113 死の淵に、愛する者を想ふ
113 死の淵に、愛する者を想ふ
ーー地上・魔王城前広場ーー
対峙するゲシュタルトとエッジ。
ゲシュタルトはハルバートで
エッジの双剣を受けるも、
重く長いハルバートでは不利と判断する。
味方である改造女王蟻に応援を要請する。
ゲシュタルト「女王! 手を貸せ!」
女王「仕方ないね。1人だけ貸してやるよ。
女王の命により、蟻兵がエッジに襲いかかる。
エッジはたまらず後退し、
蟻兵の攻撃を剣で受ける。
ゲシュタルトは退がり、
ハルバートを2つに切り離した。
ハルバートは、片手斧とメイスのような
2つの武器に変わった。
エッジは高速の剣技を蟻兵に浴びせる。
敵の弱体と自身の強化という
魔法剣【莫耶】と【干将】の効果により、
弱体した蟻兵をバラバラに刻むエッジ。
ゲシュタルト「蟻の甲殻を!?
ただの剣ではないな。」
両手に武器を持ったゲシュタルトが構え、
エッジににじり寄る。
ゲシュタルトが踏み込み、エッジに斬りかかる。
双剣で受けるエッジ。
切り結ぶゲシュタルトとエッジ。
ゲシュタルトの攻撃は戦士タイプではないため、
そこまでの脅威では無いが、
エッジも不慣れな二刀流のため、
ほぼ互角の展開となった。
エッジの背後から、氷やゴーレムの残骸に
隠されたゲシュタルトの魔法具が襲いかかる。
先ほどの牛のような形状とは異なり、
顔は少女、千手観音のように
多くの腕が生えている。
質感はブリキの人形のような金属製で
メタリックな色合いだ。
ゲシュタルト「かかったな!
身体中の血を搾り出せ!
モード・アイアンメイデン!」
エッジがアイアンメイデンの腕に捕獲され、
観音開きで開くブリキに閉じ込められるエッジ。
ブリキの内側には無数の短剣の刃のようなものが
びっしりと取り付けられていた。
アイアンメイデンの隙間から鮮血が噴き出す。
ゲシュタルト「何故血が? 隙間だと!?」
エッジ「ジャッジメント・ギルティ」
鮮血と共にアイアンメイデンを突き破った、
巨大な光の刃がゲシュタルトの胸を貫く。
仰向けに倒れるゲシュタルト。
それは、ほえほえの死を悼む
盟友たちの祈りがこもった一撃であった。
エッジ「……ルーローさんが救ってくれたのか。」
開かれたアイアンメイデンの両扉に突き刺さる、
莫耶と干将。
つっかえ棒のようになり、
エッジをギリギリで救っていた。
エッジは全身から血を流し倒れ込む
エッジを保護するべく、
四銃士やエルフとスカディの兵が
エッジの元へ向かう。
エッジにトドメを刺すべく、新たに生産された
蟻のキメラが迫る。
増産された蟻のキメラと
国連陸軍が全面衝突する。
それぞれ進化した銃を携えた四銃士であったが、
蟻の硬さに苦戦を強いられる。
エルフやスカディは魔法主体の戦い方のため、
これまた苦戦を強いられる。
ゼット「アローヒさん、すまない。
俺が女王を倒す。」
奴をどうにかしないと、兵を増やされ
ジリ貧になる。
ほえほえさんが命と引き換えに作った時間を
無駄にしたくないんだ。」
アローヒ「大丈夫なの?」
アローヒは限界までチカラを使い、
もはや立つこともできず横たわっている。
ゼットは、次々と蟻の兵を生み出す
女王目がけて走り出す。
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ーーナミノエの砂漠に似た空間ーー
アローヒにより飛ばされたのは、
ゴリアシと蟻の将フィアーであった。
ここもまた、命の気配が無い
広大な砂漠のど真ん中であった。
フィアーもまた、強固な甲殻を持つ。
体長はゴリアシより大きく、
約3メートルほどだ。
大きめの顎と尾の毒針に加え、
花咲蟹のような太く短い棘が全身を覆う。
フィアー「オーリヤマの騎士は美味かったが、
お前はどんな味がするのか。
美味かったら女王に半分献上してやるよ。
光栄だろう?
ゴリアシ「美女のキスマークならともかく、
お前らの女王、どうせバケモノだろ?
てか、お前ら何?
進化したゴキブリか?」
フィアー「殺す。」
フィアーが襲いかかる
ゴリアシ「頼むぜラムちゃん。」
ゴリアシは襲いかかるフィアーの動きを見切り、
的確にカウンターの打撃を決める。
しかしフィアーの外骨格は硬く、
また太く短い棘により、
ゴリアシのナックルとグリーブにヒビが入る。
ゴリアシ「硬ぇな。加速が仇になるか。」
フィアー「お前の攻撃は効かねえよ。観念しな。」
ゴリアシ「殴る蹴るだけが格闘じゃねえよ。」
ゴリアシはフィアーの腕を掴み、
前後に揺さぶる。
重心を崩されたフィアーは足払いにより、
倒される。
ゴリアシはフィアーの首を締め上げ、
足で上腕の2本を抑える。
蟻の関節は硬く可動域が狭く、
背後には回せない。
ゴリアシのスリーパーホールドが決まる。
同時に、ゴリアシにフィアーの棘が刺さる。
棘から毒を受けるゴリアシ
ゴリアシ「痛っ! 焼けるような痛み……。
毒か。だが死んでも離さねえぞ。」
フィアー「首を絞めたって意味ねえよ。
気門から呼吸できるからな。
毒で死んどけ。」
ゴリアシ「呼吸とか、そんな優しくねえよ。
頭をネジ切るんだよ。
それとな。世の中にはな、
死ぬより恐ろしいモノ【部分性転換魔法】
があるんだぜ。
毒なんて怖くねーっての。
ビョーキが怖くて
男やってられるかっての。
ラムちゃん頼むぜ。全力のくれ。」
ゴリアシの手足がラムの風を受け、急加速する。
締めが加速するとともに、
フィアーの棘が深くゴリアシの体に食い込み、
更に毒に侵される。
フィアー「正気か? お前も死ぬではないか!」
ゴリアシ「虫と心中はいただけねえけどよ。
俺には大事なオンナがいるんだよ。
死んでも負けるわけには行かねえんだよ。
オンナからもらうビョーキにはな、
痛みに見合うだけのモノがあるけどよ、
虫からもらう毒は痛えだけだなオイ。
喰らえ【ラムジェット・サブミッション】」
シルフ型自動人形ラムは
限界を超えて風を放出し続け、
ボディの至る所に亀裂が入り始める。
ラムの瞳からオイルが滲み、
まるで涙のように流れ出る。
ゴリアシのラムジェットナックルとグリーブも
限界を超え砕けた。
ゴリアシの魔法具装甲が砕けるとともに、
フィアーの頭部も捻じ切れ転げ落ちた。
ゴリアシの手足の関節も鈍い音と共に
不自然な曲がり方をしており、
またゴリアシが抑えていた
フィアーの腕は折れていた。
大の字の仰向けになり倒れるゴリアシ。
稼働停止したラムが寄り添うように倒れる。
ゴリアシ「ラムちゃんまで泣かせちまったよ。
俺は罪な男だぜ。
あの娘も……。
俺が死んだと知ったら泣いちまうかな。
……その美しい顔は
泣き顔より笑顔の方が似合ってる。
泣かないでくれよベイビー。
レナ……。
ミスティ、アヤナ、レム、ミント、
ランカ、チエリン、ミィー、キリピン、
アオイ、ンペ……。」
愛した女の名前を呼び続ける
ゴリアシであったが、
全員の名を呼ぶ前に力尽きてしまう。
ゴリアシの顔が青紫色に染まり、
ゴリアシは動かなくなった。
ゴリアシの死により空間隔離が解除された。