35 月下美人
35 月下美人
ヌルとうまーるが、星舞村を出発してから、
3日程が経った。
うまーるのスキルは素晴らしく、
食料を探知で見つけ出し、
なおかつ魔物を的確に避けて
旅を続ける事ができていた。
夜になり、辺りが暗くなってきたので、
ヌルとうまーるは野営の準備をはじめた。
ヌル「今夜は、うまーるが集めてくれた食材で
ポトフというものを作るぞ!」
うまーる「わーい♪
ヌルお兄ちゃんが作る料理、
すっごいおいしいから
楽しみなんだよ!」
ヌル「今日の食材は…」
(ウサギっぽい動物。
ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎのような根菜。
キャベツのような野菜。
謎のハーブ類。
そして、さっき見つけた岩塩。)
ヌル「先ずは、
ウサギみたいなコイツを解体だな。」
ヌルは手際よく、ウサギの毛皮を剥ぎ、
内臓を取り出し、川で洗う。
骨を断ち切るように切り分け、
沸騰した鍋の湯で軽く洗い、表面だけ火を通す。
ヌル「しかし俺たちは、
今どこにいるんだろうな。」
うまーる「タカキタはある程度大きい村だから、
近くまで行けば見つかると思うよ。」
ヌル達は地図を手に入れたものの、
現在地がわからないでいた。
旅の途中、運良く天然の磁石を見つける事が
でき、方角だけは、なんとなく知る事が
できていた。
鍋に新しい水を入れ、
湯引きした骨つき肉を入れ、火にかける。
魔法で圧力をかけ、圧力鍋のようにして肉を煮込んでブイヨンを作ろうとしていた。
うまーるの耳が、ピクッと何かに反応した。
うまーる「ヌルお兄ちゃん!人の声がする!」
ヌル「どんな声?」
うまーる「女の人。歌みたい。多分1人かな。」
ヌル「行ってみよう!」
うまーる「上からだよ!」
うまーるは崖の上を指差す。
ヌル「まじか。」
ヌルは崖を見上げる。かなり高い。
ヌルとうまーるは崖を登る。
うまーるの身体能力はすごい。
サルのように軽快に登っていく。
ヌルは自身に、身体強化の魔法をかけても、
なかなか追いつくのが難しい程であった。
崖を登り切ると、そこは丘のようになっていた。
美しい花がたくさん咲いている。
月下美人によく似ている。
月明かりの下、1人の女性が歌を歌いながら
剣の稽古をしている。
両手に短い日本刀のような剣を持っている。
二刀流なのだろうか?
女「あなたの無事を祈る♪
これからも伴に居たいから♪」
綺麗な歌声だ。
しかしどこか悲しげな歌だ。
長身で手足が長い、
その女性が剣を振るう姿に見惚れる2人。
女性は稽古に夢中なのか、
2人に気付かない。
ヌルは話しかけた。
ヌル「あの、すみません…」
女「ハッ!何者だ!!」
女性が剣を構える。
女性から見れば、ヌルとうまーるは、
かなり小さい。
子供にしか見えない。
女「こんな時間に子供が2人だけで何を…?」
女は、刀を腰の鞘に納める。
女「剣を向けてすまない。
最近、色々と物騒な話を聞くもんでね。」
ふわふわロングの金髪で、
青く輝く目は大きくパッチリ二重。
身長は2メートルくらいあるだろうか。
かなり大きい。マーボーと同じくらいある。
引き締まった長い手足に、大きな胸に括れた腰、まるで、ロシアの女子バレー代表選手のような
スタイルだ。
軽鎧を身に纏っており、腰には刀を2本
携えている。
タカキタ村の戦士か、もしくは冒険者
なのだろうか。
ヌル「実は俺たち、タカキタ村を目指して
旅してるんです。
お姉さんはもしかして、タカキタ村の方
ではないかと思いまして、
声をかけさせていただきました。
剣の稽古のお邪魔をしてしまい、
申し訳ありません。」
女性「剣の稽古ねぇ…
私の名はレスベラ。
君の言う通りタカキタ村の住人だよ。
君たちは?どこから来たの?」
ヌルはこれまでの経緯を簡潔に話した。
うまーる「あっ!焦げた臭い!」
ヌル「わああっ!忘れてたっ!!」
レスベラ「?」
ヌルとうまーるとレスベラは、
崖下にあったヌルたちのキャンプへと急行する。
そこには、真っ黒になった、無残な鍋の姿が。
ヌル「今夜のメイン食材がorz」
うまーる「まだお野菜あるんだよ!元気だして。」
レスベラ「こんなとこで野宿するくらいなら、
ウチに来なよ。すぐだよ。」
ヌル「いいんですか?」
レスベラ「色んな冒険の話を聞かせてくれよ。」
ヌル「レスベラさん、ありがとうございます!」
うまーる「ありがとうございます!」
うまーるは礼儀正しくお辞儀した。
レスベラ「さん、なんてつけなくていいよ。
レスベラでいいよ。」
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ヌル達はレスベラの言葉に甘え、
タカキタ村を目指し歩き出した。
しばらく歩くと灯りが見えてきた。
タカキタ村だ。
どことなく和風な雰囲気を感じる。
日本の蔵のような建物が多い。
屋根には瓦のような物が使われている。
壁は白い。まるで漆喰のようだ。
なんだか、村の様子が慌ただしい。
松明を持った男性が駆け寄ってくる。
村人「レスベラ!どこに行っていたんだ!
大変なんだ!人攫いが現れた!
クルムが連れて行かれたらしい!」
レスベラ「クルムが!?
行き先は!?」
村人「わからない。夜の暗闇を狙われた!」
ヌル「クルムって誰だ?
レスベラの知人なのか?」
レスベラ「アタシの双子の妹だ!
アタシと違って貧弱なんだよ!!」
うまーる「人攫い…」
うまーるの目の色が変わり、顔がこわばる。
うまーるは地面の匂いを嗅ぐ。
うまーる「レスベラお姉ちゃんと似た匂い。
こっちなんだよ!」
うまーるが走り出す。
それを追うようにレスベラが走り出す。
ヌル「うまーる!?ちょ…待っ…」
ヌルも追いかけるが、2人は速く、見失ってしまった。
ヌル「なんて速さだよ!
魔法で強化した俺が全くついていけない
じゃないか!」
ヌルは地面の匂いを嗅いでみた。
ヌル「何の匂いもしねえよ!チクショウ!」
ヌルが途方に暮れていた。
ふと、ヌルは自分の肩に止まっている、
ずんだを見た。
ずんだと目が合った。
ヌル「ずんだ!
お前なら、2人がどこに行ったのか
わかるんじゃないか?」
ずんだ「ポ」
ずんだは眠そうだ。ヤル気を感じない返事だ。
ヌル「頼む!お前だけが頼りだ!
あとで美味いもん食わせるから!」
ずんだ「ポケ。」
ずんだは、仕方ない、という感じで飛び立った。
ヌルはずんだを見失わないよう、
ずんだにスキル【生物発光】を付与した。
ずんだが淡く光出す。
ヌルは、ずんだが飛ぶ方向に走り出す。
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村から少し離れた所に鉱山があった。
うまーるとレスベラがいる。
うまーるとレスベラは、1人の男と対峙していた。
男の前には数人の、武装した男が倒れていた。
レスベラが倒したようだ。
うまーる(間違いない!
あの時、
わたしを攫おうとした人攫いだ!!)
レスベラ「お前がコイツラの頭だな?
連れ去った人はどこにいる?」
男「答えるワケがないだろう。」
レスベラ「余裕だな。状況がわかってないのか?」
男「わかってないのはお前らだよ!げヒヒヒヒ!
大きい女は売春宿に、
仔猫ちゃんは変態貴族に売れそうだなぁ!」
男は手に持っているコントローラーを動かした。
ゴゴゴゴゴゴ
地面から、何か巨大なものが出てくる。
うまーるが男に飛びかかった!
うまーる「猫人族のマヌルはどこにいるの!
教えて!!」
男「マヌル?知らねえなw
いや、覚えてねえのかもなw」
男は無詠唱で強烈な光魔法を使った!
夜の闇に目が慣れていた2人は、
突然の閃光に対処できなかった。
レスベラ「しまった!!」
うまーる「ううっ!」
うまーるとレスベラは、目が眩んだ。
地面から出てきたのは、
巨大な鉄鉱石のゴーレムであった。
三階建の建物くらいの大きさのゴーレムだ。
男はゴーレムの肩に乗っている。
男はゴーレムを操作し、
ゴーレムの手でレスベラを捕まえようとする。
危険を音と気配で察知した、レスベラは避けた。
男はムチを魔法で操り、うまーるを捕えた。
うまーるは咄嗟に電撃で反撃した!
男「うおっ!?
この雷は…そうか。」
男は、耐魔法のローブを着込んでいた。
ダメージは無いようだ。
それでも電撃に驚き、うまーるを離した。
視力が戻った、
うまーるは素早い動きで撹乱する。
うまーる「マヌルは、10年くらい前に、
お前が攫った獣人だ!!」
男「もう一度捕まりに自ら出てくるなんて、
お嬢ちゃんは良い子だねぇ!げヒヒヒヒ!」
男は、うまーるの事を思い出したようだ。
レスベラも視力が戻った。
男は、素早いうまーるに業を煮やし、
ゴーレムを操作して地面を抉るように腕を払った!
細かい砂利が散弾のように2人を襲う!
うまーるは、攻撃を受け倒れた。
うまーる「うぅ…。お兄ちゃん…。」
うまーるは、起きあがろうとするも、
全身の痛みで起き上がれない。
レスベラは急所を上手くガードしながらも、
負傷している。
ゴーレムの手が、うまーるを捕らえようと
伸びる!
レスベラは刀を構えた。
平突きの構えだ。
レスベラ(相手は巨大で硬い。
だけど力を一点に集中すれば、
砕けるはずだ!!)
レスベラは左手の刀を捨て、
両手で金色に輝く刀を握り、構える。
レスベラ(お父さん!お願い!チカラを貸して!
この子を守りたい!)
レスベラが持つ刀に光の紋様が浮かび上がる。
レスベラ「酒乱一刀流・酒好き[さかづき]!」
レスベラの鋭い突きがゴーレムの
右手首あたりに刺さる。
レスベラは刀を右に薙ぎ、ゴーレムの
腕を砕いた。
と同時に、レスベラの刀も折れてしまった。
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鉱山近くの森
ずんだ「ポンゲエエエエエエエ!!!」
突如、ずんだが大音量で鳴いた
ヌル(これは!!
マズい!うまーるとレスベラが危ない!
ずんだの進む方向には藪があったが、
ヌルは藪を突っ切る覚悟を決めた。
ヌル(急げ!もう仲間は死なせない!!)
「うおおおおおお!」
ガサガサガサ!
(痛い!色々刺さる、引っ掛かる!)
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鉱山
男「バカな!
最新で最強の、鉄巨人の腕を折りやがった!?
刀で!?」
男は怒り、レスベラの手前の地面を抉るように
ゴーレムを操作する。
またも散弾のような砂利がレスベラを襲う。
レスベラは、折れた刀でガードするも、
満身創痍だ。
レスベラ「ここまでか…いや、
クルムとうまーるは命に代えても…」
男はゴーレムを操作し、レスベラを
捕らえようとする。
レスベラは立ち上がり、折れた刀を構える。
ゴゴゴゴゴゴ…バカアアアアン!!
レスベラのすぐ横の地面が盛り上がり、
巨大な腕の形になった。
???「【地属性魔法・土撲】」
その巨大な腕が、ゴーレムを殴り飛ばす!
巨大なゴーレムがブッ飛んだ!
ドゴオオオオオオオン
男「ぎゃあああああ!!」
ゴーレムの肩に乗っていた男がぶっ飛ぶ。
ヌル「ゼェゼェ…ハァハァ…
ギリ…間に合った…」
驚いて腰を抜かしたレスベラは、
声のする方を振り向いた。
振り向いた先には、
髪の毛が生えた象さんがいた。
レスベラは固まった。
そこには、何故か全裸のヌルがいた。
ヌルの象さんの高さと、
へたり込んだレスベラの目の高さは同じだった。
そして至近距離であったため、
レスベラが受けた衝撃は大きかったようだ。
ヌルは、うまーるが作ってくれた毛皮のローブを着ていたはずなのだが、
藪を突っ切る中で脱げてしまったようである。
うまーるが顔を上げ、声のする方を見た。
うまーる「ヌルお兄ちゃん…
また、お●んぽさん丸出しなんだよ…
なん…で…」
うまーるは子供の頃から、
近所の赤ちゃんの子育ての手伝いや、
病人の介助などをしていたので、
裸の男性を見てもそれほどショックは無いようだ。
なによりも以前、缶から出てきた
マッパのヌルを見ている。
痛みと疲労で、うまーるは気を失った。




