134 ヒロミチおじの冒険
ーお詫びー
現在、2つの仕事を掛け持ちでやっておりまして、本業副業ともに忙しいです。
6月と7月は、
小さな修正などが主な活動となります。
ヒロミチおじの冒険
「はぁっ。はぁっ。はぁっ。
レーちゃん、クーちゃん、どうか無事でいてくれ。」
レスベラとクルムがヌルと共に旅立って、
数日後のタカキタ村。
無人となり、
荒れ果てた村を駆け回る1人の老紳士がいた。
男の名はヒロミチ。
レスベラとクルムの母【サクラ】の父親の
弟であり、また勇者の子孫でもあり、
〈元〉最強の冒険者として活躍した男であった。
無人になったタカキタを一通り隈なく、
捜索したヒロミチは独り、
愛しい双子を捜す旅に出た。
向かったのは、博識なエルフが住む国であった。
エルフ国で双子の行方を捜すヒロミチは
不審者扱いされ、あわや十字騎士と
戦闘になりそうになる。
しかしなんとか、レイカと面会することに
成功したヒロミチ。
そこでヒロミチは、タカキタの人々は
魔王軍に拉致された可能性が高いことを知る。
最後まで話を聞かずに、
ダークエルフの里を飛び出したヒロミチは
自作のイカダを作り、海に出た。
太陽の方角だけを頼りに、
ヒロミチは2か月かけて旧知の仲である、
エルフの薬師クラリとセイジの元へ辿り着く。
「セイやん、俺は魔王の城に乗り込む。
金なら、これだけある。
ありったけのアイテムを用意してくれ」
「1人で行くのかい?
それは無謀だよ。
傭兵でも雇ったらどうだい?」
「大事な局面で逃走するかもしれんような戦力なら、
要らない」
ヒロミチは、クラリとセージの説得に
聞く耳を持たなかった。
セイジは“とっておきの品”をヒロミチに渡す。
「実はな、ヒロ君が売りに出した【七星桃剣】
は私が買い取っておいたんだ。
いずれ適切な者の手に渡るようにな。
あと、これはあまりオススメできないんだが。
命を賭けるつもりなんだろう?
犬死にするくらいなら……。
持っていきなさい」
セイジはヒロミチに【七星桃剣・真打】
と小さな箱を手渡す。
※闇のガチャ屋【特等の七星桃剣】は、
レプリカである。
「これは?」
ヒロミチは小箱を手に取り、首を傾げる。
セイジはヒロミチの表情を見て、説明を躊躇う。
しかし観念した様子で説明を始めた。
「……その箱はね。
オトやんの村の伝説のモデルになった、
玉のように美しい触手と若返りの能力を持つ
【竜宮玉手クラゲ】の魔力が込められた箱だ。
1分間だけ、望むだけ若返る事ができる。
ただし1分経つと、若返った分だけ加齢する
というデメリットがある。
そして使えるのは一度きり。
ヒロ君が全力を出せる年齢まで若返った場合、
1分後に待っているのは……。わかるね?」
「……ありがたい。
1分でケリを付ければ良いのだな?」
「はぁ……。」
セイジは頑固なヒロミチを見て溜息をつく。
「セイやん。クラさん。ありがとう。
俺は後悔などしないよ。
この命よりも大切な“宝”を取り返す為なのだから」
ヒロミチは薬屋を後にした。
ヒロミチは知らない。
レスベラとクルムは“魔王軍に連れ去られた”
のではなく“自分の意思で旅立った”ことを。
そして、元気に魔王軍の主力を蹴散らしながら、
魔王の元に向かっていることを。
この後、ヒロミチは広い海原を
3か月間、彷徨うこととなる。
島を見つけては上陸し、探索を続けた。
目的の地ではないことを知ると、
また航海に出る。
これを繰り返し、ほぼ世界旅行を成し遂げる。
そして最終決戦のあの日、
奇跡的に魔王の大陸へと辿り着くのであった。
「はぁっ。はぁっ。」
ヒロミチは走った。
海岸に散らばる、謎の兵器らしき残骸。
遠くに聞こえる戦の音と怒号。
腰痛のことなど、おかまいなしに走った。
命よりも大切な、娘たちの無事を祈って。
道中、ヒロミチは悪漢らしき者に
捕まりそうになっている、
幼女の姿を見つけてしまう。
幼女が発する言葉の中に、
探し求めていた人の名を聞いた。
ークルムおねえちゃんとやくそくしたんだもんー
ヒロミチは考えるより先に体が動いた。
悪漢の魔の手を受け止めたヒロミチは、
直感で悟った。
“この悪漢は並々ならぬ闇の魔力で操られている”
七星桃剣のチカラで闇のチカラを
叩き斬ったヒロミチ。
ヒロミチは悪漢の後ろに控えていた、
異形の者と目が合った。
コウモリのような翼と、吸血鬼のような顔。
悪魔が顕現したような姿であった。
異形の者の口から、またしても
探し求めていた者の名を聞いた。
「この始祖の魔王のチカラが!?」
「……そうか。貴様が魔王か」
ヒロミチは覚悟を決めた。
自分が命を賭して戦う時が来たことを。
しかしヒロミチは知らない。
目の前にいるのは魔王ではないことを。
死霊術を使って、過去の魔王の力を
顕現させている、魔王の配下でしかないことを。
「お嬢ちゃん。クルムお姉ちゃんとの話、
あとで詳しく聞かせてくれるかな」
ヒロミチは幼女を魔の手から救い、
異形の者と対峙する。
しかし剣を構えたところで、
腰痛が再発してしまう。
腰痛で顔をしかめるヒロミチの元に、
2人の老人が駆け寄る。
ヒロミチは戦場で偶然居合わせた、
かつての仲間達と手を取り合う。
「「「この1分間に全てを賭ける。
若返る年齢は40歳」」」
ー戦後ー
英雄として名を馳せた双子の美人姉妹。
命懸けの旅の中、たくさんの“勇ましい男達”
と出会ってしまった2人にとって、
お見合い相手の貴族のボンボンは、
あまりに退屈な相手であった。
クルムの雨を浴びたヒロミチは、
100歳の肉体から60歳の肉体に戻っていた。
冒険者を引退した、ヒロミチの冒険は続いた。
娘たちの結婚相手を探すという、
終わりが見えない旅は続いた。
強大な古龍も伝説の悪魔も、
木剣も心も折ることなく屠ってきたヒロミチ。
唯一、ヒロミチの心を折ったのは、
この双子だけであろう。
晩年にヒロミチは自身の手記に、
こう書き残している。
手記と共に残された撮影魔法具により描かれた、2枚の絵。
ーどんな高難度クエストよりも難しかった。
でも私は、やり遂げたんだ。
かわいい2人の娘の花嫁姿を、
生きて見届けることができたよー
【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】
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お! そこのオマエ、なかなか強そうだナ!
ヨシ!
アタシとこっそり、ナイショの稽古しようゼ!
ポイント? そんなんいいからサ!
早く遊ぼうゼ!
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