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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第三章 世界探訪
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46 勇者の責任

46 勇者の責任


フルチン「グーチョキパーの同時出しは、

     反則負けだぞ。」ドヤァ


 ヌルは、

カッコ良く決めセリフを言ったつもりだった。


 しかし、股間の象さんは丸出しだ。

 ヌルはまだ、

フルチンであることに気づいていない!




 ヌルは、スキル『コノトキシン生成』

        『ヒプノトキシン生成』

        『耐寒』を手に入れた。



 河童はヤケクソになり、

浦島太郎をメチャクチャに振り回した!!


河童「うらあああああああ!!」


 ヌルの戦いを見ていただけのレスベラは、

消化不良状態であった。

 水を得た魚のように、レスベラが飛び出す。


レスベラ「見えない斬撃か!面白い!

     世界は広いな!!」


クルム「なに喜んでるのよ。不謹慎ね。

    責任とって、ぶち殺しなさい。」


ヌル「待ってくれ!そいつは魔王の名を語った!

   聞き出したいことがあるんだ!

   生け捕りにしたい!」


 レスベラが振るう、ミヅハノメの軌跡が、

青くキラキラと輝く。


 河童の糸がバラバラに断ち切られる。


河童「バカな!!鋼に劣らぬ強度の糸を!!」


クルム「瘴気の鎌風・参乃風『脱力』」


 クルムが放つ青色の小さな鎌風が、

開いた河童の口内を斬る。


 河童の全身の筋肉が弛緩し、河童は膝をついた。


河童(バカな…!なんだコイツらの強さは!

  なんとか戻り、魔王様に報せなくては!)


ヌル「さて、お前には聞きたい事がある。」


 ヌルは質問をしながら、河童を鑑定魔法で鑑る。


ヌル(合成生物キメラ!?

  魔王が人工的に作ったのか!!

  違和感の正体はコレか。


  この世界には、ゴブリンやオーク、

  ミノタウロスのような、

  二足歩行の魔物がいる。

  しかし、コイツのように人語を話したり、

  魔法具を扱う魔物は見た事がない。


  その知能は侮れない。

  この河童は

  俺たちの接近にも、いち早く気付いた。


  おそらく自分の周囲に、蜘蛛の巣のように

  不可視の糸を張り巡らせていたからだろう。


  魔法具を使いこなす知恵だけでなく、

  その野生動物のような用心深さも、

  侮れない。

  危険だ。)


 河童は後ろを気にしている。

 河童は海を背にしている。


ヌル「お前は魔王の何なんだ?」


河童「言うわけがないだろう。

   俺は、お前らなんかより恐ろしく、

   強い御方に仕えてるんだ。」


   (なんとか、海中に逃げ込む!

   そうすれば、人間は追ってこれまい!!)


 河童の言葉を聞いた、

うまーるが悲壮な顔でうつむく。


 あの優しい兄が、どこかでコイツラと同じ事を

しているのかもしれない。


 うまーるは、そんな不安で胸がいっぱいになる。


 クルムは、そっと、うまーるを抱きしめる。


クルム「大丈夫よ。

    あきらめずに前に進みましょう。」


 クルムが河童を睨みつける。


 レスベラも、河童から目を逸らさない。

 いつでも斬りかかれる姿勢だ。


 河童は怯えた表情をしている。


ヌル(コイツが怯えているのは、

  きっと俺たちに対するものではない。


  今、自分が助かるために俺たちに寝返る事で、

  魔王から報復を受ける事を恐れている。)


 ヌルは剣を持つ手に力を入れた。


 ヌルは、地球で剣道を習っていたときのことを

思い出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ヌルは、一心不乱に竹刀を素振りしていた。


 それを見かけた先輩が、ヌル〈ぬるゆ〉に

話しかけてきた。


先輩「ぬるゆ君、精が出るね。

   ぬるゆ君は何故、剣道を始めたんだい?」


ヌル(異世界の魔王を倒すため、

  とか言えないよな。)


  「強くなりたいからです。」


先輩「そうか。ぬるゆ君の練習を見ていると、

   気迫が伝わってくるよ。


   ぬるゆ君は、

   剣術と剣道の違いがわかるかい?」


ヌル「真剣と竹刀の違いだと思います。」


先輩「それは違うんだよ。


   剣術は、人を殺すための技術。


   剣道は、剣術を通じて、

   精神を鍛えるものなんだ。


   竹刀を使っても、人を殺すために

   修練したなら、

   それは剣道では無いんだよ。」


ヌル「そうなんですね。」


先輩「ぬるゆ君、キミは心の余裕が無いように

   見えるよ。


   目標をしっかり見定めて、

   ブレないように生きるんだ。

   心のブレは、剣のブレに繋がるよ。


   僕は、居合道もやってるんだ。

   居合道のことは知ってるかい?」


ヌル「漫画『流れ浪人・剣☆神』のヤツですか?」


先輩「う〜ん。

   アレは、どちらかと言うと、抜刀道かなぁ。


   似てるけどね。


   剣道の試合は、相手がいて、

   斬り合うでしょ?


   居合道の試合には、相手がいない。

   型を煮詰めて、その美しさや、

   完成度を競うんだ。


   そこに求められるのは、

   やはり心の強さなんだ。


   元は剣術と同じもので、

   人を殺すためのものだけどね。」


 先輩と仲良くなった俺は、

何度か先輩の居合道の型を見せてもらった。


 それは、チカラ強いだけでなく、

無駄が無く、素速いものであった。


 それは、居合道を知らないヌルから見ても、

たゆまぬ鍛錬の成果であることが、

一目見てわかった。


 俺は勉強の合間の気晴らしに、

よく先輩の真似ごとをした。


 不思議と心が落ち着くのである。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ヌル(この河童、明らかに戦意を喪失している。

  おそらく、逃げる気であろう。

  見逃してやりたいが…


  コイツは人を殺している。

  それも1人や2人じゃない。


  コイツは生きるために、

  食うために人を殺したワケじゃない。


  コイツは快楽で人を殺している。

  コイツは人の命を、なんとも思っていない。

  コイツはきっと、これからも魔王の命令で、

  人を殺し続ける。


  迷うな!甘さを捨てろ!

  相手は野生動物じゃないんだ!!


  これは戦争なんだ。

  殺し合いなんだ。


  ここで俺がコイツを殺さなければ、

  武力を持たない大勢の人がコイツに殺される。


  勇者になりたいと願った結果、今があるんだ。

  ナナが命を賭して、

  俺を助けた意味を考えろ!!

  自分の責任と向き合え!!


  これは、誰かがやらなきゃいけないんだ!!


  たくさんの優しい人たちが、

  優しいままでいられるためなら、

  俺のこの手が、血に汚れてもかまわない!!)



 苦悩するヌルの表情を、河童は見逃さなかった。


河童(いける!全力で海に向かう!)


 ヌルは鞘に納刀状態の剣の柄を握り、

深呼吸し、精神統一した。


 河童がガクガク震える脚にチカラを入れた時、

河童の首が地面に転がり落ちた。


 首の切断面からは、勢いよく血が噴き出す。


 河童の正面に立っていたハズのヌルが、

河童の後ろに立っていた。


クルム「やればできるじゃないのよ。

    今まで、ヌルいことばっか言ってたから

    心配したわよ。


    やっと、いい表情になったじゃない。」


レスベラ「速いな!

     今のは、魔法+剣術か!?」


うまーる「なんだろう?

     不思議な速さなんだよ…。」



ヌル「地属性魔法・『縮地』+

   居合道・『虎乱斬り』」



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