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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
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4 転生〜そして真実の暴露

4 転生〜そして真実の暴露


 ヌル達の匂いを触覚で嗅ぎつけ、

ゆっくりと向かってくるG。


 ヌルは付近に落ちていた拳大の石を握りしめ、

Gに立ち向かった。


ヌル「うおおおおお!」


 ヌルはジャンプからの、

踏みつけ攻撃を繰り出した。

 突然の攻撃に驚く、G。

 激しく触覚を左右に動かし、空気の流れを読む。

 Gは脅威の速度で走り、躱そうとする。


ヌル「お前らは後ろに下がれない!

  どんなに速く走ろうが、

  動きが見え見えなんだよ!」


 ヌルはGの行動を予測していた。

 ヌルの踏みつけるような蹴りは、

Gの移動先に向けて繰り出されていた。


 走って躱そうとするGに、

カウンターの蹴りが決まった。


 踏みつけるように背中を蹴られたGは驚き、

咄嗟に羽をバタつかせる。

 ヌルは、跳ね飛ばされた。


 仰向けに倒れたヌルに覆い被さる、G。

 アリのような鋭利な顎で

ヌルに咬みつきにかかる。


ヌル「お前らの弱点は、視力だ。

  匂いや空気の動きには敏感だが、

  よく見えてないんだろ? 

  喰らえ! よく噛めよ!」


 ヌルは掴んでいた石を、巨大Gの顎を目がけ、

殴るように喰らわせる。

 反射的に石に咬みつく巨大G。


 人間であれば、

歯が欠けるようなダメージが入り、怯むG。


ヌル「そして、弱点その2。

  それは、細い触覚だ!!」


 ヌルはGが怯んだ隙に、

Gの左の触覚を両手で掴み、へし折った。


「ギイイィィィィィィィィィィィィ!!!」


 驚き、そして苦しみ、暴れ出すG。


ヌル「どうだ! まだやるか? 

  次は右の触覚も、へし折るぞ!!」


 ヌルが叫ぶと、Gは逃げ出した。

 ヌルの元に、隠れていたナナが駆け寄る。


ナナ「大丈夫? 

  もう……。あんな強いモンスター相手に、

  無茶するんだから。

  

  でも、すごいよね、ヌルのスキル?

  弱いモンスター相手なら、声の威嚇だけで

  相手が逃げちゃうもんね」


ヌル「ああ。アイツラとは前世でかなり、

  やり合ったからなぁ。

  Gよりも、俺は小蝿の方が苦戦したよ。


  ちなみに、俺の“ひぃ婆ちゃん”は

  飛んでる蠅を素手で捕まえてたよ。

  行き先を見極めれば、できるとか言ってた」


ナナ「そっか。そうだよね。

  今のヌルは転生英雄様だもんね。

  ……すごいお婆様だったんだね」


 ヌルは前世において、

職業上、害虫たちと戦う日々であった。

 大きいとはいえ、所詮G。

 ヌルにとって、ヤツラの行動パターンは

手に取るようにわかるものであった。


ヌル「さて、行こうか。

  久々だなぁ、王都」


 ヌルは遠くに見える懐かしい王城を見て、

感慨にふける。


 10年前、植物状態の少年ヌルの体に入り

転生したのは、地球で死んだ、

ネトゲと酒を愛したオッサン【ぬるゆ】だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーヌルの回想・10年前、王城〈儀式の間〉ーー


ヌル「俺のお気に入りは!


   【彼女の家に行ったら、  

   美人のお姉さんが俺を誘惑してくるので

   我慢できなくてヤ●ッちゃいました。】


   なんだよおお!!

   決して、痴漢モノでは……。


   ハッ!

   どこだ!? ここは!?」


  (俺は自宅で心臓発作で苦しんでいたはず。)


 ヌルが目を覚ました時に驚いたのは、

幼児の体だったこと。

 それと周囲に居た、

知らない大人達に囲まれていたこと。


「やったぞ!! 成功したぞ!!」

「うおおお! 英雄誕生だ!」


 みたいな、熱烈な歓迎を受けたことであった。


 また、村に帰ったら村でも

英雄扱いだったことに、驚いた。

 ヌルの両親、親族、幼馴染のナナに、

ナナの父親など。


 みんな泣きながら再会を喜んでくれた。


 ヌルであったことの記憶がないこと。

 自分の中身は少年とは別人であること、

を正直に皆に話した。


 皆はその事実を快く受け入れてくれた。

 少年ヌルを失った悲しみは拭えないが、

ヌルの死が無駄ではなかったこと。

 ヌルの肉体が生きていること。

 そして伝説の転生英雄が、

辺境の村にやってきたこと。

 ぬるゆ は、熱烈な歓迎を受けた。

 とても温かく、居心地の良い村であった。


 ただナナだけは、

中身が別人だと知ると、また泣いてしまった。

 

 自分のせいで少年ヌルを死なせてしまった

という心の傷は深かった。

 またナナは人見知りの為、

別人になってしまったヌルと

しばらく距離をとっていた。


 ただ、10年の月日がそれを埋めてくれた。

 村に同じ歳の子供はヌルとナナだけ。

 それとナナは超絶ドジっ子なので、

ヌルが色々と手を差し伸べる機会が多かったのだ。

 少しずつヌルに心を開いていくナナ。

ヌルにとっては幸せな日々だった。


 何より、ナナは美少女だった。

 そしてスタイルもかなりのものだ。

 15歳に成長したナナは幼さを残しつつも、

体は大人びていく。

 天然ドジっ子巨乳美少女。

 ヌルは全力でサポートした。

 仲良くしなきゃもったいない、からである。


ヌル(こんなかわいい幼馴染がいるとか、

  異世界転生最高だな! ぐへへへ。)


 中身は40歳のオッサンであった。

 しかし肉体は幼児である。

 手を握ったり、ほっぺにチューなどの行為は

合法ではあるが、背徳感が興奮を加速していた。


 ド田舎の村で、かくれんぼ。

 中身が大人のヌルにとって、

本来ならば酷く退屈な遊びである。


 美少女が本気でキノコになりきる。

 そんな微笑ましい光景を見れる日常は、

ヌルにとって最高に幸せな日々であった。


挿絵(By みてみん)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー王都へと向かう旅路ーー


 15歳になったヌルとナナは、

スキル鑑定をしてもらうべく、

王都で開かれる、“合同成人の儀”

に参加する旅の途中だった。


 鑑定魔法を使える者が少ないため、

こんな形式でやっている。

 成人を迎えた者が集い、

王都の聖堂にある女神像に祈りを捧げる

 その後、鑑定神官にスキル鑑定をしてもらう。


 異世界から転生した英雄は、

前世の偉業に応じた、

強力なスキルを授かる可能性が高い。

 今年度はヌルがいるため、

王都のお偉いさん方が勢揃いで

成人の儀を観に来る予定となっていた。


ヌル(しかし、

  “元凡人”の俺が何故、

  英霊扱いだったんだろう?


  なんか得意なことあったっけ?

  まぁいいや、

  なんか強いスキルをもらえるなら

  ありがたい。)


ナナ「ねぇ、ヌルは何になりたいの?

   私は、お料理系のスキル欲しいなぁ。

   おいしいもの作れるようになりたい!」


ヌル「料理!?

   お、おう……。


   料理スキルあるといいな!

  

   俺か? 俺はまぁ、やっぱり強い兵士に

   なれるようなのがいいかな。


   勇者とか、将軍とか?」


  (神様!

  いるなら聞こえてるよね!?

  ナナが料理スキル欲しいってさ!

  俺からも、頼むわ!!)


ナナ「どうかした?」


ヌル「ん?

   ああ、神様にお願いしてたんだ。

   いいスキルくださいって!」


  (子供の頃に遊んだゲーム。

  ファミリーパソコンのゲームソフト

  【勇者と魔王】の

  主人公である、勇者に憧れ続けて40年!


  ついに願いが叶うのか?

  この異世界【フォーチュンランド】では今、

  【不死の魔王】なるものが、世界中の資源を

  狙って大暴れしているらしい。


  俺が転生したのは、

  きっと勇者になるためにちがいない!!


  モンスターと会話ができたりするのって、

  アレだよね。

  モンスターテイマーかな?

  強い仲間モンスターが、俺の代わりに

  戦ってくれるとか最高だよな。


  俺が訓練する必要ねえし。

  勇者の強さは魔王の強さに比例するらしい。

  きっと不死の魔王に対抗できる、

  とんでもないスキルを貰えるはず!!)


 ヌルの胸が期待で踊る。

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