出て行く!
こんな町には、いられない!」
ソナは、涙を流しながら歌い出した。
ソナ「♪雨はやがて 道に染みて 緑あふれる
♪キミの足あと 未来を照らす
ねえ、覚えてる?
昔、ゆいちゃんが私に教えてくれた歌だよ。
私、歌えるようになったんだよ。
やっと、ゆいちゃんと
歌えるようになったんだよ!」
ゆいは、俯き下を見ている。
ソナ「私、知っているんだよ。
ゆいちゃんが、ひす様……私のお父さんに
言われていたこと。
ソナは友達じゃない、メイドなんだ!
仲良くするな!
お前は領主の娘らしく振る舞え!って。
ゆいちゃんは、私をメイドとしてじゃなく、
私と友達でいるために、
私をクビにしようとしてたんだって。
優しい"ゆい"ちゃんに
たくさん辛い思いさせちゃったね。
ごめんね。
これから私は領主で、ゆいちゃんはメイド
という関係になってしまう。
けれど、ゆいちゃんには
ずっと、ずっとナミノエにいて、
友達でいてほしいな。」
「「うわあああああああああああん」」
ゆいが、大きな声で泣き出す。
ソナも、ゆいを抱きしめ泣き出す。
ぱとかは、2人の娘を抱きしめ、涙を流す。
その様子を見ていた、
うまーるとレスベラも、もらい泣きをする。
うまレス「うわあああああああああん」
見ていた者の多くが、目から零れる涙を拭った。
ヨーリーが皆に提案する。
ヨーリー「こんなとこで長くお喋りするより、
帰って皆でパーティしましょ!
おいしいもの
いっぱいあるんだから!」
皆はナミノエへの帰路につく。
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ナミノエへと戻ると、お留守番組が
炊き出しの準備をしていたようだ。
同盟国により持ち寄られた豊富な食材による
豪華なご馳走。
そして食後のアイスクリーム。
ほえほえ「バターの香りがする、
『バターヌアザラシ』の脂を
加えてみたの。
進化したアイスクリームは如何かしら?
エルフの森産メイプルシロップに、
ダークエルフ国から仕入れた生乳と
鶏卵を使っているのよ。」
アイスクリームを口にした皆が、
恍惚な表情をしていた。
ゆいもソナも笑顔になる。
ヨーリー「ほえほえちゃん、
ウチの国にも支店出してよ!
お願い!」
ほえほえ「喜んで!!」
勝利を祝う宴は深夜まで続いた。
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ーー翌朝ーー
領主の屋敷で朝を迎えたヌルたち一行は、
朝食を摂りながら話合っていた。
話題は、盗賊王の迷宮である。
ぱとかの話によると、
正規の入り口から入っても
罠だらけで進むのは難しいとのこと。
また、侵入者には恐ろしい災いや呪いが
降りかかること。
避難経路と見られる、裏口は比較的安全に
生還できるが、攻略できた者がいないこと。
などの内容であった。
ヌル「ザトマルが愛用した剣が、
その迷宮にあるのは確かなのかな?」
クルム「流出したという話を聞かないから、
おそらく、迷宮の中だと思う。
それと、他のお宝も
見つかるかもしれない。
行く価値はあると思う。」
レスベラ「サクッと行って
サクッと獲って来ようぜ!」
ヌル「死の災いとか呪いの話が気になるな。
だけど、大盗賊のお宝は興味あるな。
もしかしたら、所在不明の十至珍宝も
あるかもしれないしな。
よし、行こう。」
ヌルたちが立ち上がったとき、
ソナが持つ子守貝が輝いた。
輝きそして、ソナに未来の映像を見せた。
ソナが見たのは、
子守貝を身につけ、背中に光の翼を持つクルムが
空を飛び、雨の中で唄う姿。
足首の辺りから光の翼を生やし、空を翔け、
舞うように巨大な怪物と戦うレスベラ。
大量の血を流し倒れ、
小人族の女性に介抱されている、
うまーるの姿であった。
ソナ「お待ちください!!」
ソナの呼びかけに立ち止まり、振り向くヌル。
ソナ「今、
未来の光景のような映像が見えました。」
ソナは自分が観た映像について話した。
ヌル(小人族の女性?)
「その小人族の女性の髪型とか、
髪色は見えましたか?」
ソナ「はい。顔はよく見えませんでしたが、
栗色の髪で、長さは肩までくらいでした。」
ヌル(まさか! ナナなのか!!
ナナの復活に成功するのか!?
そうか……。
間違ってなかった。
この旅は、この冒険は
間違ってなかった!!)
「うう……。」
ヌルは泣き出した。
皆が驚く。
クルム「なるほどね。
アンタの妻が生き返る。
そういうことなのね。
ねえソナ、ヌルの姿は見えなかったの?」
ソナ「はい……。」
ソナは下を向き、
絞り出したような小さな声で答えた。
クルム「ヌル、アンタこのままだと死ぬわよ。
そして私とゴリラはおそらく、
呪いが解ける。
うまーるも危ないわね。
命に関わる怪我をする。
おそらく、これからの旅は命の危険と
引き換えに得る物が大きい。
ただ、今の時点で得た情報のおかげで、
選択肢次第では生き残れるはず。
死ぬ運命のアンタ達2人は、
これからは慎重に動きなさい。」
涙を流すヌルに、クルムの言葉は届かない。
ヌル(俺は、おそらく
自分の命かナナの命かの選択を
迫られるのだろう。
もしそうなった時は、迷わず
ナナの命を選ぶんだろう。
1番やっちゃいけないのは、
自分の命惜しさに
周り道をしてしまうことのはずだ。
それだけは、避けなきゃいけない。
この命に代えても、必ずやり遂げるんだ!)




