60 悩殺!人魚の女王
60 悩殺!人魚の女王
ヌルたちは、レイカから借りたエルフの魔法舟に
乗り込み、魔力を使い航海に出た。
帆が魔法の力で自動で動き、風を掴み走る。
ヨットのように、向かい風でも前進できる
スグレモノであった。
ヌルは舟に積んであった網を使い、
夕食の食材を獲るべく奮闘した。
しかし、何も獲れない。
ヌル「まいったな。
この辺の海は、ほんと食材になるの
いないよな?なんでだろ。
せっかく米とトマトもらったから、
海鮮パエリア作ろうと思ったのに!」
(この辺の海は、海の幸が全く獲れない。
偶然じゃない。異変が起きてるのは
間違いない。)
ヌルたちは船を走らせたまま、
仕方なく保存食を食べた。
レイカから貰った硬いパンにハチミツ、
それとドライフルーツである。
ヌルは日持ちが厳しそうな生のトマトと、
生の鶏卵をみて思った。
時間がある時にケチャップとマヨネーズに
加工しようと。
夜が明けると、遠くに人魚の国らしき
美しい白亜の景観が見える。
レスベラ「うおおー!キレイな建物だなー!
真っ白だー!!」
クルム「造船ドックとか、船らしきものが
全然ないんだけど。
改造だけならしてくれるのかしら。」
うまーるが何かに反応した。
うまーる「ヒトの血の匂いと、ケモノの匂い。
近くに襲われてるヒトがいる!」
ヌル「なんだって!?どの辺だ?」
うまーるが指差す方は陸地だ。
そこはマングローブ林のような場所だった。
近くに船を停め、現場へと急ぐ4人。
そこには、人魚族らしき男女が倒れており、
周囲には3体のキメラが。
サンマのような魚類の見た目、
アザラシのような見た目、
カモメのような見た目の3体であった。
カモメのような見た目のキメラが
飛び上がり逃げようとする。
カモメ「逃げろ!コイツらは戦いに慣れてる!」
クルムが扇を取り出し、赤い鎌風を放つ。
目と鼻から血を流したカモメのキメラが
墜落する。
海に逃げ込もうとする魚のキメラを、
うまーるがスタンさせた。
アザラシのキメラはレスベラが
一太刀で斬り捨てる。
ヌルは倒れている人を見た。
ヌル(男性の方は絶命している。もう助からない。
女性の方は瀕死だが、まだ息がある。)
「カモメのキメラは、捕虜として
連れて行こう。
魚とアザラシは、トドメを刺して行こう。」
ヌルが言った途端、
倒れているキメラ達の魔力が暴走する気配がした。
ヌル「自爆だ!!」
ヌルは瀕死の女性に覆いかぶさり、
防御魔法を使った。
キメラの死体が大爆発を起こした。
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この様子を、遠くの海上から見ていた
者達がいた。
その者達は魔王海軍であった。
大きな海竜に乗った、この部隊の首領格の女が
口を開く。
女「上手く行ったな。狼煙が上がったら行くぞ。」
その女の風貌は、緑の髪に
爬虫類のような顔と長い首。
下半身は魚のようで、人魚に似ている。
海蛇と人魚のキメラのようだ。
乗っている海竜は、顔が馬のようだ。
キメラ達は海中に姿を消した。
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ヌルが起き上がり、辺りを見る。
周辺には男性やキメラの遺体の一部と
見られるものが散乱している。
しかし、地面や草木はほぼ無傷だった。
ヌルはスキル『立ち泳ぎ』『耐寒』『半球睡眠』
を手に入れた。
ヌル(思ったより爆発の規模が小さい?
俺達の命を狙ったというより、
口封じや証拠隠滅目的なのか?
考えてもわからないな。
とにかく、この女性の救助が先か。)
ヌルはいくつか気になる点はあったが、
今は要救護者の手当を急ぐ決断をした。
幸い、素早く逃げた3人は無事だった。
レスベラが瀕死の女性を背負い、
ヌルとクルムが走りながら回復魔法をかける。
うまーるが先導をする。
人魚国に着き、通行人に助けを求める。
通行人から修道院へと案内してもらい、
ヌル達は瀕死の女性を修道院へと運んだ。
修道院では懸命な治療が行われた。
やがて、話を聞きつけた人魚国の兵士が
修道院へとやってきて、
ヌル達は事情聴取を受けた。
エルフの紹介で人魚国を目指していたこと、
人魚国の目前でヒトがキメラに襲われていた
ことなどであった。
話を聞いた兵士が、
女王の元へ案内してくれることになった。
修道院に着くまで、周りを見る余裕など
無かったヌルは、あらためて人魚国を見渡した。
まず目についたのは、大きな像だ。
城下町の入り口に、ガラス製か水晶かは
不明だが、大きな透明の像がある。
その姿はポセイドンのような、
雄々しい男性がトライデントを持っている像だ。
下半身は魚のようである。
次に目についたのは、行き交う人々だ。
そして波打ち際で、くつろいでいる人。
ヌル(そういえば、
大きく分けて2種類の人間がいる。
二本足で歩く人、
波打ち際にいる人は下半身が魚のようだ。
フレームアイとゴリアシは、
足があって歩くのはもちろん、
走ることもできた。)
「人魚って、足があって歩ける人もいるの?」
クルム「人魚族は変身魔法が得意なのよ。
水陸どちらにも適応した種族なのよ。
本来の姿は魚の方ね。
ただ、他人を変身させる魔法は、
かなり難度の高い魔法。
フレゴリの2人を変身させた女王は、
かなりの実力者ね。」
兵士は、少し遠くに見える大きな建物へと
向かう。
女王が住まう城だ。
その一際大きな、白い外壁の宮殿は、
とても美しい建物であった。
インドのタージマハールを彷彿とさせる外観。
城内の調度品も、大きく珍しい形の貝殻
だったり、美しい宝石のような赤い色の珊瑚で
あったり、海中の様子を描いた絵画であったり、
思わず目を奪われる品々だ。
おそらく前世含め、ヌルがこれまで目にした、
どの建物や調度品よりも美しい。
やがて玉座が見えて来た。
玉座に佇む女王の両脇には、2人の従者がいる。
女王の右側に立つのは、
白く長い杖のような物を持つ従者の女。
青いフワフワの長髪に、神官のような服装だ。
女王の左側に立つのは、
全身厚手のプレートメイルに、兜を装備している。
2メートル前後の長身に、
鎧の上からでもわかるほどの筋骨隆々の体格。
巨大なトライデントを持つ騎士であった。
神官と騎士を従えた、玉座に座る美しい女性。
その女王が放つ強い魔力は、
離れていても肌を刺すように強烈だ。
紫色の長い髪。大きく黒い瞳。
世界三大美女の1人だ。
噂に違わず美しい。
黒ギャル風のレイカ、氷の魔女のような
こまちゅ。
人魚の女王は、例えるならセクシー系だ。
シルクのような透ける生地のドレスには、
美しい貝殻や真珠が散りばめられている。
グラビアで見たような、帆立の貝殻の胸当て
から溢れそうな巨乳。
細いウエストに、魚の下半身でもわかるくらいの
大きめのヒップ。
レスベラに劣らないスタイルの良さも際立つ。
女王の前で片膝をつき頭を下げ、
敬意を表する4人。
ヌルを見つめる女王【ヨーリー】が
重い口を開く。
キリッと真剣な表情をしていたヨーリーだが、
突如ニコッと微笑み、えくぼが出来た。
ブスは笑うとカワイイが、
やはり美人の笑顔もカワイイ。
ヌルは思い出した。
アイドル好きな、地球での友人が
言っていた言葉を。
【えくぼは、恋の落とし穴なんだよ!】
まさに、恋に落ちてしまいそうな罠であった。
ヨーリー「レイカから話は聞いてるわ、英雄様。
楽にしていいわよ。
ゴリラみたいなの想像してたけど、
こんなカワイイ小人ちゃん
だったのね。」
ヌルを見つめ片目を閉じ、
ウインクするヨーリー。
ヌル「お、お初にお目にかかりましゅ。
ヨーリー様。
私はヌルと申します。
こちらは旅の仲間にょ、うまーる、
レスベラ、クルムでしっ。」
絶世の美女の予想外のコミュニケーション。
緊張と焦りでヌルは上手く話せず、言葉を噛む。
ヨーリーは、とろんとした表情をし、
自身の両腕で胸を寄せ谷間を強調しながら、
唇を少し舐めたあと、ヌルに話しかけた。
ヨーリー「緊張しないでいいのヨ。
ヌルちゃんは礼儀正しいのね。
ねぇ知ってる?『お』を付けると、
丁寧になる言葉は多いけど、
イヤラシクなる言葉も多いのよ。」
ヌル(初対面の人に何言ってんのこの人ーー!?
でもお色気SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!)




