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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
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26 走馬灯

26 走馬灯


※タキサイキア現象


 ヒトは事故に遭う寸前などで、

命の危険を感じたとき、

周りの動きがスローモーションに

見えたりすることがある。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 生命の危機を感じたヌル。

 ヌルから見た銀竜の動きが

スローモーションになり、

ヌルの頭の中に走馬灯が駆け巡る。

 

 ヌルの頭の中では、

今までの人生[前世含む]での出来事や、

これまでの冒険のハイライトが動画再生された。


 ヌル(ぬるゆ)が、初めて走馬灯と、

タキサイキア現象を体感したのは子供の頃だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーぬるゆ幼少時代ー


 ハードル走で足をひっかけ転ぶ瞬間、

動く景色や時間の進行が

スローモーションになった感覚を覚えた ぬるゆ。


 そして何故か、

幼少期に手をつかずに転んだ記憶が再生された。


 それを思い出し、咄嗟に右手を出した、ぬるゆ。

 ぬるゆは体を捻り、掌から右肘へ、

右肘から右肩へ、転がるように衝撃を受け流し、

転がる事でカスリ傷で済んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

ーぬるゆ少年時代ー


 次にタキサイキア現象に遭ったとき。

 それは自転車でスピードを出し過ぎて、

少し高い所から大きなドブ川に落ちた時だった。


 落ちるあたりからスローモーションが始まり、

ハードル走でコケた時の映像が再生された。

 この時はコンクリの壁に激突する瞬間に、

目を閉じてしまった為に衝突した瞬間の

記憶が無かった。


 ぬるゆが気がつくと、

両手首から血を流した状態で立っていた。

 どうやったのかわからないが、

着地には成功していた。

 自転車は激しく損壊し、廃車となった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーぬるゆ青年時代ー


 3度目のタキサイキア現象は、

バイクで転んだときだった。

 速度50キロくらいで急ブレーキをかけたら、

後輪がロックして滑り出し、

車体がナナメになったあたりから

スローモーションが始まった。

 このときに見えたのは、ハードル走と、

自転車で川に落ちた時の映像だった。


 タキサイキア現象は、

【ただの脳の処理の遅延】と結論が出ている。

 頭の回転が速くなっているわけではないという。


 しかし、

それだけでは説明できない部分が、

たしかにあった。

 スローモーションの間に過去の映像が流れ、

いま起こっている危機への対処の仕方について

考える時間があったのだ。

 この時に考えたのは、

【目を閉じるな、落ち着いて対処しろ】だった。


 ぬるゆは跳び箱を飛び越える要領で、

先ずはバイクを捨てた。

 地面に右手をつき、

受け流すように掌から右肘へ、

右肘から右肩へとつなげ、

アスファルトを転がった。


 不思議なことに、この時に思い出した。

 自転車で川に落ちたあの時、

咄嗟に自転車を離し投げ捨て、

コンクリの壁に両掌をぶつける事で

顔や頭部を守ったことを。


 アスファルトを転がっている間も

スローモーションは続いた。

 ぬるゆにはバイクが横転し、

火花を散らしながら滑っていく映像が

ハッキリ見えていた。


 結果、ほとんどケガは無く、

少し服が破けたくらいで済んだ。


 そのときの教訓は

【臆するな、目を見開け。

諦めるな、活路は必ず見える】であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーミスリル鉱山ー


 ぬるゆが見たスローモーション映像。

 そこに見えるのは

【翼をたたんで急降下する銀竜】であった。


 銀竜がなぜ、止まった状態で加速できるのか?

 その答えは【重力加速度】だ。

 落ちるものは地球へ向かって加速する。


 ぬるゆの記憶の中の、

たくさんの画像がフラッシュバックする。


 ビチグスライムの強烈な匂いと毒の話。

 空腹で暴れるオーク。

 驚きの跳躍を見せた、

ハエトリグモ型のモンスター。

 強力な斬撃を放つミノタウロス。

 大岩をカチ上げた大猪のモンスター。

 美味しそうな香で獲物を誘き寄せる、

ミミックプラント。

 ルアーを巧みに使う大蛇。

 肉体のリミッターを失い、

限界を超えて暴れる狂犬。

 激しく放電した電気ウナギ。

 磁石化した体を持った巻貝。

 巧みに岩に擬態した大亀。



ヌル「そういや、

  まだ使えるスキル、けっこうあるな。

  コレをうまく組み合わせれば、

  活路を開けるかもしれない。


  ……かもしれない、じゃない。

  絶対に皆で生きて帰るんだ!

  魔王との決戦まで、

  戦力を減らすわけにはいかないんだ!」



 突如銀竜が方向転換し、急浮上した。

 ホバリングしながら

凄まじい音量の咆哮を放つ。


ヌル「助かった!


  コイツ、ホバリングまでできるのか。

  そういや、ハヤブサの仲間に

  ホバリング得意な奴いたなぁ」


「コアアアアアアアア!!!」


 ビリビリと大気が震える。

 ガラス窓なんかがあったら、

衝撃で割れそうな勢いであった。


ナーガ「なんか取れた!

    なんか、すごいの取れた!!」


 ナーガの震える手は、何かを握りしめていた。

 それは、虹色の羽毛であった。


ヌル「なんだアレは。

  他の羽毛と色が違う。

  竜が怒る….…


  逆鱗か!」


 銀竜が激しく怒っていた。

 銀竜は再び急浮上した。

 ヌルは先ほどの走馬灯の映像から

起死回生の策を閃いた。


ヌル(やるしかない!)


 マーボーに向かって急降下する銀竜。

 ヌルは銀竜の顔めがけて

大きめの石を投げた。


ヌル(ドラゴンの急降下はおそらく、

  時速300kに達する。


  オニオの投げた砂が、あれほど効いていた。

  相対速度のチカラだ。

  石程度でも、かなりのダメージになるはず!)


 ヌルの思惑通り、

銀竜は急旋回で石をかわし、

ヌルの横をスレスレで飛んでいく。


 その瞬間にヌルはスキル【バーサーク】

を銀竜に付与した。


「ゴアアアアアアアア!!!!」


 銀竜が更に凶暴になる。

 銀竜の攻撃力が2倍になり、飢餓状態になる。

 銀竜は口から涎を垂らしている。


 ヌルはカバンから生肉の缶詰を取り出し、

缶から生肉を取り出した。


 ヌルは生肉に【ビチグ毒】を付与した。

 強烈な匂いを放つ毒肉だ。

 これに【甘い誘惑】も付与する。

 これで銀竜が好きな匂いの毒肉になった。


 ヌルはスキル【ルアーリング】を使った。

 ヌルが手に持つ毒肉に、銀竜の目は釘付けだ。


 銀竜が急降下してきた。

 ヌルは毒肉を少し離れたところに投げた。


ヌル(頼む! 食いついてくれ!!)


 銀竜は地面スレスレで急浮上しながら

足の爪で肉を掴み、飛び上がる。

 飛び出た岩に留まり、

銀竜は肉を食い始めた。

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