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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
114/138

114 何度、生まれ変わっても

114 何度、生まれ変わっても



 ーー荒れ果てた岩石だらけの峡谷地帯ーー


 ちまちの転移魔法(?)により、

ちまきと敵将ジャックが飛ばされた地は、

荒れ果てた岩石地帯の峡谷であった。

 崖に挟まれた細い空間で、

ちまきは魔力を解放する。

 全身に炎を纏う、ちまき。

 ジャックは他の蟻将とは違い、

腕が2本、脚が4本であった。

 後ろ脚の大腿は太く、関節は逆向きで

まるでバッタのような脚になっている。


ジャック「陸の8将、ジャックだ。

    まだ幼いが、素晴らしい

    魔力を秘めた肉だな。

    俺は運がいい。」


 不敵に笑いながら、舌舐めずりをするジャック。


ちまき「よかったでし。

   子供扱いしてくれたから、

   思い切りやれるでし。」


 ちまきの体を包む炎が勢いを増す。


ジャック「魔導師の炎なぞ……ッ!?」


 本能で危険を察知したジャックは、後ろに跳ぶ。


ジャック「魔法耐性が高い俺に、

    炎の魔法は効かないハズ。

    なぜだ? 何故いま、後ろに跳んだ!?」


ちまき「逃げるな。まだまだ火力を上げるでしよ。」


 ジャックの本能は正しかった。

 ちまきの魔法で熱せられた空気が、

ジャックの触覚の先端を焼く。

 ジャックの黒い触覚の先端が、

茹でたカニのような赤色に染まる。


ジャック「バカな! 

    炎の魔法での攻撃ではなく、

    熱による攻撃だと!?」


ちまき「何を言ってるでしか。

   ちゃんと丸焼きにしてあげるでし。

   心配いらないでしよ。

   今お腹減ってないし、

   お前はマズそうだから

   食わないであげるでし。」


 ジャックは自慢の跳躍力を活かし、

峡谷の壁を跳ね回り、反撃の機会を伺う。


 ちまきの体を覆う炎が火竜の形になったとき、

ジャックの体は固まり墜落し地面に衝突する。

 みるみるジャックの体が赤色に染まる。


ジャック「……そんな……ばか……な……。」


 赤い体のジャックが次第に黒色に戻る。

 それは元の色では無く炭化であり、

ジャックは既に絶命していた。


ちまき「コケてから動かないでしね。

   死んだフリでしか? まぁいいでし。」


   【全力どらごんぱんち】」


 ちまきは拳を突き出し、

ジャックに向けて炎を放射した。


 周囲の空気を歪ませるほどの

高温を放つジャック。

 峡谷の岩は高温でオレンジ色になり

今にも溶け出しそうだ。


ちまき「動かないでしね……。

   少し冷やしてみるでし。」

 

 高温のジャックに風魔法で砂を被せる、ちまき。

 また風の魔法を使い、砂を払う。


 砂を払ったジャックのボディは黒から

白に変わっており、表面の一部は月明かりを受け

キラキラ輝いている。


 ジャックの体を杖でツンツンする、ちまき。

 キンキンという高い音を発するジャックの遺骸。


ちまき「灰とは違うでしね? なんか硬いでし。

   動かないから、

   もうコレとは遊べないでしね。」


 ちまきが作り上げたのは、[幻の木炭]

最高級の備長炭【白炭】と同じ物であった。

 キラキラ光る輝くものは、

一部がダイヤモンド化しているためである。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー荒れ果てた岩石地帯ーー


 ちまきの転移魔法により、スプライトと

敵将・テラーが飛ばされたのは

荒れ果てた岩石地帯であった。

 草や木はまばらで、雨が少ない

乾燥した気候の土地のようだ。

 スプライトが対峙するのは

スプライトとほぼ同じ体格の蟻の将、

テラーであった。

 他の蟻将と比べると腹部が

蜘蛛のように巨大である。


テラー「陸将テラーだ。鬼人か。

   裏切り者め。死で贖え。」


スプライト「裏切る? 

     虫ケラと仲間になった覚えはないな。

     それと、仲間だったなら

     死ななくて済んだのにな。」


 スプライトは、ゆっくりと背負った大剣

【炎剣プロメーテウス】を鞘から引き抜く。


 それは、蛇行する蛇のような形状の

フラムベルジュであった。

 殺傷力が高い反面、

"強度が足りず脆い"という弱点を持つ剣である。

 しかし、スプライトのそれは大剣で厚みがあり、

脆さを無くした代わりに、

重さというリスクを抱えていた。

 巨躯で屈強なスプライトにとっては

無きに等しいリスクであった。


 スプライトは刀身に指で触れ、擦ると

刀身から激しい火花が散った。


スプライト「かなりの強者と見受ける。

     悪いが全力で行かせてもらうぞ。」


テラー「炎の魔法剣か。

   炎はともかく、あの大きさと重量は

   厄介だな。鈍重な斬撃なら躱すべきか。」


 スプライトが大剣を全力で振り回す。

剣から花火のように火の粉が舞い、

テラーに降り注ぐ。


テラー「炎の魔法など……。!?」


 テラーは危険を察知し後退した。

 テラーの体の、

火の粉が触れた部分が赤く変色している。

 スプライトの剣の刃は、鉄にクロムを混ぜた

合金製である。

 刃をサンドイッチのように

マグネシウムのプレートで挟み込むことで、

メタルマッチのような

削ると発火する性質を持たせていた。

 生前のグアン・ダムマンからの

依頼を成功させた報酬として、

スプライトが依頼した魔法具(?)であった。


テラー「何故だ!? なんなのだ、この炎は!?」


スプライト「なんだとは何だ?

     見ての通り剣技だ。

     "空気と擦れると炎が出る"

     というだけだ。   

     ゆくぞ【剣技・神界の燈】」


 スプライトは熱した鉄のような

オレンジ色になった炎剣プロメーテウスを構える。

 プロメーテウスの周囲の空気が熱でゆらめき、

波打った刃が、まるで本物の炎のように

ゆらめいている。


 スプライトが踏み込み、

まるで剣道の面のように

剣をテラーの頭部目がけて振り下ろす。


 テラーは間一髪後退し、斬撃を躱すも、

降り注ぐ火の粉の追撃を受ける。

 次の斬撃も躱そうとするテラーであったが、

スプライトの放つ斬撃が伴う

閃光と火花により視界は遮られ、

もはやスプライトの剣筋を

追うことはできなかった。

 咄嗟に4本の腕を上げ、

ガードの姿勢を取るテラー。

 腹部にもチカラを込める。


テラー「ギャアアアア!!

   この化け物め!

   こうなったら自爆……。」


 テラーは自爆アリの遺伝子を組み込まれた

改造アーミーアントであった。

 腹部には毒を含む粘液が貯蔵されていた。

 テラーは腹部にチカラを込めるも、

スプライトの高速の斬撃で

まるで煮物に入れる大根や人参のように、

全身をバラバラに乱切りにされ、焼かれてしまう。

 腹部が爆発したが、それより強い

“スプライトの斬撃により巻き起こった熱旋風”と

火花により燃え尽き、

スプライトには届かなかった。


スプライト「意外と柔らかかったな。

     やはり、あのデカくて鎧を着てた奴と

     やりたかったなぁ。

     ……そういや、これ、

     どうやって元の場所に戻るんだ?」


 スプライトは少し離れた谷底から、

爆発音と立ち昇る炎を見た。


スプライト「おっ。あれは、ちまの炎だな。

     合流して戻るか。」


 スプライトは駆け出し、

谷底へ向けて飛び降りた。


 スプライトは剣を振り、上昇気流を作り出し、

風をマントで受け、着地した。


 スプライトは、杖で白くなった敵将を

ツンツンする、ちまきを発見する。


スプライト「ちま! 勝てたか。

     〈魔法は効かねぇ〉

     とか言ってる奴らだから、心配したぜ。   

     帰ろうぜ! 魔法で頼むわ。」


ちまき「無理でし。」


スプライト「へ?」


ちまき「魔王の城とか、

   他人の転移魔法で行ったから、

   どこにあるのかわかんないし、

   そもそも転移魔法なんて

   便利な魔法は使えないでし。

   ここもどこだかわからないでし。」


 スプライトは空を見上げる。

 星の位置で、おおよその現在地の見当をつける。


スプライト「あっちの方だな……。」


 スプライトは直感で感じていた。

星の位置から察するに、

途方もなく遠い場所であると。

 戻る頃には、全て終わっているのではないかと。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー地上・魔王城前広場ーー


 女王が新たに生み出した、数百の兵隊蟻に

苦戦を強いられている、

約千名のエルフスカディ連合軍と

空からの応援部隊。

 近接戦闘特化の蟻兵に対し、連合軍は

魔法や弓矢に長けた部隊が主力なのが要因だ。


 兵隊蟻の甲殻も、将ほどではないが

堅固でプラズマ系魔法に対する耐性も高く、

連合軍は攻めあぐねる。


 次々と倒れる味方を見た、

アローヒに寄り添い警護する

ゼットが立ち上がる。


ゼット「俺が女王を倒す。アローヒを頼みたい。」


 ゼットは、エルフの後方部隊長に

アローヒの警護を託す。


アローヒ「ゼット! 何をするつもりなの!?

    あなた、……まさか!」


ゼット「姿の違う俺と仲良くしてくれた、

   エルフの皆には感謝してる。

   だから戦うよ。皆のために。

   友達になってくれて、ありがとう。

   皆に、よろしく伝えてほしい。」


 ゼットは俊敏な動きで、

ジグザグに跳び女王の目前に降り立つ。


女王「なんだこの犬コロは!

  ええい、何をしておる!

  早く排除せぬか!」


 女王が檄を飛ばすと、兵隊蟻が一斉に

ゼットに向け進軍を始める。


 ゼットは、まるで鬼ごっこのように、

兵隊蟻を引きつれ、絶妙な距離間を保ち逃げ回る。


 ゼットの体が風とともに赤い砂を巻き上げ

次第に白い煙のようなものを噴き出し始める。

 それはやがてブリザードのような暴風となり、

やがて白い竜巻のようになっていく。


 女王は、ゼットに誘導された兵隊蟻たちに

囲まれ、おしくらまんじゅうのように

身動きができなくなっていた。


女王「お前たち! 何やってるんだい!

  離れな! これじゃ身動き……。」


ゼット「封印術【永久凍奴】」


 白い竜巻となったゼットの内側にいた

女王と数百体の兵隊蟻は、

まるで氷中花のように透明度の高い

氷の柱に閉じ込められた。

 これは、ゼットの母親が

金竜アマツミカボシを

命と引き換えに封印した術と同じであった。


 アローヒは姿を消したゼットと、

人伝てに聞いた封印術の話を思い出し、涙した。


 氷の柱の頂上部には、

まるで薔薇の花束のように

たくさんの薔薇の花の氷像が

びっしりと咲いていた。

 それは真紅とまではいえないが

赤い砂により赤く着色されていた。

 その数は999本に及んだ。


 これは、ゼットから、こまちゅへ。

 こまちゅにしか読み取れないであろう、

こまちゅに伝えたい、

ゼットからのメッセージであった。


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