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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
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27 死闘決着

27 死闘決着


 銀竜が毒肉に喰らいついた。

 肉を喰らった銀竜はビクッと硬直した後、

地上に降り立った。


 「ココ……コココココ……」

 銀竜は、

弱ったニワトリみたいな声を出している。


 ビ●●チッ! ビ●ビ●●チッ!!


 銀竜が腹をくだしている。

 ここまでヌルの予定通りであった。


 動きが止まった銀竜を見た、

オニオとナーガの2人はマーボーに駆け寄り、

両脇をかかえて避難しようとしている。


ヌル「ナナ!

   俺が銀竜を空にカチ上げる!

   銀竜が落ち始める、

   そのタイミングで缶詰にするんだ!

   チャンスは一回きりだぞ!!

   頼む!」


 ヌルはカバンから貴重な上級魔力水を取り出し、イッキ飲みした。


 悲壮な顔をしたヌルを見て、

ナナはイヤな予感がした。

 ナナがヌルに身体強化魔法をかけた。

 その様子を見たギリーも、

4人に身体強化魔法をかけた。


 重いマーボーを引きずっていた2人は、

マーボーを軽々と担ぎ上げ、

走り出し、大きな岩の影に隠れた。

 マーボーは出血しながらも起き上がる。

 身体強化魔法で動けるようになったようだ。


マーボー「何をするか知らんが、

     銀竜を上げて落とせばいいんだな?

     オニオ! ナーガ!

     しっかり俺に掴まってろ!!」


ナーガ「ええ!? 動いたらダメだべよ!」


オニオ「攻撃に参加するンゴ!?」



 ヌルはカラになった魔力水のビンを投げ捨て、

スキルを使用する。


ヌル「スキル【限界突破】使用!!」


 ヌルは目の奥や顔の毛細血管が、

プチプチと開くのを感じた。

 血流がよくなり、体温が上がるのを感じた。


 限界突破は使用するスキルが全て、【強スキル】となる。

 その代わりにリミッターが外れ、

チカラを使った分、肉体が損傷するスキルである。


ヌル「体にチカラが漲る!

  勝負だ!

  必ず皆で生きて帰る!!

  賭けろ!

  これまでの全てを!!!」


 ヌルは自分に【擬態・強】を使った。

 隠蔽魔法によく似た感じで、

ヌルが周囲の景色に溶け込んでゆく。


 銀竜や仲間の視界からヌルの姿が消えた。

 ギリーにだけはヌルの姿が見えていた。

 高位の術者には効果が無いようだ。


 ヌルは銀竜の背後に回り込んだ。

 銀竜はまだ、腹を下して動けない。

 ヌルは【一刀両断・強】で

銀竜の長い尾羽を切断した。


 ヌルの上半身の筋繊維が、

ブチブチと音を立てて切れる。


ヌル(イタタタ! 痛い!! 痛い!!)


「コアアアアアアアア!!!」


 尾を切られた銀竜が怒り、絶叫する。

 ヌルは思い切り息を吸い込んだ。


 ヌルは【カチ上げ・強】

を使い、銀竜をカチ上げた。


 銀竜は仰向けで上昇していく。

 ヌルは追い討ちをかけるように、

【バブルリング・強】を使用し、

銀竜をさらに押し上げる。


 ヌルの肺は限界を超えたチカラを使ったために、

細い血管が切れ、出血を起こす。

 また肺には穴が開き、空気が漏れ出していた。


  ヌルは自身が立つ、

鉄鉱石の地面に【放電・強】を放った。

 ブルージェットのような、

青い雷に包まれるヌルの全身。

 ヌルは続け様に、【ハイジャンプ・強】

を使用した。

 

 ヌルは屈伸状態から腕を振り上げ、背を起こし、

地面を蹴り、空中で膝を上げる。

 ヌルの体は筋肉だけでなく、

靭帯や腱も悲鳴を上げ、骨もダメージを負う。

 ヌルは両脚が壊れるのを感じた。

 ヌルの両脚は痛みを通り越し、

火がついたように熱く感じていた。


ヌル(まだだ! まだ動ける!!

  あと少し、もう少しだけ!!)


 銀竜に飛びつき、翼にしがみつくヌル

 ヌルは銀竜が飛べないように、翼を抑え込む。



 地上ではマーボーが助走をつけて走り出す。

 マーボーの両脇には、

オニオとナーガがしがみ付いている。

 マーボーは竹槍を伸ばし、しならせ、

棒高跳びのような体勢になっている。


 マーボーは高く跳び上がった。

 竹槍を掴んだまま、逆立ち状態で

両脚で銀竜の後頭部を蹴り上げるマーボー。


ヌル(マジかよ!?

  動けたの、マーボーさん!

  無茶するなぁ。

  しかしこれはチャンスだ。

  高度が上がり、成功率は高くなった!

  必ず、上手くいく!!)


 更に加速して上昇する銀竜。

 銀竜の上昇が止まった。

 銀竜が落下に転じようとした、そのとき。

 ヌルはすぐさま【磁石化・強】

を銀竜に付与した。


 鉄鉱石だらけの地面はヌルの放電により、

天然の磁石【ロードストーン】となっていた。

 磁石化された銀竜は、

磁石化した地面に引き寄せられ、

加速して落ちていく。


ヌル(慣性は加速度と逆の方向に作用する!

  それは落ちる物の質量を軽くする!!

  ナナ!!!

  あとは頼む!!!)


 マーボーが空中で前転し、竹槍を振り下ろした。

 マーボーはハエ叩きのように銀竜を叩き、

銀竜の落下速度は更に加速した。


ヌル「ぐふっ!?」


 マーボーの打ち下ろしは

ヌルに当たってはいないが、

ヌルはマーボーの攻撃の衝撃で

気を失っってしまう。

 もうヌルの体は、

意識を保てないほどのダメージを受けていた。

 マーボーからヌルは擬態で見えていなかった。


 ヌルは気絶し、銀竜と共に落下する。


 ナナは空き缶を握りしめ、

祈るように魔力を込めた。

 超高速度で落下する銀竜が消えた。

 銀竜はナナの手元の缶に封じられた。


 高速で落下し、地面に激突寸前のヌルの姿は、

ギリーにだけ見えていた。

 マーボーとオニオとナーガも落下している。


ナーガ「マーボーさん! 着地は!?

    どうすんべ!!」


マーボー「ガハハハ!!

     着地の事なんて考えてる

     ヒマなかっただろ!


     ケツの穴締めるように、

     全身を引き締めて踏ん張れ!!

     ピュイ♪」


オニオ「ンゴオオオオオオオ!!」


 ギリーはガタガタ震えていた。。

 悩みながら発狂するギリー


ギリー「ああああああああああああ!!」



       モフンッ!!



 膨らんだ地面が、優しく4人を受け止めた。

 それはギリーによる、地と風の複合魔法だった。

 地面の柔らかい層に空気を含ませ、

クッションを作ったのであった。


 ヌルの擬態が解けた。

 ヌルは瀕死だった。

 意識は無く顔色も血の気がない。

 さらに呼吸はヒューヒューと不気味な音を立て、脈拍も弱っていた。


 皆がヌルに駆け寄った。


ナナ「ヌル!!!

   だめ! 死んじゃダメ!!

   お願い、神様!!

   ヌルを助けて下さい!!」


 ナナは力を振り絞り、ヌルに治癒魔法をかける。

 ナナの涙がポタポタと、ヌルの顔に滴る。


 ギリーも治癒魔法をかけた。

 何故かギリーは焦燥し、

苦悶の表情を浮かべている。


 ヌルの呼吸がどんどん、弱まっていく。

 今にも止まりそうである。

 ナナが人工呼吸をやりはじめた。

 ナナは、少年ヌルが溺れたときの、

川での光景を思い出していた。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



ーヌルの意識の世界ー


 ヌルは不思議な夢を見ていた。

 温かい水の中にいるような、

そして温かい風が体を包み込むような、不思議な、心地よい感覚であった。。

 このままジッとしていたら、

とても良いところに流されて行きそうな、

そんな感覚だった。


 しかし、その心地よい感覚を遮るものが。

 それは、ナナが呼びかける声であった。


ナナ「ダメ! 死んじゃダメ!!

   ヌル!!

   死なないで!!!

   約束したでしょ!!!」


 ヌルは思い出した。

 前世で意識が薄れる、最期の記憶を。


ヌル(前にもこんな事があったような?

  あのとき、俺を呼んだのって……。) 


 しかしそれは、実際には【ありえない話】

だった。


 【ぬるゆ】が地球で死にかけたときに

聴いた少女の声がナナだとすると、

異世界にいたナナの声が、

地球にいた、ぬるゆに届くはずがなかった。


 地球のぬるゆが、

【異世界の少年・ヌル】の

肉体に入った後に聴いたのだとしても、

蘇生されたヌルは王都で目覚めた。


 そのとき、ナナは王都から遠く離れた

【チュートリ村】にいたのである。


      

  ゲシッ!!!


 ヌルは何者かにケツを蹴られた感覚がした。

 そして、謎の少年の声を聴いた。


謎の少年「ナナを泣かせるな!

早く帰れ!!」


ヌル「君は?」


少年「いいから早く戻れ! ナナが泣いてるだろ!」



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



ー鉱山ー


 ヌルは意識の世界から無理矢理追い出された。


 鉱山ではヌルへの救命活動が行われていた。

 ナナとギリーによる治癒魔法と、

エルおじの回復アイテムで一命を取り留めたヌル。

 ヌルの心肺は活動を再開した。


 ヌルが目を覚ますと、

目の前に泣きじゃくったナナの顔が。

 ヌルの顔を心配そうな表情で覗き込む4人の顔。


ナナ「もう!!

   あんな無茶して!!!

   死んじゃったかと思ったじゃない!!!」


 ナナがボコボコとヌルの体を叩く。


 ーボキッ!ー


ヌル「いた! 痛い!!

   ちょっ! ナナ!?

   俺の骨、たぶんヒビが……。

   ああっ! 折れっ!!」


 ヌルはナナに叩かれ、骨が折れる感触を感じる。


ナナ「はっ! ごめっ! 大丈夫?」


ヌル「大丈夫……じゃない。

   すげー痛え。

   でも、生きてる。

   約束しただろ?

   死なないってさ。」


 ヌルは、アノ夜を思い出してニヤリとした。

 ナナも、アノ夜を思い出して顔が赤くなった。


    バチンッ!!


 またしてもナナがヌルを叩いた。


ヌル「痛っ!!」


  (痛い。痛いなぁ。

  でも、生きてる。

  死ぬのに比べたら、

  痛みなんて、なんて事ないよな。


  まぁ痛いのは辛いけど。)


 ナナの真っ赤で、

恥ずかしそうな顔を見てヌルは思った。


ヌル(きっと俺は、

  ナナを守るためにこの世界に来たんだ。

  勇者を守るってのが使命なんだろうけど、

  例えナナが勇者じゃなかったとしたって、

  俺はナナを守っていきたい。


  この命に代えてもナナを守っていく!

  まぁできれば死にたくないけど。

  もっとナナとイチャイチャしたいもんな。)


 ヌルはスキル【空の王】を手に入れた。

鳥を操作できるスキルであった。


 マーボーも重症だった。

 どうやら鎧の隙間、

ケツのあたりをドラゴンの爪で抉られたようだ。

 しかし手当を受け、元気になったマーボー。


 ギリーの発案で、

ナーガとギリーとナナは断崖を登った。

 そこで、3人はドラゴンの巣を発見した。


 オニオは横になったヌルを看ている。

 マーボーは新たなモンスターの奇襲に備え、

辺りを警戒している。

 崖を登ったギリーが何かを発見した。


ギリー「やはり、ここにあったか」





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