70 祭・後編
70 祭・後編
ーーナミノエサイドーー
小さな祭壇の上にソナが立っている。
ソナは子守貝を握りしめ、歌い始めた。
ソナが立つ祭壇の周囲には、
総勢1000名近くの人々が取り囲む。
ソナの歌に合わせ、盆踊りのように
周囲の人々が祭壇の周りを練り歩きながら
歌い、踊る。
ソナ「♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム べっちょっちょ
♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム ねっちょっちょ」
周囲の人々も、ソナに合わせ歌う。
応援で招待された、エルフ、人魚、
スカディ達は魔力を込め歌い、踊る。
フレームアイはオタ芸のような動きを。
ゴリアシはブレイキンのような激しいダンス。
アッチ、ヘンゼル、アカマルは
タップダンスのような足捌きを魅せる。
レイカ、ほえほえは
パラパラのようなダンスを披露する。
ヨーリーは艶かしいベリーダンスを、
ともっちょ、アローヒは歌に力を込める。
「♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム べっちょっちょ
♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム スラ〜イム
♪スラ〜イム ねっちょっちょ」
ナミノエがある島の上空に雲が集まり出した。
巨大なバオバブの木陰で、
祭りを遠くから眺めていた
こまちゅが手を空に向けてかざし、魔力を放つ。
そばで座るゼットも目を閉じ祈る。
ポツポツと、雨が降り始めた。
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ーー砂漠の乱戦祭サイドーー
レスベラと2体のキメラは
巨大ワームの突撃を躱しながら、激しく闘う。
レスベラ「う〜ん。虫っぽいお前さぁ、
最近ヤッた奴とキャラ被りすぎ
なんだよナァ。」
サソリは
言われている意味がわからないようだ。
サソリの攻撃を躱したレスベラは、
左手を使いバク転し、掴んだ砂を
トカゲの顔にかけ、
空振りでバランスを崩したサソリに蹴りを入れた。
トカゲはたまらず後退した。
レスベラは思い切り体をしならせ、
渾身の一振りでサソリを斬り捨てた。
斬られ倒れたサソリは、アペプに捕食された。
視力が戻ったトカゲは、動きを止め構えた。
レスベラ(逃げる素振りも攻めてくる様子も無い。
カウンタータイプの攻撃を使うヤツか。
何が出る? 考えても仕方ない!
やるか!)
レスベラは勢いよく砂を蹴り、
トカゲに斬りかかる。
トカゲが力むと、トカゲの全身から
血と白い棘が飛び出し、
長く伸びた棘がレスベラを襲った。
数本の棘がレスベラの体に刺さった。
と同時に、振り降ろした刀でトカゲを斬った。
トカゲは倒れながらも、傷口と目から
大量の血を噴出させた。
バックステップで距離を取ろうとした
レスベラに自身の血を浴びせた。
レスベラ(なんだ!? 何をされたんだ!?
刺された!? だけじゃない!
この鈍痛……。毒か!
あの、血と共に飛び出した白い棘。
毛や鱗じゃない。骨か。
自身の皮膚を骨で突き破り、
毒を含む血を飛ばしながらの刺突攻撃。
相打ち覚悟か。)
トカゲ「くっ……!
ほとんど刺さらなかった……。
無念。」
倒れたトカゲがアペプに捕食された。
レスベラ「すげえ覚悟を秘めた攻撃だったな。
あのトカゲ。
殺気ムンムンだから最小限の被弾で
躱せたけど、
ヘタしたらアタシが死んでたゾ。
魔王のためか、仲間のためかは
わからんけど、立派な戦士だったゼ。
次、人間に生まれたなら、友達になって
一緒に遊ぼうぜ。」
レスベラは、敵ながら命を懸けて戦ったトカゲに敬意を表した。
クルムと交戦していたコブラ頭のキメラは、
鼻と目から出血し、錯乱して暴れていた。
コブラの足元に流砂が発生し、
コブラは流砂に呑み込まれた。
クルム「さて。
アリジゴクとミミズ、どうしようかしら。
硬そうなアリジゴクはゴリラに任せて、
柔らかい方にしとこうかな。」
クルムは軽快なステップを踏み足音を立て、
アペプを誘う。
クルムの足元の砂が盛り上がり、
クルムを捕食しようとアペプが襲いかかる。
ギリギリで躱し、毒を含む風を浴びせるクルム。
クルムとアペプの交戦を見たレスベラは、
シャンを追う。
シャンは、うまーるとスナネコを捕食しようと
狙っていたが、接近してきたレスベラに気付き、
標的をレスベラに変えた。
うまーるとスナネコは
互いに高度な足捌きを披露していた。
うまーる「ねえ、キミは獣人なの?
なんで戦うの?
自分の意志? 無理矢理なの?」
うまーるは、自分と似た姿の
スナネコキメラとの対話を試みる。
しかしスナネコは無言で、
うまーるを殺しにかかる。
うまーるは、心にずっと引っかかっていた。
隷属の指輪の効力で
ゼットが仲間に襲いかかったことを。
もしかしたら、
目の前の相手は操作されているのではないか?
傷つけてよいものなのか?
迷いながら戦っていた、うまーる。
悩んだ末に決断した。
自分が負けるワケにはいかないこと。
ここで敵を逃せば、
何の罪も無い弱者が被害に遭うかもしれないこと。
殺すつもりがなくとも、攻撃を当てた結果
相手が死んでしまったら仕方がないということ。
スナネコの鋭利な爪の攻撃を
白亜の盾と火雷で打ち払う、うまーる。
うまーるの火雷による突きを
軽快なステップで躱すスナネコ。
砂の足場でスナネコに攻撃を当てるのは
困難だと判断した、うまーるは考えた。
火雷にまとわり着いた砂鉄を見て閃いた。
金剛杵は、覚悟を決めた
うまーるに新たなチカラを授けようと
うまーるに語りかける。
[右手の土雷〈ツチイカヅチ〉は引力。
左手の若雷〈ワカイカヅチ〉は斥力。
電磁のチカラ。]
うまーる「ツチイカヅチ」
うまーるは、右手に雷の力を集める。
うまーるの右手に砂鉄が集まり
砲丸のような球体になる。
うまーる「ワカイカヅチ」
うまーるは左手で右手首を掴み、
雷のチカラをこめた。
集まっていた砂鉄が斥力により、
放射状に放たれた。
スナネコは、全身に砂鉄のつぶてを浴びた。
目に入った砂鉄により視界を閉ざされ、
たたらを踏む。
うまーる「ごめんね。」
うまーるはスナネコに火雷を押し当て、
電撃を浴びせる。
スナネコは髪の毛が焦げるような
不快な臭いと煙を出し倒れた。
スナネコの毛が焦げた匂いに釣られたシャンが
大顎でスナネコを掴み、
砂と共にスナネコを呑み込んだ。
うまーるはその光景を直視できず、目を背けた。
レスベラがシャンを追いかけ、
うまーるの元に駆け寄る。
トカゲの血に塗れたレスベラを見た、
うまーるはハッと我に返る。
うまーる「レスベラお姉ちゃん!
大丈夫なんだよ!?」
レスベラ「ほとんど敵の血だからダイジョブ。
アレさぁ、砂の中に逃げやがるのよ。
メンドクセー!」
うまーる「私が動きを止めるよ!
頑張るんだよ!」
その時、砂漠の乱戦祭会場にも雨が降り出した。
スコールのような、強烈な雨だ。
うまーるは、濡れて固まった砂の足場で、
本来のチカラをフルに発揮できるようになった。
伏雷を使い、ステップを踏みシャンを誘う。
足元に現れたシャンに
鳴雷で雷を浴びせ、動きを止めた。
レスベラが渾身の一撃を振り下ろす。
シャンの大顎が片方、切断された。
シャンは砂に潜り逃亡した。
クルムは数百の風と毒の斬撃を
アペプに浴びせていた。
雨が降り始め、クルムの魔力が尽きかけるころ
アペプは倒れた。
痙攣し、ピクピクしている。
うまーる、レスベラ、クルムの3人が合流し
ヌルとレイドのバトルの方を見た。
ヌルは魔法で風を起こし、
砂のゴーレムに雨を浴びせていた。
レイドが焦燥している。
レイド「くそ! 運が無え!
まさかこの島で雨が降りやがるとは!
砂のゴーレムが重くて動かん!!」
ヌル「運じゃない。
それに、雨だけじゃないさ。
砂鉄、砂、石灰、水に加え、
万物創生魔法でセメント硬化促進剤まで
食わせてやった!
もうそのゴーレムは使えないぞ!!」
ヌルは地面に手を当て、魔力を流し込む。
砂を動かし、十分に練られた
コンクリートゴーレムを動かし、
海に落とした。
レイド「キィイイイイイイイイイイ!!
次は! 必ずブチ殺してやるからな!!」
レイドは転送魔法陣を作り出し、
逃げようとした。
しかし、何も起こらない。
ヌル「転移阻害の魔法をかけた!
もう逃さないぞ!!」
レイド「ぐああああああああ!!
こうなったら!」
レイドが杖を取り出し、
臨戦態勢をとる。
いつのまにかレイドの背後に立っていた
うまーるが、火雷をレイドの首元に押し当てた。
うまーる「動いたらビリビリなんだよ。」
レイドは、動かなくなった。
「魔王様の顔に泥を塗るだけでなく、
ここまで役立たずとはな。
負けるだけでなく、砂ゴーレムまで失うとは。」
バオバブの木の上に立つ男の姿を見て
声を聴いたヌルは、心臓がバクバクと
激しく脈打ち、全身から汗が吹き出した。
呼吸が粗くなると共に、絶望の記憶が蘇った。
痩せ型で長身、
ボサボサに伸びた髪と髭。メガネ。
かつての旅の仲間であり、
幼馴染の勇者ナナの師であり、
友とナナを殺し王都を滅亡させた。
人類を裏切った、天才賢者"ギリー"であった。
ヌル「フーッ、フーッ、フーッ、フーッ、フーッ
フーッ、フーッ、フーッ、フーッ、フーッ
コイツは コイツだけは
殺す!
殺す!
絶対に殺す!!
ギリー……!!」
ヌルの心を真っ黒なモノが埋め尽くしてゆく。
ヌルは過呼吸に陥りながらも、
絶対に許せない仇敵である、ギリーを見据える。
レイド「ギリー殿!
助けにきてくれたのですな!」
ギリーは無言で、レイドに魔力を飛ばす。
ヌルは、レイドの魔力が暴走する気配を感じた。
ヌル「マズい!! うまーる!
レイドが爆発するぞ! 離れろ!!」




