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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
115/138

115 闇に堕ちた賢者/唐揚げに喰われるフライドチキン

115 闇に堕ちた賢者/唐揚げに喰われるフライドチキン



 ーー魔王城最上階テラスーー


 ヌルと剣を交える、アンデッド化オレダ王。

 力で劣るヌルは、剣を受け流し後ろに跳んだ。

 まるでロボットのような動きで

歩み寄るオレダ王の後ろに、

剣を手にした、ナーガ、オニオ、タスク大臣、

ロカフィルのアンデッド兵が続く。


ヌル「みんな剣を手にしている。

  違う。

  こんなのは皆と違う。ただの操り人形だ。

  俺は知っている。共に修行していたから。

  慣れない格闘を頑張っていた、ナーガ。

  運動が苦手なのに、弓の練習を頑張り、

  オリジナルの技まで編みだしたオニオ。」


  ……俺だけが生き残ってしまった。

  俺は皆んなから恨まれているだろうか。

  いや、本物の皆ならわかってくれる。

  俺がやらなきゃいけないことを。


  ……みんな、ごめん。

  皆の無念、必ず晴らすから。」


 ヌルは魔法で風を起こし、

5人の体を揺さぶった。

 自身も追い風で加速し、

5体のアンデッドに斬りかかった。

 ヌルは流れるように技を繋ぎ、

立て続けに5人を斬り伏せる。


ヌル「【勢中刀・月影】【陰陽進退・八重垣】

  【虎一足】【虎乱刀・追風】」


  (オレダ王。あなたのおかげで俺は、

  2度目、3度目の人生を

  送ることができました。

  あなたのおかげで、

  今、俺はここに立てています。)


 ヌルは高く振りかぶった

オレダ王の手首を目がけ、

三日月のような弧を描き横に剣を振るう。

 腕を斬られたオレダ王の剣は吹っ飛んだ。

 無防備になったオレダ王を返す刀で斬り伏せる。


  (タスク大臣。あなたのおかげで、

  俺のやり直し作戦を

  スタートする事ができました。

  ロカフィルさん。あなたのスキルのおかげで、

  【聖剣ミヅハノメ】が生まれました。

  必ず、今代の勇者が闇を切り拓きます。)


 ヌルは、風でバランスを崩した

タスクを真っ向に斬り上げ、向かってきた

ロカフィルの攻撃を引いて躱し、

ロカフィルに剣を振り下ろす。


  (ナーガ。運動神経は良いんだけど、

  体重と筋力が足りなくて攻撃が軽いんだよな。

  お前のスキルで、

  必ず、魔王に“ひと泡”吹かせてやるからな。)


 ヌルは手首を切り返し、抜刀のような姿勢から

踏み込み斬り上げ、ナーガの剣を打ち払い、

態勢を崩したナーガに剣を振り下ろす。


  (オニオ。もし、お前が時間停止と

  弓矢を使えてたらヤバかったよ。

  今の俺でも危ないと思う。

  オニオ、ありがとう。お前の“時間巻き戻し”

  のおかげで、俺は今、ここに立ててる。

  必ず俺が皆の悲願を成就するよ。)


 ヌルにより弾かれたナーガの腕が

オニオの顔面に直撃する。

 たたらを踏むオニオを、踏み込み斬り上げる。


 斬られ倒された、不死身のアンデッド兵たちは、

まるで何事も無かったかのように起き上がる。

 しかし、糸の切れた人形のように倒れた。


ギリー「時間稼ぎにもならぬか。

   魔力の無駄遣いでしかないな。

   お前の甘さならば、

   元仲間を斬れないと、ふんだのだが。

   やはり、こちらも相応の覚悟がいるな。」


覚悟を決めたギリーが過去を振り返る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーーギリーの過去・回想ーー


 ギリーは母子家庭であった。

 エルフの母と小人の父親の間に生まれたギリー。

 父親の消息をギリーは知らない。


 ギリーの母親は、エルフの里から追放され、

人間国ケンチョーで暮らしていた。

 ギリーの母親は冒険者を生業とし、ギリーを1人で育てていた。

しかし、ギリーの母親はある日、依頼の途中で消息を絶ってしまう。

1人になったギリーは孤児院で暮らすこととなる。


 背が高く、耳が長い。

 見た目が異形で、おとなしい性格のギリーは

孤児院で壮絶なイジメを受けた。

しかしたった1人、ギリーに寄り添う少女

【ヴィッチ】がいた。

 しかし、孤児院のアイドル的存在であった

ヴィッチを味方につけた、

ギリーへのイジメは加速していった。


 年月が経ち、ギリーが成長すると、

ギリーは類稀な魔法の才能を発揮する。

 スキル鑑定で【賢者】と判明したギリーは、

若き天才としてもてはやされた。


 ギリーはオレダ王の命令により、

魔王討伐隊へと選抜された。

 そのPTは賢者ギリー、

ギリーの幼馴染の聖女ヴィッチ、

双子の天才、剣聖チャーラと

大魔導師ヤリテン、呪術師トッコの5名であった。


 過酷な旅の果てに、

魔王城が見える位置まで潜入、到達したPT。


 その夜、焚き火を囲み、

呪術師トッコが涙ながらに語る。


トッコ「やっぱ死ぬの怖いよ。

   でも王様と約束したんだ。

   残った俺の家族に

   莫大な褒賞金をくれるって。


   みんな、今までありがとう。」


 トッコ以外の4人も泣いていた。

 トッコのスキルは異質なモノであった。

 自分の命と引き換えに、

対象に死の呪いをかける、

というモノであった。


 1人になりたい、と言うトッコ。

 時間をおいて、トッコを追いかけるヴィッチ。


 ギリーは魔法で聴覚を強化し、

おぞましいものを聴いてしまう。


 トッコはヴィッチのことを、

ずっと好きだったと言う。

 死を目前とした告白。

 それを受け入れたヴィッチとトッコの情事。

 ヴィッチが慰めていたのは、

トッコの心だけではなかった。

 この事実を知るのは、ギリーのみであった。


 翌日、トッコの死と共に、

死の呪いが魔王を襲った。

 しかし、魔王は何事もなかったかのように

蘇生してしまった。

 トッコの死により、

魔王の不死の能力が判明した。

 これまでの討伐隊の犠牲により、

魔王の再生能力は知られていた。

 トッコの犠牲により魔王の不死と再生の能力が

知れ渡り、世界を震撼させる出来事となった。

 これは、

生きて帰ったギリーにより広められた話であった。

 圧倒的な強さを広めることで、

挑戦する愚者を減らそうという算段であった。


 魔王暗殺に失敗した4人は魔王軍の襲撃に遭い、

聖女ヴィッチが死亡してしまい、

撤退を余儀なくされた。

 聖女ヴィッチは大魔導師ヤリテンと

恋仲となっていた。

 魔王討伐隊結成後間も無く、

急速に惹かれ合うヴィッチとヤリテン。

 ほぼ毎晩、キャンプを抜け出し、

密会を重ねる2人の情事を、

ギリーは魔法で把握していた。

 ヴィッチに恋心を抱くギリーにとって、

魔王討伐の旅は地獄のようであった。


 ギリーを超える天才と言われた、

大魔導師ヤリテンはヴィッチの死に悲嘆し、

ヴィッチを蘇生するための

魔法の開発研究に取り組む。

 そして蘇生魔法の開発に成功した。

 しかし、それは自身の命と引き換えに

蘇生するという魔法であった。

 死者の遺伝情報を読み取り、自身の体を使い、

置き換えるというものであった。

 それでも、愛するヴィッチのために

自身の命と引き換えに、

ヤリテンはヴィッチを蘇生した。

 蘇ったヴィッチは、

ヤリテンの死に大きく悲嘆した。

 そんなヴィッチを支えたチャーラは、

やがてヴィッチと恋仲となった。

 

 3人となってしまったPTは旅を再開した。

 作戦は、魔王を戦闘不能にし、

ヴィッチの聖属性魔法で浄化する

というモノであった。

 またもギリーは、毎晩のように繰り返される

地獄を味わうこととなった。

 誰にでも優しい笑顔を振り撒く、

聖女ヴィッチは実は魔女なのではないか。

 このような疑問を持つのは、

ギリーのみであった。


 3人で乗り込んだ魔王城。

 ギリーが1人で囮となり幹部を引きつけ、

魔法で撹乱する。

 チャーラとヴィッチは

魔王の元に到達することに成功する。

 チャーラはサシの剣の勝負なら

負けないとふんでいた。

 しかし魔王の魔法により動きを封じられた2人。

 魔王は剣でヴィッチの胸を貫き、

剣聖チャーラも魔王の前に、なす術なく敗れた。

 追手を振り切り

駆けつけたギリーは“魔王の第3の能力”に気付き、善戦した。

 ギリーは即死を免れるも、

攻略の糸口が見えず降参してしまう。

 早く手当をしないと、

ヴィッチが死んでしまうためだ。

 ギリーは土下座し、魔王に懇願する。


ギリー「あなたに忠誠を誓います。

   なんでもします。その女、ヴィッチの

   治療をさせてください」


 魔王はギリーの有能さを高く評価し、

幹部として招き入れた。

 魔王の配下となり、ヴィッチを懸命に治療した

ギリーであったが、ヴィッチの傷を癒すことに

成功したものの、

ヴィッチが目を覚ますことはなかった。

 植物状態となったヴィッチの生命維持に

協力してくれた魔王の恩に報いるため、

ギリーは働いた。

 人間国へのスパイとして。


 ギリーはヌルとの最終決戦の前に

魔王と約束を取り付けていた。

 自分が責任を持ってヌルを始末する。

 もしも負けても、

おそらくナナから継承したであろう、

缶詰めマスターの能力を自分に使わせる。

 その対価として、

自分の死後のヴィッチの介護をお願いしたい。と。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー魔王城最上階テラスーー


 ギリーは怪しげな指輪を装着した。

 それは隷属の指輪であった。

 そしてヌルとギリーの足元に光る魔法陣が現れ、

2人を異空間へ飛ばす。


 広大な荒れ地に飛ばされた、ヌルとギリー。

 枯れた木以外の生物の痕跡が無い、

死の大地であった。


ヌル「転移トラップか。

  城から離れたのは……。

  おそらく、城を破壊してしまうような

  魔法攻撃が来る。」


 ヌルは身構える。


ギリー「貴様を屠るのは、伝説の勇者だ。

   魔王ラギとその配下を

   1人で壊滅させた伝説の化け物。

   存分に戦うがよい。

   【蘇生魔法・死者転生】」


挿絵(By みてみん)


ヌル「何を言っている?」


 ギリーは人骨のような物を握りしめ、

魔法を唱えた。

 その人骨は勇者の墓から盗掘された

勇者の遺骨であった。

 ギリーの体が光に包まれ、

金髪の若い剣士の姿へと変わる。


 ヌルはこの青年に見覚えがあった。

 女神像の記憶で見た勇者の姿であった。

 勇者は空間の裂け目を作り出し、

黒い刀身の剣を取り出した。

 それは、かつて砂漠で戦った、

ギリーが操作した

アンデッド兵が使っていた【絶望の剣】であった。


ヌル「なんだこの魔法は!?

  変身魔法なのか!?」


 勇者は踏み込み、

一瞬でヌルとの間合いを詰めた。

 ヌルは反射的に剣を振る。


 凄まじく重い一撃を放つ勇者の剣を、

ヌルの剣が吸い寄せた。

 ヌルの攻撃は、必ず絶望の剣に吸い寄せられる。

 その特性が無ければ

防ぐ事は難しいであろう、速さと重さであった。

 一撃を受ける毎に体勢を崩されるヌル。

 しかしヌルは手を出さなければ、

致命傷は必至の展開であった。


ヌル「なんて強さだ!

  とにかく間合いをなんとかしないと。

  剣の勝負では勝てない!」


 激しく斬り結ぶ、勇者とヌル。

 ヌルは目を瞑り、

剣に纏わせた魔力を炸裂させた。


ヌル「光魔法フラッシュバン」


 強烈な閃光が放たれた。

 一瞬、勇者がたじろぐ。


 ヌルは足に魔力を込め、地面を操作する。

 土の壁をいくつも作り出し、

土の壁の迷路を作り出す。

 ヌルは両手を地面につけ、魔力を流し込む。

 土の壁が複数の巨大な手となり、

戸惑う勇者に殴りかかる。

 しかし、勇者は攻撃を受けたことで

落ち着きを取り戻し、

難なく土の手を剣で破壊する。


ヌル「ミラージュヒートヘイズ」


 ヌルは魔法で空間に幻影を作り出す。

 10人ほどのヌルの幻影に取り囲まれる勇者。

 幻影に斬りかかり、空振りを繰り返す勇者。


 さらにヌルは風の魔法で

困惑する勇者を吹き飛ばす。


ヌル「強烈な魔法は発動まで時間がかかる。

   近接で戦うのは勝ち目がない。

   小手先の戦術で時間を稼いだところで……。

   どうする……。」


 勇者は剣を高く掲げた。

 恐ろしいほどの魔力が空に向け放たれる。


ヌル「何をする気だ?」


 バアン! バアン!


 大気の壁をブチ破る音と共に

燃え盛る巨岩が落ちてくるのを視認したヌル。


ヌル「そうだ。この勇者は敵を倒すためなら、

  自分の命を投げ出す人だ。

  こんなのどうすればいい?

  落ちたら勝負どころじゃないぞ。

  人類滅亡じゃないか!!」


 ヌルの時間の流れがスローになる

 死を身近に感じたヌルに、

タキサイキア現象が起きた。

 スローモーションの世界の中で、

これまでの記憶を総動員するヌル。


ヌル「転移魔法で動かすしかない。

   行ったことのある場所を思い出せ。

   どこだ。どこに落とせばいい。


   海に落とせば大津波。

   陸に落とせば恐竜絶滅のような長い冬か。

   どちらにせよ生物大量絶滅だ。


   ……ある。あるぞ! あそこなら!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー天井が高い建物の中ーー


 レスベラと敵将キボンヌが睨み合う。


 毛皮のコートのような服を着た、宙に浮く女。

 自らを魔王直属守護四天王と名乗る。

 白い体毛の狐の獣人の女であった。


 レスベラは

キボンヌの顔を見て重大なことに気付く。


レスベラ「犬っぽい耳……。

    まさか! 

    お前、うまーるのお兄ちゃんか?

    そうなんだな!?


    魔王め!

    女みたいなキレイな顔だからって。

    女の格好をさせて、あんな事やこんな事を

    楽しんだんだな! 許せないゾ!!!」


キボンヌ「は?」


レスベラ「剣を使うわけには行かねーな。

    操作されてんだろ?

    殴って気絶させて連れてくしかねーな。」


 レスベラの全身にタトゥーが浮かび上がった。


キボンヌ「何を意味がわからぬことを。

    挽肉団子にして

    女王蟻に食わせてやろうかね。」


挿絵(By みてみん)


 キボンヌはモフモフの尻尾のようなモノが

9本連なった、とても長い魔法具を取り出した。

 魔法具をレスベラに向けて振り下ろす。


キボンヌ「食らいな。【天狐打神鞭】」


 9本の鞭がレスベラを襲う。

 レスベラは鞭の長さを見切り、

半歩後ろに下がりギリギリで躱す。

 キボンヌの鞭の先端が音速を超え、

空気の壁を叩き壊し

9つの衝撃波がレスベラを襲った。


 バババババババババン


 鞭を躱したレスベラが衝撃波で吹き飛ぶ。


キボンヌ「アハハハハハハハハハハハハハ

    地べたを這いずる虫ケラには

    手も足も出ないだろう?


    さて、適度に潰れた肉を手土産に……。

    !?」


レスベラ「痛ぇーな。クソッ! なんだ今のは?

     避けたのに食らったぞ。

     普通に避けたんじゃダメってことか。

     エビ野郎のパンチに似てるな。」


 額から血を流したレスベラが起き上がる。

 改造した鎧とタトゥー魔法で上昇した守備力の

おかげで軽傷で済んでいた。

 白亜の鎧のセラミックに金属による補強を

したことで、最強素材プロテウスのような

硬さと靱性を併せ持つ鎧となっていた。


キボンヌ「原型を留めているだと?

    ただデカいだけじゃなく、

    相応にタフなようね。

    まぁいいわ。潰れるまで叩くだけ。

    格の違いを思い知りな!!」


 キボンヌは鞭を振るう。

 レスベラは走り続け、

鞭と大きく距離を取り、躱す。

 まるで爆弾のような衝撃が

絶え間なくレスベラを追い続ける。


レスベラ「逃げてるだけじゃどうしようもねーな。

    これが奴の間合い。高さと遠距離。

    これを詰めるには。」


 レスベラはシロイナワでの戦いを思い出した。

 雨を踏み台にし、空を翔け、

上空の敵を斬った戦いを。


レスベラ「濡れたモノは乾く。   

    たしか、水が空気に溶けるんだったよな。 

    そうだ。空気の中にも水はあるんだ。

    コイツがあれば、空気も蹴れるはずだ。

    水の上を走るときみたいに、強く蹴って

    足が沈む前に脚を上げる。よし!」


 レスベラは普通の靴で水の上を走る

要領で走り出す。

 レスベラの足のタトゥーが

翼のような紋様に変わった。

 タトゥーのチカラと水のタラリアのチカラが

融合し、レスベラは空気中の水分を蹴り、

ソニックブームのような衝撃波を足場に

空中を駆け上がる。


 まるで螺旋階段を駆け登るかのように、

キボンヌの鞭から逃げながらキボンヌとの距離を詰めるレスベラ。


キボンヌ「なに!? 空中を走って!?」


レスベラ「剣を使うわけにはいかねーし、

    蹴りで死んでも困るしな。

    手加減って難しーな。

    やっぱりな。

    お前、近い敵には攻撃できないんだろ?

    ここはもう、アタシの間合いだぜ。」


 キボンヌは掌から風の魔法を放出し、

レスベラを吹き飛ばそうとするも、

レスベラは向かい風をものともせず

キボンヌ目がけて突っ込む。


 距離を詰めたレスベラが刀を抜くような

素振りを見せる。

 フェイントの後、上段回し蹴りのような蹴りを

キボンヌの顔の前で寸止めする。


キボンヌ「なんだこのバケモノは!

    飛べるなんて話は……!

    ヒィッ!」


 キボンヌは目を瞑り、左手で顔をガードする。

 レスベラの寸止め蹴りが、

空気の壁を叩き衝撃波を生んだ。

 キボンヌは吹き飛び、壁に叩きつけられ

墜落し、床に衝突した。


 レスベラは華麗に着地した。

 レスベラの両足からは血が流れる。

 水のタラリアに護られていたとはいえ、

爆弾を踏み続けたような走りは、

足にダメージを与えていた。


レスベラ「疲れるし痛ぇーな。これ。

    あまりやるもんじゃねえな。

    早くクルムに治してもらわねーとな。


    そういや、さっき地べたとか

    格の違いとか言ってたなコイツ。

    私がイイコト教えてやるゾ。


    唐揚げってのはな、

    飛べない鶏で作るんだゾ。

    そんでな、フライドチキンってのはな、

    飛べる鳥で出来てんだゾ。


    どうだ? 

    ひとつ頭良くなってよかったナ。

    って、伸びてるから聞こえてねーよな。」


 気絶しているキボンヌに声は届かない。

 ツッコミどころ満載の、

レスベラのオイシイ天然ネタは空振りに終わった。




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