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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
2/138

2 悪い女と騙される男。偽りの恋人ゴッコ。そして心臓発作。

2 悪い女と騙される男。偽りの恋人ゴッコ。そして心臓発作。


ーーとある薄暗い、飲食店内ーー


 ぬるゆ は、狭い個室に独りで居た。

 畳と木造の和風な建物の中で

缶のハイボールを呑んでいる。

 照明は暗い。

 浴衣のような和風の上着を羽織った、

黒髪の女性が笑顔で ぬるゆ の元に現れた。

 彼女は ぬるゆ のお気に入りの嬢

【ユキ】であった。


ユキ「お兄さん! また来てくれたんだね。

   そして、いつも指名ありがとう!」


挿絵(By みてみん)



 ユキは嬉しそうに微笑むと、

ラグビー選手のタックルの如く、

高速で ぬるゆ に抱きついた。


ぬるゆ「今日のお土産はコレ、

    人気のロールケーキだよ!」


 ぬるゆは、持参したお土産を使い、

ユキを引き剥がそうとするも、

ユキのホールドはキツく、離れない。


ぬるゆ(……しまった! また先制された!!)



 ーーこの出来事の約3時間前ーー



踊る奴「ガイガイガガイ♪ ガイガガイ♪

    ガイガイガガイ ♪ガイガガイ♪

    ガガガイ♪ ガガガイ♪ ガガガイガイ♪」


 女装したマッチョ男が両手に扇を持ち、

軽快なステップを刻みながら、

不気味なリリカルメッセージを発する。


 ゆるゆ はすぐさま、

グ●グル先生に訊ねてみた。

 ぬるゆ は、

チャットと酷似した文字列を発見する。


ぬるゆ(似ているのがある。

   ●●●音頭……。これか……。)


 どうやら相手をバカにする、

ネットスラングのようだ。

 ぬるゆ がザコ敵の処理にすらモタついたせいで

城門の防衛は失敗に終わった。

 無報酬が確定し、時間を無駄にしたプレイヤー

達から罵詈雑言を浴びせられる、ぬるゆ。



「この魔王の手先め!」

「無知は万死に値する!」

「wwww wwww wwww wwww」

「弁償してください!」

「弁償は草www」



 荒れるチャット画面。

 罵倒の嵐である。


 ぬるゆは、なぜバカにされたのか?

 それはこのコンテンツの【効率の良い周回方法】にあった。


ぬるゆは攻略サイトを確認した。

そこに書かれていたこと。


 城門を制限時間まで守るよりも、

敵将を討つと防衛成功になる。

 そのため全員でザコ無視ボス凸した方が、

短い時間で効率よく報酬を得られる。


 というものであった。

 短い時間でボス討伐をすると、

ザコ敵のポップも少なく、安全でもあるようだ。


 気軽に参加できるオートマッチングでの

参加なのに、こんな遊び方を

限定されてしまうのか。


 ぬるゆは予習をしなかったことを深く後悔し、

また、ゲームを楽しめない人たちに対して、

憤りを感じた。


 アプデ明けすぐからブン回しているニート軍団。

 彼等のコンテンツ消化速度は異常である。

 社畜たちが参加する頃にはもう、【旨味】が

激減していることが多い。


 プレイヤー同士で取引できる、新素材や

新装備は、アプデから半日ほどで

オークションを埋め尽くす。

 社畜が参加する夜にはもう、

投げ売り状態になっていて、

値崩れしていることなど当たり前である。


 攻略法に関しても、すぐにテンプレが

出来てしまい、無知な新規プレイヤーは、

それだけで害悪となってしまうことが多い。

 新規参入の阻害の先にあるのは、

先細りからの淘汰しかないというのに。


 やり場のない悲しみと怒りを発散するために、

出たばかりの給料を握りしめて、

ぬるゆ は繁華街へと向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 ぬるゆ は安い居酒屋で腹を満たし、

お気に入りの子【ユキ】がいる●●パブへ向かう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー店内にてーー


ユキ「またきてくれたんだね! お兄さん大好き!」


 ユキがギュッと抱きついてきた。


ぬるゆ「今日のお土産はコレ、

    人気のロールケーキだよ!」


 ぬるゆはお土産を渡そうとするも、

ユキは興味が無いようだ。

 ユキのホールドはキツく、引き剥がせない。


ぬるゆ(……おかしい。おかしいぞ!

   明らかにユキを指名するようになってから、

   お触りをする機会が減っている。

   というか、触れん。)


 ユキは ぬるゆ にガッチリ密着して、

抱きついて離さない。


 お店のシステムは、

45分5000円(早割)のうち、

約35分は他の女の子[ヘルプ]2人と話すだけ、

と交代などの時間だ。


 残りの10分が抱き付きで終わり、

延長30分3000円も、そのうち20分は

ヘルプの子と話すだけと交代にかかる時間。

もちろん、指名料で2000円支払っている。


 ぬるゆ(これは…

    クリンチ!クリンチじゃないか!

    卑怯なり!


    男なら、ボクサーなら、

    打ち合わんかい!!)


 ぬるゆは、何もできずに時間だけが過ぎてゆく。


ぬるゆ(俺は…騙されている。

   ボッタくられている。

   モミ放題飲み放題のはずなのに、

   クリンチで動きを封じられ、

   缶のハイボールすら1本飲みきれずに

   金だけムシリ取られている!)


 ユキは別れを惜しむように、抱きついたまま、

ぬるゆ に話しかける。


ユキ「もうすぐ時間だね。

   ねえ、延長どうする?」


ぬるゆ(延長したところで…

   そもそも、最初の1回だけじゃないか!

   花びら3回転でカワイイ子が3人きたのも、

   基本のサービス内容を受けられたのも!!)


   「延長で。」


ユキ「ありがとう! じゃあ、また後でね!」


 ユキは、ぬるゆの返答を聞くとすぐに離れ、

意気揚々とヘルプの子と交代するために

立ち去った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーぬるゆの自宅ーー



 家に帰っても、ぬるゆ の

イライラはおさまらない。


 楽しみにしていた、ゲームの新コンテンツでは

戦犯扱いされ、飲みに行けばボッタくられる。


 ヤケになり、ぬるゆ の飲酒は勢いを増す。



【【【ドクンッ!】】】



 ぬるゆの心臓が、いきなりバクバク動き出した。


ぬるゆ(痛いっ!

   苦しいっ!!

   息ができないっ!!!)


 ぬるゆは、突然胸が痛みだした。

呼吸が困難になり、冷たい血液が心臓に流れるような感覚がした。


 ぬるゆ(目の前が暗くなる…

     意識が遠くなる…


     俺、死ぬの……?)




???「あああああ! ああああああ!

   ヌル、おきてえぇぇ! あああああん!



 ぬるゆは幼い女の子が泣き叫ぶ声を聴いた。

 ぬるゆは、自分の顔にポタポタと温かいお湯がかかる感覚がした。


ぬるゆ(誰だろう?

    俺は自宅に1人だ。

    誰か訪ねてきた?

    いや、こんな知り合いはいない。)


 女の子の声で少しだけ落ち着くも、

心臓が激しく収縮する苦しみと

痛みはおさまらない。



ぬるゆ(だめだ、意識が遠くなる……。)

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