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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
123/138

123 真・聖女の詩吟【天泣】 真・天衣無縫の舞【一掬(いっきく)】・酒涙雨(さいるいう)の羽衣

123 真・聖女の詩吟【天泣】

真・天衣無縫の舞【一掬いっきく】・酒涙雨さいるいうの羽衣




魔王「ギリーの魔法か!

  させぬ!

  させるかああああああああああああ!!」


 魔王は鬼のような形相でリキむ。

 青薔薇の花びらが2枚、3枚と散り霧散する。


 ヌルは銀の女神像のペンダントを取り出し

握りしめ、魔力を込める。


ヌル「時間が無い。

  じゃあ皆、あとは頼んだ。


  ナナ、おかえり。

  そして約束守れなくてゴメン。

  さよならだ。


  蘇生魔法【死者転生】」


 ヌルの体が眩い光に包まれる。

 銀の女神像に付着した、ナナの血も輝き出す。

 光が収まると、ヌルの姿がナナに変わっていた。


ナナ「あああっ!!」


 ナナは顔を手で覆う。


ナナ「あれ? 炎は? ここはどこ? 

   アナタは?

   背中の傷! あれ、痛く無い。

   治ってる!? なんで!?

   なんで私、鎧を着てるの?

   このにおい、ヌルの鎧?」


挿絵(By みてみん)


 ナナを抱き抱えるクルムの顔を見て、驚くナナ。 

 クルムの目は赤くなっている。


 ナナは死の直前の状態で復活した。

 ギリーに背中を刺され、

炎の魔法を浴びせられる直前の状態であった。


クルム「アナタがナナね。時間が無いわ。

   よく聞きなさい。私たちはヌルの仲間。

   封印されたアナタを助けに来た。

   ヌルは今、1人で

   追っ手の賢者・ギリーの相手をしているわ。


   アナタの役目は、あの縛られている魔王を

   缶に封印すること。できるわね?」


ナナ「わかりました。」


 ナナは泣いているレスベラと、うまーるを見る。

 ナナは直感で悟る。

 〈ヌルの身に何かがあった〉と。

 そして自分の手に

何かが握られている事に気付く。

 それは、銀の女神像の首飾りと、

ヌルが魔王から奪った石の首飾りであった。


 ナナは石の首飾りに見覚えがあった。

 しかし、こんな状況である。

 とりあえずナナは考察をやめ、

2つの首飾りをポーチにしまい、

ナナを見下ろすレスベラとクルムの顔を見上げる。

 クルムとレスベラに違和感を覚えたナナは、

レスベラとクルムの手をとり握る。


 レスベラとクルムが輝き出す。

 それは、ナナの第二のスキル【浄化】であった。

 レスベラとクルムにかけられていた呪いが

祓われ、真の力が覚醒する。


レスベラ「なんだこれ? 

    なんだかチカラが湧いてくるゾ。

    それと、なんだか無性に踊りたいゾ。」


クルム「これは!? まさか!

   あなた、解呪のスキルがあるの?」


ナナ「浄化というスキルをもってます。

  なんか2人を見たら、

  〈やらなきゃ〉って思って。」


クルム「まったく……。

   なんでそういう大事なこと言わないかな。

   しかし、これまでも聖属性魔法使いの人

   とたくさん出会ったけど、

   こんな強力な使い手はいなかった。

   アナタは特別な何かを持っているようね。


   まぁいいわ。とにかくアレを

   封じてちょうだい。アナタにしかできない。」


レスベラ「忘れてたんじゃね?

    ヌルらしいじゃねえかよ。

    パンツはいてないこと忘れてるとかよ。」


ナナ「パンツ? ヌルが何か迷惑を? 

  ごめんなさい……。」


 クルムは項垂れている、うまーるの肩を叩く。


クルム「うまーる。シッカリしなさい。

   ナナのこと、頼んだわよ。

   なんでもいいから、空き缶をナナに。


   ……私たちは、あの化け物の相手を

   しないといけないみたいね。


   出てくるわよ!

   ゴリラ! 全力でやっちゃいなさい!!」


レスベラ「おうよ。ヌル、仇は取るぜ!」


 レスベラを殴る、クルム。


クルム「余計な事を言わないで、準備しなさい!」


 ナナの中の疑念が確信に変わる。


ナナ(そっか。ヌルはもう……。

   泣いてる場合じゃない。

   私は私にしかできないことを、やらなきゃ。)


 うまーるは缶の中の保存食を捨て、

空き缶の中を拭く。

 魔王を縛る最後の薔薇の花びらが散った。


魔王「努力の甲斐も虚しく、

  封印の勇者が復活したか。

  こちらも奥の手を使うしか無いようだな。」


 魔王は飴玉のような魔石を飲み込んだ。

 土下座のような体勢で両手を地面につく魔王。

 魔王の体が大地に溶け込み、呑み込まれていく。


ナナ「魔王が土の中に!? 

   それと重量オーバー!? 

   姿を捕捉できない。

   これじゃ封印できない!」


レスベラ「重量オーバーか。クルム!

    重さ500キロって、どんくらいだ?」


クルム「アンタ5人分よ。」


レスベラ 「よし、わかった!」


うまーる「レスベラお姉ちゃん……。」


 クルムが鳴鳥の子守貝を握りしめると、

貝が輝き出した。

 貝に埋め込まれた宝玉から眩い光が溢れ、

クルムの背に光の翼が現れ、クルムは飛び立った。

 クルムの背後に朝日が昇り、

その姿はまるで、後光が射した女神のようだ。


 レスベラが履く水のタラリアに装着されている、足珠が輝きだす。

 レスベラの全身にタトゥーが浮かび上がる。

 スネのあたりには翼の紋様が。

 腕には流れる流線の紋様が。

 肩周りには渦潮のような紋様が浮かび上がる。

 レスベラが踊り出す。

いつものような剣を振り回す動きでは無く、

バレエダンサーのような華麗な舞であった。

 ときおり、両手で

水をすくうような動きと、

顔を洗うような動きを見せる。


 上空に滞空するクルムは胸に手を当て、

歌い出す。

 今までのクルムとは別人のような、

キレイな歌声である。

 クルムの歌声とともに、

光り輝く雨が地上に降り注ぐ。


挿絵(By みてみん)

 

 クルムの歌声は子守貝の音叉効果により、

大陸全土に響き渡る。


うまーる「クルムお姉ちゃん、すごいんだよ……。」


ナナ「この雨、すごく温かい。」


ー♪缶の中 胸中 闇深し

  戦友 伴侶 袂別つ

  絶望 後悔 再起誓うー


 18年間抑圧された、

レスベラとクルムの魔力が暴走する。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーー魔王城前広場ーー


 魔王の元へと向かう、

こまちゅ達5人が異変に気づく。

 改造蟻兵や、改造飛竜キメラの亡骸が輝き出し、

土に溶け込んでいく。


 こまちゅが異様な雰囲気のする方角を見ると、

魔王とヌルが戦っていた場所のすぐ近くの、

巨木が不気味な輝きを放つ。


こまちゅ「この魔法は! 

    それに、あの木は、まさか!

    神話の〈生命の樹〉なのか!? 

    大地に染み込む改造生物。

    この魔力。……禁呪か。」


 こまちゅ達の元にもクルムの歌声が届く。


ー♪波の音 指折り数えて

 不撓不屈の 覚悟秘める

 雌伏のときを 糧にするー 


 こまちゅ達が立つ場所にも、雨が降り始める。

 満身創痍の5人に雨が当たる。

 雨が当たった場所に、文字が浮かび上がる。


  ーー癒ーー ーー回復ーー


レイカ「この歌。クルちゃんなの!?

   これは! 傷が癒え、スタミナと魔力が

   回復してる!? ヨーちんの泡みたいな?」


こまちゅ「この雨、天が泣いておるようだ。


    何があったというのだ。

    この土壇場で、

    弱体の呪いが解かれたのか!?」


 ゼットが変わり果てた姿の

氷柱にも雨が当たり、文字が浮かび上がる。


 ーー解呪ーー


ヨーリー「温かいわね。元気が出る。」


ソナ「これほどの範囲に回復魔法……。すごい。

  でも、とても悲しそうな歌声。

  私の予知が的中してしまったのね。

  ヌルさん……。」


こまちゅ「ということは、

    封印の勇者が復活したか。急ぐぞ。」


 ソナは遠くの空に浮かび上がる、

光の翼を持つクルムを視認する。


ー♪離した手の 温もりを忘れえぬ

  歩む 茨の道ー


 りおんは、あちこちに散乱する

遺体の異変に気づく。


 遺体に雨が当たった箇所に浮かび上がる文字。


  ーー生ーー


 損傷が少ない遺体から順に、目覚め始める。

 りおんは近くの死体を鑑定する。


 ステータスの〈死〉が、〈瀕死〉に変わり、

やがて回復して目覚める。


 次々と起き上がる、両軍の負傷者と戦死者。


 ーまた殺し合いに発展するのか?ー


 という、こまちゅ達の危惧をよそに、

抱き合い、涙を流し喜ぶ、両軍の兵たち。



りおん「死人が生き返ってる!!

   しかも、味方だけじゃない!

   敵も回復してるし、蘇ってる!」


こまちゅ「範囲蘇生だと!?

    そんな魔法が……。」


 起き上がった敵と味方は、

武器を手に取る事なく、

抱き合い涙を流す。 

 憎しみを上回る、喜びに包まれる戦場。


ヨーリー「戦争が止まったワ……。奇跡ネ。」



「我々の、人智を超える事態が

起こっているようだね。

あれを見なさい。」


 こまちゅが振り向くと、森の薬屋の主人セイジと

女将のクラリが立っていた。

 こまちゅたちは、セイジが指差す先を見る。

 生命の樹に、たくさんの光る果実が実り始める。


こまちゅ「先生、なぜここに!?

    それに、あの実は……?」


クラリ「女神様の啓示があってね。」


セイジ「皆、急ぎ加勢しなさい。

   魔王が、より恐ろしいものへと

   変わろうとしている。

   あの巨木は、神話に登場する生命の樹。

   そして、あの光る果実は

   【非時香菓〈ときじくのかぐのこのみ〉】

   たくさんの改造生物を糧に、

   悍ましいものが生まれようとしている。


   森魔法【世界樹創生】」


 セイジは杖を地面に突き刺し、魔力を込める。

 杖はみるみる成長し、巨木となる。


セイジ「枝に乗りなさい。送り届けよう。」


「「「おっと! 

 俺たちを忘れてもらっちゃ困るぜ!!!」」」


レイカ「アンタたち!!」


 声がする方へ振り返ったレイカの頬を、

一筋の涙が伝う。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ー♪いつかくる 目覚めの時を待つ

  続く 果てなき旅路ー


 響き渡るクルムの詩吟。

 雨の中、神秘的な舞を披露するレスベラ。

 レスベラの涙とクルムの雨、

そして水のタラリアの水が混ざり合う。 

 水がレスベラの体を覆い、衣装となった。

 舞を終えたレスベラが纏っているもの。

 それは、海の底のように深い青の

水が織りなす羽衣であった。


挿絵(By みてみん)


レスベラ「酒涙雨の羽衣か。

    初めて作った防具なんだけどな。

    なんか、昔から作り方を

    知ってたみたいだ。」


 レスベラは異様な気配を放つ

生命の樹を見据え、真剣な表情になる。


 生命の樹に実った果実が地に落ち、

集まり一つになる。


挿絵(By みてみん)


 大きな丸い卵のようになり、

中から食い破るように巨大な生物が現れた。


レスベラ「1 、2、…… 9つの頭。

    竜か。

    あの竜王の化石に肉を付けたのか。

    あれは長い毛か? モッフモフなのに、

    全然かわいくねーな、オイ。


    魔王と合体した竜王のキメラ。

    魔竜王ってとこか?


    剣士じゃなくなっちまったのは残念だが、

    行くか!

    ヌル、約束を守るぜ。

    コイツで魔王をブッタ斬るからよ。

    見ててくれよな。」


 レスベラはミヅハノメを握りしめ、話しかける。

 レスベラはさらに七星流転を抜き、

チカラを込めた。

 七星流転から7体の龍が現れた。

 龍はそれぞれ、

赤や黄色などの虹の原色の色をしている。

 龍が集まり虹となり、虹が橋となり、

魔竜王までの道となる。

 レスベラは虹の橋に飛び乗り、

魔竜王目がけて走り出す。


 虹の橋を駆けるレスベラに向け、

魔竜王の9つの口から炎が放たれた。

 レスベラは正面からモロに9発の火球を喰らう。


うまーる「レスベラお姉ちゃん!!」


 爆発と煙を突き破り、

レスベラは虹の橋を駆け抜ける。

 レスベラが纏う水の衣が炎のダメージを和らげ、

また、一部焦げた髪や皮膚などは

クルムが降らす雨が含まれた衣のチカラにより、

一瞬で再生した。


魔王「炎が効かぬか。

  ならばバラバラに刻んでくれる。」


 魔竜王の体から伸びる、体毛のような

無数の触手がレスベラを捕えようとする。

 その姿は獲物に手を伸ばすクラゲのようだ。


 レスベラは右手にミヅハノメ、

左手に七星流転を握りしめ、

さらに変形した水のタラリアが、

インラインスケートのような形状に変化した。

 ローラーのような部分は

回転する水の刃物となっている。


 レスベラは舞うような剣技で、

4本の剣で迫り来る触手を切り刻む。

 まるで機械で野菜をスライスするかの如く、

魔竜王の触手を切り刻むレスベラ。

 水飛沫が舞うような、輝く青い軌跡と

虹のような軌跡が朝焼けの空に煌めく。


レスベラ「今なら何回でも、使える気がする!!

    【其龍架空如虹】〈ソノリュウ・

    ソラニカカルニジノゴトシ〉


 七星流転から虹の龍が放たれ、

魔竜王の体を貫く。

 それは、レスベラが先代勇者から継承していた

魔法剣技であった。

 盗賊王ゾンビ戦以来、

1度も再現できていなかった技である。

 虹の龍に貫かれた魔竜王に、

7属性の魔法ダメージが入る。


竜王「振動、炎熱、光線、暴風、流水、氷雪、引力

   のダメージが一度に!?

   なんだこの魔法は!!」


 魔竜王は苦痛に顔を歪めながらも、

無数の触手をレスベラに向けて放つ。


 レスベラは華麗な舞いで

襲いかかる触手を切り刻む。


ー♪悠久の時を経た 石のように

  澄んだ心に 光る希望ー


魔王「なぜだ! 再生が遅い!! 

   灼けるような痛み。この雨か!?

  ……歌魔法。 あの翼の女か!!」


 魔竜王のいちの首が、

クルムに向けて伸びる。

 クルムの背後に、セイジが創生した

巨大樹の枝が伸びる。

 無防備なクルムを守るために、

勇士たちが次々と駆けつけた。


 あわやクルムが噛み殺される、

そのとき、世界樹の枝に乗った男が枝を蹴り、

クルムの前に躍り出た。

 男は全身に風を纏い、

迫り来る竜の顎に拳を放つ。


ゴリアシ「俺のお気に入りに

    唾つけるんじゃねえ!! 

    【テンペスト・アッパーカット】」


 壱の顎が砕け、跳ね上がる。

 剣に風を纏った剣士が枝を蹴り、

巨大な風の刃で壱の首を斬り落とす。


フレームアイ「触手プレイと

      ペロペロが得意ってか!?

      残念!

      触手でお触りも禁止だからな!!」


ー♪遠い異世界の 日常棄てる

  炊事 補助 おひとよし

  惹かれる 僕たちがいたー


 魔竜王はクルムに向けての首も伸ばす。

クルムの魔法により蘇生され、

駆けつけた勇士たちが

次々とクルムに迫る首に渾身の技を叩き込む。


 こまちゅの金鞭が弐の首を捕らえた。

 クルムの雨により蘇生し、

ヒト型に戻ったゼットが

絶妙に、こまちゅの攻撃に合わせる。

 ゼットが白い息を吐くと、

金鞭もろとも弐の首を凍結させる。


 高い枝から飛び降りた4人のドワーフ銃士が

 凍結した弐の首に

全力の物理攻撃を叩き込み粉砕する。


ムラ「嬢ちゃん、助かったぜ!

  この御礼はカラダで払うからよ!!」


 下から伸びた枝が4人をキャッチする。

 ムラの頭に、飛んできたハンマーが当たり

ムラは倒れた。


エミー「このバカ!! 

   バカは死んでも治らないね!!!」


 倒れたムラを[やれやれ]といった表情で

抱き起こす、ヨルグとカズチョン。


アリー「父上……。

   先ほどの、私を守ったカッコよさが

   台無しですよ……。」


 さんの首がクルムに向けて火球を放つ。

 クルムは泡と氷のシールドに護られた。


 ほえほえ、ヨシビト、ゼルファが放つ

氷の魔法で凍結される参の首に

ヨーリーの爆発の泡が炸裂し、参の首を粉砕する。


ほえほえ「いまいちど、盟友としての

    責務を果たす機会をいただき、

    感謝いたす。」


ヨーリー「クルちゃん! すごい歌魔法じゃない!

    今度やり方教えてよネ♪」


 よんの首がクルムに迫る。

 ヘンゼルがクルムの前に立ち、

風を纏ったイージスの盾で

肆の首の噛みつきを受け止め、

追い風のチカラで跳ね退ける。


ヘンゼル「一度捨てた命。今度は貴方のために。」


ー♪か弱き者たちに 手を差し伸べ

  世界動かす うねりとなる

  導かれし出会いと いとま乞い

  まわる 物語ー


 たくさんの青く輝く、小鳥のような炎魔法が

一斉に海に飛び込む、海鳥の群れの狩りのように、

次々に肆の首に向けて掃射される。

 炎に強い、肆の頭部が丸焦げになる。

 風を纏った杖を握る、アカマル。


アカマル「……ふむ。たしかに圧縮すると

    威力が上がるようだ。」


レイカ「アタシの風を使ってるんだから、

   強くなって当たり前っしょ!!」


 クルムの首に迫る、

の首の口に刺さる竹槍が

伍の頭を押し返す。

 巨大な光の刃が、

魚の開きのように伍の首を縦に両断する。


マーボー「ヌル……。

    俺より先に逝きやがって。

    しかも、カッコいいじゃねえかよ。

    ナナの身代わりたぁよ。

    俺が下手な死に方できねぇじゃねえかよ。

    また肩が重くなっちまったぜ。」


エッジ「すまない、ヌル殿。

   私が不甲斐ないせいで。」


 クルムに迫る、ろくの首に落雷が落ちる。

 黒焦げになった陸の頭の上に立つ、

セイレーンの男が陸の頭に槍を突き立てる。

 竪琴のような弓を持つセイレーンの男が、

突き立てられた槍に、追撃の雷の矢を降り注ぐ。


キムスケ「遅くなってすまない。」


 クルムに迫るしちの首に、

強烈な波動が浴びせられ、爆発する頭部。

 ともっちょの音の衝撃波と

ソナの電磁波による攻撃であった。


ともっちょ「私も練習してみようかな、それ。

      雷魔法かぁ。苦手だなぁ。」


ソナ「ヌルさん、見てくれましたか。

  私、強くなりましたよ。」


ー♪思い立ち ひとり死地に赴く  置き去りにされても

  行至る 仲間たちがいた


魔王「おのれ! 

  ならば、封印の勇者を

  先に始末してくれるわ!」


 はちの首がナナに迫る。


ナナ「私は、護られるだけのお荷物じゃない!!」


 ナナは地面に手をつき、魔力を流し込んだ。

 巨大な土の腕を作り出し、

捌の頭を殴り飛ばす。

 そのまま捌の首を掴み、ビタンビタンと

布団を叩くが如く、何度も地面に叩きつけた。


 トライデントを握りしめた騎士が踏み込み、

捌の頭を串刺しにする。


挿絵(By みてみん)


アッチ「勇者様。

   ここからは、私が御守りいたします。」


 動かなくなった捌の頭を目がけて、

狂喜乱舞の金髪エルフが銃を乱射する。


 イカリング「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっ

      ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!」


 蜂の巣になる、捌の頭。


ー♪反撃のときは今

  今宵 空を紅く染める

  暁月夜 陽は上り 月は沈む

  離した手 今一度手繰り寄せ

  紡ぐ 物語ー


 触手を殲滅したレスベラが

最後のきゅうの首に詰め寄る

 焦り、火球を放つ、玖の頭。

 レスベラは火球を斬り上げ切り裂き、

返す刀で玖の首を真っ向から切り伏せる


 レスベラは力を使い果たし、

虹の橋が消え、落下する。

 近くにいたゴリアシが全力で走り、受け止める。


ゴリアシ「……ふぅ。危ねえ。

    カッコよかったぜ。ベラちゃん。

    困ったぜ。

    これからはもう、他の女が

    目に入らなくなっちまうぜ(大嘘)」


ー♪あかつき射す 陽は照らせれど

  キミが夜渡る 月の隠らく 惜しも

  空は晴れても ボクは晴れぬ

  頬を濡らすは 雨ー


 クルムも力を使い果たし、

光の翼が消えて落下する。

 フレームアイが駆け込み、受け止める。


フレームアイ「ありがとう、姫。

      死んでいた俺たちを

      復活させてくれたんだってな。

      これからは一生、

      キミだけに愛を注ぐよ(大嘘)」


 全ての頭を潰された魔竜王の体が、

雨により崩れ始める。

 崩れて泥のようになる肉体。

 その中心には

人型に戻った魔王の姿があった。


 クルムの魔法による、雨が止んだ。

 魔王はフラフラしながらも立ち上がる。


魔王「おのれ。

  封印の勇者さえ殺せば……。

  あとはなんとでもなる!」


 魔王は自身の左腕を千切り、

槍投げのように、ナナへ向け投げる。

 亜音速で放たれた腕は、

遅れて反応したアッチの手をすり抜け、

真っ直ぐにナナに向かう。


 優れた動体視力のうまーるが反応し、

うまーるにタキサイキア現象が起きる。

 うまーるはゆっくり動く時の中で考える。


うまーる(ここだ。ここなんだよ。

    ソナさんの予言は。

    私が、やらなくちゃいけないんだよ。


    勇者様。

    ヌルお兄ちゃんが、命をかけて助けた

    大事なひと。

    きっと、わたしはこのときのために

    生まれて、生きてきて、

    ここまで来たんだよ。


    マヌルお兄ちゃん、ごめんねなんだよ。

    ……できるなら、褒めて欲しいんだよ。

    よくやったって。

    自慢の妹だって。


    そうしてくれたら、

    わたしも嬉しいんだよ。)


 うまーるは全力でナナに体当たりをする。

 倒されたナナが見たもの。

 それは串刺しになり、口から血を流す

うまーるであった。

 現実を視認したナナは絶叫する。


ナナ「イヤアアアアアアアアアアア!!

   うまーるさん! うまーるさん!

   今、治癒の魔法をかけるから!!」


 うまーるの胸に突き立てられた

魔王の左腕は背中を突き破り貫通し、

地面は赤黒く血で染まる。

 胸からの出血は緩やかで、ほとんど無い。


 即死であった。




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