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135 封印されし邪竜と約束の花束〜前編・氷の大陸の頂上決戦 〜

遅くなりました。まだまだ暑さと疲労で厳しい状況が続きますが、完結目指して頑張ります。

先日、不思議な夢を見ました。

趣味でやってるNFTゲームの影響を色濃く反映したような夢でした。

無事完結したら、それを題材に次作を書いてみようかなと思ってます。

何年後になるだろうか……。

封印されし邪竜と約束の花束

前編・氷の大陸の頂上決戦



ー戦後・氷の大陸ウラバンー


 魔王軍との最終決戦後、

故郷に帰還したスカディの一行は、

衝撃的な光景を目の当たりにする。


 それは最終決戦の最中に突如起きた、

謎の大地震がもたらした影響であった。


 氷の大地はヒビだらけで

大陸の端は欠けて海に落ち、

国土は著しく縮小していた。

 氷山や氷河は崩落し、

全く知らない場所のように地形が変わっていた。

 道路として使っていた場所は、

クレバスだらけで首都までの帰還も危険を伴った。


 これは最終決戦の最中にヌルと戦った、

“魔王軍幹部・賢者ギリー”によるものであった。

 転生魔法により、ギリーは傀儡化した先代勇者を

操作して落とされた隕石が

もたらしたものであった。


 隕石はヌルの転移魔法により、

氷の大陸地下3000メートルにある

地底湖に強制転移させられた。

 その影響により、

氷の大陸は大震災に見舞われていた。  

 その場面を見ていた生存者がいないため、

スカディ族はもちろん、

他の誰も知る由が無かった。



ー数日後ー


 氷で出来た巨大なゴーレムが

建設機械のように、瓦礫のような氷を整理し

復旧作業にあたっている。


「ひいぃー。 毎日これじゃ、死んじゃいますよぉ」


 スカディ族の男性で武官のヨシビトが、

疲労困憊で弱音を吐いている。

 ヨシビトは魔法の氷で巨大なゴーレムを

作り出し、維持していた。


「たしかに、毎日これはキツイわね……」


 ヨシビトが創り出したゴーレムを

魔法で操作して

瓦礫と化した氷塊の撤去をしている、

スカディ族の女性文官ゼルファの顔も

疲労困憊である。


 連日復興作業に駆り出されている他の面子も皆、疲弊していた。


「情けない! 弱音を吐くで無い!

我々は一度、あの戦いで死んでいる。

命懸けの戦いに比べたら、この程度の作業など

造作もないであろう。


思い出せ。地獄のような、あの戦いを。

そして犠牲者を出すことなく、

全員生還できた奇跡を。


我々は一度は盟友を裏切り、

恩人たちの命を脅かしたのだぞ。

そんな我らが犯した過ちを許すだけでなく、

救ってもらったのだぞ。

一刻も早く復旧し、

我らも世界の復興に助力するのだ」


 スカディ族の女王“ほえほえ”が

弱音を吐く臣下達へ向けてゲキを飛ばす。


 この日、スカディ復興チームは

スカディ族王家の墓地の復興作業に当たっていた。


 墓地の中央には、巨大な氷で出来た

狼のようなモニュメントがある。

 ほえほえはモニュメントの隣にある、

先祖であるスカディ先代王の墓を見た。

 石碑のように、氷で出来た墓標には

碑文が刻み込まれている。

 それは、スカディ族に関わりのある、

歴史的に大きな出来事が刻まれていた。

 ほえほえは墓に刻まれた碑文に目をやる。


ーーアマツミカボシ封印作戦における殉職者、

                ここに眠るーー


 そこには、

アマツミカボシとの戦いの歴史が刻まれていた。

 モニュメントと氷でできた墓標には

大きな亀裂が入っていた。

 

「これは、復旧を急がなければ……」


 碑文を見ながら、ほえほえは呟く。


 ほえほえたちスカディ族は、

エルフ族に劣らぬ長寿を誇る種族である。


 ほえほえは幼少期を思い出していた。

 それはまだ、アマツミカボシが

猛威をふるう時代であった。



 ーーほえほえ回想ーー



 翼開長20メートルを誇る、

巨大なフクロウのような体格。

 肉食獣のように寄り目でありながら、

首の可動区域は広く、常に360度近い視野を誇る。

 左右で高さと大きさが違う耳は、

驚異的な聴力を誇る。

 黄金色に輝く羽毛は、

オリエントスズメバチのように

太陽光発電能力を持つ。

 首周りには巨大な血管のようなチューブがあり、中には透明の体液が流れる。

 この液体は雷の魔力を氷の魔力に変換する能力を持っていた。

 寒さにも強く、行動範囲は広かった。

 氷の大陸からエルフの大陸まで、

アマツの狩場であった。

 アマツは魔力が高い餌を好んで捕食した。

多くのエルフとスカディ族が贄となった


 アマツミカボシという呼び名には【破滅の金星】という意味が込められ、人々は畏怖した。

 

 

 アマツのターゲットは主に、

エルフとスカディであった。

 昼間は太陽光を浴びて充電し、

雷や氷の魔法を駆使して狩をした。

 夜間にはフクロウのように無音の羽音と、

驚異的な聴力を駆使して、

音も無く獲物を狩るプレデターであった。


 渡り鳥のように半球睡眠を駆使し、

昼も夜も眠ることなく人々を捕食し続けた。

 夜の失踪事件は、”闇隠し“

と言われ、原因が究明されるまで

人々を恐怖に陥れた。


 闇隠しの真相が明らかになると、

エルフとスカディは同盟を結び、

アマツミカボシ討伐作戦が決行された。

 しかし、甚大な被害を出すだけで

討伐は叶わなかった。


 アマツミカボシは高い知性を持ち、

連合軍の大軍の前には現れず、

人がまばらの辺境の集落を襲った。

 また、罠の類にはかからなかった。


 エルフとスカディの連合軍は

少数精鋭で挑むことを決断する。

 少数精鋭で強者を囮に使う作戦であった。


 エルフが得意とする草原や森ではなく、

アマツの巣がある、アマツのホームともいえる

氷の大陸で決着をつけることに決めた。


 そして当時のエルフとスカディの代表は、

助言を貰うため幻獣”氷狼“の元を訪ねた。


 ゼットの母親である、氷狼の女王レムは

客人の話を聞いて険しい表情をする。


「突然変異の竜……。 魔力が高い餌を好むか。

ならば我の子も危ういかもしれぬ。

協力しよう。策がある」


 レムは自分と息子だけになってしまった、

氷狼族の未来。

 そして自身は病に侵され、先が長くない事を

エルフとスカディの代表に話した。

 そして自分の死後、息子を頼みたい事。

 たとえアマツを倒せなくとも、

自身の命と引き換えに

アマツを封印できる事を皆に伝えた。


 討伐作戦には親交が深い、

人魚族も加わる事となった。

 ヨーリーの母親である、

先代人魚族の女王が得意とする変身魔法を使い、

レムはスカディの少女の姿に化けて囮となり戦うという作戦になった。




 ー氷の大陸・作戦決行の夜ー


挿絵(By みてみん)


 月明かりが照らす銀世界。

 こんこんと雪が降り頻る。

 アマツが好む魔力を漂わせ、

人魚の魔法によって、

スカディ族の少女の姿となり、1人佇むレム。


 月の光を背に、

長く伸びたレムの影を闇が覆った。

 それは、音もなくレムの背後に、突然現れた。


「来おったか。 氷魔法【小米雪】〈こごめゆき〉」


 闇と共に現れた、巨大獣の爪が

背後からレムの体を貫いた。

 レムの体は、煙のように白い粉塵を

巻き上げながら砕け、風とともに空気中に漂った。


 レムを急襲したアマツは、

得体の知れない獲物に対する警戒よりも、

好物である上質な魔力を感じて歓喜し、咆哮する。

 その顔は、悪意に満ちた笑みが浮かぶ。


「ホアアアアアアア!!!」


「我ら氷狼族の魔力を餌と捉えるか。

愚かな獣め。 身の程を弁えるがよい。

氷魔法【銀花・星雨】〈ぎんか・せいう〉」


 白い煙のような粉雪が集まり、

再びヒトの姿となったレム。


 モフモフの毛束が付いた、筆のような

長い杖を振るい、空中に魔法陣を描く。

 空から月明かりを反射し輝く、

無数の氷片が降り注ぐ。

 それは、手裏剣サイズの

鋭利な雪の結晶であった。


 アマツは空気を切り裂く音で攻撃を察知し、

自身に冷凍ブレスを吹き付ける。

 アマツの羽毛は逆立つ棘の鱗のように、

氷を纏った。

 降り注ぐレムの氷片と

アマツの羽毛が纏う氷は相殺され、

辺りは輝く氷の粉塵が舞う。

 それは月の灯りに照らされて、

幻想的な風景を作り出す。



 ー戦場から少し離れた、同盟軍キャンプー


 レムとアマツが戦う場から少し離れた雪洞で

沖津鏡により対決の様子を見守る、

エルフと人魚とスカディの同盟軍。


「始まったか……。 氷の世界の頂上決戦が」


「この低温の世界は我らスカディ族でさえ、

立ち入れば命は無いだろうな」



 ーレムとアマツの決戦場ー


 レムは再び杖を振るう。

 その杖は氷の大陸に棲む、角を持つ魔兎

【レプス・コルヌトゥス】

の体毛と角で作られた、

雪を作り出し操作する魔法具

【紫毫の宝杖】〈しごうのほうじょう〉であった。

 

「雪は季節や天候により、様々な顔を見せる。

見せてやろう。千変万化の雪魔法【雪月花】。

氷魔法【細氷・銀影法師】」


 空気中で輝くダイヤモンドダストが、

アマツに幻影を見せる。

 数百体のレムの幻影に囲まれるアマツ。


 アマツは大きく息を吸い込む

レムの幻影がアマツに吸い込まれ、

次々と捕食されていく。


 レムの幻影を吸い尽くしたアマツは、

左腕が無いレムの姿を視認する。

 レムの左腕を喰らったアマツは、

あまりの美味に、恍惚の笑みを浮かべる。


「氷魔法【細雪】〈ささめゆき〉」


 レムが魔力を込めて杖を振るう。

 粉雪と化して、アマツの体内に入り込んだ

レムの左腕。

 それはアマツの肺の中で少しずつ大きくなり、

小さな雪となった。


「氷魔法【深雪】〈みゆき〉」


 レムが再び魔力を込めて杖を振るう。

 アマツの肺の中の小さな雪が、

アマツの体内の水分を吸い、大きな雪となった。

 体内の異変に気付き、

仰天したアマツは硬直する。


 レムは杖を地面に突き刺し、もたれかかる。

 顔には疲労の色が浮かぶ


「ホァ……。 アガッ!?」


 アマツの肺の中の大きな雪が、

一瞬で気化して消えた。

 気化熱により、アマツは一瞬で体内の

熱を奪われ、アマツの心肺は停止した。


「感謝するがいい。

苦しむことなく、一瞬で極楽浄土行きだ。

雪魔法【涅槃雪】〈ねはんゆき〉」


 動きが止まったアマツの体が突如帯電し輝き、

痙攣のように小刻みに激しく震えだす。


「雷魔法を利用した蘇生とシバリングか。

片腕で済まそうとは、少し浅はかであったか……。

グッ!?」


 再び動き出したアマツを見た、

レムの額に冷や汗が流れる。


 大きく息を吸ったアマツは、

レムに向けて息を吐き出す。

 金切音とともに勢いよく発射された、

その細く圧縮された熱い吐息は、

まるでレーザービームのように、

レムの腹を貫いた。



私は盟友としての責務を果たせたであろうか。

もし果たせたと思うのであれば、

成果に見合った評価をいただけないだろうか。


挿絵(By みてみん)


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