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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
21/138

21 ナナの3時間クッキング

挿絵(By みてみん)

21 ナナの3時間クッキング




ーイノシシとの激闘後・草原ー


 イノシシとの激闘の後、

休憩を取っていた一行。


 ヌルは当番のため、食事の用意をしていた。

 ナーガとオニオがやってきて、

ヌルに話しかけてきた。


ナーガ「そういやヌルはさ、

    ナナちゃんの手料理さ

    食った事あんのが?」


オニオ「すげえ気になるンゴ」


 ヌルの手が止まった。


ヌル「世の中には、

   知らない方が幸せな事がある」


ナーガ「まじか……」


オニオ「余計気になるンゴ」


 ヌルは震えながら語りだした。


ヌル「あれは忘れもしない、

   俺の7歳の誕生日だった。


   いや、8歳だったかな?」


ナーガ「忘れてるでねぇか!」


オニオ「忘れてるンゴ!」



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



ー7年前・ヌルの回想ー



ナナ「今日はヌルの誕生日だね!

   私が、おいしいもの作ってあげゆ!

   ヌルが大好きな、ジャガイモさんで、

   フライドポテト作ってあげゆ!」


 ナナは一生懸命、

かまどの火を起こそうとしている。


 ナナ「スーッスーッ!

    ケホッ! ケホケホッ!」


 ナナは火吹き棒で息を吸っていたようだ。


ヌル「ナナ! 吸うんじゃないよ!

   息を吹くんだよ!」


ナナ「えへへっ」


 ナナは真っ黒な口で笑う。

 かまどに火がついた。

 ここまでで2時間かかっていた。


 ナナは鍋に水を入れた。

 ナナの家のかまどは2つあった。

 先程火をつけたかまどは右側だ。

 水の入った鍋は、何故か左のかまどに置かれた。


ヌル(火が付いてない方にいったあーーー?

  いやまて、右では別の用途があるのか?)


ナナ「お湯をわかします。

   つぎにジャガイモさんの皮を剥きます」


ヌル(お湯? フライドじゃねええー!

  ボイルドポテト!!

  まぁ、よほど下手やらかさない限り、

  おいしいのできるよね?)


 ダンッ! ダンッ!


ナナ「痛いっ! 痛いっ!」


ヌル(ジャガイモの痛みを共感してるうー!

  それと、皮を剥いてる音じゃねえー!!)


 ジャガイモはサイコロ状に切られていた。

 皮はキレイに落とされている。

 切り落とされた皮を見つめるナナ。

 皮にはたくさんの、

食べられる部分が付いている。


ナナ「もったいないから皮も入れるね!」


ヌル(皮も入ったあー!

  ゴオオオオール!!

  しかも火が付いてねえー!!!)


 ヌルの心の実況は、

加熱されない水の入った鍋とは対照的に、

過熱していく。


ナナ「味をつけます。塩です。」


 ナナが白い粉を鍋に投入する。


ヌル(ベタだー!

  ベタベタだあー!!

  それは塩じゃねえー!!!

  そして定番の間違い、砂糖でもねえー!!!

  そいつの名は、カタクリ粉だあー!!!

  そしてまだ火がついてねえー!!!)


 ナナはご機嫌である。

 ナナの中では順風満帆のようだ。


ヌル(俺は何を見せられてるんだ??

  そして、俺は何を食わされるんだ???)


 ガタッ


 ヌルは立ち上がり、

ナナの元へ行き、手伝おうとした。


ヌル「ナナ、ちょ……」


ナナ「だめっ! ヌルは待ってて!

   ちゃんと、お座りしてるのっ!」


 テーブルから動こうとするヌルを、

ナナが制止する。


ナナ「なかなかお湯が沸かないね。」


ヌル(だって火が付いてねえもんよ!!)


ナナ「沸くまで少し、お話ししよっか。」


ヌル(永遠に沸かねえって!!)


ナナ「ヌルはお母さんの作るご飯、何がすき?」


ヌル「ん? 特に好きなのないかなあ。

   なんでも食べるよ」


ナナ「うちはね、お母さんいないから、

   いつもお父さんが作ってくれるんだ。

   いつもお父さん疲れて帰ってくるのに、

   ちゃんとおいしいご飯作ってくれるの。


   お父さん、きっともっとお母さんのご飯を

   食べたかったと思うんだ。

   だからね、ナナが早くお料理上手になってお

   父さんにご飯作ってあげるの!


   そしてナナがヌルのお嫁さんになったら、

   毎日作ってあげるね!」


ヌル「お、おう……。

   がんばろうな!」


ナナ「そろそろかな。」


ヌル(まだだと思うよ!!!)


ナナ「んー。

   熱くない気がするけど、もういっか。」


ヌル(よくないと思うよ!?)


 ナナは網を使い、水溶きカタクリ粉に

漬け込まれた生ジャガイモの厚切りをすくい、

皿に盛る。

 もちろん、皮付きポテトも盛られている。


 皮が付いてない、ポテトをペロッと舐めて

味見をするナナ。


ナナ「味しないなぁ。」


 ここで、砂糖をかけるナナ。


ヌル(きたあー!!

  ここで砂糖がきたあああああああ!!!)


ナナ「どうぞ。召し上がれ(^-^)」


ヌル(そして、ここで味見をせずに、

  提供だあああああああ!!)


 ヌルはおそるおそる、ソレを食べた。


 シャクッ


 意外とイケるモノであった。


ヌル(りんごとかナシみたいだ。)


ナナ「おいしい?」


ヌル「うん、おいしいよ。」


 ヌルは皮の方も食べてみた。

 皮は少し緑色をしていた。


ヌル(少し苦い。

  皮が硬い!

  皮が口の中に残るが、ナナが見ている。

  吐くわけにはいかない。

  飲み込め!!)


 ヌルは皮を吐き出さずに飲み込んだ。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



ヌル「俺は全部食べた。

   翌日から3日間、俺は生死を彷徨った」


ナーガ「ヒイイイ……」


オニオ「天使のような悪魔ンゴ……」


ヌル「3日間の激闘の後、

   回復した俺を元気付けるために、

   ナナがお見舞いにきたんだ。」



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



ーヌルの回想・イモ事件から3日後ー


ナナ「ヌル!

   元気になってよかった!

   ヌルのためにお弁当作ってきたの!

   いっぱい食べてね!」


 ナナは、おにぎり弁当を持ってきていた。


ヌル(死ぬ……今度こそ死ぬ……)


 ヌルは死ぬ覚悟を決めた。

 ナナの目の前で【食べない】という

選択肢は無いからである。

 ヌルは恐る恐る、弁当の包みを開けた。


ヌル(完璧な出来のオニギリだ。

  とてもナナが一人で作ったとは思えないぞ。)


「これナナが作ってくれたの?」


ナナ「そうだよ! お父さんと一緒に作ったの!」


 ヌルは3日ぶりの食事にかぶりついた。

 その姿を微笑みながら見守るナナ。

 とても嬉しそうである。


ヌル(美味い……。

  弱った体に染み渡る……。)



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



ヌル「3日ぶりに食べたオニギリは、

  本当に美味しかった。

  俺はその味を一生忘れない」


ナーガ「まぁ、

    美味いオニギリ食えてよかったべ」


オニオ「羨ましいンゴ」


ヌル「美味いオニギリが出るか、

   毒生緑皮ポテトが出るかはわからんが、

   お願いしてみたらどうだ?」


ナーガオニオ()



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