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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
122/138

122 おかえり、さよなら

122 おかえり、さよなら


レスベラ「ああああああああああ!!」


 目の前で額のど真ん中を貫かれた

ヌルの姿を見た3人。

 合流が遅れた事を悔やむレスベラは

涙を流しながら魔王に斬りかかる。

 金剛杵を失った

うまーるは、レスベラに少し遅れて、

火雷を握りしめ涙を流しながら魔王に飛びかかる。


クルム「まだ助かる可能性はある!

   落ち着け2人とも!

   うまーる! 攻撃よりも

   エルフの秘薬の準備を!」


 クルムは扇を開く。

 うまーるはクルムの言葉を聞き、硬直する。

 魔王は重力の魔法を3人に向けて放つ。

地べたに磔になるレスベラと、うまーる。


レスベラ「これか! ヌルが動けなかった魔法は!

    剣士なら! 漢なら剣で受けろよ!!」


うまーる「ううう。ごめん。ごめんねなんだよ。

    わたしのせいで。

    わたしがモタモタしたせいで……。

    ヌルお兄ちゃんが。ううう……。」


クルム「まったく! 金縛りがあるって

   忠告もらってるのに、

   考えなしに飛び込んで。

 

   でも、結果オーライよ。ナイス囮だわ。

   金縛りは、やはり魔法だったわね。」


 魔王は苦悶の表情のあとに、

驚きの表情を見せる。


魔王「重い。 ……これは、我の魔法が!?

  あれは! あの鏡は!!」


 クルムは右手で開いた扇で隠した、

左手に持つ鏡を魔王に見せて微笑む。


魔王「問題ない。

  自身に反重力魔法をかければ……。

  む!? 体が動かぬ!」


クルム「特濃の麻痺毒よ。感謝して味わいなさい。」


 クルムは無色の麻痺毒を風に乗せ、

魔王に吸わせていた。


魔王「こんな毒などすぐに! むっ!?」


「みんな、よく間に合ってくれた。

俺たちの勝ちだ。」


 ヌルの手が魔王の足首を掴む

 額のど真ん中を貫かれ、血を流すヌルは

腕輪を嵌めた左手で魔王の足を掴んでいた。


魔王「きさま! なぜ生きている!?」


レスベラ「生きてたか!」


うまーる「ヌルお兄ちゃん! よかった!!」


クルム「まったく呆れるわ……。

   今度はどんなトリック使ったのよ。」


ヌル「青薔薇の縛鎖発動」


 ヌルの手首に嵌められていた、

腕輪の形を成した青薔薇の蔦が解け、

魔王の体に巻きつき縛り上げた。 

 魔王の胸のあたりに大きな青い薔薇の花が咲く。


 ヌルに駆け寄り介抱するクルム。

 遅れて、重力から解放されたレスベラと、

うまーるが飛びつく。


レスベラ「死んだかと思ったぜ、よく耐えたな!

    うおっ! 頭に穴空いてるぞ。

    本物の傷じゃねえか!」


うまーる「よかったよ。よかったんだよ!

    ああああああああん!!


    ……あのね、ごめんね。

    エルフさんのお薬ね、

    マヌルお兄ちゃんに使っちゃったんだよ。」


ヌル「大丈夫だ。

  すげー痛いけど、たいした傷じゃないんだ。

  ※左脳と右脳の間には、少しだけ

  隙間があるんだ。

  ドンピシャでその間を通せば

  致命傷にはならないんだ。


  魔王が使う細身の剣なら、

  イケると思ったんだ。」


クルム「まったく。よく考えるわね。

   ほら、早く封印しなさい。

   花が散ったら、

   アレがまた自由になるんでしょ。」


魔王「ぐあああああああああああ!!」


 縛られた魔王が苦悶の表情で抗う。

青薔薇の花びらが一枚、散った。


ヌル「ごめん。

  缶詰封印と石鉢は、

  ギリーに使っちゃったんだ。」


クルム「はぁ!? アレどうするのよ!?」


ヌル「最後のお願いがあるんだ。

  これから、俺がナナを復活させる。

  ナナをサポートして、

  魔王を封印してほしいんだ。


  ……いろいろあったけどさ、

  いつか平和になったら……。


  いつの日か、皆で集まってさ、

  美味しいもの囲んでさ、お酒飲みながら、

  笑い話にでもして、

  思い出してくれたら嬉しいな。


  たまにでいいからさ。

  そんな、みんなの幸せな顔をさ、

  俺も見ていたいし。

  やっぱり俺は、戦っているときの顔より、

  楽しそうな顔をしてる

  3人の顔の方が好きだしさ。

  俺が作った料理を、美味しそうに

  食べてくれてるときの顔とかさ。


  ……。ごめん。

  時間ないから、もう行くね。

  ナナをよろしく頼む。」


 クルムは察し、言葉を返す。


クルム「……もう決めたんでしょ。

   後悔はないみたいね。

   世界のためになら、とか

   かっこいいとか思ってんの?

   まったく。理解できないわ。」


レスベラ「何言ってんだ?

    ずっと会いたかったんだろ? 

    ヌルがサポートしてやれよ。」


 レスベラは不思議そうな顔をしている。


うまーる「ヌルお兄ちゃん……?」


 うまーるは、なんだかわからないけど、

嫌な予感がする、といった表情だ。


ヌル「世界の平和のために、とか、

  そんなカッコいい話じゃないよ。

  何よりも大事な人なんだ。

  命よりも大事な人のためなんだ。」


魔王「ギリーの魔法か!

  させぬ、させるかあああああああああ!!!」


 魔王は鬼のような形相でリキむ。

 青薔薇の花びらが2枚、3枚と散り霧散する。


 ヌルは銀の女神像のペンダントを取り出し

握りしめた。


ヌル「時間が無い。

  じゃあ皆、あとは頼んだ。


  ……ナナ、おかえり。

  そして、約束守れなくてゴメン。

  さよならだ。


  蘇生魔法【死者転生】」


 ヌルの体が眩い光に包まれる。




※ブレインスルーショット


 左脳と右脳の間には隙間がある。

 その隙間であれば、

頭を貫通しても致死ダメージにはならない。

過去に頭を銃で撃たれたり、

建設現場の事故で

頭に鉄筋が貫通したりしても、

生き延びた人が存在する。


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