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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
116/138

116 死神

116 死神


 レスベラは倒れているキボンヌの服を脱がし、

おそるおそるパンツの中を確認する。


レスベラ「コレ……やっぱり女だよな。

    フレゴリ兄弟にかけられたみたいな

    魔法なんかな?


    そういや、毛の色が違うぞ。

    うまーるの兄ちゃんはたしか、

    黒い毛だって話だよな。

    コイツは髪も下の毛も白いゾ。

    それによく見たら耳の形も違う気がする。

    そもそも、うまーるに似てない

    気がしてきたゾ。


    まぁいいや。

    あとで、うまーるに聞いてみよ。」


 レスベラは扉を開けて外に出た。

 そこは魔王の城の隣にある建物であった。

 魔王の城に向けて、

足を引きずりながら歩き出すレスベラ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーークルムが飛ばされた空間ーー


 とても静かで広い空間。

 天井が高い、チャペルのようだ。

 巨大なパイプオルガンがあり、

教会のような調度品が並ぶ。

 魔王軍幹部の男とクルムが対峙する。

 黒服の牧師風の男は宙に浮いている。


挿絵(By みてみん)


 扇を振り、風の魔法を放とうとするクルム。

 しかし、魔法は発動しない。


クルム「魔法が阻害される空間?

   それとも封印術の類?」


男「ボナペティート! 慌てないでくれたまえ。

  キミに聴かせてあげたいんだ。

  僕が作り上げた最高の曲を。」


クルム「はぁ……。なんなのコイツ。

   さて、どうやってブチのめそうかしら。」


 クルムの周囲の楽器が、

ひとりでに演奏しはじめた。

 身構えるクルム。


 やがて巨大なパイプオルガンも動き出す。


挿絵(By みてみん)


 指揮者のような動きを始める男。


男「チ・ペディアーモ。

  これはね、僕が1から構築したんだ。

  音の振動を通じて、

  聴いたものの心臓の動きが……。」


 長々と自作の魔法の自慢話をする男。

 要約すると、聴いた者を即死させる

魔法を開発したが、魔王は基本的に敵を殺さない

方針のため、魔王の護衛役に任命された。

 しかし最近は誰も攻めてこないため、暇だった。


 クルムのような美人が来てくれて嬉しい。

 しかし敵だから殺さなければならない。

 死んだ後は剥製のような芸術品として愛でたい。


 という内容が20分ほどかけて説明された。

 クルムにとっては、

あまりに退屈な時間であった。

 クルムは鏡を取り出し、

髪の毛をいじりながら男の話を聞き流す。


男「ブォナノッテ!

 悲しいけど、お別れの時間だよ。

 だが安心してほしい。

 僕はずっとキミを大切にするから。

 ずっと側で僕を見守って欲しい……。」


 男は魔水晶と

音叉のような金属製の魔法具を取り出した。

 クリスタルチューナーのように、

金属で水晶を叩くと高音が鳴り響いた。


  キィイイイイイイイイイイイイイイン


男「即死魔法【アポカリプスの鐘】」


クルム「あたしはね、歳を取っても、

   いつまでもキレイなまま、

   たくさんの孫たちに囲まれて

   死ぬって決めてるの。


   今日死ぬのはアンタだけよ。

   1人でイキなさい。


   とても退屈な時間だったわ。

   休憩に丁度良かった。ありがと。


   あと、それとアンタ、

   音楽のセンス無いわね。

   じゃあね。」


男「!? があっ!!


 クルムが反魔の鏡を男へ向ける。

 音の波動が男へと返される。

 男は苦しみだし、胸を抑えながら墜落する。


クルム「反魔の鏡。

   魔法使い相手ならチートレベルの魔法具ね。   

   とんでもないモノ作ったわね。


   コレがなかったら難しい敵だったわ。

   命を懸けて作り上げた

   アイツの仲間たちに感謝しなきゃ。」


 クルムは鏡を懐にしまい、

扉を開けて外に出る。

 そこは魔王の城の近くの教会であった。

 辺りを見渡すクルム。


 クルムは血の足跡を発見する。

 足の大きさは、まるで巨人のようだ。

 直感で閃くクルム。


クルム「あのゴリラ。

   大怪我してもロクに手当てもせずに。

   まったく……。

   世話がやける、お姉ちゃんね。」


 クルムが血の足跡を追い走り出す。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


敵の情報


クレメンス 男

魔王護衛四天王


スキル

空間魔法 静寂の間 敵の魔法操作阻害

魔法具 アポカリプスの鐘 

即死音魔法(発動に時間がかかるが、必殺必中)


 魔王軍の中でも死神と恐れられる最強の魔導師。

 ナミノエで高性能アンデッドが敗北するキッカケとなったクルムを抹殺するための、

ギリーの切り札であった。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


 

 ーー地上・魔王城前広場ーー


 蟻の軍が壊滅した直後、アローヒの前に

空間隔離から解除された4人の十字騎士と

4体の蟻将が戻ってきた。

 充満する血の匂い、そして激しく炎上する

2体の亡骸に、連合軍が騒つく。


 「火を消せ! 早く消すんだ!」


 血塗れのヘンゼルとフレームアイ、

青紫の顔色で息絶えたゴリアシ。

 黒焦げの焼死体を見たアローヒが取り乱す。


アローヒ「イヤああああああああああ!」


 体が二つに千切れても手足が動き続けるアギト。

 剣で頭部が貫通し地面に磔にされても、

手足が動き続けるバーチェル。

 頭部を失っても手足が動き続けるフィアー。


 動く蟻将3体は連合軍魔法兵により、

土の魔法で埋められた。


 そこへ戻ってきた、こまちゅとレイカ。

そしてキノコまみれになったポネラ。


アローヒ「ごめん。ごめん。

    私のせいで……、

    私のせいで皆、死んじゃったよ。」


 アローヒの護衛を、ゼットから託された

兵から事情を聴いた、こまちゅとレイカ。


 こまちゅは涙し、氷柱を見上げる。


こまちゅ「少なく見ても、365本以上か。

     いつの間に覚えたのだ。バカ者。

     そう言うことは、男なら

     自分の口で直接言うものだ……。」


レイカ「なんで死ぬまで戦ってんのよ!

   バカじゃないの……。

   ヘンゼルまで……。」


こまちゅ「アローヒよ。気に病むな。

    敵将を無傷で外に出せば、

    味方の兵の被害は甚大であった。

    そういう判断を自ら下したのだ。


    彼らに感謝し、我らは先に進もう。

    彼らの意志を尊重するぞ。

    我らは我らの為すべきことをする。


    ここで立ち止まり、敵に暇を与えるのは

    彼らの死を無駄にする愚行に他ならぬ。」


 そのとき、はるか遠くの上空に

爆発音を響かせながら落下する火の玉が

連合軍たちの目に映る。

 火の玉が消え、

直後に巨大な地震が魔王の大陸にも響いた。

 大地を突き上げるような、

一瞬の縦揺れであった。


こまちゅ「不吉な。何かあったな。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーギリーが変身した先代勇者と、

              ヌルが戦う空間ーー


ヌル(あった! あるぞ!

   この隕石を落とせる場所が。


   ……スカディ族には後で謝ろう。

   きっと理解してもらえる。

   そして、この勇者を倒すには……。


   ……使うしかない。缶詰封印を。

   これ以上こんな攻撃が来たら

   人類は滅亡する。

   隕石が消えた瞬間が唯一無二のチャンスだ。

   きっと油断してるハズ。)


   「転移魔法発動!

   隕石の行き先は【エリアスの泉】だ!」


 氷の大陸の地下4000メートル。

 地下の巨大湖に一瞬で転移した隕石。

 空気の無い空間に一瞬で

巨大な運動エネルギーと質量を持つ物体が現れ、

氷の大陸は大地震に見舞われ、崩壊した。


 それは、

星全体を揺るがす程の地震となった。

 水たまりに石を投げ込んだ時の波紋のように、

氷の大陸を中心に津波が及んだが、

幸い、氷の大陸の近くに海洋都市は無く、

津波による人的被害は無かった。


 また、最大の危惧であった、

粉塵が空を覆い、日光を遮ってしまう

寒冷化のような現象も起きずに済んだ。

 ヌルの一瞬の判断が世界滅亡を防いだが、

この事実は誰にも知られることは無かった。


 隕石が一瞬で消えたのを見た、

勇者は硬直していた。


ヌル「みんな。ごめん。

  魔王とは、話し合いでなんとかするしか

  なくなっちゃったよ。


  【封印術・缶詰マスター】」


 勇者はイムの御石鉢に封印された。

ヌルの頭の中に、謎の声が響く。


『スキル【蘇生魔法・死者転生】を獲得しました。』


ヌル「これか! ギリーが使った魔法は!」


 ヌルはこの魔法について、検索魔法で調べた。

 

 死者の亡骸から遺伝子情報を読み取り、

自身の肉体を使い置き換え、

死者を復活させる魔法。

 使用者は肉体を失い死亡する。


ヌル「これだ! これがナナを救う唯一の方法だ!

   いや、亡骸から遺伝子……。

   ナナの肉体はもう……。


   いや、ある。あるぞ!

   まだ残ってる。

   ナナを復活させる方法は、あるんだ!!」


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