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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
3/138

3 体は少年、心はオッサン

3 体は少年、心はオッサン


 ぬるゆ(意識が遠くなる……。

    俺……死ぬのか!?


    ……まずい、まずいぞ!

    押入れの中にはアイツらがある……。

    友人たちの置き土産。

    それと、お祭りの怪しい出店や、

    怪しいゲーセンでゲットした、

    景品のアイツらが)


 一人暮らしの ぬるゆ の部屋は、

オトナのビデオの試写会には

うってつけであった。


 たまにしか遊びに来ない既婚者の友人は

何故か(嫁に飽きた?)AVを観たがるのであった。

 そして入手したソレを自宅で鑑賞せず、

ぬるゆ宅で試写会をしたがるのである。


 そして彼等はソレ(マニアックなやつ)を

持ち帰らない。

 家族バレが困るからである。


 ぬるゆ宅に蓄積されていく、

マニアックなビデオたち。


 ぬるゆ(思い出せ……在庫は何があったっけ。


    ワンワン●お馬さん(洋物)

    剃れイケ! パイパ●マン

    痴●車トーマス

    痴●電車発射オーライ

    スケパン●事

    安心し●ください! 履いてませんよ!

    風俗●谷間ナウシコ


    他にもいくつかあるが……。

    まぁ、タイトルは

    ノーマルなものばかりだな)


 それと懸念がもう一つあった。

 ぬるゆ がまだ実家にいた頃、

運転免許取消になった無職の先輩に頼まれ、

レンタルビデオの会員証を貸したことがあった。


 そのクソ野郎が1ヶ月も返却を忘れて、

ぬるゆ の実家に延滞料金請求の

ハガキが届いたのであった。

 そのハガキには、堂々とワザと目立つように、

表面にAVのタイトルが書いてあった。

 焦らせる作戦なのであろう。

 家族どころか、郵便配達員さんも

二度見するレベルであろう、破壊力があった。


無職「俺、車無いから、

  今から返しに行くの無理だわw

  代わりに返しといてw

  あ。今、金これしか無いわ。残りは今度なw」

 

 ぬるゆ は、先輩の家に行ってビデオと、

1万円(延滞料金は15000円)を回収して、

深夜にレンタル屋に返しに行くハメに

なったのであった。


 足りない5000円は、ぬるゆ が

立て替えるハメになった。

 そして、そのお金が返されることは無かった。

 

 無職野郎は家賃を滞納して、

強制退去され、姿を消したのである。


 その後間も無く、クソレンタル屋は潰れた。


 ぬるゆ は、酷い目に遭わされた挙句、

金まで使わされたが、憎き店が潰れた。

 それだけで、労せず【ざまぁ】に

成功した気分になり、少しだけ報われた気がした。


 ぬるゆ(いやいや!

    今は、そんな思い出に

    浸ってる場合じゃねえ!!


    ……あの糞野郎、3本借りてたんだよ。

    そのうちの2本が痴漢モノでさ、

    それを見た俺のカーチャンが、

    慌てて仕事中の俺に

    電話してきたんだよな。


    ちゃんと、【他人にカード貸した結果】

    だって説明してわかってもらえたんだ。

    だけど遺品整理して、アレと同じ属性の

    モノが2本も出てきたら、

    信憑性なくなるわ!!!



    とにかく、アレを残して

    死ぬわけには……。


    しかし、苦しい、痛い!

    動けない!!


    とても遺品整理どころじゃねーぞ!


    まずい、意識が……。


    俺の、俺の好きなジャンルはNTR……)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー2010年(地球の西暦) 異世界ーー


 地球とは異なる世界【フォーチュンランド】

 クシマ大陸東部・ 小人族の村【チュートリ村】


 緑と水が豊かで美しい景色。

 海と川は青い。

 晴れた空には太陽のような恒星がある。

 夜には月のような衛星もある。

 この星は奇跡的に地球とほぼ同じ、

環境であった。


 日本でいう、季節に例えると

今は初夏くらいである。

 舗装道路や鉄筋の建物などは無く、

ファンタジーでよくある、田舎の村の風景だ。

 この集落は木造の建築物が主流のようだ。


 池の周りに大勢の村人達が集まっている。

 服装は質素である。

 麻のような素材の服だ。


 その中心には、池で溺れ、

救出された少年の姿があった。

 皆が取り囲み、救命活動をする者と

見守っている者がいる。


 1人の少女【ナナ】が大人の制止を振り切り、

少年に飛びかかり、少年の胸に掴みかかり叫ぶ。


 ナナ「ああああああああああん!!!

    ヌル! ヌル! おきて!

    やだあああああああああああ!!」


 血の気の無い少年の顔に少女の涙が滴る。


 【きれいな宝石が埋め込まれた、

             銀の女神像の首飾り】

を右手に握りしめ、泣き叫ぶ少女。

 首飾りの中の宝玉がキラリと光る。


 人間に例えると5歳児くらい。

 栗色の髪でかわいらしい顔をしている。

 

 少女は、少女の父親らしき男に抱き抱えられ、

少年から引き剥がされた。

 そのそばでは動かず、人工呼吸と心臓マッサージを再開されている【ヌル】という名の少年の姿が。


 ヌルとナナは同じ歳で幼馴染みだ。

 ふたりは、よく一緒に遊んでいた。

 ナナはドジっ子だった。

 この日はナナが池に落ちてしまい、

溺れてしまったナナを助けたヌルが池に落ちて

溺れてしまった。


 ナナが泣き叫ぶ声を聞いた大人達が、

迅速にヌルを救助した。

 しかしヌルは既に大量の水を飲んでおり、

心肺停止状態だ。

 懸命の救命活動の結果、

なんとかヌルは一命をとりとめた。

 心臓が動き出したようだ。


 しかし、ヌルが目を覚ますことは無かった。 

 いわゆる、植物状態だ。


 村長である高齢男性は、

涙を流しながら少年ヌルを抱き抱えた。



村長「若干5歳ながら、

   溺れたナナを助けて

   身代わりになるとは……。


   なんと勇敢な少年だ。

   このまま死なせるには惜しい。

   今ならまだ間に合うはず!

   急いで王都に運べ!!」


 村長は村人に書簡を持たせ、

少年を馬車に乗せ王都へ向かわせた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 この国の王族は代々、

スキル【英霊召喚】を持って生まれてくる。

 不幸な事故などで植物、

脳死状態になってしまった人体に、

異世界からの英霊を憑依させる、

というものだった。


 生贄などで乱用し、

大量生産できないルールがあるようだ。

 しかも必ず成功する、

というものでもないようだ。


 若い肉体だったり、

損傷が少ない肉体であれば成功率が高い。

 そして事故前の行いが、良ければ良いほど、

優秀な英霊が召喚されやすい、というものだ。


 これらの要素のおかげで、

転生英雄の希少性と価値が守られている。


 全ての生き物は【スキル】を持っている。

 スキルは種族や血統の影響も大きく受けるが、

生まれてからの環境や性格や

行動なんかも影響する。


 スキルは生き方次第で増えたり、

成長したりもする。


 フォーチュンランドでの“人間”というのは、

一般的に小人族(ハーフリング)を指す。

 亜人族(エルフやドワーフ、人魚など)なんかも

略してヒトとか人と言い、総じて人類という。


 この国で人類は15歳で成人とみなされる。

 15歳を迎えると魔法でスキルを鑑定して

もらい、その後の人生の選択をすることになる。

 大半の人は農業や工匠、

などの社会的なスキルである。


 中には【ユニークスキル】といわれる、

希少なスキルもある。


 代表的なのが【勇者】とか【賢者】

というものだ。

 歴史に名を残すような、

傑物が持って生まれてくるスキルである。


 英霊召喚に成功すれば英霊を宿して蘇生する。

 英霊を宿して蘇生された場合、

その体の持ち主とは別のスキルを与えられる。

 そして英霊として

フォーチュンランドに転生した者は、

前世に応じた強力なスキルを授かる。


 まだ子供であり、

“植物状態”で、勇敢な最期だったヌルは、

英雄候補に最適だったのである。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〜卯〜辰〜巳〜午〜未〜申〜酉〜戌〜亥〜子〜




 ーー10年後ーー

(地球では西暦2020年)



カンカン鳥「カーン! カーン! カーン!」


 けたたましい鳥の鳴き声は、木登りをして、

自らの巣に手を突っ込む青年に向けられていた。


 木の下で青年を見守るナナが心配そうに言った。


ナナ「ヌル! 気をつけてね!

   あと、鳥さんの巣は壊さないであげてね!」


ヒナ「キィーン! キィーン!」


 親鳥だけでなく、

巣の中にいるヒナたちも大騒ぎである。


ヌル「もう! うるさいな!!

   ヒナには手を出さないよ!!

   お前が取ったモノを取り返したら、

   もう手は出さないから!!」


 ヌルが言うと、鳥は黙った。

 まるで、ヌルの言うことを理解したかのようだ。


 木から降りたヌルは、

握りしめていたものをナナに渡した。


ヌル「ほらよ。

   それ、亡くなったお母さんの

   大切な形見なんだろ?


   カンカン鳥は光る金属を見ると、

   巣に持ち帰る習性があるんだから、

   外では肌身離さず持っていろよ!」


 ナナは受け取った銀の女神像のペンダントを

握り締めると、とても喜んだ。


ナナ「ありがとう!」


 ニコッと笑うナナが、とてもカワイイ。

 青年ヌルは、少年ヌルが命を賭して

ナナを守った気持ちがよくわかった。


ヌル(少年ヌルよ、安心してくれ。

  ナナは俺が命に代えても守る!

  それとナナを泣かせる奴は、

  誰だろうと、俺が絶対に許さない!!)


 歩き出す2人。


ナナ「あ、見えてきたね!


   あれが王都ケンチョーの城、

   ケンチョー城じゃない!?」


 遠くに、東京ネズィミーランドにある

お城のような、大きな建物が見える。


ヌル「ああ、間違いない。

   ケンチョー城だ。

   スキル鑑定式、楽しみだな!」


 ヌルにとっては、見覚えのある景色だ。

 10年前に転生して目覚めた場所が

王城だったのだから。


 2人は、王都で開催される成人式

(スキル鑑定の儀式)に参加するために、

チュートリ村から王都まで

2人で徒歩の旅をしていた。



(……ハラヘッタ……エサノニオイ……)



 ヌルは、モンスターの気配を感じた。

 気配というよりは、

心の声のようなモノを聞いた。


ヌル「……ナナ。 静かに……。 モンスターだ。

  ここに隠れよう。」


 ヌルは小声でナナに話しかける。

 ナナの手を取り、大きな岩の影に隠れた。


 数秒後、現れたのは

大きなゴキブリのモンスター【スケイルモール】

通称“G”であった。


 体長約2メートル、動きは遅いが、

硬い外骨格と強い顎を誇る、プレデターであった。


 Gは触覚を動かして、ヌル達の匂いを追う。

 顔をヌルの方に向けたGが、ゆっくり歩き出す。


挿絵(By みてみん)


 虫が苦手で、悲鳴をあげようとした

ナナの口を押さえるヌル。


ヌル(くそっ! 厄介な奴が出てきたな。

  走って逃げたら、きっとナナは転ぶだろうな。

  やるしかない。)


  「ナナ、アイツは俺が撃退する。

   ここに隠れてろよ。」


 ヌルは付近に落ちていた拳大の石を拾い、

向かってくるGに向かい、走り出した。



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