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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
118/138

118 魔王軍知の四天王 究極生物兵と死霊術

本編最終話は127話になりそうです。

118 魔王軍知の四天王

究極生物兵と死霊術


マヌル「うまーるか。大きくなったな。

   すまない、情けない兄を許してくれ。

   こうでもしないと、

   お前を傷つけてしまいそうで……。


   ……頼みがある。

   トドメを刺してくれないか。


   この指輪を壊せば死ねるはずだ。

   俺が俺でいられるままで死にたい。

   最期に兄でいさせてくれないか。」


うまーる「お兄ちゃん!

    必ず助けるんだよ。

    もう少し我慢してね。」


 うまーるは【ローレンツショット・星】を使い

マヌルに嵌められた指輪を破壊した。

 隷属の指輪破壊のペナルティ“死の呪い”が

発動し、マヌルに襲いかかる。


マヌル「グアアアアアアアアア!!

   ……あ、ありがとう。

   辛いことをさせてごめんな。

   幸せになれよ、うまーる……。」


 マヌルの瞳が閉じ、一筋の涙が溢れた。


 うまーるはポーチから竜舌花の蜜を取り出した。

 レイカから賜った、どんな傷でも

たちどころに治るというエルフの秘宝であった。


うまーる「みんな。ごめんねなんだよ。

    大事にとっておいた、貴重なお薬、

    使わせてもらうんだよ。」


 うまーるがマヌルの口に秘薬を流し込む。

 マヌルの体が光に包まれ、

みるみる傷が修復していく。

 また、魔獣のように改造された巨体が

みるみる小さくなり、身長2メートルほどの

ヒト型の姿に戻った。

 傷が全快してもマヌルは目覚めない。

 マヌルの心音を確かめる、うまーる。


うまーる「そんな! 

    心臓が動いていないんだよ!!

    お兄ちゃん! 起きて!

    起きて欲しいんだよ!」


 動かないマヌルの上で泣き崩れる、うまーる。


「その薬で死の呪いは祓えぬ。

今こそ願いを叶えてやろう。

ホタル達が世話になった礼だ。」


 聞き覚えのある声のほうに振り向く、うまーる。

 そこにはホタルの精霊が立っていた。


 精霊はマヌルの胸に手を充てて、

柔らかい光を放つ。


精霊「ここは妾に任せて先に行け。

  ヌルと名乗った其方の仲間は

  命を懸けた策に出る。

  其方の助けを必要としておるゆえ。」


うまーる「ヌルお兄ちゃんが!?

    精霊様。お兄ちゃんをおねがいします。

    お兄ちゃん。コレを置いていくんだよ。

    元気になったら、ヌルお兄ちゃんを

    助けて欲しいんだよ。」


 うまーるは雷切で鉄格子を焼き切った後、

金剛杵と雷切をマヌルの側に置いた。


 建物の外に出た、

うまーるは血の匂いを察知する。

 血の足跡からレスベラの匂いを嗅ぎ取り、

跡を追う。


 足を引き摺りながら、ヒョコヒョコ歩く

レスベラを発見する、うまーる。


うまーる「お姉ちゃん! 酷いケガなんだよ!

    止血しないとダメなんだよ!」


レスベラ「お。うまーる。無事だったか。

    って! 血だらけじゃねーか!」


 レスベラは、マヌルの血で染まった

比礼を見て驚く。


うまーる「ああ! 大丈夫なんだよ。

    これは、わたしの血じゃないんだよ。

    止血するんだよ! 座るんだよ!」


レスベラ「いやー、足を痛めちまってな。

    そういや、うまーるの兄ちゃんっぽい奴を

    見つけたぞ。

    殺さないで寝かすの大変だったぜ。」


うまーる「え? マヌルお兄ちゃんだったら、

    さっき会ったんだよ。

    今ね、精霊さんが治してくれてるんだよ。」


レスベラ「精霊? 

    まぁ、兄ちゃんに会えたんだな。

    よかったナ! 

    やっぱりアノオンナ、

    ニセモノじゃねえか! 紛らわしい。」


 そんなアホみたいな会話をしてる2人を

クルムが発見し、合流した。

 額から流血し、両足からも血を流す

レスベラを見たクルムは、ため息をつく。


クルム「まったく。その顔と足。また負けたの?」


レスベラ「おー!クルム、いいとこに来たな!

    治癒の魔法頼むわ! 

    それと、負けてねーよ!


    ちょっとさ、うまーるの兄ちゃんに

    似てる敵だったからさ、

    剣を使わないで戦ってたんだよ。

    殺したらマズいと思ってさ。

    大変だったんだゼ。」


クルム「アンタ、うまーるの兄ちゃん

   知らないでしょ。

   まぁいいわ。ほら、足を見せなさい。」


 クルムはレスベラに治癒魔法をかける。


うまーる「あのね、精霊さんの話だとね、

    ヌルお兄ちゃんが危ないんだよ。

    早く助けないといけないんだって。」


クルム「あの陰キャメガネの賢者が相手か。

   たしかに、危険な罠を張ってそうだわ。

   ゴリラ! 歩きながら治療するわよ。

   肩貸してあげるから。」


レスベラ「急がないとだな。よし。

    痛ーけど歩くわ。」


    レスベラはクルムと

    うまーるに支えられながら歩き出す。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーー魔王城前広場ーー


 国連軍と魔王軍本隊が激突する戦場。


 こまちゅがチカラを振り絞り金鞭を振るう。

 それを巨躯の2体の鬼人が大楯で受け止める。


こまちゅ「なかなか、やるではないか。」


レイカ「コイツらはタフそうだから、

   魔法で攻めるよ!」


 レイカが放つ暴風、ヨーリーが放つ泡の爆弾、

キムスケが放つ落雷に、アルベルトが放つ火の矢が魔王軍を攻め立てる。


 徐々に国連軍が魔王軍を押し始める。


魔王軍兵「ディエヌ様!

    敵の魔法兵が強力です。

    魔法耐性防具を持つ

    兵達がやられ始めております。」


 ディエヌと呼ばれた者は小柄な老人であった。

 その男は魔王軍知の四天王の一角であり、

改造生物兵や合成生物兵、肉体を異常強化させる、

強化の秘薬を生産するスキルを持つ者であった。

 これまでのヌルとの戦いで

作品をことごとく打ち破られ、

煮湯を飲むような思いをした者であった。


ディエヌ「まったく。

    ワシらは戦闘要員ではないというのに。

    役立たずの穀潰し武将どもめ。

    仕方ない。奴らへの冥土の土産に、

    究極の生物を見せてやろうかの。」


 ディエヌは自身の腕に注射を刺し

薬物を注入する。


 小柄な老人の体がみるみる大きくなり、

全身がアルマジロのような皮膚へと変わっていく。

 爪は伸び、鋭利な凶器となる。


 体長2メートルほどの

リザードマンのような姿になるディエヌ。


 ディエヌは走り出し、爪を振るう。

 エルフや人間の前衛兵が、

軽い荷物を投げるように吹き飛ばされる。


 その報せは、

前線で戦う将達の耳にすぐに入った。


「キムスケ様!

異形の生物兵器が現れました!

味方の被害は甚大です!

応援と指示をお願いします。」


キムスケ「私が行こう。」


 駆けつけたキムスケ達が見たのは、

台風のように

ヒトを吹き飛ばす異形の怪物であった。


 キムスケは兵達に離れるように指示し、

ディエヌに雷を落とす。


 動かなくなったディエヌに近づくキムスケ。

 突如目を見開き、

キムスケの腹を爪で貫くディエヌ。

 キムスケは腹を貫かれながらも、

ケラウノスでディエヌを突いた。

 ケラウノスはディエヌに刺さるどころか、

穂先の刃が欠けてしまう。


ディエヌ「セイレーンの頭首だな?

    ノコノコ前に出おって、愚か者が。」


キムスケ「この硬さ。そして雷の耐性か。」


 キムスケを投げ飛ばすディエヌ。


 アルベルトが炎の矢をディエヌに浴びせる。

 ディエヌは一歩で距離を詰め、

アルベルトを爪で串刺しにする。


 駆けつけた連合軍の将たちも

次々とディエヌに斬りかかる。


 ヨーリーはキムスケに寄り添い、

治癒の泡でキムスケとアルベルトを覆う。

 ソナとユイも倒れたキムスケに駆けつける。


キムスケ「アレの守備力は異常だ。

    皆に気をつけるように指示を出せ。」


 アッチもトリアイナでディエヌを突くも、

やはり刺突は弾かれ、刃が欠けてしまう。


 ディエヌの打撃で吹き飛ばされるアッチ。


 こまちゅの金鞭がディエヌに噛み付き、

巻き付き締め上げる。

 しかし荊の棘は折れ、金鞭の力でも

ディエヌを潰すことはできなかった。

 こまちゅの魔力が底をつき、解ける金鞭。


こまちゅ「化け物め。」


 りおんが邪眼のモノクルで

ディエヌの弱点を探るべく鑑定を始める。


りおん「斬撃、刺突、電撃、氷雪、光線無効。

   打撃、炎熱、毒に強耐性。


   そんな……。

   こいつ、弱点が見当たらない!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーー魔王の大陸、海岸ーー


 一隻の手漕ぎボートが、砂浜に乗り上げた。

 乗っていた老紳士は、辺り一面に散らばる

ゴーレムの残骸と、遠くから聞こえる

戦の音と怒号を聞いて焦る。


「くっ。ここまで辿り着くのに

半年もかかってしまった。

戦争が起きているのか。

レーちゃん、クーちゃん。無事でいてくれ。


嫁入り前の娘を拐かすとは。魔王め!

この命に代えても成敗してくれる!」


 老紳士は走り出す。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーー国連軍後方・支援キャンプーー


 ケガ人などの治療にあたる部隊がある

キャンプに、重傷のマーボーが運ばれていた。

 支援にあたっているのは、非戦闘員であった。


 同じく重傷で寝ている

エッジの隣に運び込まれるマーボー。


 マーボーの姿を見た、後方スタッフのユミィと、

ぽちぽちが驚きの声を上げる。


ぽちぽち「マーボーさん! 大丈夫ですか!」


ユミィ「派手にやられたもんだねぇ……。

   でも、勝ったんだろう?」


マーボー「情けないとこ見られちまったぜ。

    もちろんブッ飛ばしてきたぜ。

    スヒー……。」


ぽちぽち「こんなになっても、

    まだ持っててくれたんだね。」


 ぽちぽちは、壊れた竹笛を手に取り懐かしむ。


マーボー「すまねぇ壊されちまった。

    壊した奴は、キッチリ〆といたぜ。


    ……早く戦線に戻りてぇんだ。頼む。」


ぽちぽち「今ね、フロさん多忙でね。

    ちょっと話してくる。」


 ぽちぽちはヒーラーのフロの元へと走りだす。


 高齢の小柄な男がマーボーの姿を見て、

手当を始めた。


「これは、応急処置だけでも

急いだほうがいいですねぇ。」


マーボー「医者か? すまねぇ。ジィさん頼む。」


 マーボーの隣で治療を受けていた

エッジが起き上がり、突如暴れ出した。


 マーボーが起き上がり、抑えようとするも、

マーボーの体は金縛りのようになり、

動けなくなる。


「まだ寝ててくださいよ。もう少しですからねぇ。 

ヒヒヒヒヒ。」


マーボー「お前、まさか敵のスパイか!

    俺たちに毒を!!」


「毒なんて酷いですねぇ。薬ですよ。

早く元気になって、私の眷属になれるようにねぇ。

さて、やりますか。


【死霊降誕・始祖の魔王ミギア】


生物に自身の血を分け与え、

眷属とする魔王のチカラ。これは便利ですねぇ。」


 男は始祖の魔王の霊魂を呼び出し取り込み、

新たなスキルを得た。

 そして背にコウモリのような羽を生やし、

曲がった背の老人だった肉体は、

筋骨隆々な青年のような体つきになり、

顔は吸血鬼のように変貌した。


 男は魔王軍知の四天王・ネクロであった。

 死霊術師であり、

アンデッド兵の製造を担う者でもあった。


マーボー「ぐああああああ!」


 ネクロの術により、マーボーも正気を失う。

エッジとマーボーが後方支援の人々を襲い始める。


 止めようとしたユミィを薙ぎ払い、

テントの破壊を始める2人。


「敵襲! 敵襲だ! フロ様とエルを逃がせ!」


 その報せは、自作の兵器のメンテナンスを

していたエルと、瀕死の兵の治癒をしていた

フロの耳にも入った。


 吹き矢を持ち出し、敵の元へ走り出そうとする

エルを掴み、リュックサックに詰め込むヒミカ。


エル「もが! お母さん、何するの!?」


 ヒミカは、エルと一緒にいた、

たこわさびに懇願する。


ヒミカ「お願い。エルを連れて逃げて。」


 その様子を見た、たこわさびの母である

ミサオも、たこわさびに言い聞かせる。


ミサオ「できるわね? エル君を守って。

   あなたはお父さんの子。

   怖いだろうけど、よろしく頼むわね。」


 たこわさびは目に涙を溜めながらも、

必死に恐怖の感情を押し殺す。


たこわさび「うん。わかったよ。」


 たこわさびはエルが詰め込まれた

リュックを背負い、走り出す。


 その様子を見たネクロが、

たこわさびを追うように

マーボーとエッジに指示をする。


ネクロ「ただの子供ではないのか。

   次の眷属はアレにしようぞ。

   あの子供を捕まえろ。」


 子供を守るため、ヒミカとミサオが

エッジとマーボーにタックルをかます。

しかし2人は簡単に跳ね飛ばされる。


 2人の子供を守るため、人々が立ち上がる。


 龍神村の村長・トモシチの号令で、

支援スタッフが一斉に2人の英雄に飛びかかる。


 星舞の村長・猫人アキラは

ネクロの背後から忍び寄り、

雷を帯びた一撃を喰らわせようとするも、

気付かれ組み伏せられる。


ネクロ「老いぼれの眷属はいらないですよ。」


 アキラは自分の無力さに涙を流す。


 敵の元へ向かおうとするフロを、

竜宮の漁師・フィロが仲間と共に必死に抑える。


フィロ「行っちゃダメです!

   あなたの代わりはいないんだ!」


フロ「うにゅうううう〜! 

  あそこは怪我人がいるにょ!!」


 ぽちぽちがタックルのように突撃し、

マーボーの腰にしがみつき、叫ぶ。


ぽちぽち「目を覚ましてよ! 何やってるのよ!」


 ぽちぽちはマーボーに後頭部を殴られ、倒れた。


 マーボーとエッジが

支援スタッフを薙ぎ払いながら、

たこわさびを追う。


 ついにエッジに腕を掴まれ転ぶ、たこわさび。


 たこわさびは顔を上げ涙をこらえ、

エッジを見据える。


 後ろから現れたネクロが

笑いながら、たこわさびに話しかける。


ネクロ「お嬢ちゃん。泣かないとは、偉いねぇ。

   お嬢ちゃんは、何かすごいスキルを

   もっているのかな? ん?」


 ネクロは、モゾモゾ動く

リュックの存在に気付く。

 たこわさびはリュックを守るように抱え込むも、

ネクロから視線は外さない。


ネクロ「そうか。

   その中にいるのが、重要人物なんだね。

   でも、お嬢ちゃんも見込みあるねぇ。

   怖くないのかい?」


 ネクロは泣きそうになりながらも目に涙をため、ネクロを睨みつける、

たこわさびを見て、うすら笑う。


たこわさび「クルムお姉ちゃんと

     約束したんだもん。

     前を向いて、上を向いてないと、

     おじいちゃんとお父さんが

     心配しちゃうから。」


 たこわさびは涙を流しながら、

リュックの中のエルを守ろうと抱きしめ、

ネクロを見据える。


ネクロ「そうかい。

   じゃあ、今日からは

   おじさんたちが可愛がってあげようねぇ。

   

   オイ、その2人を捕えろ。」


 ネクロはマーボーとエッジに命令をする。


 エッジの手が、たこわさびが抱えるリュックに

手をかけようとした、そのとき。




ーーお嬢ちゃん。クルムお姉ちゃんとの話、

      あとで詳しく聞かせてくれるかなーー




 エルを捕えるべく伸びたエッジの手を、

颯爽と現れた老紳士が木剣で受け止める。


紳士「その前に、この悪そうなオジちゃんたちを

   オシオキするから、少し待っててね。」








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