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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第三章 世界探訪
53/138

53 魔王マハルポージャ

53 魔王マハルポージャ



 玉座の肘掛けに肘をつき、右頬に頬杖をし、

溜息を漏らしながら、白の女王『こまちゅ』は

話し出した。


こまちゅ「はぁ…。



     また増えてる。


     ……綺麗な花には

     美しい蝶が留まるけれど…。


     ウン●には蝿しか(たか)らない。」



ヌル(棘と毒SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!


  この人、怖えよ!!

  クルムを10倍くらい濃くしたような毒!!)



 レイカが、あきれた様子で話す。


レイカ「ちょっと!こまちゅ!!

    初対面なんだから、

    ちゃんと挨拶しなさい!


    あと、そんなこと言うから

    友達できないんだよ!


    もう!!」


 こまちゅが面倒くさそうに話す。


こまちゅ「はぁ。

     ウン●バエの友など要らぬわ。


     ……しかし、面白い客人だな。

     転生者に

     ザトマルの子孫と雷獣の子孫か。

     魔王と戦争でもするのか。


     勝手にやっておれ。」


レイカ「ちがうっつーの!話を聞きなさい!!

    種子保存庫に行くよ!

    手を貸して。」


こまちゅ「やだ。」


レイカ「アローヒ!!行くから準備して!」


 こまちゅの側にいた

侍女のような女性に話かけるレイカ。


 アローヒと呼ばれた女性は、白のエルフ族だ。

 赤いストレートのロングヘア、

巫女のような服装をしている。


アローヒ「レイカちゃん、行く目的を

     簡潔でいいから話してあげて。

     ちゃんと行くから。

     私は旅の準備しとくね。」


レイカ「ヌルちゃん。

    ドングリの木が枯れてる原因と、

    対策を話して。たのむわ。」


ヌル「はい。

   お初にお目にかかります、こまちゅ様。」


 ヌル、うまーる、レスベラ、クルムは

片膝をつき頭を下げ、こまちゅに敬意を表する。


こまちゅ「よい。おもてをあげよ。


     して、木が枯れた原因と対策とは?」


 ヌルは、検索魔法を使いダウンロードした知識で、ナラ枯れについて詳しく話した。

 また、先ほど捕獲した虫を取り出し見せた。


 ドングリ系の木は成長し、

幹が太くなると虫が好むようになること。

 虫が菌を運び、菌が木を枯らすこと。


 熊などの動物の餌が足りなくなり、

冬ごもりできなくなること。

 冬ごもりできない"穴持たず"は凶暴になり、

ヒトの生活圏に入ってきたり、

ヒトを襲ったりするようになること。


 ナラの木は成長が早いから、

太くなる前に伐採し、資源として活用

することなどを話した。


 また、松枯れについても話した。

 こちらは、菌ではなく寄生虫が原因であること。

 松を食う虫が寄生虫を運ぶ事

などの内容であった。


 燃料を石炭や石油に依存する"エネルギー革命"

が原因であることなども話した。


こまちゅ「ふむ。

     虫を殺すのはエルフの掟に反するが、

     森を枯らすわけにはいかぬな。


     仕方ない。」


 こまちゅは玉座から立ちあがろうとした。


 こまちゅがよろけ、倒れそうになる。


 ヘンゼルが光の早さで、こまちゅを支えた。


ヘンゼル「ご無沙汰しております。」


こまちゅ「ヘンゼルか。

     久しいの。

     たまには顔を見せよ。」


 こまちゅは、ヘンゼルを気に入っているようだ。


 荷物を抱えたアローヒが戻ってきた。


アローヒ「また急に立ち上がって!

     ヘンゼルありがとね!


     こまちゅは

     椅子に座ったままでいいよ。」


 アローヒが玉座を押すと、

それは車椅子のように動きだした。


ヘンゼル「アローヒさん、私が押しますよ。」


アローヒ「ありがと!

     ヘンゼルはやっぱり優しいね!

     いつでも戻ってきていいからね。


     こまちゅも寂しいと思うよ。

     数少ない友達だから。」


こまちゅ「余計な事を言うでない。」


 フレームアイとゴリアシは、さりげなく

アローヒが持っていた荷物を掴み、持ち上げた。


アローヒ「ありがとう。」


 アローヒは嬉しそうな満面の笑みで

フレームアイとゴリアシを見上げる。


フレームアイ「その笑顔が見られるのなら、

       例え山でも担ぎますよ。」


ゴリアシ「ならば、

     俺は海を持ち上げて見せましょう。」


 こまちゅが空中に光の文字を書き、

その文字を飛ばした。


 フレームアイとゴリアシは、

こまちゅの前に土下座し懇願する。


フレゴリ「こまちゅ様!!口説いてませんから!

     ヨーリー様には言わないでええぇぇ!」


ヌル(動きと言葉が完全にシンクロしてる。

  双子芸人になれそうだな。)


こまちゅ「ゼット、留守中は任せた。

     魔王の手先は殺して構わぬ。」


 ヌルがビクッとする。


ヌル(一瞬、俺の事かと思ったよ。)


ゼット「いってらっしゃい。」


 ゼットが見送る。


レイカ「じゃ、行こっか。

    れっつごー☆」


 レイカは右手の拳を握りしめ、高々と上げた。


 10人は城を出て車に乗り込んだ。


 ヌルはふと、思い出した。

 ナナを殺し、王都を滅ぼした仇敵『ギリー』

のことを。

 そのギリーは、ハーフエルフであったことを。


ヌル「レイカ様、こまちゅ様、

   一つお伺いしたいのですが、

   ハーフエルフのギリーという者を

   ご存知ではありませんか?」


 レイカとアローヒが、

【あちゃ〜。その話ダメだよ〜。

空気読んでよ〜。】という顔をしている。

 普段から厳めしいアカマルの顔にいっそう、

緊張が走る。

 ヘンゼルは目を瞑り、

何かを思い出しているようだ。


 フレームアイとゴリアシは、

何の話かわからないようだが、

こまちゅとレイカの顔色で何かを察し、

気配を殺している。


 どうやら触れてはいけない話だったようだ。


こまちゅ「はぁ。

     アレの母親は、人間と駆け落ちをした

     愚か者だ。

     

     この里を脱走したあとのことは

     知らぬ。」


ヌル(脱走したあとに生まれた

  ギリーのことは知ってんだ。


  ……この話題は地雷だ。

  あとでこっそりレイカ様に聞こう。)


  「実は俺たち、魔王を倒すために

   旅をしています。

   けれど、魔王のことをほとんど

   知らないんです。


   魔王について、どんな些細な情報でも

   かまいませんので、

   教えていただけませんか?」



 こまちゅが少し考え込んだあと、

面倒臭そうに話し出した。


こまちゅ「はぁ。


     魔王の名は マハルポージャ

     人間に恨みをもつ竜人族だ。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  

  ー遠く離れた魔王の城ー


 赤い髪をした竜人族の男が

執務室のような場所で居眠りをしていた。

 魔王と呼ばれる男『マハルポージャ』であった。


挿絵(By みてみん)




〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


  〜魔王の夢・過去の記憶〜


 マハルがまだ幼い頃、マハルの故郷がある

暗黒大陸は資源が乏しく、貧困に喘いでいた。

 その貧しさ故に奴隷貿易商に

子供を売る事を余儀なくされていた。


 マハルとその妹は奴隷貿易商に売られた。


 まだ幼いマハルと妹は、奴隷貿易商人によって

人間の大陸へと連れて来られた。


 貴族の家へと売られたマハルと妹は、毎日

砂糖キビと綿花の生産という

過酷な労働を強いられた。


 妹の方は体も小さく、また喘息のような持病を

持っていた。


 それでも毎日なんとかやっていけたのは、

奴隷の先輩である、鬼人族の『ランガ』の

おかげであった。


 ランガは体が大きく

チカラが強く、マハル兄妹のノルマだった分の

仕事の遅れを

体を張ってカバーしてくれたのであった。


 しかし、幼く体が弱いマハルの妹にとっては、

ノルマに満たない労働に加え、

満足な食事を与えられなかった事もあり、

衰弱し、動けなくなってしまった。


 それでもランガとマハルの2人で、

3人分働いた。

 実際は、ランガが2.3人分くらい働いた。


 ある日、仕事から帰ると小屋で寝ていたハズの

マハルの妹の姿が消えていた。


 マハルは雇い主の貴族を問い詰めた。


 雇い主が放った言葉は、別の貴族に売ったというものだった。

 静養した後、使用人として働くという話だった。


 その話を信じたマハルは、いつか妹を買い戻すために働き、お金を貯める事を誓った。


 妹がいなくなっても、仕事のノルマは

変わらなかった。欠員が補充されるまで、

今までと同じ仕事量を

こなさなければならなかった。


 そんな日々が続き、無理がたたった。

 ランガの二の腕は、酷使により

筋肉が骨から剥がれてしまう『腱板断裂』という

大ケガに見舞われた。


 ランガは働けなくなってしまった。

 もちろん、マハル1人でノルマをこなすのも

無理な話で、過労によりマハルも倒れてしまった。


 貴族の命令で、貴族の使用人により

ランガとマハルは魔物が徘徊する森に捨てられた。


 マハルを捨てた使用人が去り際に放った一言が

「妹が死んだ場所と同じだ。

 あの世で妹に逢えるといいな」


 であった。


 マハルは悟った。


 衰弱した妹は、売られたのではなく、

生きたまま、ここに捨てられたのだと。


 深い絶望と怒りが、マハルを襲う。

 マハルは涙を流し、唇からは血が流れる。


 大ケガをしてから食事を与えられず

衰弱していたランガが先に息をひきとった。


 マハル自身ももう、長いこと食事を

とっていなかった。

 衰弱していくマハルが見たのは、

カラスに食われるランガの姿であった。


マハル(なんだこの地獄は。理不尽は。

   許せない。俺たちが何をしたというのだ。

   何故、

   こんな仕打ちを受けなければいけない。)


 気がつくと、マハルは小石のようものを

握りしめていた。

 それは、小石ではなく指輪であった。


 指輪から声が聞こえてくる。


指輪「生き延びよ。復讐するチカラを与えてやる。

   世界を変えるチカラを与えてやる。

   お前が今の気持ちを忘れずに努力すれば、

   必ず願いが叶うだけのチカラを与えてやる。


   多くの人間どもに絶望を与えよ。

   お前は闇に選ばれた。

   お前は闇の王となるべき者だ。」


 力を振り絞り、マハルは起き上がった。

 起き上がったマハルは、恩人であり、

仲間であり、親友であり、または兄のようであったランガの亡骸を貪った。


マハル(俺は生きる。

   ここで死ぬわけにはいかない!

   誰よりも強い力が欲しい。

   強い肉体が欲しい。


   そのためなら、

   俺は友の亡骸であろうとも……。

   ランガ…。そしてハル〈妹の名〉。


   必ず、俺が世界を変える。

   理不尽な格差が無い世界を、俺が必ず作る。

   見ていてくれ。)


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



 痩せ形で長身のハーフエルフの男が、

魔王の執務室の扉をノックする。

 その男は、人間を裏切り、王都ケンチョーを

滅亡に追いやった『ギリー』であった。


 ギリーは扉を開くと、

ただならぬ魔王の雰囲気を感じ取り、

一瞬、部屋に踏み入ることに躊躇したが、

自分を戒め、入室した。


 ノックの音でマハルは、夢から醒めた。


ギリー「失礼します。

    マハル様、こちらがリヴァイアサン

    捕獲計画の全容となります。

    ご確認ください。」


 ギリーは、マハルに書類を渡す。


 マハルは手渡された書類に目を通した後、

話し出した。


マハル「武闘派全軍招集だ。

    殺さなければならない事態に

    なった場合に備えて、

    レイドとディエヌとネクロも

    同行させよ。」


ギリー「承知しました。では失礼します。」


 ギリーは立ち去った。


マハル(もうすぐだ。

   もうすぐ理想の世界が実現する。

   世界は一枚岩となる。

   理不尽な格差などなくなる。


   ……見ていてくれ。


   ハル、そしてランガよ。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  ーヌルたち10人が乗る車の中ー


 こまちゅは話を続けた。


こまちゅ「今代の魔王は不死の化け物だ。

     とある魔法具を使い、人間との戦いを

     見ていたが、

     アレに勝つ術が見つからぬ。


     策はあるのか?」


ヌル「あります。

   俺の亡き妻のスキル『缶詰封印』を

   一度だけ使えます。

   それなら不死の魔王を

   封じる事ができます。」


こまちゅ「最上級の封印術か。おもしろい。


     気をつけよ。

     ギリーと共に討伐に向かった、

     王都ケンチョーの剣聖ですら、

     何もできず魔王とサシの剣の勝負で

     敗れておる。


     魔王は不死の他にも、

     相手を金縛りのようなスキルで止め、

     神速の剣術で切り刻む。


     遠距離による攻撃や

     即死系の呪術も効果がない。


     心してかかれ。」


レスベラ「アタシの出番ってワケだな。」


クルム「なんでそうなるのよ。このゴリラ!

    攻撃は効果が無いのよ。


    アンタは囮。

    死なずに魔王の剣を捌くのよ。


    金縛りへの対処が鍵になるわね。」


ヌル「魔王が竜人族ならば、体重は500キロ

   に満たないハズ。


   少しの時間があれば、封印はできる。

   あとは、魔王の配下次第だな。」


レイカ「その時はアタシたちを頼りなよ。

    みんなで囲んでボコろーよ!

    フレとゴリも囮になるし。」


    レイカはシャドーボクシングをしている。


フレゴリ「……はい。


     でも、命をかけて

     ベラちゃんを守るぜ!!」




 一行を乗せた車は、海岸へとたどり着いた。

 車から降りると、冷たい風が吹き付ける。

 冬のような気候だ。

 はるか遠くに白い山が見える。

 氷の大陸だ。


 うまーる、クルム、レスベラは

寒さで震えている。


 ヌルは、スキル『耐寒』を皆に付与した。


うまーる「えっ?急に暖かくなったんだよ?」


クルム「コレはいいわね。

    何度でも使えるよう精進なさい。」


レスベラ「サンキュー!!

     厚着したくないから助かるわ!!」



 レイカが魔力を集中すると、全長約10メートルのヨットが一行に向けて海上を走ってきた。


 砂浜に停まったヨットを見たヌルは驚いた。


ヌル「無人!?魔法の力で動く船か!」


 帆を見たクルムが、何かを確信した。


クルム「この陸を走る船も、帆船の帆も、

    アラクネ絹ってワケね。


    たしかに、これは優秀な素材ね。」


レイカ「アタシの風の魔法と相性バッチシなのよ!

    さ、行こっか。」


 10人が船に乗り込むと、船が走り出す。


レイカ「やっぱ10人は重いねー。

    スピード出ないわー。」


こまちゅ「はぁ。


     ……飛べないウン●蝿。」


レイカ「そーゆーこと言わないの!

    あそこは危ないんだから!

    みんなで行く方がいいの!


    みんなゴメンねー。

    こまちゅ、本当は優しい子なんだよ。

    今回もゼットを自然に

    お留守番にしたしね。」


こまちゅ「はぁ。ウザい。」


レイカ「そろそろ着くよー!

    その辺のに掴まっててね!」


 レイカが言った直後に急停止。

 慣性エネルギーでヌルはブッ飛んだ。

 ヌルの鼻から血が流れる。


ヌル「ちょ!?もっと早く言っ」


 ヘンゼルは、こまちゅの車椅子を支えた。

 

 レスベラが余裕で踏ん張るのを見た

フレームアイとゴリアシは、うまーるとクルムを

受け止めた。


クルム「あら、気が効くわね。ありがと。」


 クルムはチャラ男に嫌悪感を抱くタイプだが、

まんざらでもない様子だ。



レスベラ「ずるいぞ!!

     今度アタシも抱っこして欲しいぞ!!」


クルム「重いのは、誰も持ちたくないものよ。」


レスベラ「重くないっつーの!」


 お姫様抱っこをされている、

うまーるは頬を赤く染める。


うまーる「ありがとなんだよ!」


フレゴリ「どういたしまして。」


 アカマルとアローヒは慣れているのか、

予想していたようで難なく対処した。


 ヌルは客室の壁に強く頭を打ちつけ、

悶絶していた。


 10人は上陸した。


 見渡す限りの銀世界。

 白くなる吐息。


 初めて見る氷の世界に見惚れる、

うまーる、レスベラ、クルムの3人。


 レイカの号令の元、歩き出す10人。

 ずんだは寒いのか、

レスベラの胸の谷間に収まっている。


 クルムはそれを見て、対抗心を燃やし

何かをしようとしたが手を止めた。


 ずんだに寒い思いをさせないための

配慮であろう。


 しばらく歩くと、峡谷のような場所に到着し、

その奥の絶壁に大きな扉が見えた。


レイカ「あーあ。裏切られちゃったね。」


こまちゅ「はぁ。


     ……魔王側につけば安全なのは、

     我々に刃を向けなければ

     の話であろうに。」


 空から無数の鋭利な氷柱が降り注ぐ。


 周りを見ると、大勢の人間に囲まれていた。


ヌル「敵襲!?魔王軍か!!」


  (どうする!?

  このままじゃ皆、蜂の巣になる!!)







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