6 【悲報】魔王の手先が投獄された件【主人公】
6 【悲報】魔王の手先が投獄された件【主人公】
ーー王都にある地下牢ーー
鑑定を受けてすぐ、ヌルは牢屋にぶち込まれた。
国の重鎮たちはヌルを魔王軍のスパイと
決めつけ、すぐさま処刑を求めた。
オレダ王の一言で、ヌルはとりあえず
投獄ということになった。
ふてくされ、暗く、冷たい石畳に敷かれた
藁の上で寝転がるヌル。
ヌル(あーあ、なんだよこれ。
何のための転生だよ。これ。
まぁ、あのまま"心筋梗塞で死んだまま"
よりは、マシかぁ……)
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ー数時間経過ー
ヌルは変わらず寝転んでいた。
ヌル(これからどうなんのかな。
王国追放とかで済めばいいよな。
処刑されそうな悪寒。
もうナナに会えないんかな。
ナナはどう思っただろう。
ドン引きかなぁ。
ナナを王都に1人置くとか心配だわ。
チャラ男に簡単に騙されそうな気がする。
騙されてヤラレちゃうのかなぁ。
くそぉ……。
俺が最初に目をつけたのに。)
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ーさらに数時間後ー
ひとりの兵士が地下牢に来て、
丁重な対応でヌルを牢から釈放した。
手錠を外され、兵士に連れられ王宮へと
案内されるヌル。
ヌル(どうした?
あの様子だと処刑はなさそうだな。
そりゃそうだ、まだ何もやってないもんな。
なんだろう?
まさか、神風特攻隊とかにされるのでは!?
【インパール作戦】みたいなのは、
マジで勘弁して欲しいわ)
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ー王城玉座前ー
ヌルは王の元に連行された。
これから重要な会議が行われるようだ。
会議の場には、ヌルの見知った顔が1名。
ナナである。
ナナ「よかった! ヌル!」
走ってきたナナがヌルの懐に飛び込んだ。
肩を震わせて泣いていた。
ヌルはナナを受け止め、抱き締めた。
ヌル「大丈夫だよ。拷問とかされてないし。」
(うほっ! やわらけぇ。
そしていいにおい。
特攻する前になんとか、
ナナとチョメチョメできねえかな……。
やべっ、勃ちそう!)
体は15歳。
しかし頭脳はオッサンっである。
どこぞの名探偵とは大違いである。
ムクムクと、ヌルのアレが漲る。
ヌル(素晴らしい!!
勃たなくて怒られたりしたもんなぁ、前世。
若さって最高だな!!
あ、やべ! みんな見てる!)
少し前屈みになりながら、
「もう大丈夫だから」とナナをなだめるヌル。
集まった者たちの関心は抱き合う2人に
向けられていた。
そんな空気を防衛大臣が
「国王から大事な話がある」と言い、遮った。
国王【オレダ・ヨオレ16世】が
壇上で話しはじめる。
オレダ王は、〈ケンチョー歴代最強〉
と言われる武王だ。
デカくてマッチョ、長く伸びたヒゲは白く、
貫禄がある。
国王「すまなかったヌル。
恥ずかしながら動揺してしまった。
魔王の手先。
魔王側が送り込んだスパイ疑惑が、
なかなか拭えなくてな。
よく考えれば、そんな訳はないというのに。
面目ない。
チュートリ村で生まれ、事故で眠りにつき、
ここで英霊召喚で生まれ変わった其方が、
魔王の手先であるハズがない。
すまなかった。
名前は不吉である。
だがしかし、そのスキルを国の為、
いや人類のために役立ててほしい!
詳しくは国の防衛大臣から話がある。」
防衛大臣のタスクが壇上に上がり話しはじめる。
タスクは高齢で小柄な男性だ。
モノクルが似合う、知的な顔つきをしている。
知識が豊富で、軍事に優れた軍師であった。
王都ケンチョーが魔王討伐に兵を派遣しても、
魔王軍が大掛かりな報復に出てこなかった。
それは堅固な防衛力を作り上げた、
この大臣の力量と評判であった。
大臣「喫緊の事態ゆえ、本題に入らせていただく。
昨今、不死の魔王が世界を支配するため
活発に動いている事はご存じでしょう。
我が国としても、過去に複数回、
討伐隊を編成し出撃した。
結果、敗北して有能な人材の大半を
失ってしまうという、苦い思いをしました。
現在のところ、不死の魔王を倒す方法は
ありません。
どんな傷を与えても即再生、
一撃で絶命させても自動蘇生という
スキルに阻まれます。
そう、不死の魔王のスキルは
【蘇生】と【再生】なのです。
先代の魔王【災厄の魔王】は、
呪いを駆使し、世界人口を半分以下に
してしまうほどの攻撃力を持った
魔王でしたが、倒すことはできました。
しかし、今代の魔王は、
攻撃力はそれほどでもない。
しかし、倒すことができないのです!」
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※インパール作戦とは
世界大戦時に、
日本軍が行ったメチャクチャキツイ作戦。
豚に荷物を持たせて、食糧に困ったら豚を食え!
武器は敵から奪え!
弾が尽きたら刀で戦え!
刀が折れたら拳で戦え!
みたいな作戦。
ガリガリに痩せ細った日本兵が、
石を投げて抗う姿を見た敵兵は、
その【侍スピリッツ】に戦慄したという。