41 連携スキル・戦神芸能[喜怒哀楽]
41 連携スキル・戦神芸能[喜怒哀楽]
ヌル(これは…かつて人類を苦しめた、
細菌による疫病の中では最凶最悪の
【黒死病・ペスト】!
早く対処しないと、世界中の人間の集落に
死体の山ができる!)
ヌルは検索魔法を使った。
知識の神ゴーグルの知識が、
ヌルの頭の中に入ってくる。
ヌル(ペストには、抗生物質が効くハズだ。
なるべく注射器を必要としない、
経口の薬が望ましい。
…。
あった!
テトラサイクリンか。
しかし複雑な分子構造だ。
よくこんなの作り出すよなぁ。
医学は偉大だ。
これを常に精製しながら行動しよう。)
ヌルは万物創生魔法で、
テトラサイクリンの精製を始めた。
ヌルたち5人は、ぽちぽち家が経営する宿、
【まるよし】へと到着した。
この村の建物は、竹が主な材料のようだ。
灯りがついていない、ボロボロの中国提灯のようなものがたくさんある。
おそらく、素材が麦の茎などの植物由来
だったり、骨とか角とか皮などの動物由来のため、
ネズミに食い荒らされたのであろう。
ヌル「ぽちぽちさん、
何があったのか、話してもらえませんか?」
ぽちぽち「はい。
しかしお客様、
お食事などはよろしいのですか?」
ヌル「事は、一刻を争います。
今日の食事は、自分達で何とかしますよ!
悪いけど、うまーるとレスベラに任せるよ。
クルムは俺と一緒に話を聞いてほしい。」
うまーる「わかったんだよ!」
レスベラ「こっちは任せな!
必ずクルムより、
美味いもん作るからよ!」
レスベラは酒を片手に、もう飲み始めていた。
クルム「私が賢くて助かったわね。
私が料理に参加したら食べ過ぎて、
余計デブになってしまうものね。」
ヌル(あの激辛料理で、逆に痩せそうな希ガス…)
「では、ぽちぽちさん、聞かせてください。」
ぽちぽち「あれは、約ひと月前でした。
約60年ぶりに、
笹の花が一斉に開花したのです。
笹の実は天の恵み、
豊かな食糧に村は沸きました。
しかし、その2週間後くらいから、
ネズミが大発生したのです。
笹の実は、ネズミにとっても
幸運な出来事でした。
あっという間に笹の実は食い尽くされ、
食糧が足りなくなったネズミ達は
凶暴化しました。
また、その頃から強力な呪いが
村に蔓延しはじめました。
死者が出始め、
私達は遺体を埋葬しました。
しかし墓はネズミたちに掘り返され、
死者たちはネズミの餌食となりました。
私たちが貯蔵していた食糧も、
ネズミたちに食い尽くされて
しまいました。
私たちは食糧を探しに、
村から少し離れた地域まで
探索しました。
崑崙山付近に出向いた村の者が、
魔物に襲われ、殺されました。
それは、熊くらいの大きさの
ネズミという話でした。
しかも、なんと燃える崑崙山の中から
現れたらしいのです。
その魔物は、
村の者を1人殺したそうです。
殺された者は、即座にネズミの餌食
となりました。
生きて逃げ帰った者の話によると、
どうやらその大きなネズミの魔物が、
ネズミ達のボスなのではないか、
ということです。」
クルム「火鼠…。」
ヌル「かそ?」
クルム「伝説の幻獣よ。
炎を操るネズミの魔物。
災厄の魔王の手下の中にもいた、
という話があるわ。」
ヌル「そうか!それでペストか!」
奥の部屋から、誰かが咳き込む音が聞こえた
「ゴホッゴホッ」
ぽちぽち「お母さん!
失礼します。」
ぽちぽちは奥の部屋へと駆け込む。
ヌルは、少しだけ精製できたテトラサイクリンを持ち、後を追う。
ぽちぽち「紹介が遅れました。
母のユミィです。」
ユミィ「これはお客様、お見苦しい所を。」
ヌル「ユミィさん、これを飲んでみてください。
数日で元気になりますよ。」
ユミィ「しかし、そんな素晴らしいお薬を…
恥ずかしながら、お代を払えません」
ヌル「じゃあ、宿泊料金、まけてください(笑)
どうぞ、遠慮なく。
まだまだたくさん、タダで作れますから。」
ぽちぽち「ありがとうございます…。」
ぽちぽちは涙を流している。
ヌルは3人を集め、
食事をしながら会議を始めた。
ヌル「明日、崑崙山へ行き、
ネズミの魔物の親玉を叩く。
相手は伝説の幻獣らしい。
相手のチカラは未知数だ。
もしかしたら、厳しい戦いになるかも
しれない。
覚悟をして準備をしてくれ。」
レスベラ「アタシの勇者伝説の始まりだな!」
レスベラはミヅハノメを抜き、掲げる。
クルム「牛と間違われて焼かれないようにね。」
レスベラ「ゴリラの次は牛かよ!!」
うまーる「この村も助けられるんだね!
ヌルお兄ちゃんはすごいんだよ!
私も頑張るね!」
うまーるは火雷を握りしめる。
ヌル「うまーるは、前に出ず回避に専念してくれ。
うまーるの探知でボスを見つけられるか
どうかが、この戦いの焦点だ。」
うまーる「わかったんだよ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日
ヌル「では、行ってきます。
これ、まだ少ないですけど、村の患者さんに
飲ませてください。
ぽちぽちさんも飲んでくださいね!」
ヌルは、テトラサイクリンが入った瓶を、
ぽちぽちに手渡した。
ぽちぽち「ありがとうございます。
どうか、
無事に帰ってきてくださいね。」
うまーる「いってきまーす!」
レスベラ「泥舟に乗ったつもりで待ってなよ!」
クルム「沈むのはアンタだけにしなさい。」
レスベラ「いけね、大船のまちがい!アハハ!」
手を振る、ぽちぽちが小さくなっていく。
ヌル「見えなくなるまで見送るのかな…
早く薬を皆に届ければいいのに。
人柄なんだろうな。」
4人は歩き続ける。
崑崙山に近付くにつれ、どんどん気温は上がる。
その暑さは、日本の猛暑どころではない。
40度など軽く超えているであろう暑さだった。
レスベラ「ところで、
マーボーさんの情報掴めたのか?」
ヌル「あっ!忘れてた!!
帰ったら聞かないと!」
クルム「焼きパンダになってなきゃいいわね。
あー!暑い!
早く帰ってお風呂で汗を流したいわ!」
うまーる「焼きパンダ…」
ヌル(ザクザクパンダってお菓子があったの
思い出しちまったよ…)
「しかし熱いな。
この山全部、石炭なのか!?」
燃え盛る山の中から、一行を見つめる巨熊
のような獣がいた。
火鼠(なんだアイツラ…村の者じゃないな。
村の者が俺を討伐するために呼んだ冒険者か。
迂闊に手を出せないな…。
ヤツラは強い。
俺の野生の勘が、危険だと、
ガンガン警鐘を鳴らしやがる。
まぁ、この山の中に居れば安全だがな。
とりあえずネズミ軍団で様子を見るか。
行け!ネズミ共よ!!
ヤツラに呪いをふりまき、
ヤツラを食い殺せ!!!)
うまーるが、ピクっと反応する。
うまーる「来たんだよ!
ネズミの大群なんだよ!!
今度は様子見じゃないんだよ!
殺気がスゴイんだよ!!」
ヌル「身体強化魔法!!上級!!
皮膚の強化と免疫力強化!!
みんな!呪いは気にしなくていい!!
黒死病は基本、
ネズミについてるノミに刺されると
感染する!
ノミに刺されないくらいの、皮膚の強化は
しておいた!!
そして気をつけろ!
たぶん、ネズミは囮だ!!
ネズミに対処している間に、
火鼠は攻撃を仕掛けてくる!!」
レスベラ「小さいのは苦手だぜ!やりづれえな!」
レスベラは刀を抜く。
クルム「ゴリラは使えないわね。
じゃあ、ここは私がやるから、
火鼠はアンタがやるのよ!」
クルムは扇を開き、舞う。
クルム「瘴気の旋風・肆乃風【錯乱】」
緑色の風が4人の周囲に吹き荒れる!
クルム「アンタたち。私の為に戦いなさい。」
キィー!!キィー!!
ネズミ達が、仲間割れのように
お互いを襲い出す。
ヌル「錯乱系の毒か!!すげえな!!
うまーる、
火鼠の居場所はわからないか!?」
うまーる「ごめんなさい、
まだ見つからないんだよ。」
ヌル「そうか、わかった。
俺がなんとかしてみる。少し時間をくれ!」
ヌルは地面に手をつき、魔力を練り始めた。
同士討ちにより、衝撃で正気に戻ったネズミや、新手のネズミ達が合流し4人に襲いかかる。
レスベラ「チッ!やるしかねえな!!」
刀を構えるレスベラ。
クルム「ザコを何度送ってきても変わらないのに。
ああ、めんどくさい。」
クルムは再び扇をかまえる。
うまーるが、静かにブチ切れた。
うまーる「許せないんだよ。
ネズミさんだって生きてる。
ネズミさんを使って呪いを振り撒いて、
たくさんの人を苦しめて、
悲しませてる。
私のお父さん、お母さんに、
叔父さん、叔母さん、近所の人達、
みんな呪いに殺されたんだよ!!」
うまーるの感情の昂りに、
金剛杵が呼応し、輝く!!
バチバチバチ!!
うまーるの身体が電気を帯び始めた。
レスベラ「うおっ!?どうした、うまーる!?
大丈夫か!?」
クルム「あーあ。女は怒らせると怖いのよ。」
うまーる「【雷神の進撃・伏雷
《フシイカヅチ》】」
バリバリと音を立て、
うまーるが電光石火の速さで戦場を駆け抜ける。
うまーるの右足が触れた、地面や草木がバチバチと帯電している。
うまーる「【雷神の進撃・鳴雷
《ナルイカヅチ》】」
バチバチバチバチ!!!
うまーるの左足が激しく輝き、
凄まじい電気を帯びる。
うまーるが左足を蹴りのように振り上げる!
ビシャ!!ゴロゴロゴロ!!
ドカアアアアアン!!
うまーるが駆け抜けた軌跡が、
眩く輝き、大爆発を起こす!!
まるで雷が落ちたようだ。
立木が折れ、燃え出す程の威力だ。
怯えたネズミ達の動きが止まる。
ヌル(地を這う雷!!
マジかよ!?ハンパねえな!!
もうコレ、二代目雷獣でよくね!?
てか火雷、使われてねええええ!!)
火鼠(うおっ!?
なんだあのバケモノは!?
鵺のヤツと遜色ないバケモノ
じゃねえか!
くそっ!
ネズミ達が怯えて使えねえ!!
俺がやるしかねえな!!
【火属性魔法・火球】連弾!!)
ヌルたちに向けて多数の火球が放たれた!!
レスベラ「来やがったな!」
レスベラはミヅハノメで火球を斬る。
斬られた火球は消滅した。
クルムは涼しい顔で火球を扇で払う。
うまーるは俊敏な動きで火球を躱す。
ヌル「うおっ!?危ねえな!!」
ドンッ!ドンッ!
ヌルは盾で火球を受け止める。
ヌル「地属性魔法・堡塁[ほうるい]」
ゴゴゴゴゴゴ
土が盛り上がり、かまくらのような物ができた。
ヌルは魔法でトーチカを作り出した。
ヌル「みんな中に入れ!!」
4人はトーチカに避難した。
火鼠(小癪な。
ならば防壁ごとぶち壊してくれるわ!!)
【スキル・焔弾】(ほむらだま)
燃え盛る石炭が、弾丸のように発射され
トーチカに当たり爆発する!!
ドンッ!!ドゴン!!
ヌル「くそっ!このままじゃやられる!!
でも、もう少しで魔力がたまる!!
火鼠(上からも喰らっとけ!!)
火鼠は焔弾を上空に打ち上げ、
トーチカの真上にも落とす。
ヌルが、小声で話す。
ヌル(上からも!
一方的な遠距離攻撃…!
これは、想定していない…!
マズイ…。危険だ…。)
「みんな聞いてくれ。
俺が囮になって火鼠の気をひく。
スキを見て撤退しよう。
みんなは逃げてくれ。
対処法を考えて、また挑むことにしよう。」
クルム「何言ってるの?
こんなザコ相手に。
ねえ、アンタのアレなら、
この程度の炎なんとかなるでしょ。」
クルムはレスベラを見て話す。
レスベラ「アレかぁ。
あんま使いたくねーんだよなぁ。
でもやるしかないかー。
アタシの勇者伝説の初陣が、
撤退は、ねーわ。」
ヌル「アレ?なんか秘策あるのか!?」
クルム「いいから、
ヌルは当初の予定通りやりなさい。」
レスベラが突然、服を脱ぎ出した。
ヌル「なっ!?何してんの!?」
ヌルは手で目を隠すフリをしながらも、隙間からガン見している。
レスベラ「アレやると、
服とか靴が燃えちまうんだよ。
ヌルやったな!
今夜のオカズゲットだぜ!!」
クルム「ヌルのオカズに採用されて、
良かったわね。
ついでに抱いてもらったら?」
ヌル(勝手に採用されてる…。
ありがたく、使わせてもらいまぁす!!)
レスベラ「よし、いけるぜ!
クルムはやくしろよ!」
マッパのレスベラが、鞘から解き放たれたミヅハノメを握っている。
クルム「はぁ。めんどくさい。」
クルムは精神を集中し、魔力を練った。
そして口を開く。
クルム「スキル【聖女の詩吟・怒】」
レスベラ「スキル【天衣無縫の舞・怒】」
クルムは扇を構え、レスベラは刀を握る。
2人同時に放った言葉は
「連携スキル【戦神芸能・怒】」
クルム「あるひぃー↑♪ ぱぱとぉー↓♪」
クルムが歌い出した。
ヌル(うおっ!?
完璧なクルムのイメージをぶち壊す、
酷い歌だ!!
歌の加護とスキルが、ここまで…。
この弱体化は、相当に強力な呪いだぞ!?
てか、この歌ってアレか?
俺が知ってるアノ歌だ!)
クルム「ふたりでぇー↑♪
こっそりたべたさぁー↓♪」
ヌル(なにをおおおおおーーーーー!?
てか、知らない歌だったぁー!!!)
ガビーン!
レスベラは叫びながら、刀をブンブン振り回す。
レスベラ「シャー!コノヤロー!!」
クルム「ままがぁー↑♪ たいせつにしてたぁー↓♪」
レスベラ「絶対に許さん!!」
レスベラの体が炎に包まれる。
ヌル「まじかよ!?
ここも危険だ、外に出るぞ、うまーる!!」
うまーるは、アイドルを応援するオタク
のように、クルムの歌に合わせ
ノリノリでノッていた。
クルム「れいぞうこのアレー↓♪」
ヌル(ああ、アレかぁー!
って、ナニー!?
気になるううううう!
れいぞうこ…?)
レスベラ「軻遇突智乃袴」
レスベラが炎の道着を纏っている。
その見た目は、剣道で女性が着るような袴だ。
クルム「ぷりんぷりーん↑♪」
ヌル(プリンだったああああああー!!!)
「よし!俺の魔力も溜まった!
うまーる、今から燃え盛る山の中で、
動くヤツを見つけてくれ!!」
火鼠(さっきから、なんなんだ!この歌は!!
力が入らん!体が言うことを聞かん!!
呪いの歌!?呪術か!!!)
石炭の爆撃が止んだ。
レスベラ「食いものの恨み!!
万死に値する!!!」
ドゴオオオオン!!
レスベラの怒りのオーラで、ヌルが作った
トーチカが大爆発した。
ヌルは地面に手をつき、溜めた魔力を解放した。
ヌル「地属性魔法・マグニチュード7!!」
ズンッ!
一瞬だが、山全体が大きく揺れた。
バサバサッ!!ギャアギャア!!
鳥やネズミ達が一斉に逃げ出す中、
極限まで集中した、うまーるは、
ソレを見逃さなかった。
火鼠(地震!?デカいぞ!!)
一瞬、火鼠は揺れに動揺し、ビクッとするも、
すぐに落ち着きを取り戻す。
火鼠(何をしようが、
俺はここに隠れていれば安全だ。
人間には手を出せん!)
うまーるが指を差し、叫ぶ!
うまーる「あそこなんだよ!」
ドンッ!!
爆発し、土煙を上げて崩れるトーチカから、
レスベラが駆け出す。
レスベラの走力は、魔力での強化無しで、
トップスピードは100メートルを2秒で
駆け抜ける。
今の走力はスキルで強化され、さらに速い。
火鼠との距離は300メートルほどであった。
火鼠(バカな!?燃える女が、人間が、
この山に入ってきた!?
しかも、なんて速さだ!!)
火鼠の感覚がスローモーションになり、
走馬灯が流れる。
火鼠(何故今、昔の事を思い出す!?
そうだ。そうだった。
俺は今、火鼠と名乗り、
呪いを振り撒くネズミ達の王だ。
けれど思い出した。
俺は昔は、元々は、
ウサギだったんだ。)




