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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
111/138

111 秘めたる炎は さんざめく花火となりて咲き誇る

111 秘めたる炎は

さんざめく花火となりて咲き誇る




ーー地上・魔王城前広場ーー


 アローヒ、ほえほえ、ゼット率いる連合軍と

対峙している蟻の将は、残る1体のみであった。

 その姿は、ポネラに次ぐ巨大。

 顔は女であり、蟻に似つかわしくない

巨大な翅を背に持つ。

 その蟻を守護するかのように、

多くの兵隊蟻キメラが隊列を組み将を囲む。

 その将は改造アーミーアントの女王蟻であった。


女王「個別撃破か。こちらとしても

   願ってもないことよ。

   残りカスの相手をすればよいのだからな。


   エルフ供を残らず食らえ。

   強者を喰らえば将になれるぞ。」



 女王の命令で兵隊蟻キメラが一斉に

進軍を開始する。

 警戒心し身構えるゼットを制止する、ほえほえ。


ほえほえ「ゼット殿、ここは私に任せてくれ。

    そなたはアローヒ殿の警護を頼む。

    皆の者、行くぞ! 

    スカディ族のチカラを示すのだ!」


 氷の民スカディ族の長である、ほえほえの号令と共にスカディ軍が前線に出る。


 スカディ族が祈りを捧げる。

 スカディ族の秘宝・六花万華鏡に

魔力を込めた、ほえほえ。

 蟻の軍勢の周りに、ダイヤモンドダストのような

輝く塵が舞い、ブリザードのような

強風が吹き始める。

 魔法による冷気に強い耐性を持つ

改造兵であったが、視界を遮るほどの

ホワイトアウトに歩みを止める。

 細かい塵が固まり、蟻兵を囲む氷の壁が現れる。

 瞬く間に氷の建物が完成する。


 それは巨大な六角形の平屋の建物だった。

 外壁は高く、分厚い氷でできており、

 建物の内部は壁で細かく仕切られ、

まるで蜂の巣のような六角形のハニカム構造の

個室が蟻兵を閉じ込めた。

 その壁は鏡のような氷であり

蟻兵たちの姿を写し込む、氷の迷宮となった。

 兵隊蟻たちはパニックに陥る。


 女王は手に持つ錫杖を奮い、氷の壁を破壊する。


女王「惑わされるな! 壁は薄く脆い!

  壁を壊してまっすぐ進め!」


 兵隊蟻たちは壁を壊し進軍する。

 氷の鏡は驚くほど薄い薄氷であった。

 しかし、鏡に写る虚像と味方の区別が

つかなくなった兵隊蟻たちの同士討ちが

始まってしまい、蟻軍は再び大混乱に陥る。


女王「ええい! 何をしておる!

  この単細胞どもめ!」


 苛立つ女王を尻目に、ほえほえがニヤリと笑う。


ほえほえ「皆同じ姿というのが災いしたわね。

    誘ったのは自滅だけではないのよ。」


 アラクネ絹製のローブを纏った、

ほえほえがエルフ軍の風魔法で飛び立ち、

迷宮の屋根に降り立つ。

 蟻たちが叩き割った氷の壁や天井の破片が、

ほえほえに吸い寄せられていく。

 強力な魔法を連続で使用している、

ほえほえの顔がみるみる痩せ衰えていく。


ほえほえ「命に代えても。

    盟友たちの道を切り拓いてみせる。」


 氷の破片を纏った、

ほえほえが巨大な氷塊となっていく。

 やがてその姿は小さな氷山となった。

 頂上には火口のような窪みがある。



ほえほえ「複合型最上階梯氷属性

    氷山噴火魔法・トリトン」


 氷山となった、ほえほえの火口から

液体窒素のマグマが噴き出す。

 外側の壁だけを残した迷宮に、

液体窒素が注がれプールのようになっていく。


 スカディを率いる将、ゼルファとヨシビトの

号令で集結したスカディ族が一丸となり

詠唱を始める。

 それは、蟻を囲む六角の陣の内部の液体窒素を

操る、複合型高位の氷属性魔法であった。


「冥府の川は嘆きの奔流が迸り……

 氷結地獄魔法コキュートス」


 氷山から噴き出す液体窒素マグマが、

嵐で氾濫した川のように

氷の結界の中を物を押し流す。

 それは次第に渦を形成し、

洗濯機のように回りはじめた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーーアズマ火山地帯に似た空間ーー


 アローヒにより、アカマルが飛ばされた地形は

人気の無い、岩石が転がる

荒れ果てた高温の山であった。

 対峙するアカマルと蟻の将兵。

 蟻の将はアカマルより一回り大きい。


蟻の将が名乗る。


「陸将バーチェルだ。」


アカマル「十時隊親衛隊長アカマル」


 アカマルは杖を、まるでライフルを

扱うかのような姿勢で構える。


 バーチェルが炎に包まれる。

 刹那の杖による、アカマルの

詠唱破棄高速連射炎魔法が火を吹く。

 バーチェルは意に介さず

アカマル目がけて突っ込む。

 アカマルはバックステップで

距離をとりながらも炎を浴びせ続ける。


バーチェル「恐ろしい速度の連射魔法。

     威力も申し分ないのであろうが、  

     残念だったな。相手が悪い。

     我らの外殻に魔法は効かぬ。

     素晴らしい魔力に敬意を表し、

     俺がお前を食ってやろう。」


アカマル「効かなくとも引くわけにいかぬのだ。

     ……師匠、感謝します。

     あなたの言うとおりの展開だ。」

    

 これは生半可な覚悟では打開できない。

 そう覚悟を決めたアカマルが

特別なタバコを取り出し火をつけた


挿絵(By みてみん)


 タバコからまるで花火のような火花が散る。

 アカマルがバーチェルの攻撃を左腕で受ける。

 アカマルの左腕が千切れ飛ぶ。


 バーチェルがアカマルの左腕を拾い、貪り食う。

 バーチェルの口から、アカマルの血が滴る。


バーチェル「素晴らしい。魔力が湧いてくる。

     しかしなぜ、避けずに受けた?」


アカマル「お前を仲間の元へ行かせぬためだ!!」


 普段は寡黙で、口数が少ないアカマルが猛る。

 アカマルは杖を捨て、

バーチェルに向かい特攻する。


 アカマルは、バーチェルの右腕の突きにより、

左胸を貫かれる。


 アカマルの鮮血を頭から被るバーチェル。

 アカマルが更に吐血し、

咥えていたタバコが地に落ちる。

 そのタバコの火がアカマルの血に引火し、

バーチェルとアカマルは激しく炎上する。


 アカマルの瞳に映る、ゆらめく炎は

アカマルの内なる闘志に火がついたように

バーチェルの目に写る。

 決死の覚悟を決めた漢の、

命と引き換えの攻撃にバーチェルは恐れ慄く。


バーチェル「なんだこれは!?」


アカマル「魔法具 戦紅花火。

    自身の血液を

    可燃性液体に変える魔法具だ。

    魔法の炎が外殻に効かずとも、

    体内からの熱は効くのであろう?


    最後の晩餐だ。味わえ。」


 アカマルは肘から先が無い

左腕をバーチェルの口に突っ込む。

 流れ出る自身の血液を

バーチェルの体内に注ぎ込む。

 逃げようともがき、アカマルの胸に突き刺した

右腕を引き抜こうとするバーチェル。

 アカマルは非力な右腕で

バーチェルの右腕を掴む。

 残るチカラの全てを右腕に込める。


 ガソリンとなり燃え盛るアカマルの炎が

バーチェルの口から消化器まで引火し、

もつれ合う2人が激しく炎上する。


 アカマルの右腕が力尽きたそのとき、

アカマルとバーチェルが共に膝をつく。


バーチェル「まさか、魔道士ごときに……。」


アカマル「すまないな。

     魔道士だからとはいえ、

     魔法が効かぬ相手に

     負けてよい立場ではなくてな。」


 アカマルの命の灯が消え、

空間隔離が解除された。



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